飼育方法 「器具を準備しよう 〜必要なものは何?〜」
普通は金魚すくい等で金魚が家にやってきてからあわてて道具を買いに走ることが多いのですが、できることなら、先にしかるべき準備をしておいてから、ゆっくり金魚を買いに行きたいものです。ここでは、金魚飼育に必要な器具類について解説します。

金魚を飼うには、最低限必要な道具がいくつかあります。ここではそれを書き並べてみました。なお、必要度を独断と偏見で★の数で3段階に分けて見ました。
★(ほとんど必要なし)、★★(有った方が便利)、★★★(絶対必要)


水槽 (★★★)

これは無いと話になりません。大きさやタイプ等については、大まかには次のようになります。

●大きさ
 いろいろな大きさのものが売られていますが、飼いたい金魚の数や、部屋の広さ等を考えて適当なものを選びましょう。将来的に飼い続けるなら、最低限45cm幅のもの。できることなら60cm以上の幅のものが良いでしょう。一応金魚水槽では幅60cm×奥行き30cm×高さ36cmのものが最もポピュラーです。金魚が大きくなっても無理なく飼えますし、水換え等の管理もさほど手間がかかりません。またこのサイズの水槽の流通量が多いので、水槽自体や適合する器具類も比較的安値で買えることもメリットです。参考までに、代表的なサイズの水槽で飼うことのできる金魚の数を書いておきます。ただし、これはあくまで標準的な数と考えてください。あまり手間をかけたくない方は更に減らしたほうが良いでしょうし、逆に飼育に自信のある方は、もう少し増やしてもなんとかなるかもしれません。

水槽の大きさ
(幅×奥行×高さ)
飼える金魚の数の目安
小型
(体長3cm以下)
中型
(体長4〜5cm)
大型
(体長6cm以上)
45cm×30cm×30cm 6〜 7匹 3〜4匹 不可能
60cm×30cm×36cm 10〜12匹 6〜7匹 3〜4匹
90cm×45cm×45cm 15〜18匹 8〜9匹 5〜6匹
(※出典:「金魚〜飼い方・育て方」 西東社)

●材質
 水槽には主にガラス製とアクリル製があます。それぞれ特徴は次の通りです。
 ☆ガラス製
  ・傷が付きにくくく長期間使うことができる
  ・値段が安い(※ただしある程度大きいとアクリルより高くなる)
  ・重い
  ・割れたりする危険がある
  ・加工が難しい
 ☆アクリル製
  ・軽い
  ・加工しやすい
  ・傷がつきやすい
  ・値段が高い

以上のようにガラス製、アクリル製それぞれ一長一短があります。90センチ幅以内の大きさで一般の方が金魚飼育に使用するのでしたら、価格が安くて扱い易いガラス製水槽をオススメします。アクリルは一般的には、120cm幅などの大型水槽や、特殊なサイズの水槽に使用されることが多いようです。


フィルター(濾過器) (★★★)

金魚のフンで汚れていく水槽の水をキレイに保つ(濾過)目的で設置します。主に上部フィルター、底面フィルター、外部フィルター、外掛けフィルター、水中フィルター等があり、それぞれ一長一短があります。詳細は別項(「うんちくあれこれ」の「濾過器を考える」)で。

濾材 (★★★)

上記のフィルターにセットして、ゴミを濾し取ったり、バクテリア(微生物)を定着させてアンモニア等の有害物質を分解します。濾過器によって、ウールやセラミック製のものを使用したりします。基本的には濾過器に標準で添付されており、それを使用すれば一応の働きはします。こちらも詳細は別項(「うんちくあれこれ」の「濾材を考える」)で。

エアポンプ&エアチューブ (★★)

水に酸素を送るために使用します。フィルターの中には一部、エアポンプで起きる水流を利用して濾過するもの(底面フィルターや水中フィルターの一部のもの)もあり、そのようなフィルターを使用する場合には必ず必要となります。

ライト (★★)

無くても飼うことはできますが、金魚の生活リズムを作り、健康にするためにはあったほうが良いでしょう。光量が不足する環境で飼育すると、色が薄くなってきます。また、鑑賞上の意味からもあったほうが金魚がキレイに見えます。光量や設置方法などからいろいろな種類がありますが、60cm水槽の場合、主に水槽の上のガラス蓋の上に据え置いて使用するタイプが一般的です。20W型蛍光灯の本数で1灯式と2灯式が代表的です。(メーカーによっては3灯式というのもあります)。安物のセット水槽に入っているのは大抵1灯式ですが、とりあえず金魚を飼うならこれで十分でしょう。ただ、水草をある程度しっかり入れたい、とか、写真撮影をバシバシやりたい、という向きには、2灯式の方が良いです(お値段は張りますが・・・)。蛍光管は、アクアリウム専用品は値段が高いので、電気屋で普通に売ってる3波長型の蛍光管で十分です(コチラの方が光量は強かったりします)。

