濾過器(フィルター)というのは、金魚を長く飼育していこうとするなら必ず必要なものです。それ故に、各メーカーからいろいろな種類のものが出回っていて、特に初心者の方にはどれを選んだらいいのか、とてもわかりにくいですよね。そこで、ここでは、数多くの濾過器をタイプ別に分類して、特徴なり使用上の注意点なりをまとめてみました。 ★上部フィルター
昔は上面フィルターと呼んでいた時代もあるそうです。安価な水槽セットなどには必ずといっていいほどついていますね。読んで字のごとく、水槽の上に据え置いて使うものです。諸外国ではさほどメジャーな濾過器ではないのですが、日本では、土地、床面積が狭く、水槽関係で占める床面積をできるだけ少なくしたいという住宅事情があるのか、最も多く使われている濾過器です。それ故に各社からいろいろな商品が出ています。原理としては、ポンプで水槽から水をくみ上げ、それを濾過槽にシャワー状に落とします。そこから濾過槽を通った水は濾材で物理濾過(ゴミの除去)、生物濾過(アンモニア等の分解)されてキレイになった後、排水口から重力に従って水槽に落ちていくというものです。 濾材は基本的に何でもOK。標準では荒目と細目のウールマットを重ねて使うようになっていますが、濾過能力アップを図りたい場合には、セラミック多孔質濾材等を入れてもOKです。ただ1点注意すべきは、どんな濾材を入れるにしろ、一番上に最低1枚はウールマット等を敷くこと。そうすれば大きめのゴミがウールにひっかかる(物理濾過)ので、ウールだけ定期的に洗浄or交換すれば、中にある濾材はかなり長期間ノーメンテで維持できます。ウール敷かないと、中の濾材がめちゃくちゃ汚れるから、しょっちゅう取りだして掃除しなけりゃなりません。あと、もちろん目的によっては活性炭も入れたりできますよ。濾過槽容積はほどほどだけど、メンテナンス面等、総合的に判断して金魚飼育では最もオススメ。 [長所] ◆水が循環する間にたくさん空気に触れるので酸素をたくさんとりこめる。 (エアレーション効果) ◆濾材容量に対する濾過能力はたいへん優れている →溶存酸素が豊富で濾過バクテリアが活発に活動する ◆水槽セットで購入すると安価 ★濾過器自体のメンテナンス性については、設置したままウールマット交換等ができるので、かなり良い。 [短所] ◆水槽の上側がふさがるので、水槽内の作業がやりにくい ◆水槽の上が半分ふさがってしまうので、水槽の後ろのほうが暗くなる。 (水草の生育等に影響) ◆水が落ちる音がチョロチョロジャバジャバとうるさい ◆あまり水槽の水位を低くできない。 (低くしすぎるとポンプが故障の恐れ。また水が落ちる音もうるさくなる) ◆吸水口、排水口(エルボ)の位置がある程度決まってしまう。 ◆泳ぎが下手な種類の金魚には、水流が強すぎる場合がある。 ◆本体価格の割に換えポンプの値段が高い (3000円程度。本体より高いことも(汗)) 以上、水槽内での作業性の悪さや水槽後部の暗さ等は金魚飼育の場合さほど問題になりません。音が気にならなければ、最高の濾過器といえます。ということで、金魚水槽でのオススメ度は◎。 (参考事項) 上部フィルターには、濾過の方法で「ウエット」「ドライ」そして「ウエット&ドライ」という大きく3つのタイプがあります。少しだけ説明しておきます。 「ウェット」は文字通り濾過槽に入った水が濾過槽に貯まり、濾材が水に浸かりっぱなしになるもので、市販されているほとんどの上部フィルターはこのタイプです。構造が簡単で、濾過能力もそれなりにあります。 「ドライ」は、濾過槽に水が貯まらず、濾材をぬらした水がそのまま水槽に落ちていくものです。水をよりたくさんの空気に触れさせ、好気性のバクテリアをしっかり働かせようという目的のものです。濾過能力は高いと考えられますが、「ウエット」タイプとは異なった専用の濾材が必要になります。また、発売されている機種も少ないです。 「ウエット&ドライ」は、ポンプでくみ上げられた水が濾過槽に貯まっていき、あるところまで貯まると今度は一気に水槽内に水を戻すというものです。サイフォンの原理です。これを繰り返すことにより、濾材が水に浸かったり空中にでたりを繰り返すことになります。濾過層容積を多くとれますし、濾過槽内の濾材が乾湿を繰り返すことにより、好気性バクテリアが活発に活動するなど、好気濾過に限って言えば濾過能力という点については最強といえます。レイシーの上部フィルターや、GEXのサイフォンフィルターなどがこのタイプになります。たいていは高価で高級志向であるといえるでしょう。なお、一部のメーカーからは、濾過槽が上下2槽で、上から水をシャワー状に上槽の濾材に当て、落ちた水が、下槽の濾過槽に貯まるというタイプのものがありますが、これは狭義での「ウエット&ドライ」濾過ではなく、「ウエット」+「ドライ」濾過器ということができます。私は濾過の原理という点からは、ここで述べている「ウエット&ドライ」とは別物と考えています。 ★底面フィルター
