「本当に必要なもの 〜謎の商品が蔓延る不思議な業界〜」
今回は飼育遍歴ではなくて、業界に関わるちょっと辛口ネタをお送りしたいと思います。あくまで私見ですからそういうつもりでご覧ください。

さて、私はこれを書いている現在(H15年秋)、まだ金魚飼育を初めて間もなく、経験もあまりありません。故に、金魚飼育、アクアリウムの世界で見たり体験したりすることが全て新鮮です。今日はそんな私が、おそらく初心者ならではの「何故?」と思っていることを書いてみようと思います。

私は飼育開始当初から、金魚や水草をおいてあるショップをよく回って歩いています。それは、一つにはお店にはいろいろな金魚たちがいて、毎週新たな子が入荷されたりするのでそれを見に行くのが楽しいということ。そしてもう一つの目的は、陳列棚に並んだいろんな商品を見比べて、それぞれどんな特徴があるのか?私にとって必要だろうか?こっちを買おうか、あっちを買おうか?、結構いろいろ迷ってしまったりして、そういういろんなアクア商品を見比べてみるのがまた楽しくて仕方ありません。水槽、ライト、フィルター、砂、ポンプ、アクセサリーなどですね。

そういった中で、どうしても不可解で謎多きコーナーが、どのお店にも売り場の一角に存在していることは早々に気づいていました。そこに並んでいる商品とは、パッケージに「水換え不要」とか、「苔知らず」とか、「すぐに水が透明になる」などのうたい文句がパッケージに書いてあるものたちです。それも一つや二つではありません。いろんなメーカーがありとあらゆる商品を発売していて、どちらかというと他のコーナーよりは賑わっているようにさえ見えました。

でも、パッケージの表にデカデカと、すごい効能が書かれていますが、ウラ側を見ると、何故そのような効果があるのか?という、化学的、生物学的なアプローチを行っている説明が全くないものがほとんどです。(ごくごく一部、少しは納得できるかな、というような説明があるものもありますが・・・)。書いてあるのは「当社開発の新手法、新物質により、さらなる効果アップ」みたいなのとか、そんなのばっかり・・・。

(なんか育毛とか美白の業界の商品に似てるかも・・・でも、あれはちゃんと原理を説明してますよね。薬品の効果よりも他の要因(歳やホルモンバランス等)の影響が強すぎて、なかなか謳い文句通りにいかないだけで・・・)

私は、根が理系人間のせいもあるかもしれませんが、ズバリ書いてしまいますと、これらのアクアショップに置いてある謎の商品を全く信用することができないのです。本当に効果があるなら、はっきりとその効果が現れるプロセスを説明すべきではないでしょうか?アクア業界のメーカーは、「消費者にそんなこと解るわけない。」と、消費者をバカにしているのでしょうか?いやいや、他のどんな業界でも、自分の商品をアピールするために、できるだけ一般消費者にわかりやすく説明しようと努力はするはずですよね。発毛商品にしても美白化粧品にしても・・・。当然、アクア関係の商品でも、本当に効果があるなら、それを原理を含めてしっかりと説明するはずなのではないでしょうか?

それなのに、何故多くの水槽維持管理に関わる薬品は、そのような説明をしていないのでしょうか?これは私の想像の域を超えませんが、もしかしたら、何かの問題があって、効果の現れるプロセスを説明できないとも考えられませんでしょうか?

たとえば、「実際には謳い文句のような効果が期待できない」のか、あるいは「効果はあるけど、一方で容易に想像される副作用がある」から、といったようなちょっと書けない事情があるのかもしれない、と思ってしまいます。

確かに、「水が透明になる商品を使ったら、ちゃんと水が透明になった!」という方もいらっしゃるかもしれません。でも、ちょっと考えてみてほしいのです。みなさん、原子とか分子って概念はわかりますよね?おそらく中学で普通に理科の授業を受けられた方でしたら、なんとなく雰囲気だけでもおわかりいただけるのではないかと思います。世の中の物(質)の変化は、全てこの原子、分子のつながりが変化することによるものです。そこにある原子・分子は、化学変化で姿形こそ変えますが、この世から消えてなくなるということは絶対無いです。

「水が透明になる」という商品を水槽に入れたとき、どういうことが起きているでしょうか?確かに見た目はキレイになるかもしれませんが、水が濁る原因となっていた物質は、水槽の外に出てしまったわけではないのです。形を変えて(他の物質と化合したり分解したりして)より見えにくい小さな分子になったか、あるいは水より重い分子になって水槽の底に沈んでしまっただけなのではないでしょうか?そうやって、もともとあった物質は水槽の中に残るばかりか、新たな物質(水を透明にする商品に含まれる化合物)が水槽の中に加えられてしまうのです。

この「新たに生成された(加えられた)物質」は金魚にとって有益な物質かもしれませんが、逆に有害な物質かもしれません。これはどこにも書いていません。この点について、ほとんどのメーカーが、水質を管理する商品を売るに当たって、説明を全く行っていない状況にあるのです。

