『このカードは、アナタのために・・・。』


(嫌だと言っている間に、バレンタインデーの宝探しイベント当日を迎えてしまった ・・・。)


バレンタインのイベントが行なわれる2月14日の早朝、祥子は、古い温室の前にい た。

いつもなら、こんな早くに学校には来ないが、今日は違う。

何故なら、今日のバレンタインイベントの宝探しに使う、祥子が書いた赤いメッセー ジカードを隠す為に、早く学校にやってきたのであった。


(このカード・・・誰が見つけるのかしら・・・。)


鞄に入ったカードを思い出しながら、祥子は思った。

この鞄に入っているカードを、今日のイベントで見つけた生徒と、デートをしないと いけない・・・。

その為か、他の知らない誰かとデートをする事に抵抗がある祥子は、古い温室に隠す 予定であったカードを隠さないで、このまま教室に行こうかと考えた。

でも、それはルール違反・・・。そんな事をしてはいけないと、祥子は自分に言い聞 かせると、古い温室の出入り口の扉を開き、中へと入った。

中に入った祥子は、一度周りを見渡し、誰もいないことを確認する。

そして、真っ直ぐと前に進むと、ある場所で足を止めた。


(ここに隠すのよね・・・。)


数日前に、新聞部の部長と打ち合わせをしておいた、地植えのロサキネンシスの前に 立った祥子は、その場にしゃがみ込むと、スコップを片手に土を掘り返す。


(こんな事するの、幼稚園以来だ・・・。)


土いじりした記憶なの、余り無い祥子は、そんな事を思いながら土を掘る。

そして、十数センチ掘った時点で、鞄に入っていたビニールに入ったカードを取り出 した。


(後は、これを中に入れるだけ・・・。)


カードを、掘った穴の中に入れ、スコップで穴に中に土を戻そうとしたが何故か、そ の手が止まった・・・。


(この隠したカード・・・誰に渡るのだろうか・・・?もし、誰って指定が出来るの なら・・・、願わくは・・・祐巳の手で見つけて欲しい・・・。)


昨日、きつく言って泣かしてしまった祐巳の事を、ずっと引きずっていた祥子は、償 いと共に、願いを込めて、カードの入った穴に土を戻した。

そして、これで良しと祥子は立ち上がると、ロサキネンシスの前で、両手を合わせ目 を瞑った。


(祐巳が見つけますように・・・。)


もう一度、願いを込めると、祥子は目を開けて、温室の出入り口に向かって歩き出し ながら、一度うつむいて呟いた。


「祐巳・・・、アナタに見つけてもらいたい・・・。何故なら、あなたの為に作った カードだから・・・。」


そして、祥子は顔を上げるとニコリと笑って、古い温室を後にした・・・。



了 ----------------------------------------------------------------------------

てことでウルティモ・HさんのSSでする。
バレンタイン企画の話はアニメの時もよくできてて個人的に結構好きな話なのでSSでもみれて幸せですw
祥子さまの心情がとてもよく書かれていてステキなSSでする♪しかしこの後美冬さんの魔の手が(笑
てことでSSどうもでした〜m(__)m