平成13年度夏学期試験問題



* 科目名: 認知神経科学
* 教官名: 酒井邦嘉
* 7月19日(木) 4時限
* 問題用紙: 2枚
* 解答用紙: マークシート片面1枚, B4用紙両面1枚
* ノートおよび教科書等の持込みは不可

両方の答案用紙に、学生証番号と氏名を記入すること





第1問


解答にはマークシートを使用する。学生証番号 (アルファベットを含めて) を忘れずにマークせよ。解答のマークは、(a)〜(e)の問題番号に対応した1〜50の欄に記入すること。各欄につき2つ以上マークした場合は無効になる。0と1のマークの位置を間違えたり、記入欄がずれたりすることのないよう注意すること。
記入には必ず鉛筆を使用する。ペンを使用した場合は、読みとりができずに無効となる。


(a) 次の状態に最も近い用語を下のリストから選んで、その用語の番号を1つだけマークせよ。

1. カフェテリアで、ケーキがたくさん並んでいるのが見えた。
2. モンブランの中に1つだけショートケーキが混ざっているのに気づいた。
3. 次の瞬間、そのショートケーキに手が伸びていた。
4. カフェテリアの「トレイ」という看板を「トイレ」と読んでしまった。
5. 認知神経科学の試験の準備に忙しくて、他の試験まで手が回らなかった。
6. ボトムアップの意味を思い出そうと試みたが、どうしてもだめだった。
7. 自分はこの試験問題を解こうとしている、ということがわかっている。
8. 結婚式のスピーチを紙に書いて、一字一句覚えようと努力した。
9. ブラインドタッチは苦手なので、キーボードの文字を見ながらタイプした。
10. 目を閉じて、自分の故郷の風景を思い浮かべてみた。

[1] ボトムアップ [2] トップダウン [3] ボトルネック
[4] フィードバック [5] ポップアウト


(b) 長期増強の性質に関する次の記述に最も関係の深い用語を下のリストから選んで、その用語の番号を1つだけマークせよ。なお、シナプス前終末から興奮性のトランスミッターが放出されるとき、後細胞の樹上突起でカルシウムイオンが流入することが、長期増強に必要だと考えられている。

11. ヘップの法則と等価な性質である。
12. 1つの細胞が複数のシナプスから同時に刺激を受けて活動電位を出すとき、入力のあったすべてのシナプスで変化が生ずる。
13. 神経線維を1本だけ刺激しても変化は起こらなかったが、数本の神経線維をまとめて刺激したら長期増強が起こった。
14. 刺激を全く加えていないシナプスでは、長期増強が起こらなかった。
15. 後細胞の樹状突起において、流入するカルシウムイオンの量が重要である。
16. 後細胞の樹状突起において、流入したカルシウムイオンは拡散しうる。
17. 後細胞の樹状突起において、シナプス部位に限局した変化が生じる。
18. 長期記憶の素過程と考えられる性質である。

[1] 入力特異性 [2] 連合性 [3] 協同性


(c) 次の記述が正しいならば1をマークし、誤りならば0をマークせよ。

19. 神経に関する病気は、そのほとんどが難病である。
20. 脳のはたらきは、心の一部であると考えられる。
21. ロボットに感情を持たせられれば、感情のメカニズムが理解できる。
22. 人工視力は、日本で最初に実用化された技術である。
23. H.M.という患者は、順向性健忘を示したことで有名である。
24. 「おばあさん細胞説」は、記憶の符号化のもっとも有力な説である。
25. 色の恒常性は、サルでみられず人間のみにみられる不思議な現象である。
26. 大人の大脳皮質でも、ニューロンが増殖することが確かめられている。


