「ビバ!バクテリア! 〜目に見えざる水槽の中の主役〜」
今回は私の金魚飼育遍歴の話です。

平成15年7月に金魚を飼い始め、1週間、2週間とあわただしく日々の世話をする中で、私は金魚の魅力にとりつかれていきました。楽しむと同時にいろいろ勉強もして、物理濾過や生物濾過のことも机上の理論としては理解できました。でも当時の私の水槽では、まだバクテリアが十分住み着いていないらしく、ものの本等によってもエサは極力控えめに・・・とのこと。

それはもう、せっかちな私のこと、毎日1/3くらいずつ水を換えながら、まだか、まだか、と我が家の水槽に濾過バクテリアが大挙して布陣を構えるのを楽しみにしていたものでした。

最初は、本に書いてあるとおり、1ヶ月くらいじっくり待てばいいんだな・・・などと気楽に考えていたのですが、ここで一つの問題に突き当たりました。

「バクテリアってそもそも目に見えない!?」

そうです。仮にバクテリアがどんどん増えて定着していったといっても、いったい何を以て濾過完成(バクテリア定着完了)と判断するのでしょう?水は、亜硝酸の濃度がどうであろうと、見た目透明なままですし・・・。それにもしこのまま半年、あるいは1年、あるいはそれ以上続けていっても、自分の水槽にバクテリアがいるかどうか、もうひとつ自信が持てませんしね。

そこで私は、思い切って亜硝酸試薬を購入することにしました。試薬にもいろんなメーカーから様々な商品がでていまして、かなり迷ったのですが、ネットなどでいろいろ調べた結果、値段と判定のしやすさのバランスから、NISSOの試薬タイプにしました。1箱40回分で1280円也。

買って帰って早速測定してみました。不安と期待が入り交じり、それはもうドキドキ。飼育水を付属の試験管に入れ、試薬1を数滴投入後、撹拌。そして最後に試薬2をさらに数滴入れ、再び撹拌。

・・・結果、試験管の中のサンプルは、見るも鮮やかな鮮紅色。

・・・ってことは、亜硝酸濃度危険値(!)説明を読むと、「全ての魚にとって非常に危険な状態」である・・・と(この試薬は濃度が高いほど赤く染まり、不検出だと透明になるというタイプのものです)。

あわてて水換え1/2し、再度計測しましたが、それでも変わらず。こりゃ相当たいへんなことだ、と思いました。そもそも立ち上げ後2週間で亜硝酸を分解するバクテリアが定着する訳が無いことは、今ならわかるのですが、当時はシステム自体に問題がある(濾過能力不足?)のかと思って、相当悩んでしまいました。(確かに濾過器らしいものといえば水作エイトのみでしたからね)。

結局のところこのことがきっかけとなって、濾過能力強化もしなけりゃということで、その時点から底面フィルターが追加されることになりました。次の日、仕事帰りに早速NISSOのバイオフィルター30と、底砂として大磯を4kg購入し(当時はまだ36センチ水槽だったので、これくらいあれば十分だったのです)、帰宅後即セットしました。設置する前は、ほんとに底砂だけでだいじょうぶなのかな〜?なんて思ってたものですが、実際設置してみると、分厚い底砂と、そこからにょっきり伸びた吐出口がとっても頼もしく思えました。

それからは、毎日亜硝酸濃度を計測し、1/3水換えする日々。でも毎日試薬は真っ赤に染まります(泣)。いつ計測しても真っ赤だし、そろそろ「こんな小さい水槽ではバクテリアも定着しないのかな?やっぱ無理か〜・・・」なんて弱気なことを考え始めていたのですが、初計測から10日ほど経ったある日、いつも鮮紅色に染まっていた試験管の中の水の色が、気のせいか少し薄くなっているような気がしました。

「ををっ?もしや!」

と思いましたが、はやる心を抑えて、その日はいつもどおり1/3水換え。

次の日、仕事もそこそこに家に飛んで帰り、子供に声かけるよりも先に玄関の水槽の亜硝酸チェック。すると、試験管の中は薄いピンク色。

間違いない!これで確信が持てました。とうとう我が家でもバクテリア(「ニトロバクター+ニトロソモナス)が住み着いたのです。さらに次の日は試験管の中はほぼ透明。

「うれしいよ〜」

喜びのあまりヘラヘラ、ニヤニヤしている私を見る妻と子供の目は、かなり不思議そうでした・・・(汗)

私は、本やインターネットの情報を信じて、「いつかバクテリアが来てくれる筈」と信じて毎日毎日1/3の水換えに勤しんでいたわけですが、最後のほうは不安であきらめかけていました。しかし頑張り抜いて本当に良かったです。今となっては濾過バクテリアなんて日常茶飯のものですが、当時初心者だった私にとって、目に見えないバクテリアの世界のことは、あまりに不明瞭でした。人間というのは、目に見える確かな目標や、実感できる代償が無いと、苦しいことに耐え続けることが難しいものですが、初心者の私にとって水槽の中の目に見えないバクテリアの定着という目標がまさにそれでした。毎日の水換えや水質チェックなどを我慢して行うことの意義さえ見失っていました。

しかしなんとか耐えて、バクテリアが定着した(と思われる)瞬間の嬉しさときたら、口や文字で説明するのも難しく、自分で実際に体験してみた人にしか判らないほどです。自分の目の前のこの小さな水槽の中で、地球レベルの大自然の水系と同じ生物循環サイクルが構築されたってことで、まるで自分が神にでもなったような気持ちになれます。

初心者の人にとって、この濾過完成の瞬間を迎えることができるかどうかが、その後金魚を続けていけるかどうかの大きな分岐点だと思います。濾過バクテリアを無視した飼い方では、水をたびたび換えなければならず、また一生懸命世話している割には、金魚が病気にかかりやすく、たびたび死なせてしまうことになります。しかしながら、濾過バクテリアをきちんと定着させ、その後も維持するようにちょっとした注意を続けていれば、水換えの頻度はグッと減りますし、金魚の体調も安定して維持できます。

今これを読んでいる方が、当時の私と同じような状況にあるなら、是非がんばってくださいと言いたいです。あと何日、何週間かわかりませんが、正しい管理を続けていれば、必ず濾過バクテリアが定着して、水がキレイな透明になる時が訪れるはずです。

また、飼育を初めてある程度経っているのにも係わらず、濾過のことを知りもせず、知ろうともせず、やたらと水換えを繰り返したり、しょっちゅう魚病薬の世話になっている人にも、是非少しの勉強&我慢&頑張りを以てして、この瞬間の爽快感を味わっていただきたいです。濾過バクテリア重視の水槽管理にしてやることで、絶対に水質や金魚の体調も安定しますから。、

なお、是非とも水質検査試薬は購入していただきたいです。金魚ならpHと亜硝酸(NO2)の2種類くらいが計測できればOKです。「たかが金魚で・・・」なんて言う方もおられるかもしれません。私も、試薬を買うときは大げさに感じました。しかし最初測定したときの結果に大きなショックを受け、それ故に、水の状態を正確に認識できて、金魚を少しでも早く危険な状態から回避できましたから、結果的には買って良かったです。試薬なんてマニアの使うものだと思うかもしれませんが、私はそうは思っておらず、初心者の方ほど、試薬を買ってキチンと、水質を測定することをオススメします。自分がやるべきことが判って、管理にメリハリがつきますから。

皆さんが今後濾過バクテリアと良い関係を保ち、金魚の居る楽しい日々を送られることを願いまして、今回の文章の〆とさせていただきます。

(・・・続く)
  
 
語り部(かたりべ)ぷーさん