14.元気いっぱい



あの、元気の塊のような彼女が、彼を追って学園を去ってから早数ヵ月。

彼女のいない執行部は、まるで火の消えたような静けさに包まれた、と言っても過言ではないはず。
念願の卒業を果たし、後進の指導のため、と称しては訪れる宝蔵院先輩も、それは感じているだろう。
いつもの豪快さが、半減しているような気がする。
那須乃さんの高笑いも、一之瀬さんの突拍子のない言動も、イマイチ、インパクトにかけている。

僕は、まさか彼女が彼を追っていくなんて、思ってもみなかった。
あの壮行の宴の前日、準備に追われる僕達の中で、唯一、彼を見送った彼女。
そっと僕の側に擦り寄って、俯きがちに「行っちゃった…。」と呟いた彼女。
その目尻にうっすらと浮ぶ涙が、僕の記憶に焼き付いて離れない。
いつも無邪気に彼の背を追っていた彼女が、彼の旅立ちを涙で見送った。
もしかしたらその時既に、彼女は決意していたのかもしれない。

今頃はきっと、彼女は彼の隣で笑顔を浮かべているだろう。
それは、いつも僕達を太陽のように明るく照らす、元気いっぱいの笑顔に違いない。

そうであって欲しい、と、僕は心から願う。


END

WEB拍手公開。<2007.5.31> / UP。<2009/7/24>

琴音ちゃんEND後を、マコっちゃん視点で。
『元気いっぱい』といえば、琴音ちゃん。
回想的なお話をさせるのは、マコっちゃんが一番ですね。
約2年ちょっと、拍手に置いてあったものです…(苦)
あまりにも放置しすぎでしたが、ようやく日の目を見る事が…(^_^;)
ごめんなさいね。

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