もちろん、「今は、ただ単に水の見た目を透明にすることだけが大きな目的だ」という状況も考えられるわけで、そういった目的で一時的に使用するケースがあることは否定しません。たとえば、「彼氏(彼女)が部屋に遊びに来るのに、うっすらと汚れた水槽の水を透き通るような透明にしておきたい」場合などですね。ただ、注意しなければならないのは、これはあくまで見た目最優先という目的があるからで、そのとき水槽内でミクロレベルでどのようなことが起きているかは我々一般人にはわからないのです。

ちょっと説明がわかりにくかったでしょうか。では次に、こんな例え話はいかがでしょうか・・・。

仮に貴方か、あるいは貴方の身内など大切な人が、かなり深刻な病(余命幾ばく、治癒の見込み無し)にかかったとします。当然医者にかかって治療はしますが、それだけでは余命をわずかに延ばすにすぎません。わらをもすがる思いのあなたのことです、医者にかかる以外にも何かしたいと思うに違いありません。

そしてある時、近所にある薬局やドラッグストアで、その不治の病にすごくよく効くという漢方や薬品、食品を発見しました。しかし、どういったプロセスによって病気が治癒するかの説明は一切無し。薬剤師に聞いてもよくわからないと言います(こんなことは普通は絶対ありませんが、例えですので・・・)。

もしこの商品を、1ヶ月分100円で売っていたら、貴方ならどうしますか?あまりにインチキくさいので買わないという人が多いのではないかと思います。

では、100万円では?なんかすごく効果がありそうですが、なかなか買う決断まではできないでしょう。なんとかして、「何故ガンに効くのか」知りたいと思うに違いありません。

では、その商品が1万円だったら?たいていの人は、「カゼ薬」よりは、はるかに高いし、払えない金額ではないから、「とりあえず買ってみようか」と思って買ってしまうのではないでしょうか?

私は、先に述べた、アクア業界に君臨する水質維持のための謎の商品の数々は、この「不治の病に効く一万円の薬」と同じだと思うのです。水槽の環境を改善するために(効果を確信して)買うのではなく、「効果があるかもしれない」という期待感をもった自分を満足させるために買っているにすぎないのではないでしょうか?ほんとうにその商品を使ったときに効果が現れるような兆候が現れたかもしれませんが、それはたまたま同じタイミングで濾過が立ち上がり、自然に水槽の微生物的なバランスが安定しただけという可能性もあります。

とにかく、効果出現のプロセスが知らされていない以上、その薬が効果が有ったのか、無かったのか、あるいは逆に悪い影響があったのか、といった判定は、誰も永久的にすることはできないのです。

このような「一万円で買える不治の病に効く薬」のような商品、水質維持のための薬品がアクア業界で市民権を得ているということは、何を意味するのでしょう?

このような状況では、メーカーは、商品の説明をしなくても薬品が売れるわけですから、商品開発に手抜きや妥協したり、最悪の場合は適当な物質を水に溶かして、「すごい効果!水が永久にピカピカ」などといった謳い文句をパッケージに書いて、結構な値段で売ってくる可能性がゼロではないということです。

私も不肖ながらも30年以上生きてきまして、それなりにいろんなもの見聞きしていますが、これほど謎の商品が市民権を得ている例(業界)は、ほかには無いような気がします。他の同じような商品を売っている業界(美容や経済投資、能力開発等)では、こういった手の商品やサービスはたいてい高価であるうえに効果が不明な(というよりほとんど無い)ことが容易に想像できる「怪しい」ものですよね。でも、それをなんとか話術や心理作戦で騙して善良な市民に売りつけて金をとろうとする輩がいるだけの話しですね。いわゆる裏社会というヤツです。でもアクア業界は表社会です。表でこんな状態がはびこっているなんて、あまり例がないんではないでしょうか?

普通、水槽の環境を改善しようと思ったときには、次のような手順を踏みますよね。

(1)水槽の問題点に気づく
 ↓
(2)解決するためにはどういった方策が必要か判断する
 ↓
(3)の方策を実行するために最も適当な資材を使う

・・・でも、説明不十分な謎の商品を買って使うということは、この手順の(2)の部分が抜けているということなんです。つまり・・・

(1)水槽の水が汚い
 ↓
(3)水槽の水がキレイになると「書いてある」商品を買う

・・・なんかすごいことだと思いませんか?さきほどのガンのお薬の話ではないですが、これが何万円もする商品なら、まず誰も買わないです。でも、そこは適当な価格設定が為されていますから、思わず買ってしまうという人も多いのではないかと思います。

最後にちょっとだけ補足を・・・散々に業界の悪口を書いてますが、私はこのような謎の商品を全て否定するわけではありません。中には本当に効果が現れる商品があるのかもしれませんから。

でも、敢えて言いたいのは、メーカーがその原理についてきちんと説明を行わない以上、判断する基準がないということなんです。きちんと納得してから買わないと、無駄な出費をしたうえに、逆に金魚を危険に陥れる可能性がありますよ、と言いたいのです。

皆さん、お互いよく勉強して賢い消費者(飼い主)になりましょう。

では
  
語り部(かたりべ)ぷーさん