アニメを作っている「スタッフ」でアニメ楽しもう、というのが当サイトのコンセプトのひとつであります。「スタッフでアニメを楽しむ」とは、どういうことか具体的にわからない、そんな人の為に私が体得した「アニメスタッフ鑑賞術」を伝授しようというのがこのページです。

といっても何か難しい技術が必要とか、鋭い感性が必要とかそんなことは全くありません。
必要なのはアニメに対する「愛」だけです!

STEP 1

アニメのスタッフといっても、様々な役職がありますが、とりあえず作品の質を大きく支配する重要な役職である「監督」「脚本家」「演出(絵コンテ)」「作画監督」を知ることから始めましょう。

まず自分が、一番おもしろいと思っている作品の監督の名前を思い出し、過去にその監督がどんな作品を監督したか調べて見よう。いい作品を多く作っている監督は、その才能や実力が確かな監督であると自然に考えられるのではないかと思います。その監督が作った他の作品も、ひょっとすると気に入るかもしれません。もし面白ければその監督は、あなたの嗜好に即した作品を作る監督であり能力もある監督といえます。
これを繰り返せすうちに監督の持っている個性や、作家性というものが次第に見えてくるのではないかと思います。また、お気に入りの監督や信頼の持てる監督が出来てくるのではないでしょうか。
しかし、個性や作家性に優れた監督はむしろ稀です。監督の能力以外の、企画や脚本、予算など様々な要因で、毎回必ずしも、自分の嗜好に沿った作品を作るとは限りません。

監督同様に好きな作品に参加しているスタッフを覚え、他にどんな作品に参加しているか注意してみよう。

STEP 2

TVシリーズのエンディングのタイトルクレジットを毎週チェックしよう。特に脚本家、絵コンテ、演出、作画監督の名前を見るようにしよう。覚えておく必要はありませんが、で、とある週の話が面白かったり、出来が良かったと感じたら、特に注意しておこう。
これを繰り返すうちに、同じ人の名前を何度も目にするようになります。それが特に面白かった回を担当したスタッフだったならば、その人には能力があると見ていいでしょう。その名前は、忘れずに覚えておこう。

また完結したTVシリーズ作品の各話スタッフのリストを見てどの回が良かったか比較検討してみるとよりはっきりとスタッフによる差が見えてきます。

STEP 3
STEP2でマークしたスタッフが他にどんな作品に参加しているか、監督同様、注意を払い見ていきましょう。
お気に入りや、信頼のおけるスタッフを認識できるようになれば、次は最終段階。今後制作される新作のスタッフ構成を見てみよう。監督は?脚本家は?作画は?もし過去に見てきた作品で、これは面白いと思った作品のスッタフが複数参加していればこれは、その作品への期待度も上がります。
STEP 4
無論、アニメは監督、脚本家、作画監督だけで決まるわけではありません。原画、美術、音楽、など他の役職、そしてそれらを抱える制作会社に関する知識も身に付けることができれば、なおよいでしょう。方法は基本的に同じです。
おまけ
ある程度、知識がたまった後、過去の作品を振り返って見直したとき、現在最前線で活躍している監督やアニメーターが、意外なところで絵コンテや原画の仕事をしていることを発見でき、それだけでも楽しめます。まさに温故知新で、そのスタッフの個性や原点を理解する手助けともなります。


どうでしょうか。実に簡単なことでしょう。

アニメを観てそのスタッフの名前をチェックする。覚えたお気に入りのスタッフの参加した作品を見る。

これの繰り返しです。これを続けていれば、スタッフの個性や作画や演出のクセなんかも見えてくるようになり、ひとかどの薀蓄を垂れられるようになります。(例「今週の「だあ!だあ!だあ!」は桜井テイスト全開だね」)
また、これまで、個々にばらばらだった作品がスタッフというキーワードによって、全て関連性を持ち、アニメ全体をより高い位置から俯瞰して楽しむことができるものと思います。

例えば、とある漫画をものすごく好きになったとします。その漫画と同じ作家の作る作品なら、作品の質や傾向は、ある程度同じであり、一度好きになった作家の作品なら安心して手にすることができる。これは、誰しもがごく自然にそれを受け入れることのではないでしょうか。さらに一歩進んで、作品単体を楽しむのではなく、個々の作品のなかに見られる共通性、作家の持つ個性を考察してみたり、あるいは次回作にどんな作品を作るのか、その動向を気にしたり、と作家を含めて楽しむという行為も意外と当たり前に、無意識のうちに行っているのではないでしょうか?

作品には必ず作者がいて、その作者は、ひとつだけではなく過去、そして未来において、幾つもの作品をつくっている。
これは、アニメにおいても、同じです。
ただ、漫画と決定的に違うのは、漫画が最終的に一人の人間によって生み出されているのに対し、アニメは、数多くの人間の手と思惑によって生み出されているということです。
で、あるがゆえに漫画のように仮に同じ監督や、脚本家、制作会社が作っていても、作品の質や傾向が一致することの方が稀です。
漫画が一人の作家という単純な一元一次方程式ならば、アニメは、監督、脚本家、キャラデザイナー、作画監督、美術監督、音楽、声優、制作会社、予算、スポンサーその他諸々を要素として持つ多元高次方程式といえるでしょう。
それ故に、アニメの作り手自体を楽しむ、という行為は、一般的には、というより漫画のように無意識的には行われていないように思えます。

おもしろい作品にであったとき、その作品が何故おもしろいのか。その答えをキャラクターやストーリー、世界設定などに求めることももちろん可能でしょう。しかし、そのキャラや物語を生み出したスタッフ達にその解答を求めることに、私は無関心ではいられないのです。

監督、脚本家、作画監督が過去にどんな作品に関わっていたか?スッタフの能力、制作会社、スタジオのカラーや実績はどうか?それらが作品にどの程度影響を及ぼしているのかを、推察する。さらに将来的にそのスタッフが関わる作品に関心をもって見る。それがアニメをスタッフで楽しむ醍醐味であると私は考えます。

更なる高みへ

スタッフでアニメを楽しむ。それは、例えば、「宮崎駿監督や庵野秀明監督の次回作がどうなるか期待する。」あるいは「押井作品のテーマ性について考察する」ということもありだと思います。しかし、宮崎や押井、庵野といった監督は、その評価や価値は、もう、ほとんど決定されてしまっているといえます。既にヒット作も持ち、知名度もある監督の作品は、面白くて当たり前、そいうった監督の作品を追いかけても、私には実り多いこととは思いません。

それよりもむしろ、若いスタッフの中から、次世代の宮崎駿、押井守を、いまだ無名の宝石の原石を探し出すことこそ、本当に意味のある、面白いことなのではないか?と思うのです。
才能のあるスタッフを自分の目で見出し、その人の参加する作品を追いかけ、その成長を見守る。
それこそが、スタッフでアニメを楽しむ究極の醍醐味であると私は考えるのです。

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