「病気を考える(前編) 〜薬漬けの治療で見失っているもの〜」
今回は金魚の病気について考えてみたいと思います。病気といっても、症状や病気の治療方法のような内容は詳しい方におゆずりして、ここでは、もうちょっと根っこの部分というか、飼育管理としての病気対策という広い観点で考えていきたいと思います。

さて、これからの時期、朝夕が冷え込むこともあって、白点病等が発生しやすくなります。毎年この時期になると、決まって白点病に悩まされていらっしゃる方も少なくないのではないかと思います。また、今年の夏も、尾ぐされ病にかかって現在治療中という方もたくさんいらっしゃるでしょう(実は私自身がそうだったりします)。白点病はご承知のとおり、白点虫という目に見えないほど小さい寄生虫(繊毛虫)が原因ですし、尾ぐされを始めとする腐れ系の病気は、エロモナス属やカラムナリス属の細菌が原因ということで、病気によってそれぞれ直接の原因と治療方法(治療薬)は異なります。しかし、それをどうやって治療するかという視点ではなく、一歩原点に立ち戻り、何故病気になるのか、病気にならないにはどうすればよいかという考え方をしてみてはいかがでしょうか。そうすれば、病気の種類によらず、そこには共通の何かが見えてくるかもしれません。今回はそんなお話です。

貴方のご近所、お友達等に、金魚を飼っている人は居ますか?それらの皆さんも、貴方と同じように、たびたび病気に悩まされているのでしょうか?よく話を聞いてみると、人によっては今まで病気らしい病気なんてしたことないよ、という方も結構身近にいることに気づくのではないでしょうか。同じように金魚を飼っているハズなのに、全然病気にかからないという方もいれば、一年中のほとんどを病気とともに過ごしていますっていうような人(金魚)もいるでしょう。これは何故なんでしょうか?私は、「病気が出ない水槽」と「病気ばかり出る水槽」というのは、確かにどちらもあるのではないかと思っています。病気のでない水槽をよく観察し、飼育方法を聞いて、それを参考に貴方の飼育方法を見直すことにより、病気治療薬の必要無い日々が訪れるかもしれません。

例えば最も代表的で最も多くの人を悩ませているであろう白点病を例にとって話をさせていただきます。まず、皆さん自分の金魚が白点病と判明したら、どうされますか?あわてて本などでその治療法を確認してみますね。すると「メチレンブルーやグリーンF等の薬浴」を1週間程度行う。また併せて「0.5%程度の塩水浴をすれば効果が増す」というようなことが記されている場合があります。ここでたいていの方(特に飼育を初めて間もない方や、これまであまり飼育について勉強されていない方)は、そのとおりに薬と塩を計量して、水槽に溶かします。そして早期発見であれば、1週間もすれば白点病が治り、着色した水をキレイな水に換えて透明に戻し、ハイめでたしめでたし・・・と。

また、もう少し慎重な方は、水槽の中に白点虫が発生しているのだから、上のやり方では不十分ではないか?と考えるかもしれません。結局白点虫を水槽の中から撲滅しないと根本的な解決にならないのではないか?と思うのです。だから治療は別の水槽に移してから行うとして、その間に本水槽の砂や器具を洗剤等を使って徹底的に洗い、日光にあてて消毒します(水槽リセット)。そして治療用水槽で白点病が治った頃には、本水槽はピカピカになって、気分も新たに飼育の再スタートです。

しかしながら、このような方法で病気治療を行った場合、一度は白点虫や病原菌を撲滅したはずなのですが、何故かまたしばらくすると、病気にかかったりすることが多々ありますね。何故なんでしょう?

ここでちょっと考えてみたいのですが、そもそも白点虫や尾ぐされ病の菌は、薬の使用やリセットで永久的に撲滅できるのでしょうか?リセットしたはずの水槽で再び白点病や尾ぐされ病になるのは何故なのでしょう。一度消したはずの白点虫や細菌が再び自然に湧いてくるのでしょうか?

これは私の考えなのですが、確かにリセット直後は病原虫や菌は水槽に居なくなるかもしれません。でも、白点虫の卵などとても生命力の強いものですから、別の(白点虫のいる)水槽を触った手で扱ったり、何かの器具に付着して紛れ込んだりする可能性はいつもあるわけで、日常生活のあちこちの場面で水を扱う以上、それを完全にシャットアウトするということは、現実的には不可能ではないでしょうか?またカラムナリス菌やエロモナス菌についても、これらはいわゆる常生菌であり、そこらへんの水系、水たまりの中等、どこにでもいる可能性があるので、完全に水槽中を無菌状態にすることも、ちょっと厳しいような気がします(もし完全にシャットアウトしようとするなら、普段から密閉容器で飼育し、器具や周辺などをことある毎に消毒し、水槽をつつく手も毎回完全に殺菌消毒するということが必要になるでしょうが、それはあまりに非現実的です)。

以上のような考え方に基づけば、「白点虫や病原細菌は、普段からある程度は水槽の中に居る」という前提で考えるほうが無理が無いのではないかと思います。そうでなければ、何故春や秋に白点病が発生したり、夏場に細菌感染症が多く発生するかの説明がつきません。春や秋だけ白点虫が、また夏だけ細菌が湧いてくるなんて考えるのはちょっと不自然ですよね。

さて、いよいよ本題に入りたいと思います。同じように病原性の虫や菌が存在している水槽のうちで、病気を繰り返す水槽がある一方で、病気とは全く無縁の水槽があるのはどうしてかということを考えてみたいと思います。

冒頭で書いた、よくある2つのタイプの病気治療の例を考えてみますと、共通したある問題が隠れていることに気づきます。それは何かといいますと、第7話でお話したバクテリアに絡むのです。ご承知のとおり、濾過バクテリアというのは、市販の病気治療薬や、塩、水道水などで少なからずダメージを受けます。というより、水槽リセットなんかすれば、ほぼ全滅ですね。要するに水槽を新規で立ち上げるのと同じことだと。すると水槽の中ではどういうことがおきるでしょうか?・・・

・・・本題に入ったばっかりですが、今回はここで終わりにします。(あまりに長文なので)

続きは次回。
  
 
語り部(かたりべ)ぷーさん