「水作(すいさく)のすすめ 〜真(?)お気楽飼育方法への覚醒〜」
日記等にも書いたが、今年10月の終わりに、かわいがっていたオランダシシガシラが天に召された。欲しくて欲しくてしょうがなくて選び抜いて買ったオランダだったので、突然の死に、たいへんな虚無感を覚えた。

思えば水槽立ち上げした平成15年9月以降から、これまで大きな病気も発生せず比較的順調に経過していたが、実際には、だんだんと大きくなる4匹の金魚に、エサの量は知らず知らずに増え続け、水の汚れも速まり、平成16年の5月に一度、水質悪化が原因と思われる松かさ病を煩ってしまった。このときは、徹底した看病と、とある方からご提供いただいた薬餌の効果もあって、すぐに治ったのだが、それ以後も金魚たちは益々肥大化を続け、エサの量も増える一方の我が家の水槽に、せめてもの対策に、とエーハイムの多孔質濾材を買い込んで上部フィルターにセットしてみたりもした。しかしながら10月に再び発症。こんどは5月のときと違って、症状の進み方が早く、鱗がおかしいな、と気づいた直後には泳ぎがフラフラになってきて、急遽隔離して様子をみたにも関わらず、結局翌日には死んでしまった。お腹がパンパンで、鱗が逆立ち、元の表情がわからなくなるほど目が飛び出してきて、典型的な松かさ病だった。

実はこの事件は、私にとって、大事な金魚を失う喪失感を与えたと同時に、自分の飼育スタイルを見つめ直す大きな契機となった。

毎日の仕事が忙しく、なかなか管理の手間をとれない現実に、平成16年の春からは、とにかく「手間のかからない」水槽を維持することを心がけた。フィルターについては、上部のみ。掃除が面倒だから底砂もアクセサリーも置かない。これで、週一回の1/4〜1/3水替えと、ごく希にガラス面をスポンジで拭き掃除するくらいの管理で済むようになった。平成16年の夏の時点で、エサは1回あたりペットボトルのキャップ1/2杯ちょっとくらいの量を一日2〜3回、さらにそれに加えて乾燥アカムシ等も時折与えていた。休日はこれにさらに回数が加わることもあった。とにかく金魚を大きく立派に育てたい、ということと、金魚がほしがるからつい、ということが理由だった。エサをたくさん与えたら、その分濾材を詰め込んでやれば良いと考えた。この管理方法で、亜硝酸は全く検出されず、水槽は安定していると悦に入っていた。

しかしこれが間違いだった。

今から考えてみると。この管理方法で負担軽減されていたのは、あくまで「飼い主の私だけ」なのだ。金魚たちにとってみればどうだろう?エサをたくさん詰め込まれ、大きくなる自分たちの体を狭い水槽の中で持て余してきていたのではないか?また、確かに亜硝酸濃度という物差しで見るならば水質は汚れていないといえるが、エサの投与に伴う、他の様々な無機物質やゴミ、それに繁殖する雑菌など、そういうものはやはり、エサを多く与えるほど、また金魚が大きく&多くなるほど、当然水槽の中に多く蓄積される。そしてそれは、当然金魚たちにとって、良いことが無いばかりか、病気の発生リスクを高めるという弊害をもたらす。
つまり私は、「自分の管理負担を軽減することばかりに重きを置いて、金魚の負担を軽減することにはあまりに無頓着であった」のだ。

今回の事件により、大きな体のオランダが一匹いなくなることで、確かに喪失感はあったものの、一方で、残った水槽の中の金魚たちが、のびのびとしてきて、表情がでてきたような気がする。泳ぎも以前に比べて明らかになめらかだ。

ちょうどその頃、私はいつも、ある他家の水槽が気になっていた。それは、私の家から職場までの片道30分の自転車通勤途上にある、ある家の玄関先(戸外)に置いてある60センチ水槽だ。そこには、15センチはあろうかという和金が、5〜6匹か、それ以上、いつも元気に泳いでいる。そしてすごいのは、この水槽には、いわゆる「フィルター」というものが設置されていないのだ。私の知る限りでは、この水槽は毎日家主のおじいさんが、ジョロで一杯の水を換えているだけだ。それ以外にはこれといった管理はしていない様子(ガラス面いっぱいにこびりついた青苔が物語っている・・・)。
そしてまた、もうひとつ、行きつけのペット屋で、プラ池に投げ込みフィルターだけで悠々と泳ぐ大きなランチュウ。これも、一般の金魚飼育の常識からすれば、明らかに非力と思われる濾過だ。でもランチュウは何の問題も無く、誰にも買われることなく(笑)一シーズンそのプラ池で問題なく生きていた。

そうやって蘭の死後、私が「これだ!」と閃くのに、時間はかからなかった。

確かに金魚はいくらでもエサを食べ、多量のフンをして水を汚す。だから「フィルターの能力も余裕を見て高性能のフィルターや濾材を使いなさい」「掃除はこまめにしなさい」というのが一般的な金魚飼育のセオリーだ。でも、それは、
「60センチ水槽の中で、適当と思われる4匹程度の金魚に、金魚も人間も(!)満足できる量のエサを与える」ことを前提としている。
自然界のフナなどは、春に孵化して、秋には15センチにも20センチにもなる。それはエサを一日中多量に食べることができる環境にあるから。そしていくら食べてフンを大量にしても、池や川という自然界の大きな水槽&濾過システムの前で、水質が悪化することは無いから、そのようなことになりうるのだ。
しかしながら、横幅60センチの箱庭ならぬ箱池で4匹も5匹も飼われている金魚たちそれぞれのお腹を満たすだけのエサを与えていたらどうなるか・・・。それはすでに自然界の水とは、遙かにかけ離れたものとなるのは明白だ。

