二葉亭四迷(浮雲)
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二葉亭四迷(ふたばていしめい)の「浮雲」は1887年から1889年にかけて発表された作品です。
この浮雲は坪内逍遥(つぼうちしょうよう)の日本近代小説のあり方を説いた理論書「小説神髄」(文学とは人間の内面の追及であり娯楽としての文学観を否定した)や同じく坪内の「当世書生気質」(小説神髄に書かれた理論の具体化)に対抗して書かれました。
しかし、当初は坪内逍遥の本名である坪内雄蔵の名で発表したため、報酬の半分は坪内に渡っていったといわれています。
後に「予が半生の懺悔」の中で四迷は、お金ほしさに坪内の名を借りて出版してしまった。そんな自分を卑下し、「くたばって”しめぇ”」とののしったことが二葉亭”四迷”の名前の由来だと語っています。
さて、この浮雲ですが、言文一致体という試みが初めてなされています。
話し言葉に一致させた文体ということです。これは当時は革命的なことでした。
「〜だ」と「だ」調で書かれているのが二葉亭四迷の浮雲の特徴です。
「アア、貴嬢は清浄なものだ潔白なものだ・・・」なんて感じです。(浮雲より)
他にも言文一致体では、明治21年に発表された山田美妙(やまだびみょう)「夏木立」の「です」調。
「左様でございます。」
明治29年、尾崎紅葉の「多情多恨」で書かれた「である」調。
「知られては一大事なのである。」
なんかが有名です。
では、この二葉亭四迷の浮雲、いったいどういった内容なのか?
まぁ、文才のない素人があらすじを書いてしまうと実にそっけない内容になってしまうのですが・・・。
主人公は内海文三という男。内向的でプライドが高いといった性格です。その友人は本田昇という男。文三は役所で働いていたのですが、なぜか免職になってしまう。一方の本田昇は出世していくんです。本田が文三が復職できるよう上司に頼んでみようか?といっても文三はプライドが高くてうなずけない。
そんな中、文三が恋心を抱いていた従妹のお勢と本田がいつしかいい感じになってゆく・・・。悶々と思い悩む文三・・・。自分勝手な想像を働かせていく中、しかし、何もできない・・・。さて、文三、本田、お勢の三角関係はいかに・・・!といった内容です。電子書籍なら、おそらく無料、高くても200円もしないと思うのでこの先はご自身で読んでみてください。
この浮雲は第三篇で一応、終わりとなっていますが続編を思わせるメモが見つかっており未完で終わっているのではないか?ともいわれています。
浮雲を書いてからおよそ20年間、二葉亭四迷はペンを置いていますので本気で続編を書こうとしていたのかどうかは微妙ですね。ちなみに20年後、文学復帰を果たした四迷は「其面影(そのおもかげ)」「平凡」を書き45歳という若さで亡くなっています。
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