テニスな(?)総代様



 「晃…この荷物、どうしたの?」
 「んー…ラギーがな、娯楽の少ない、寂しーワイに、差し入れ送ってくれたんや。」
部屋中に散らばっていたのは、アニメのDVDだった。
 「おもしろいの?」
 「まぁな。向こうにいた頃は、雑誌も毎週読んどったからなぁ。」
天照郷で育った飛鳥にとって、漫画雑誌等の娯楽はあまり馴染みが無い。
この見たことは無い作品がそんなに面白いのかと、2、3巻手に取り眺めて見る。
そのパッケージは、スポーツ物とは思えないような装丁がなされていた。

翌日、大きな紙袋を抱えて、晃は執行部室を訪れた。
 「総代はん、ちょっとええですか?」
 「どうした、晃?…なんだ、その荷物は?」
自分の席で書類をまとめていた九条は、晃が抱えてきた大きな荷物に、何事かと手を止めた。
 「いやぁ…DVDなんやけど、見られるんはここだけやって聞いて…。」
 「そうだな。デッキはここにしか設置してないしな…ところで、なんのDVDなんだ?」
九条の瞳が、愉しそうに輝きを増した。
 「あ〜、TVでやってたアニメですわ。ラギーがまとめて送ってきよったんで…。
  飛鳥も若も見たこと無いっちゅうし、そんじゃ見よか、と。」
 「ふーん、そうか…俺も、いいか?」
 「もちろん!ええですよ!」
そして、執行部室は、アニメ上映会場となった。

画面に映し出されるのは、派手な演出で映し出される試合や技の数々。
飛鳥は、本来のそのスポーツにはありえないような設定に、苦笑いしていた。
打った本人の手元にボールが戻ってきたり、ポールの外側を回ってコートに入ったり。
打ち出されたボールが空気抵抗で煙をあげたり、常人離れした跳躍をしてみせたり。
このスポーツって、こんなに超人的だったかなぁ…なんて、ぼんやりと考えていた。
だが、験力を使って技を発動したり、自分の化身である魂神を召喚したり 等々…。
自分達も非常人的な存在であるとは、この場にいる誰一人思ってもいない。

九条は、画面からずっと目を離さずに、顎に手をあてて考えていた。
その姿を見て、飛鳥は『また、ロクでもないことを考えているのでは…』と、嘆息する。
もちろん、口に出す事は無い。
実際、九条の頭の中には先ほどの試合のシーンの数々が繰り返されていた。
密かに、技の吹き飛び効果を応用して、波動球が打てるのでは…と考えていたのは、誰にもバレバレの秘密だったりする。


END

WEB拍手公開。<2006/6/1> / UP。<2006/8/10>

WEB拍手から、繰上げ。
もう、言うまでもなく、あの作品です(汗)
娯楽の少ない天照郷で、DVDなんて見れたらいいなぁ…ってのがネタ。
総代は、テニスもなさることだし…(苦笑)
「波動球」なのは、私の趣味です♪
まぁ、あくまでも管理人のイメージを無理矢理こじつけただけなんで…(^_^;)

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