文字通り、水槽の底に敷いて使います。底面にスノコ状の板を敷いて、その上に大磯等の砂を標準より厚め(5〜6cmくらい)に敷きます。スノコ状の板の角からは1本のパイプが出ていて、そこからエアリフトまたは水中ポンプで水を吸い上げます。この水の流れに引っ張られるように、底砂を通ってスノコの下に入り込んだ水が、パイプの部分に集まり、そこから水面の方へ排出されるという流れになります。一般的な底面フィルターは、それ自体には水を循環させる機能がありません。エアポンプを使用するか(エアリフト式)、または水中ポンプによって強制循環することによって水の流れを作ります。底砂が濾材となり、水が底砂を通る間に、底砂に住み着いている濾過バクテリアが生物濾過を行います。また、ゴミを底砂の中に取り込む物理濾過の働きもある程度は行います。 [長所] ◆エアリフト式は構造も簡単で安価。 (ただし実際に稼働させるには、エアポンプが必要) ◆濾過能力がたいへん高い。 (ただし底砂の目の大きさや、敷く厚さによる) ◆濾材が底砂で安価 ◆エアレーション効果もある程度は期待できる。 ◆水槽の上部が解放されるので、水槽内の管理がしやすい。 また、水槽上面からの鑑賞にも適している。(ランチュウ、土佐金等) ◆音は比較的静か(エアポンプの音が僅か。水流音はほとんど無し) ◆比較的水位が低くても使用できる。 ◆水流をあまり生じないので、泳ぎが下手な金魚にも向いている。 [短所] ◆全ての汚れが底砂の中に貯まるので、底砂汚れるのが早い。 →頻繁な掃除(メ ンテナンス)が必要となる。 ◆濾材(底砂)が水槽最下部にあり、汚れ程度の確認が難しい。 ◆メンテナンスのたびに水槽に手を入れて行わなければならず、とても面倒 以上、効果の面では最強といえますが、メンテナンス性の悪さから、特にフンの量が多く水が汚れやすい金魚飼育では使いにくいかもしれません。管理が気にならない、掃除が好きだという人には効果&コストという点で最強の濾過器です。ということで、オススメ度は、45センチ幅以下の小型水槽で○、60センチ幅以上の大型水槽で△です。 ★外部フィルター
パワーフィルターとも呼ばれます。濾材の入った筒状のケース(濾過層)を水槽外に設置し、吸水&排水の2本のパイプを繋いで、ケースに内蔵されたモーターを使用して水を循環させるものです。水が濾過層を通る間に濾過されます。金魚水槽ではあまり使われませんが、水草水槽では主流のタイプです。濾材ケースを大きくしさえすれば理論上いくらでも濾材が入りますので、濾過能力も優れているといえます。(水中の酸素濃度の問題で反論もあるようですが・・・)。エーハイム社が老舗で実績がありますが、最近ではNISSOやコトブキ工芸、日本動物薬品工業など各社から発売されています。 [長所] ◆濾材の量が多く、濾過能力が高い。 (ただし、濾過層内が酸欠になりやすく、濾材容積の割には過能力は低い) ◆水槽の上がふさがらないので、見た目スッキリ。水槽内の手入れも楽。 蛍光灯を2基設置できたりする (水草水槽でメリット。金魚飼育ではあまり関係無し) ◆空気に触れないので、水中の二酸化炭素が逃げない (これも水草でのメリット。金魚では関係無し) ◆作動音が静か。水流音がわずかにするのみ ◆いろいろな濾材を使用して工夫できる。 ◆オプションや交換パーツが揃っており、長く使える。 ◆水槽内でのパイプの採り回し面で、ある程度自由度が高い ◆水位がある程度低くてもOK ◆水槽の見た目がスッキリする ◆メンテナンスについては、それなりにラク。 ただしメンテナンス方法に多少のコツが必要。 [短所] ◆値段が高い(補修パーツが多く長期的には安い) ◆設置スペースが別途必要になる ◆水槽よりも低い面に設置する必要がある ◆水が空気に触れないので酸素がとけ込まない。 →金魚飼育では別途エアレーションしてやる必要がある。 →空気を混ぜるオプション器具(ディフューザー)もある。 ◆濾材の状態(目詰まり、汚れ等)を外から確認できない。 以上、どちらかというと水草水槽向けのための濾過器という感があります。金魚のようにフン等のゴミが多く水が汚れやすい魚では、メンテナンスが難しくなるのであまり使いません。ということで、金魚水槽でのオススメ度は○〜△(メンテナンスが面倒な人は避けましょう) (補足) 「うんちく 濾過のお話」でも書きましたが、濾過バクテリアによる生物濾過を行うためには、水の中の酸素を消費します。よって密閉式で酸素がとけ込みにくい外部フィルターでは、濾材をいっぱい詰め込んでも、ケースの中は酸欠状態で、実は濾過はさほど行われていないのではないか?という意見もあります。真偽のほどは定かではありませんが、確かに上部や底面等と比べて、濾材容積のわりには濾過能力が低いかも・・・と私も思います。ただ、大型水槽や、水の汚れやすい肉食魚飼育等で実績があるのも確かです。まあ、外部フィルターはフィルターの王様的なところがあって、カスタマイズもいろいろできるので、使っている人の自己満足の側面も大きいような気もしますが。 (^^; ということで、ぷーさんのオススメ度は○ ★外掛けフィルター