(d) 次の記述は、脳の主にどの部位の機能に対応しているか。前頭葉なら1、頭頂葉なら2、側頭葉なら3、後頭葉なら4、小脳なら5を1つだけマークせよ。

27. 視床から直接入力を受ける視覚情報の処理。
28. 視床から直接入力を受ける聴覚情報の処理。
29. 視床から直接入力を受ける体性感覚情報の処理。
30. 視床へ直接出力を送る運動情報の処理。
31. 物体認知の中枢。
32. 空間認知の中枢。
33. 色覚の中枢。
34. サルの脳で顔ニューロンが見つかっている。
35. 物体認知と空間認知の統合。
36. 視覚図形の記憶の貯蔵庫。
37. 運動の技能の記憶の貯蔵庫。
38. 損傷によって、半側空間失認が起こる。
39. 損傷によって、発話が困難になる。
40. 長期抑圧が初めて報告された。


(e) 以下の文章の空欄にもっともよくあてはまる用語を下のリストから選んで、その用語の番号を1つだけマークせよ。なお、同じ用語を2回以上用いてもよい。

感覚野では、よく似た ( 41 ) をもつニューロンが、ばらばらに散らばっているのではなくて、大脳皮質の表面に垂直な方向に伸びた、柱状の領域に集まっているのが一般的である。その隣では、少しだけ ( 42 ) が違うニューロンが集まっていて、全体として規則正しい機能的な構造をつくっている。このような構造のことを、( 43 ) という。
視覚にかかわる視覚野と連合野は、マカカ属のサルの場合で、32の ( 44 ) に分けられる。この分けかたは、構造と機能についての知見を総合して、決められたものである。それぞれの ( 45 ) では、視野の各部分が、大脳皮質上の地図として再現されていて、これを ( 46 ) という。また、これらは ( 47 ) を成していて、一次視覚野、二次視覚野、の順に ( 48 ) が高くなって、符号化による( 49 ) の処理が進む。視野のいろいろな場所に光刺激を出したとき、一つのニューロンの反応に影響をあたえる視野の範囲を、そのニューロンの ( 50 ) という。その大きさは、高次の視覚野へ進むにつれて、大きくなる。これは、上位のニューロンが、たくさんの下位のニューロンから情報を受けとって、視野の場所についての情報を ( 51 ) するためである。視覚前野には、一次視覚野よりも複雑な視覚刺激に対して、( 52 ) を示すニューロン群がある。たとえば、顔や手のような、まとまった特徴を最適な刺激とするニューロンがある。

[1] 特徴分析 [2] 領野 [3] 階層 [4] 反応選択性 [5] 受容野
[6] 統合 [7] 焦点的注意 [8] 網膜部位再現 [9] 記憶制御装置
[0] 機能的コラム





第2問

解答にはB4用紙の表面のみを使用すること。


(a) 盲点の範囲を図示せよ。まず、+を解答用紙に書き、この+が左目の正面にくるようにして20cm程度の距離から左目だけで見たときに、盲点となる範囲を記せ。
次に、同じ+を右目の正面にくるようにして右目だけで見たときに、盲点となる範囲を記すこと。それぞれの範囲がどちらの目に対応するかを明記せよ。

(b) 上の結果に基づいて、両目を上から見たときの図 (右目を右側とする) を書き、これにそれぞれの目の中心窩と視神経の位置を書き加えよ。

(c) 視神経は、目の中心窩の位置と一致しないことが知られている。もし一致したとすると、どのような問題が生じうるかを議論せよ。

(d) 盲点があっても、ふつうその存在を意識することがないのはなぜか。

(e) (d)の理由を確かめるためのテストを2種類図示しながら、それぞれがどのように見えるかを説明せよ。





第3問

解答にはB4用紙の裏面のみを使用すること。


(a) ニューロンが脳の機能単位であるという「ニューロン説」は、どのようにして実証されたかを説明せよ。

(b) 長期増強のメカニズムを説明するときに、逆行性メッセンジャーの存在が必要となる理由を説明せよ。

(c) 色覚に関するニュートンの説は、どのような点に問題があったために修正される必要があったのかを説明せよ。





第4問

解答にはB4用紙の裏面のみを使用すること。


(a) 講義内容、講義の進め方、テキスト、試験などについて、自由に意見や感想を述べよ。

(b) 講義で扱った範囲で、自分が最も感心を持ったテーマを1つ挙げ、それについて考えたことを述べよ。