「そしてミドリフグがやってきた 〜新世界・汽水環境へのプロローグ〜
★ミドリフグをあきらめる★

平成17年1月、ふとしたきっかけでミドリフグという魚が存在するのを知った。
というか、実はこのとき初めて知ったのではなく、「ミドリフグ」の名前は知っていたが、それまでまじまじと見たことが無く、存在を意識していなかったという方が正しい。以前はフグというからには、下関で水揚げされる、大型で目つきの悪いフグしか想像しておらず、いくら小さくてもフグはしょせんフグだろう・・・と。

しかし、平成16年も暮れに押し迫ったある時、とあるきっかけで、改めてミドリフグを再認識する機会があった。これが小さくて丸っこい上に、胸びれや背びれや尻びれをいつもピョロピョロ動かして、目をキョロキョロさせる姿が猛烈にかわいらしく、すぐに虜になってしまった。これまで金魚一筋。「熱帯魚なんて表情は無いし、面白くもなんともない。所詮、水草のお供でしょ・・・」くらいだったのだが、このミドリフグは違った。そのしぐさ、表情の豊かさが、あくまで単体でペットとして成立するだけの素質を十分持っていたのだ。
それからHPや本等でいろいろ調べた。調べてみたが、意外に情報が少ない。ミドリフグは、まだ熱帯魚として日本で飼われ始めて歴史が浅いのか、あまりポピュラーではないようだ。他の魚のようにはなかなかHPも本でも見あたらない。数少ない情報源を調べつくし、知れば知るほど、「是非飼ってみたい」という思いも強くなった。
しかし飼いたい思いが強くなると同時に、「飼うには覚悟が必要」ということもわかってきた。どういうことかというと、ミドリフグというのは、汽水環境で育ち海へ戻っていく魚であるということだ。つまり、飼育するには、淡水では無理で、人工海水等を使って最低でも汽水(塩分濃度で概ね1%以上)が必要なのだ。我が家にある金魚水槽に入れることはできないし、濾材も水も一から始めなければならない。それに水換えのたびに塩を垂れ流すなんて、環境破壊だから私の主義になじまない。
また、そもそもいくらでも時間のある昨年までと違って、今の自分はとにかく時間が無い。春〜秋には金魚の飼育もままならず愛魚を一匹しなせてしまったこともある(飼育法法自体に問題があったこともあるが)。そのような状況から、今の金魚水槽と全く違う管理をしなければならない水槽(管理のライン)をもう一つ増やすということは、現実的ではないというのも確かで、結局いろいろ考えた挙げ句、ミドリフグの飼育は一旦はあきらめた。


★アベニー・パッファとの出会い、そして別れ・・・★

さてこの後しばらくして、またまたあるきっかけで、ミドリフグと違って淡水でも飼える、「アベニー・パッファ」という小型のフグの存在を知った。ミドリフグよりもさらに小さくて、ピョロピョロ泳ぐのだ。かわいい。これはマズイ。飼いたくなってくる。しかも淡水だから、金魚の濾材等を流用すれば、立ち上げも楽ではないか・・・。迷いに迷った挙げ句、結局飼うことになってしまったのは、語り部コーナーの別の項でも詳しく触れたところである。アベニー導入のいきさつや導入時のドタバタは、そちらをご覧いただきたい。

しかしながら、このアベニーたちは、これから水槽や我々飼い主にも馴れて・・・といった段階を踏むはずだったのだが、結局、ヒーターの電源を丸1日以上付け忘れ、水温が低下したために、最終的に3匹全てが☆になってしまった。店で買ってきてからほんの2週間程度しか生かすことができなかったので、アベニーたちに申し訳無かった。また趣味としてアクアリウムを始めて1年半も経り、飼育技術を語るHPまで立ち上げているのに、情けなかった。
アベニーの死に際して、子供にはあまりにきまりが悪くて、「サンタさんがフグを欲しいと言ってきたから、あげたんだよ」と、ウソをついてしまった。(でも子供は信じた。「来年はまたプレゼント持ってきてくれるかな〜」などと言ってた。ますます罪悪感・・・)


★ミドリフグ導入への決意★

さて、普通ならこの時点で、もうフグなんて飼うものか!となるのかもしれない。私もそうなるだろうと思っていた。この秋にオランダシシガシラが死んだときは、もう金魚は絶対追加しない。と心から思ったし。
しかしながら今回はちょっと違っていた。
まず、アベニーが居なくなって、17センチのプラケースが空になっているのを見ると、失敗(事故)を思い出して嫌になる。次に、アベニーを☆にしてしまった原因が、うっかりとはいえ、事故によるものだから、自分としては「飼い切れなかった=不完全燃焼」と納得がいかない部分もある。アベニーを飼っていた水槽に新たな世界を構築することで自分の気持ちをリセットしたいという気持もあった。そして何より、アベニー以上にミドリフグを飼いたいと思う自分が居ることに気づいた。死んでしまって気づいても遅いのだが、アベニーではミドリフグの代わりにはなりえなかったのだ。もっと早く気づいていれば、アベニーを飼って殺してしまわずに済んだのに。人間のエゴだ。書けば書くほど罪悪感が沸いてくるのでこれくらいにしておく。

