過去ログよりマイマイ関連記事抜粋

▼2009/11/27

□「マイマイ新子と千年の魔法」感想
http://www.mai-mai.jp/index.html

見てきました。
結論から先に言いますが、見終わった後の満足感というか「幸福感」が非常に高い、不思議で素敵な映画でした。

なので全力で感想を書くよ!

まだ見にいくかどうか迷っている人は、早く行った方がいいです。
自分は友人と二人で行ったのですが、完全に貸切でした。
下手するとすぐ上映終わっちゃうかも・・・

でもそんな人の入り具合に反して、作品としてはとてもよかった。
というか、私個人の好きな要素がいっぱい詰まっていたので、余計に好評なのかもしれませんが。

実際のとこ自分もこの映画を見に行く前は、もう少し堅苦しい地味な映画という印象だったのですが、そんなことはなかった。
(まあ地味なのは地味なんですが)
片渕監督の前の作品である「アリーテ姫」もいい映画だったんだけど、「思いつめた感」がちょっと「重い」んだけど本作は、程よく肩の力が抜けた作品になっている。

あともうひとつ勘違いしていたことといえば、「子供向け」の内容だと思って見に行ったら全然そんなことはなく、おそらく自分よりも、高年齢層のシニアに響く映画なんじゃないのかなと思いました。


では、この映画のどこが良かったかをポイントを二つあげておきたいと思います。

ひとつには、子供たちの世界を瑞々しく描いているところ。
空想好きの田舎娘・新子と都会から転校してきたお嬢様な貴伊子。
このふたりが仲良くなって、田舎を舞台に遊びまわる、というのがこの作品のひとつの核ではないかと思います。
判りやすく型にはめて言えば「赤毛のアン」のアンとダイアナ。
多分この映画が自分の中で異常に好評なのは、この新子と貴伊子の自然なかわいさ、子供らしさの描写によるところが大きいのではないかと思います。
新子と貴伊子だけでなくそれを取り巻く男の子たちも、とてもらしくて魅力的です。
片渕監督といえば自分の中では「名犬ラッシー」なんだけど、名犬ラッシーで感じた、子供の子供らしい描写の上手さは今回もすごく良かった、やっぱ子供描かせると上手いなあ。
でもこの映画が通り一辺倒なジュブナイルかというとそうでもない。

で、もうひとつは「千年の魔法」と繋がる新子の空想が作り出すイメージ。
新子は、その空想力で、舞台となる山口県防府にあった千年前の都や其処に住んでいた人々、たたらで働く姿や、そこにいたであろう自分と同い年のお姫様のことを空想し、昭和三十年代の防府の風景の上に上書きしていく。
新子の生み出す千年前のその土地に暮した人々イメージが既に過去となっているはずの昭和三十年代の防府の上に重なり、蘇っていく様が、すごく不思議な感じで面白い。
この辺は実際に見てもらうのが一番いいと思います。

んで、自分はこの映画を見ていて非常に幸福感に包まれたわけだけど、ここからは、できれば実際に映画を見て感じていただきたいので、これから映画を見る人、ここまで読んでちょっと見てもいいかなと思った人はお引取りして今すぐ映画を見に行ってください。

とりあえず、子供が出てくる映画が好きなおっさんは見に行け!
ネタバレなしでいえるのはここまでだ!


ようつべで宣伝用に本編一部と予告があがっているのでとりあえず参考までに








※ウイスキーボンボン食べちゃうとこ。
ここはシーンとしても面白いし作品としても要になってて良かった。



では以下ネタバレ含みで

さて、自分は、この映画を見ていてなんだかよくわからない感動というより、幸福感に包まれたのですが、その正体というのは、おそらく千年という歴史を其処に見出し、それが今の自分たちに繋がっているんだということを感じたからなのだと思います。
昭和三十年代の防府から千年前を空想している新子、その千年前の防府の人々がさらにその土地に移り住んできた先祖のことを思い出しているというくだり、
そしてそれが今ここでアニメーションという空想を描く装置で見ている現在に生きる自分と繋がり、千年の時を経た悠久の歴史の中に自分がいることを、ふわーっと感じていたからなのではないかと思います。
その為か、昭和三十年代という時代が、郷愁やノスタルジーというものを喚起させる装置という風にはあまり感じらず、同時にそういうノスタルジーにありがちな、懐古賛美からくる現代批判になっていなかったのも、この映画に素直に感動できた要因かもしれないです。


あとちょっと細部になるんだけど見ていて感心したというか、フェティッシュってワケじゃないけどフェティッシュだなぁと思ったのが足元の描写。
新子が裸足だったり草履だったりするのに対して、貴伊子は綺麗な靴とかわいい靴下を履いている。
この対比を見せることで二人のギャップを示しているわけだけど、これが積み重なることで、小川をせき止めてダムを作る遊びをするシーンで貴伊子が裸足になって泥んこになって遊ぶシーンがとても印象的で際立っていた。


そんなわけで減点要素があまりなくて、自分としてはかなりの絶賛モード。
人に見に行くことを勧めたくなる映画というのは本当に久しぶりだなあ。




▼2009/11/28

見に行った人の報告を見ると、やっぱり悲しいくらい客はいってない模様。
まずい、まずいよ。
なのでマイマイ新子強化週間を開始するよ!


メイキング・オブ・マイマイ新子
監督によるブログより
「日本版赤毛のアン」ってどういうの - メイキング・オブ・マイマイ新子
>つい最近試写をご覧になった皆さんから、たてつづけに「百合アニメ」という評をいただいてしまいました。
>実は、こちらとしてそれほど意外に思わないところがあってしまいます。表紙の上にかかる帯に「日本版赤毛のアン」とうたわれた本を原作にとった我々が目指したのは、まず「ガーリー」であることでしたので。


なーんだ、やっぱり赤毛のアンで百合って認識でいいんだw
さあ、はやく百合好きは見に行くんだ!


