フグを買うことに決めたら、まずは水槽のセット等、器具の準備をします。間違ってもフグと道具をいっしょに買ってこないこと。最低でもフグを買う2〜3日くらい前、できれば一週間以上前に槽をセットし、汽水を満たし、慣らし運転(?)をしたほうが良いでしょう。詳細は最後の「参考」で。 ★水槽セットの手順 では、具体的に水槽設置の手順を順番に述べてみます。 @器具を洗う 買ってきたばかりの水槽やヒーター、フィルター等は、工場のラインでゴミや汚れが付いている可能性があるので、柔らかいスポンジ等を使って水で軽く洗います、洗剤は使わなくていいです。というか、逆に洗剤の成分がフグに悪い影響を及ぼす可能性があるので、絶対に洗剤は使わないようにしてください。 A珊瑚砂を洗う バケツにサンゴ砂を入れ、水道水を入れてお米を研ぐような要領で、少しだけ力を込めて洗います。最初は水が濁るので、濁った水を捨てては新たな水を入れてまたお米を研ぐように洗う・・・これをあまり水が濁らなくなるまで何回か繰り返します。完全に濁りが無くなるまで洗うことはこの段階では無理なので、見た目濁りが気にならなくなる程度まで洗ったらOKです。 B水槽にサンゴ砂をセットする。 底面フィルターを使わないなら、小型水槽なら1〜2cm、底面フィルターを使うなら5センチくらいの厚さになるように敷きます。キレイに平らにならしてもかまいませんし、適当に凹凸を付けたり、奥を手前よりも厚くしたり、いろいろ工夫しておもしろみのあるすいそうにするのも手です。 ※なお、底面フィルターを使用する場合には、まず底面フィルターをセットしてから底砂を敷きます。 C汽水を作る 一般にミドリフグは海水の1/2〜1/4の塩分濃度の環境の中で買うのが普通です。 海水の主成分は塩分だからと食用の塩を使いたいところですが、それはダメです。というのも、食用塩には海水に含まれる微量元素がほとんど入っておらず、また精製度が高いからか、フグの表皮にダメージを与えることになるからだそうです。ここは少々高くつきますが、ペット屋等に売っている人工海水の素を使用してください。 器具編にも書きましたが、海水魚飼育では「インスタントオーシャン」という製品が、安くて比較的入手しやすく害も少ないので人気が高いようですが、汽水の場合はそこまでこだわらずとも、使い勝手や値段で決めれば良いと思います。 ◆汽水の作り方 厳密にやろうと思えばもっと方法がありますが、もともと汽水環境は塩分濃度が河川の流量等で変わりやすく、そのような環境に居るミドリフグは濃度的には適応幅が広いと考えられますので、さほど厳密には考えなくて良いと思います。海水魚飼育で使う比重計等も、「単に汽水でミドリフグを飼う」ことだけが目的なら必要無いです。 では、ここでは私が行っている方法を紹介します。 まず、人工海水の素には、製品の内容量と、水何リットル用かということが書いてあります。例えば私が使っている製品では、25リットル用で900gです(容量が重量で書いていない場合はできるだけ包装を取り除いた状態で計量してみてください(この際ビニール袋を開封すると、海水の素が劣化〜正確には潮解?〜するので開封せずに)。 25リットルに900gということは、海水では1リットルには製品36gを溶かすことになります。そして、海水に比べて1/4の濃度の汽水を作ろうと思えば、36gの1/4である9gを1リットルあたりに溶かせば良いことになります。ちなみに海水の1/2濃度の汽水を作ろうと思えば、9gの2倍(36gの1/2)である18gを1リットル当たりに溶かせば良いことになります。 (例)海水25リットルを作るのに900g必要なら、汽水(1/4濃度)25リットルを作るのに必要な人工海水の素は、900×(1/4)=225gということになります。 なお、どこの店でミドリフグを買うか決まっている場合は、この時点でショップのミドリフグ水槽の汽水濃度を聞いておき、それに合わせておきましょう。そしてミドリフグが自宅の水槽で落ち着いてきてから、徐々に目標の濃度に移行していけばOKです。 (ちょっとお勉強) 海水や汽水の塩分濃度を表す手段として「比重」というものがあります。これは、水に塩分を多く溶かせば溶かすほど、同じ体積の真水と比べて重量が重くなるのですが、これを利用して塩分濃度を相対的に表すものです。ちなみに、水を1ccは常温で1gですが、海水は1ccで1.022〜1.023gくらいあります。この1.022等という数字を、「真水に比べた重量」という意味で「比重」と呼んでいます。なお、比重は水中の塩分濃度によって直線的に変化しますから、海水の1/2の濃度なら約1.011〜1.012くらい、また1/4の濃度なら、1.006くらいとなります。ミドリフグは幼魚時代には汽水に住みますが、成長するにつれて海にいきますので、飼育開始当初は1.006くらいの比重(海水の1/4濃度)として、徐々に濃度を上げていき、1年後くらいには1.012(海水の1/2)くらいかそれ以上にしてやると調子が良いでしょう。いつまでも汽水が薄いままだと長生きできないかもしれません。 D水を1/3程度入れる 後に器具をセットしやすいように、全体の1/3かそれ以下の汽水を入れます。 E器具類をセットする この時点で、水中(または投げ込み)フィルターやヒーター、飾り物などを設置してください。もちろん電器製品はコンセントを挿さないようにしましょう。特にヒーターは水槽外にでてしまうと異常加熱して火災の原因となりうるので、キスゴムなどでしっかりと固定しましょう。 F残りの汽水を目標水位まで満たす。 (必要ならフタをし、ライト等水槽外に置くものをセットする) G各電気器具を付けてみて、きちんと動作するか確認。 以上でミドリフグを迎える準備は万端です。おっとしかし・・・ ここまでOKなら、とりあえずヒーターとフィルター(モーター・エアポンプ等)のスイッチだけONにして、残りの電気器具は電源をオフにし、そのままフグを買うまで(できれば1週間くらい)水をまわしましょう。これでいくらかはアンモニアを分解するバクテリアの定着が望めるでしょう。 (参考) 私は金魚の飼育方法の項では、「空の水槽で濾過器を回してもバクテリアもなかなか十分定着しないだろうし、どうせ濾過が完成するまでは3週間程度は要するのだから、水槽の空回しなどせずとも良い」というような書き方をしました。ところがミドリフグの場合は、ちょっと事情が違います。まあミドリフグに限ったことではないのですが、次の2点から、今回の場合は、できれば1週間くらいは水槽を空回しすることをオススメします。 ◆アルカリ性の水の中では、アンモニアは毒性が強くなる ミドリフグは弱酸性の水を好むため、普通は底砂か濾材にサンゴ砂を使用して、水を弱弱アルカリ性にします。しかしながら、アンモニアは、酸性〜中性(pHで7以下)では毒性がさほど高くない(といっても魚には十分悪影響がありますが・・・)のですが、これが水がアルカリ性になると、毒性がケタ違いに強いアンモニウムイオンになるため、魚への悪影響が心配です。同じアンモニア濃度でも、金魚は平気で、ミドリフグでは死んでしまうということがありうるのです。 ◆塩分を含む水の中では、濾過バクテリアが定着しにくい 普通は水中の塩分が増えれば増えるほど、濾過バクテリアが増殖(定着)しにくくなります。汽水も海水ほどではありませんが塩分を含んでいるので、炭水よりはバクテリアの定着に時間を要します。この上、魚を最初から入れて、アンモニアや亜硝酸の濃度が高くならないようにこまめに水換えをしていると、バクテリアもいくらかは捨ててしまうので、さらにバクテリアの定着を遅くしてしまいます。ところが魚が入っていなければ、いくらアンモニアや亜硝酸の濃度が高くなっても問題ありませんし、だから水換えでバクテリアを捨てることもないので、バクテリアの定着スピードを最大限に活かすことができます。 以上のように、、少しでも早くバクテリアを定着させるため、また最低でもアンモニアの分解(濾過)機能だけでもいくらかはアップしておきたいために、水槽の空回しを推奨しているのです。 さて、水槽のセッティングが終わったら、次はいよいよミドリフグを迎え入れます。 |