ヒーター (★★)

金魚はヒータが無くても熱帯魚のように死んでしまうことはありません(水が10℃を切っても生きています。冬眠しますが。)。しかし冬にヒーターで加温してやると、冬も金魚が泳ぐ姿を楽しむことができます。また、病気の治療などでは水温を上げた方が効果が高い場合が多いですし、水換え用の水の水温調節にも使えるなど、準備しておけば何かと便利です。水槽の大きさ毎の適合タイプの目安は次の表の通りです。

水槽の大きさ
(幅×奥行×高さ)
ヒーターの必要ワット数
標 準 余裕をみて
45cm×30cm×30cm 100W
150W
60cm×30cm×36cm 150W
200W
90cm×45cm×45cm 200〜300W
300W以上

(※)この表は一般的に言われている数値ですが、使用状況によって変わってくると思います。例えば、室内飼いで水温がせいぜい10数℃〜15℃くらいまでしか下がらないところに、18〜20℃くらいまでの保温をする程度でしたら、60センチ幅の水槽でヒーターが100Wしかなくても十分対応できます。実際に私は15℃くらいまで下がる時期に100Wで20℃キープしていますが、何ら問題ありません。まだまだ余力がありそうです(ヒーターが通電していない時間のほうが圧倒的に長いです)。逆にW数が大きいと、水温の上昇が急になりすぎて、使いにくいかもしれません。

(※)例えば200W設置しようとする場合、もしお財布に余裕があるなら、200W1本よりも、100Wを2本設置するほうが、万一の故障の際に温度が下がりきらないので、安全です。

なお、ヒーター購入の際には次の点に注意しましょう。

●温度調節機構の有無
安いものですと26℃固定などというタイプがありますが、これは水温の急激な変化が苦手な金魚には、非常に使いにくいので、できれば温度調節機能が付いたタイプのものをオススメします。大きく分けて、20〜30℃、15〜35℃の範囲で調節できる2タイプがありますが、金魚では20℃以下でも温度設定をすることが多いと考えられるので、後者の15〜35℃調節可能なタイプのほうがオススメです。

●サーモスタット一体型or分離型
サーモスタットとヒーターが一体になっていて取り外せないもの(一体型)と、別々になっててヒーターが取り外せるもの(分離型)があります。サーモスタットよりもヒーターのほうがよく故障しますので、分離型のほうが、ヒーターが故障したときにヒーターだけ交換できるので安上がりです。ただし、一体型は温度センサーがヒーターに内蔵されているのですが、分離型では温度ヒーターとセンサーが別になっていますので、配線がごちゃごちゃしてしまうことと、センサーだけが水槽外に出てしまって、ヒーターがつきっぱなしになってしまい、魚が煮えるという事故が起きる心配もありますので注意が必要です。

●空焚き防止機能
ヒーターは空気中で電源が入ったままになると、瞬く間に温度が上昇し、最悪の場合火災になってしまいます。阪神大震災の際の火災のうち、相当な件数が、水槽に設置されていたヒーターによるものだとも言われています。そこで最近では、ヒーターが水槽外に飛び出して温度がある程度以上上昇すると、温度ヒューズが作動して通電をストップする機能が付いているものが増えてきています。価格の差はわずかですから、迷わずこの機能付きのものを購入したほうが良いでしょう。だいじょうぶと思っていても、どういう原因でヒーターが水槽から出てしまうかわかりません。地震、子供や猫等のイタズラ、水槽の水漏れ・・・等。備えあれば憂いなしです。

底砂 (★★)

水槽の底に敷きます。無くても飼育できますが、水槽の底がガラスの場合、反射によって金魚が落ち着かずストレスになる場合がありますし、フンが水中に舞ってたびたび掃除しなければならなくなりますので、ある程度は敷くことをオススメします。金魚に使用する代表的なものには、大磯砂、五色石等があります。好みで選んで結構です。次のようなものは金魚には使用しないほうが無難でしょう。
●熱帯魚用等の白っぽい砂
 金魚が落ち着かずストレスを感じてしまう恐れがあります。また、フンが目立ちます。
●目が細かすぎる砂
 フンが入り込むと、掃除が大変です
●水質(pH)に影響を与える砂
 pHを高く維持するものは海水用ですので、金魚には使用しません。大磯砂でも明らかに貝が多いものは、pHが高くなりますので、避けた方が無難でしょう。貝が少々混ざっているくらいなら問題無いです。
●川砂
 それ自体は良い底砂になりえますが、なにぶん寄生虫の卵等の混入が心配です。よく川から採ってきた石等をそのまま入れたら、謎の生物が湧いたなんて話もよく聞きます。

 ◆参 考◆ 
  [敷きたい砂の厚さ(cm)から必要となる砂の量(kg)を算出する計算式
必要な砂の量は、
1リットル当たりの砂の重量)×(砂で埋めたい容積)です。詳しくは次のように計算します。