安価&お手軽感から40センチ以下の小型の水槽でよく使われているタイプです。先述の上部フィルターを超小型化して、水槽のフチに引っかけたような構造です。小さいのでさほど濾材も入りません。というか、各社とも濾材は活性炭入りの交換式にしており、他のフィルターのようにじっくり濾過バクテリアを育て上げて生物濾過を・・・というものではなく、活性炭での吸着濾過を積極的に行って、時期がきたら濾材のパックだけを新品に交換、ポイっと捨てるという、他のフィルターとはちょっと根本的な考え方が異なるタイプです。その気軽さから、ものぐさな人や、手が汚れるのを嫌う若い女性にはそれなりに人気があるとの話もあります。 [長所] ◆小型で取り扱いがしやすい ◆安価 ◆音が静か(これはメーカーやロットによっては全く逆の意見の人もいます) ◆濾材を標準のものからセラミック製等に変更し、生物濾過強化できる [短所] ◆濾過能力はあまり期待できない (というか、標準の濾材では根本的な濾過方法が異なる) ◆小型水槽には水流が強すぎる場合がある ◆水槽部分以外に設置スペースが幾分必要になる (水槽の横か後ろ) ◆定期的な濾材パック(専用品)の交換を行うため、維持費が比較的高い 以上、金魚水槽でのオススメ度は、小型水槽に限って○。残りは△。 ★水中フィルター(スポンジフィルター、投げ込みフィルター)
一般的によく知られているのは、テトラ社から発売されている「スポンジフィルター」と、水作の「水作エイト」に代表される投げ込みフィルターです。たいていはエアポンプを利用して水を循環させる「エアリフト式」ですが、フィルター自体に水中モーターが内蔵されていて、水を循環させるタイプもあります(こちらはちょっと高価)。濾過能力は使用している濾材によります。一般的にスポンジフィルターは濾過能力が比較的高く、単独で使用されるほか、目の大きなゴミを通さない性質を利用して、外部フィルターの吸水パイプに繋げてプレフィルターとして使用したりします。これに対して、投げ込みフィルターは、使用している濾材のタイプによって性能や価格が大きく異なります。水作エイト等のウール、スポンジを主体としたものは、濾過能力自体は低いですが、安価で手軽なので、小型水槽のメインフィルターや、大型水槽でもサブフィルターとして設置されることが多いです。一方、クリオンのシステムフィルターは、濾材はパワーハウスのセラミック濾材を使用していて、相当な濾過能力が期待できますが、価格は高価です。長所、短所はスポンジフィルターと投げ込みフィルター(さらにウール濾材タイプとセラミック濾材タイプ)で分けて書きます。 ●スポンジフィルター [長所] ◆構造が簡単で値段が安い ◆濾過能力が比較的高い ◆外部フィルター等のプレフィルターとして使用できる ◆稚魚を吸い込まない [短所] ◆基本的には、別途エアポンプが必要 ●投げ込みフィルター(ウール濾材タイプ) [長所] ◆構造が簡単で値段が安い ◆稚魚を吸い込みにくい(吸い込むこともある) [短所] ◆濾過能力が低い(濾材のタイプ、容量等による) ◆基本的には、別途エアポンプが必要 ●投げ込みフィルター(セラミック濾材タイプ) [長所] ◆濾過能力が高い ◆稚魚を吸い込みにくい(吸い込むこともある) [短所] ◆普通は、別途エアポンプが必要 ◆高価である なお、いずれのタイプにも共通した短所として次のようなものがあります。 ◆物理濾過能力が低く濾材が目づまりしやすいので、頻繁に掃除する必要がある ◆水槽内に置くので見た目が悪くなる ◆水中モーター使用のタイプは、夏場に水温上昇の原因となる 以上のとおりです。中には高価なものもありますが、基本的には能力そこそこで安く買えるみたいなスタンスの商品が多いです。稚魚水槽にはスポンジフィルターというのが定石のような部分がありますし、その他、大型水槽でもサブフィルターとして活用できたりと、いろいろ活躍の場面も多いです。自分の飼育スタイルにあったものを一つくらい持って置いても良いでしょう。 ・・・と、以上、濾過器を種類別に解説してみました。ただ留意していただきたいのは、ここで挙げた特徴は一般的な話であって、各社から機能面、外観面で特徴を持たせた商品が数多く発売されていますので、いろいろ比べてみて、皆さんの使用目的や飼育環境に応じたものを購入していただければと思います。 |