では次に、飼いたい気持は良しとして、実際にミドリフグを飼えるのかどうかという点だ。最初は先述のとおり、別水槽で汽水の管理など無理だと思っていた。しかしながら、アベニーをプラケースで飼育してみて、容量が小さい故に60センチ水槽に比べて水換え等の管理がずっと楽だし、手がかかっていた金魚水槽のほうも、エサを控えることで掃除のペースを抑えることができたので、実際には飼うことはできるだろうと判断した。それに、汽水の濃度は海水よりも低いし、水槽が小さいので、海水の素を垂れ流しても、環境破壊の程度はしれている。
いろいろ自分で理由付けをして、結局、アベニーが☆になってから、1週間足らずで、ミドリフグを飼うことに決めた。家族も別に反対せず。アベニーがサンタにもらわれていったと思いこんでいる息子は、新しいフグが来ることが決まり、またまた喜んでいた(汗)。


★さあ、ミドリフグを迎えに行こう★

ミドリフグを飼うことが決まってから、導入に向けて作業手順を考えなければならない。
まずミドリフグは汽水が必要ということと、水温をヒーターで高くするということで、これまでの金魚水槽のバクテリアがあまりあてにならないと思われたため、この際と、一から立ち上げることとした。プラケースや水作エイト等、飼育器具は当面アベニー用で使っていたものがそのまま移行できるが、絶対足りないものが2つあった。それは人工海水の素とサンゴ砂。それぞれ汽水を作るためと、水を弱アルカリ性に維持するために必要。このことでわかるように、金魚とミドリフグは生活環境的には交わる部分がない。器具はともかく、バクテリアや水ということに関して、全く流用が効かないのだ。別の飼育系を2つ同時に進めていくことになるので、当然多かれ少なかれ忙しくなることは明白だ。

さて、水槽は立ち上げから1週間は水だけ入れて空で濾過器を回せというのがセオリーだが、これには私は半分賛成、半分反対。そもそもバクテリアのエサとなるものがなければバクテリアも沸かないだろう。そこで最初の2、3日は金魚のエサ(バクテリアのエサとして)を軽く一つまみだけ投入して、2,3日だけ空で回すことにした。
とりあえず先に海水の素とサンゴ砂を購入して水槽をセット。エアポンプの電源を入れ、空の水槽をしばらく眺めることに。
待つこと2日。日曜日にペットショップへ。状態の良いのが居たら買って帰ろうと思ってたら、結構いた。みんな多少なりともヒレをかじられているが、これはフグならある程度仕方ないので目をつぶることに。あまり大きさにはこだわらず、元気で警戒心が少なく、表情の良いのを選んだ(私的にはこれが重要)。もちろんお願いした店員は、先日アベニーを取ってもらったバカ店員ではなく、ずっと以前に私が狙ったヤマトヌマエビをいっしょうけんめい捕まえてくれた好感度No1の店員に。やっぱり対応が良い。彼女にショップの汽水の濃度をたずねても、濃度はそのときによってマチマチだというので(笑)まあ概ね彼女自身の汽水の作り方を尋ねたところ、水と海水の素の量から、大体1/4〜1/3海水濃度くらいと思われた。わが家の立ち上げ中水槽(1/4)とほぼ同じと安堵(時折、ほとんど淡水環境で陳列しているショップもあるそうなので・・・。)


★わが家へようこそミドリフグ

今回は生体購入後、寄り道せずに、すぐ帰宅。立ち上げているプラケの水を1/3ほど交換しながら、水温合わせ&水あわせをしていよいよ投入。
一番驚いたのは、同じフグなのに、アベニーと比べて、警戒心が無いというのか好奇心旺盛なのか、すぐに水槽の前面に寄ってきて上下運動してたこと。試しに冷凍アカムシを1匹水面に落とすと、すぐさま食べた。アベニーはずっと水槽の背面をビクビク泳いでいて、1週間経っても警戒してほとんどアカムシ食べなかったので、ミドリフグの人懐っこさに驚いた(フグ自身はそう思ってはおらず、ただ腹が減ってるだけなのかもしれないが)。ミドリフグという種の性質なのか、それともたまたま個体差だったのかはわからないが、彼らが最近、多くの人を引きつけてやまない理由がわかったような気がした。

とりあえずこれにて導入完了。わが家にミドリフグがやってきて、我々と彼の新しい生活がスタートした。

作業を終えて一段落した私は、水槽の前の椅子に腰掛け、今までわが家では見たことも無い珊瑚砂で真っ白な水槽を眺めながら、アベニーの冥福を祈り、雪辱を誓った。そしてミドリフグ水槽も立ち上げたばかりだし、まだまだ大変なのはこれからだ、と自分をいましめたのだった。

  
      「この子(ミドリフグ)は長生きして天寿を全うできますように・・・」



★追記★
平成17年2月12日現在。汽水で水槽を立ち上げて約10日、ミドリフグがわが家にやってきて1週間になるが、昨日あたりから亜硝酸が検出されるようになった。さすがに淡水よりは長くかかったが、海水だとこの比ではなく辛抱しなけりゃならないらしい。とりあえずこれから亜硝酸が検出されなくなるまでが長いだろう。幸い水槽が5リットルしか入らない小型のものだから、毎日1/3水換えしても、手間も海水の素の消費量もしれている。当面エサを控えていかなければならないのは変わりない。
 (H17.2.12)


★追記2★
平成17年2月23日(多分)、立ち上げ中の水槽に発生する亜硝酸の影響で(多分)、この写真の子は急逝してしまいました。長く飼ってやれなかったこと、本当に残念です。飼い主として責任を感じます安らかに眠ってください・・・。天国で楽しい日々を送って欲しいものです。
 (H17.2.26)
  
語り部(かたりべ)ぷーさん