アダムスミスの国富論
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アダム・スミスの「国富論(こくふろん)」とは、1776年、彼が53歳の時に書かれ本です。「諸国民の富」などと訳されることもありますね。
この国富論には何が書かれているのか?簡単にいってしまえば経済のお話です。
ですが、経済のお話といっても「どうやったらお金儲けができるか!」といった内容ではありませんよ。どうやったら、みんなが豊かになるのだろうか?といった内容を論じた本です。
では、この「国富論」について、すこし詳しく学んでいきしょう。
先ほどお話しように「国富論」には、どうやったら皆が豊かな暮らしをすることができるのか?ということをアダム・スミスは研究しました。そして彼は、こういったことを言っています。
「経済は、勝手気ままにやらせておけばうまくいく!」
おお、なんだよ。普通のことじゃねーかよ。って怒らないでね。本当は、もっと理論的に分析し説明しているのですがわかりやすいように最初に結論だけを述べさせてもらいました。
経済は、政府が口を出さずに自由にやらせておいた方がいいという考え、これを資本主義っていいます。アダム・スミスのことを「近代経済学の父」なんて呼び方をすることもあるけど、アダム・スミスの「国富論」は、資本主義社会の構造を理論的に分析したはじめての本だったんです。
「見えざる手」って聞いたことありますか?アダムスミスの有名な言葉なんですが、市場っていうのは需要と供給でなりたってますよね。欲しい人がいっぱいいて商品が少なければ価格が上がる。逆に商品ばかりがいっぱいで欲しい人が少なければ価格は下がる。
こういった具合に市場経済では、皆が己の利益ばかりを追求するような行動をとっていようとも、まるで「見えざる手」によって導かれるように市場は調整されうまくいくんだ!と語っています。
さぁ、では、もうちょっと詳しくアダム・スミスの唱えた「国富論」について書いていきますよ。
輸出だけじゃない!輸入だって国を豊かにする!(重商主義批判)
高価なものの代名詞に金や銀といった貴金属がありますね。当時は、これをため込むことこそが富であるといった考えがありました。いろいろな物を輸出して変わりに金や銀をもらえば国は潤う。逆に輸入をすれば、支払いで金や銀が外国に出て行ってしまうから輸入より輸出の方が国は儲かるんだ!ということです。
どんどん輸出して貴金属をため込もうぜ!そして、なるべくため込んだ貴金属は外国に出て行かないように輸入は控えようね。それで国が潤うのだ!といった考えですね。これを重商主義っていいます。
しかし、アダム・スミスは、これを批判しました。
金や銀をため込むことだけが国にとっての「富」とはいえない。それよりも国内で余っている商品と国で不足している商品を交換することのほうが国民の生活は豊かになるし、貿易をすることによって市場を大きくすれば生産性が向上し本当の意味での富が国内で増加するといっています。
当時、金や銀が=富と考える人が多かった時代に「そんなものため込んでも必要以上にため込めばいずれ出て行ってしまうよ。確かに輸出も国に富をもたらすけれども、輸入で生活出需品を手に入れることも市場拡大や国民の生活の向上につながり国に富をもたらすんだ!」と、考えたわけです。
分業によって生産量が大幅に増加する
分業っていうのは、みんなで分担して生産することですね。たとえば、パソコン作るのにネジ一本から自分で作ってたら時間がいくらあっても足りません。ですから、ネジを作る会社。ハードディスクを作る会社。CPUを作る会社からメーカーが部品としてそれらを買い。ハードディスクを取り付ける人。ネジで部品をとめる人と分担して組み立てていくわけです。
もちろんアダム・スミスの時代以前から分業によって生産が行われてきました。分業の方がなんとな〜く効率がいいことは皆わかっていたんですね。
しかし、アダム・スミスは、この分業は生産性を大幅に増加させることができるということを理論的に分析し論じます。
なぜ、分業の方が生産性は上がるのか?
●一人ひとりが単純な作業をづ付ければ、技能が向上し生産性を上げることができる。
●作業から次の作業に移る際に必要な時間を短縮することができる。(パソコン作るのに基盤取り付け終わったから次にハンダで配線取り付けようなんてことになったら、ハンダゴテが温まるまで待ってなきゃなりません。さらに出来上がって梱包となれば、あれ?ダンボールどこいった?セロテープどこいった?なんてことになりますね。この時間が短縮できます。)
●作業をするにあたって便利な機器が発明される。(アルバイトなどやったことある方なら誰しも納得できると思いますが、単純作業を続けていると、もっと効率よくできないかなぁ?って必ず考えます。そして、不意にひらめいちゃったりするんです。そうだ!こんな機器があれば効率あがるのに!ってね。)
つまり、分業をすることによって技術の向上が起こり、作業の無駄な時間を節約でき、便利な機器も発明されるので労働性を高めることができるとアダム・スミスは分析しました。
これら分業もアダム・スミスは利己心によってなりたっているといっています。つまり、自分が儲かるから自分の利益になるからやっているんですね。マイクロソフトだってウインドウズを作れば儲かるから作っている訳ですし、インテルだって儲かるからCPUの開発を続けているんです。
でも、それでいいんだとアダム・スミスはいっています。そうした分業で経済が動いており、結果として経済がうまく回っているということです。
このようにアダム・スミスは皆が豊かになるにはどうすればいいのだろう?ということを理論的に考え、経済を分析し本にまとめました。
自由競争をさせることにより、経済は効率化していき結果としてうまくいく。政府はできる限り、経済活動に口を挟まぬ方がいいというのがアダム・スミスの考えです。
んん?しかし、今の日本では結構、政府が経済に口を出しているような???
そうなんです。たしかに経済を自由にさせておけば、市場はある程度うまくいきます。しかし、問題もあるんですね。ここからは、アダム・スミスの理論ではありませんよ。自由経済の危険性のお話です。
まずは格差社会になりやすいといったデメリットがあります。力あるもののところに富が集中してしまいやすくなるんです。さらに「市場の独占」という企業も生まれてきます。小さな会社を吸収しどんどん大きくなってその分野では、ひとつの企業しかないといった状態になる可能性があるんですね。もう、こうなれば価格もサービスもその企業のやりたい放題です。こうならないように今の日本では法律で規制をかけていますね。
このようにアダム・スミスの「国富論」にも欠点がありました。そして、その欠点を指摘し新しい経済理論を打ち立てたのが「資本論」のカール・マルクスです。
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