映画評『マイマイ新子と千年の魔法』
氷川竜介氏の評
さすがだわ


『マイマイ新子と千年の魔法』は凡作か傑作のどちらか: カナエジュンネット
いっしょに見に行った友人の感想です、ネタバレなし。
見終わったとの感想では、妙な温度差があったんですが、概ね好評。
彼の言うマイナスポイントもわからなくもないんだが。


超映画批評『マイマイ新子と千年の魔法』70点(100点満点中)
70点とかないわー
自分が点つけるなら85点はいく


WEBアニメスタイル | 【artwork】『マイマイ新子と千年の魔法』第1回 イメージボード(1)

一見すると地味な映画なんだけど資料とかによる積み上げが半端ないなあ。


プレセペ特集[マイマイ新子と千年の魔法]




▼2009/11/29

「本物の魔法使いのものとは違うけれど、人の手には確かに魔法のようなものが備わっている」(アリーテ姫より)

マイマイ新子を見た後、片渕監督の「アリーテ姫」に通じるテーマがあるよなあ、と思ったので、久しぶりにアリーテ姫を見直してみた。
見ててそんなに楽しくなるような映画じゃないんで、実質見直すの今回で3回目か4回目なんだけど、以前見たときよりもずっと「アリーテ姫」という映画を「飲み込めた」気がした。
たぶんマイマイ新子を見たことで上手く飲み込めてなかった部分を咀嚼できたからなんだろうと思う。

もう一回マイマイ新子見に行く予定なので詳しくはまたその後。



▼2009/12/4

◇「マイマイ新子と千年の魔法」と「アリーテ姫」の魔法

二回目を見てきました。
色々予備知識を入れて細部を堪能をしてきました。
千年前のお姫様諾子が清少納言の幼少期で、その時代の子供がどんな遊びをしていたかを枕草子や宇治拾遺物語などの古典から調べ上げて、再現したといったメイキングの話を知ってみると、そのディティールの細かさに舌を巻きます。

この映画を見ていて、やっぱり自分が好きな所は、子供たちが遊んでいる姿なんだなあ、と改めておもいました。
そして、その「遊ぶ」ということが、子供の持つ想像力であり、それが千年前も昭和三十年代というちょっと昔も変わることなく、現代にも、そして未来にも繋がっていく「魔法」なんだということが映画全体から感じ取れる。
それでいて、そういった子供の世界にも必ず大人の世界の影みたいなものが入り込むというリアリティがあって、そういったことを含めて、自分自身が子供の頃に経験した似たようなこを色々と鮮明に思い出して、この映画に描かれている絵空事でない「魔法」が本当に「魔法」なんだと素直に思えてしまう。
この映画を見たあとに感じた幸福感というのは、そういった子供時代の記憶、その頃に持っていた「魔法」を思い出すからなのではないかと思いました。

さて、先日「マイマイ新子」を見た後参考のために片渕須直監督の「アリーテ姫」を見直していて、通じる部分が見られたので、少し書きとめて見たいと思います。
「アリーテ姫」を見たことないという人も多いかもしれませんが、いい作品なので機会があれば見て欲しい作品です。


まず「アリーテ姫」という作品の基本設定おさらい。
主人公アリーテは、お姫様という自分の立場に疑問を持ち、染物や織物など街の職人たちが作るものに憧れを抱き、自分の手にも同じように物を作り出す力があることを確かめたいと願っている。
そのアリーテ姫をさらって閉じ込めるもう一人の主人公とも言える魔法使いのボックス。ボックスが使う魔法は、千年以上前に滅びた古代文明が生み出したテクノロジーの産物で、ボックスの持つ水晶がその力の源となっている。
しかし、ボックスの幼少期にその文明は滅びてしまい、ボックスは「相手を愚にもつかないものに変える魔法」しか覚えておらず、それ以外のことは何も出来ず、水晶の力で永遠の命を持ったまま生きながらえ、滅びた文明の生き残りがいつか自分を見つけてくれることを待ち続けている。

ボックスはただ大昔に作られた、魔法のアイテムを使うだけの「魔法使い」でしかなく、なにかを生み出すこともできず、自らもただ、誰かが自分を助けてくれると待っているだけの「愚かなお姫様」のような存在でしかない。
皮肉なことにその「愚かなお姫様」に変えられて閉じ込められたアリーテ姫は、自分自身もその手で何かを生み出す存在であると信じたいと願い、ボックスにかけられた魔法を打ち破る。
染物や織物と同じように、魔法を生み出すアイテムを作り出した職人がその昔存在し、それを作り出した職人の手こそが本当に「魔法」なんだということが説かれ
「本物の魔法使いのものとは違うけれど、人の手には確かに魔法のようなものが備わっている」
という映画の冒頭に出てくるこの作品のテーマに繋がってくる。

魔法のアイテムそのものではなく、それを作り出した人々やその文明に対して強い憧れを抱き思いを馳せるアリーテ姫と千年前からそこに残る街の痕跡を元にその時代を空想する新子
遠い時間の隔たりを越えて、人が生み出したものが「想像力」という魔法で繋がるというところで「アリーテ姫」と「マイマイ新子」という二つの作品は遠からず根底でで繋がっているのがあるではないかと思う。
マイマイ新子を見た後だからこそ、以前見たときにはあまり意識できなかった、アリーテ姫が抱いた遠い昔に滅びた文明とそれを生み出した人の手の持つ魔法に対する強い憧れの心象がよりはっきり見えた、そんな気がしました。

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