まずペットボトル等に使用する砂を詰め、重量が(X)kgであったとします。また、ペットボトルの容量を(Y)リットル、水槽内に砂を敷きたい厚さを(Z)cmとします。
また、水槽の幅を(A)cm、奥行きを(Bcm)とします

 必要となる砂の量(kg)= (X)÷(Y)×(A)×(B)×(Z)÷1000
 となります。例えば、普通の60センチ水槽(幅60cm、奥行き30cm)に3cmの砂を敷き詰めたいとします、2リットルペットボトルに詰めた砂の量が4kgだったとすると、
 必要な砂の量(kg)=4÷2×60×30×3÷1000=10.8
 となり、必要な砂の量は約11kgであることがわかります。


※底砂必要量算出シート(MS Excelファイル)はこちらで・・・


水温計 (★★★)
少々値が張っても目盛りが大きくて見やすい物を購入したほうがあとあと後悔しません。水槽の数+1本所持しておけば、水換え用の水の温度も測れて便利です。

中和剤(ハイポ等) (★★)
水道水に含まれる塩素(カルキ)を速やかに除去するために投入します。水をバケツ等に1〜2日汲み置きしておけば抜けますが、急ぎ水をつくる場合など、有ると何かと重宝します。
 
水質検査薬(試薬・試験紙) (★)
pH用と亜硝酸(NO2)用くらいは揃えておきたいです。あると何かと安心できますし、水換えの目安もわかります(水が汚れるとpHが下がってくる)アンモニア用と硝酸塩用は、精度もイマイチのようですし、特に必要無いと思います。

天然塩 (★★)
新しく買ってきた金魚のトリートメントや、調子が悪い金魚の様子見等に使用します。精製塩(NaCl)ではなくて、様々なミネラル分も含まれた粗塩、天然塩のほうが効果が高いらしいです。食事に使ってもおいしいので、1kgくらい常備しておくと良いでしょう。

魚病薬 (★★)
病気が発生してからでも構わないとは思いますが、時に急性の症状を示す場合もあるので、よくかかる白点病用の薬くらいは常備しておくと良いでしょう。メチレンブルーやグリーンFリキッド、ニューグリーンF等ですね。液状タイプは変質しやすく、粉状タイブは計量しにくいことがデメリットと覚えておくと良いでしょう。細菌性病や寄生虫用のお薬は、症状が確認できてからでもいいと思います

バケツ (★★★)
換水用の水を入れて温度合わせやカルキ抜きしたり、薬浴・トリートメントに使用するなど、無くては話になりません。薬浴時の塩、魚病薬を使用するとき10リットル単位ですと計量等が便利ですので、10リットルより少し多めの12〜13リットル入りくらいのものが使い易いと思います。水槽の大きさや数等で必要量は違ってくると思います。換水用の水を溜めておくプラケース等が準備できない場合、4〜5つくらいあったほうが便利だと思います。プラケースを別に用意できるなら、2つあれば十分だと思います。

ひしゃく (★★)
ちょっと水を足したり、金魚を傷つけずに救ったりするのに使用できます。あると便利ですね。

プロホース (★★)
水槽から水を抜くとき、底砂を吸い込まずに掃除ができるので便利です。換水用の手動ポンプとしても使用できます。

灯油ポンプ (★)
水換えのとき楽ができます。当然ですが、灯油で使用していたものは×。新品を買ってきましょう。最近ですと電池別で2〜300円くらいと安くなりました。

クリップ扇風機 (★)
夏場の水槽冷却用に使用します。夏場たびたび30℃を越すようなところで飼っている場合はあったほうが良いでしょう。専用のものでなくても、ホームセンター等で売っている安物で十分です。

バックスクリーン (★)
水槽を置いた部屋の壁が白っぽい色ですと金魚が落ち着きませんから、背面にスクリーンを張るのも有効です。また、黒や青等のスクリーンを張れば、金魚が引き立ちます。

アクセサリー、流木等、水草等 (★)
好みに応じて入れてください、ただし、次の点には注意してください。
●アクセサリー類には、素材によって、水質(pH等)に影響を及ぼすものがあります。
●アクセサリー、流木等に尖った部分があると、金魚が当たってケガをすることがあります。
●水草は虫や貝の卵が付着していることがあります。水槽に入れる前には、良く観察して取り除いたり、薄い塩水でトリートメントしてから入れた方が良いでしょう。
●水草の一部は、金魚が食べたり引き抜いたりするおそれがあります、特に金魚が大きい場合には可能性が高くなります。入れる場合は覚悟しましょう(^^;)

以上、道具選びは金魚飼育の楽しみの一つです。とりあえずは安物で最低限揃えておいて、あとからいろいろ悩んで買い換えていくのも楽しいものでしょう。


 
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