世紀末リーダー外伝たけし!

ジャンプ・スーパー・アニメツアー’98上映作品 30分
(1999年新年1号〜新年6号全員サービスビデオ・※非売品)



スタッフ

原作:島袋光年(「世紀末リーダー外伝たけし!島袋光年短編集」集英社刊
監督・絵コンテ・脚本:大地丙太郎
演出:三泥無成
アニメーションキャラクターデザイン・作画監督:音地正行
美術監督:佐藤勝
音響監督:田中一也
撮影監督佐藤均
制作プロデユーサー:渡辺欽哉/宮下研史
プロデユーサー:大徳哲雄(樹想社)
アニメーション制作:AIC
製作:集英社/週刊少年ジャンプ

キャスト

たけし:長島雄一
みつる:小西寛子
あんどれ:大友龍三郎
かんどれ:梁田清之
キムモー:高木渉
ナナ:こおろぎさとみ
たけし父:井上和彦
キムモ-父:松山鷹志
かおり先生:寺田はるひ
ヒロ:岩坪理江
晶子:鈴木薫
ナレーション:ショッカーO野

主題歌「たけし!」
歌:麻生かほ里/作詞:大地丙太郎/作曲・編曲:ダブルオーツ




◆レビュー&解説

およそ30分の作品の中に、3っつの物語が収められています。
ひとつは、同級生のみつるが上級生にいじめられていた事を知り
たけしがその上級生のクラスに乗り込んでぶちのめす、というもの。
ふたつ目は、仲間に裏切られ事業に失敗し荒れた父親に殴られて育ち
人を信じなくなったキムモーの話。
キムモ-は友達が橋から落ちそうになったことを知らせ助けを求めるが、
以前から他人を信じず嘘を付いてだましていた為、友人から信じてもらえない。
しかしたけしだけはキムモ-を信じる、というもの。
最後は、何故かたけしに惚れている女の子ナナが、
バレンタインを前に転校することになってしまうという話で、
この三つ目が、かなりいいです。(てか個人的にツボ)
ナナの家は遊び人の父親が失踪し、兄弟6人を母親が養っているという貧乏な家庭、
母親がバザーで買ってきたセーターをお気に入りだとたけしに見せるが、
そこにそのセーターのもとの持ち主の女の子が通りかかり
「私の捨てたセーターだ!」と指差す。
たけしと別れる辛さ、自分の境遇などに耐え切れず泣き出してしまうナナにたけしは
「世の中にはもっとつらいことがある、強くなれ、負けるな!」
と力強く、やさしく励ます。
このラストはけっこう泣かせます。
ちなみにキャラデザの音地正行氏は「だあ!だあ!だあ!」や「ミルモでポン!」でキャラデザを務めた方で
ナナのデザインも、思いっきりそっち系の少女漫画っぽい感じになっています。
(CVのこおろぎさとみさんも個人的に好きなのでさらにポイント高し)
その性だけではないのですが、私はこれを見てすぐに
大地監督の代表作「こどものおもちゃ」を思い出してしまいました。
基本はギャグだけれど、否応ないヘヴィな現実に直面するこども達に手を差し伸べ
エールを送るというスタンスが垣間見られ、
「こどちゃ」に通底するものがあり、大地節が炸裂しているといえます。

ただでさえイベント用に制作された作品な上に、原作者が事件を起こしてしまい、
もはや日の目を見ることを望むのは難しいかもしれない本作ですが
大地丙太郎監督作品として一見の価値はあるのではないかと思います。