飼い主にも、金魚にも優しい水槽を維持するには、金魚の数を減らし、エサを減らしてやることしか無いのだと、私は悟った。

幸か不幸か、蘭が居なくなり、わが家の水槽は、2歳魚3匹、当歳魚1匹という、さほど無理のない尾数となった。そしてエサの量も、ペットボトルのフタに底が見えるか見えないかくらいのわずかな量を1日1〜2回与える程度に、またアカムシを与えた場合は人工エサを減らすか止めるかという方法をとることにした。

それともう一つ、フィルターである。先にも書いたが、多数飼育、多量給餌で発生するアンモニアや亜硝酸を無害な硝酸塩に分解していくには、能力の高いフィルターと、性能の優れた濾材を多量に使用しなければならない。しかしそうやったところで、濾過システムによる窒素の循環系とは別のところで、エサやフン等に起因するゴミ、無機物、不溶物は加速度的に増えるし、それに伴い病原菌が繁殖したりする可能性がある。逆に言えば、そういったゴミの類が問題にならない程度の尾数、給餌量で維持していくなら、たとえ金魚といえども、そんなにバリバリとアンモニアを分解していく必要はなく、すなわち能力の高いフィルターは不要ではないのではないか?

これについては、あまり自信がなかったが、この際と思い、投げ込みフィルターだけでやってみようと決意した。このときの私の頭には当然、先述のペット屋のプラ池が思い浮かんでいた。そして買ってきたのが、投げ込みフィルターの元祖、「水作エイトS」(2個)である。MではなくSであることに留意していただきたい。投げ込みフィルターの問題点は、とにかく水槽内でじゃまになること、また濾材が上部用のウール等と比較して高価であることだ。そこで私はMではなくて、敢えて小型のSを選択した。これなら少しでも水槽内で、金魚に与える圧迫感を軽減できるし、濾材もMに比べてSのほうが3〜4割程度安いからだ。一つはそのまま使用したが、何ぶん水作だけでは心配なこともあったので、もう一つは、濾材を取り払って、活性炭カートリッジと外ケースの間に、詰め込めるだけのサブストラットを一杯に詰め込んで、濾過能力アップを図った、特製の、いわば「水作エイト〜フューチャリング エーハイサブストラット」(→近日中に知恵袋コーナーで紹介予定)とした。

また、少しでも濾過の助けになればということで、五色石は、そのままちょっとだけ引いておくことにした。

とにかくこれで再スタートを切った。すると、水は正直だ。その翌日から、亜硝酸検査紙は真っ赤に染まる状態に。せっかく水や濾材の一部を移行したのに、と一瞬落ち込んだものの、そもそも赤く染まるということは、すでにアンモニア→亜硝酸の濾過は定着しつつあるわけで、そういう意味では、既存のサブストラットを移行した新型水作エイトが効果を発揮しているのかもしれないと思い、安心した。

そらからしばらく、毎日1/3〜1/2程度の水を交換しながら亜硝酸検査薬で水質を検査する日々が続いたが、2週間ちょっと経過した日から、徐々に検査紙の赤色が薄くなり、最後は透明になった。めでたく水作エイトS2基のみで、計4匹の水槽で維持できることとなった。その後、先述の、水作エイト・改は、濾材のサブストラットを取り出して、純正の濾材に戻してみたが、結局亜硝酸はほとんど検出されることは無かった。

こうやって書くと金魚に全然エサやっていなくてかわいそうと思われるかもしれないが、上記の量で、エサを食べきる時間はちゃんと3〜4分の間に収まっていて、明らかにエサが不足というレベルではない。
それから、金魚がエサをほしがるから与えるという人もあるようだが、これは金魚の慣れの部分もあると思う。わが家でもエサを減らした直後は、私が水槽の近くを通るたびに、ちぎれんばかりに尾を振って、バシャバシャ水音をたてて催促していたが、最近では朝以外はさほどおねだりをする場面は見られなくなってきた。

なお、水作だけで濾過していると一つだけ不都合が・・・。これまで上部フィルターのウールに引っかけていたゴミが、どうしても水中に残ってしまう。フンのカスなどは結構水中を漂っている。しかし当の金魚たちは全く気にしていない。水質検査薬の検査結果もとても順調だ。

こうやって、私はお気に入りのオランダの死をきっかけに、
「人にも魚にも優しい飼育スタイル」
というものを真剣に考え、実現し、とりあえず今のところ維持することができている。

今後も水槽の状況は機を見て報告を重ねていこうと思うが、とりあえず今はこれでいけるところまで行ってみようと思っている。


わが家で活躍中の水作エイトS「俺もやるときゃやるよ」ってがんばってるようで好きだ
語り部(かたりべ)ぷーさん