教育心理学について(1)


ピグマリオン実験
  これは単純に言ってしまうと、教師がいかに自分勝手なものかっていう実験なんだよね
結果から言えば教師が生徒の能力に対して抱く期待が生徒の学習能力に影響する、ということ。
Rosenthalの実験方法は、まず新学期の初めに、小学校の各学年3学級ずつで、潜在的な知的能力を予測するテスト」を実施する(しかし、実際はこのテストでそんなことは分からない。あくまでそういう名目になっているだけ。)そして、クラスの20%の生徒(ランダムに抽出、各学級4〜5人程度)を「今後1年間で成績の伸びが予測される生徒達である」と新しい担任教師に名前を告げておいた。
そして、約8ヵ月後の年度の終わりに、同じ種類の知能テストを実施したところ、実験群の生徒(名前を告げられた生徒)と統制群の生徒(名前を告げられていない生徒)を比較すると、実験群の生徒に成績の向上が見られ、また、教師からの性格・行動評定も好意的であるという傾向が見られた。しかも、その傾向は低学年の生徒や女子のほうが顕著であった。この現象は、期待の自己形成として、ギリシャ神話に出てくる主人公の名にちなみピグマリオン効果と呼ばれている。

では、どうしてこのような現象が起こるのであろう。Brophyは次のような方法で研究をしている。対象は第1学年の4学級の教師と生徒達である。まず、教師に自分の担任するクラスの生徒を、主観的判断でよいので、高い学力を上げると予想される順に順位づけするよう求める。そして各学級から、順位づけされた上位の男女3名ずつを高期待群、同じく下位の男女3名ずつを低期待群として抽出する(抽出=ピックアップと思ってください)。そして、これらの生徒と担任教師の授業中の行動観察が行われた。その分析によると、高期待群の生徒は低期待群の生徒と比べて、公的な回答機会や挙手の回数が多い。正しい解答が多く、誤った回答が少ない、賞賛されることが多く、叱責されることが少ないなどの特徴が認められた。ただし、これらの差異は、2つの群間の生徒の行動の違いによるとの解釈も可能であり、期待の高低によって、教師が生徒の扱い方を変えていることの証明にはならない。そこで、Brophyは下図のような測度を用いて検討した。
測度 低期待群 高期待群
正答が賞賛された割合 5.88 12.08
誤答が叱責された割合 18.77 6.46
誤答に対して、質問が繰り返されたり、言い換えられたり、ヒントが与えられた割合 11.52 27.04
読み方の困難性に対し、質問が繰り返されたり、言い換えられたり、ヒントが与えられた割合 38.37 67.05
回答(正答でも誤答でも)に対し、なんらフィードバックが与えられなかった割合 14.75 3.33
    (図の中の数字が大きいほど、割合(%)が高いことを表している)
常識的に考えると、低期待群の正答数は少ないので、1回ごとの正答は教師にとって重要であり、賞賛が得られやすい事が予測される。同様に1回ごとの誤答はもともと多い誤答数からして、それほど叱責に結びつかないことが予測される。ところが、結果は逆であり、賞賛をさほど必要としない生徒達に、教師はより激励的(よく褒めるということ)で支持的であるのに対し、賞賛をもっとも必要とする生徒達には冷たく批判的である。さらに、高期待群の生徒が誤答したり、回答が困難なときには、言い換えたり、手がかりを与えて、熱心に回答を引き出そうとするが、低期待群の生徒の場合には、すぐに正答を与えたり、他の生徒を指名してしまう傾向がある。

つまり、@教師は自分が期待した生徒に対しては他の生徒よりも働きかけの時間を多く持つA期待を持った生徒には、自分の期待に沿うよう扱うので、生徒もその期待に応えようと努力する、ということが分かる。要は、前もってある生徒はもっと成績があがるかも(あくまでカモですよ!)という情報が与えられるだけで、教師というのはすべての生徒を平等に扱う事ができなくなってしまう可能性があるのだ。なんだかすごい変な感じがしませんか?教師って案外いいかげんなんですね(^_^;)分かってもらえたでしょうか?
おっと、誤解を招くかもしれないので付け加えますが、すべての教師がこのようだと言っているわけではないですよ。