かみちゅ!感想ログ

TV未放映話

DVD第8話「野生時代」
2005/11/23発売 DVD4巻収録
脚本:倉田英之/絵コンテ:うえだひでひと/演出:畑博之
作画監督:山下祐・鈴木大
作感協力:長町英樹・千葉崇洋・薮野浩二

▼あらすじ

町の猫たちの様子がおかしいことについて、ゆりえはタマに聞いてみるが、タマはとぼけて教えてくれない。
あやしんだゆりえが深夜外出するタマの後をつけていくと、そこは、流れ者の野良猫タイラーによって作られた猫の楽園、「キャットワールド」だった。
タイラーは人間と対決し独立することを訴えるが、タマはそれに反発、猫に変身してしまったゆりえとともにタイラーとタグマッチで「キャットファイト」を挑むことになる。

▼ コメント

出だしのゆりえと光恵、祀がだらだらと猫達の話をしているいつもの日常シーンとゆりえの家での章吉くんとの会話シーンを除くと、ほとんど全編猫だらけ。
猫たちの猫体型のままきっちり人間っぽいアクションするのがしっかりかかれていて、作画が無駄によかった。
シリーズ通してだけど猫の体型や動きは、あまり漫画的なほうに走らず、猫らしさを強調されてて、全体的に猫に対するこだわりは強いようです。
それにしてもタマ強え、貧乏神さまの力を借りてるとはいえ、いつの間にそんなクンフーを積んだんだというくらいに。

カリスマ性で猫たちをまとめあげるタイラーが妙にかっこいい、というかコメンタリーでも言っているのですが思ったとおりこの回は映画「ファイトクラブ」が元ネタになっていて、タイラー=ブラッド・ピットがモデル。
ラスト、タマに敗れたタイラーが、町を去ろうとするときのタマとのやり取りとか、タマがちょっとタイラーに恋心を寄せていたそぶりを見せたりと、映画っぽいシュチュエーションで、倉田せんせいの映画趣味が感じられる回でした。
かみちゅっぽいか?というとそうでもなく番外編的要素は強いかな、変な話でこれはこれで面白かったけど。

▼その他

・ゆりえが神さまの力を使い鉛筆ころがして宿題をやろうとするが、何度転がしても3しか出ないところが妙におかしくてツボ入った。
・ゆりえの食べてる水ようかんが美味しそう。スプーンの形状が見覚えありすぎ。
・タマの特訓と章吉君のシャドーボクシングのとことの作画がよかった。
・「あっち」とタマの行く先を教えてくれるとうふちゃんがかわいかった。

▼参考

B000B84N90 ファイト・クラブ
ブラッド・ピット デビッド・フィンチャー エドワード・ノートン
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 2005-10-28

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ファイトクラブはマジ面白い映画です。オススメ。「セブン」で有名なデビッド・フィンチャー監督の作品。

DVD第11話「恋は行方不明」
2006/1/25発売 DVD4巻収録
脚本:倉田英之/絵コンテ:福田道生/演出:畑博之/作画監督:長町英樹・薮野浩二

▼あらすじ

みこと章吉がふたりが学校に登校せず、電車に乗っていくところを女生徒に目撃され、かけおちではないかと、大騒ぎになる。
みこたちがいなくなったのは、みこが弓道の試合で失敗したことが原因ではないかと心配し、ゆりえの力で二人を捜索することになる。
が、みこの失踪には別の理由があった。

▼コメント

すでにTVシリーズが終了している段階で作られているため余裕があるのか、4巻の未放映話に引き続き、作画は非常に粘りのある仕事をしていて全編見ごたえありました。

さて内容のほうですが、これまた甘酸っぱいお話でした。
みこは八島様が好きで、その八島様はどうも祀に気があって過去になんかあったらしい、という伏線が2話の頃からにおわされてましたが、ちょうどその伏線回収話になってるわけだけど、結局、八島様と祀の間に過去に何があったのかはわからず。うーん気になる。

ここで関係を整理すると

祀←八島様←みこ←章吉

というどこのハチミツとクローバーだよというような片思いの連鎖構造が成立しているわけですね。

みこは八島様が好きで、でもお姉ちゃんも大好きで、お姉ちゃんに対するジェラシーでいっぱいいっぱいになってしまって失踪に走ってしまうのだけれど、章吉はそんな事情があることもしらずに落ち込むみこをなんとか元気付けようとみこに付き合う。
このふたりの逃避行は、似たような思いを抱えながらも気持ちのベクトルがそれぞれ違う向きを向いていて、いっしょにいながらも、その気持ちを共有できるわけでもなく、お互いの距離がなかなか縮まらない・・・
そういった内面描写のひとつひとつが丁寧で、そのせつなさ、その中学生らしい幼さ、純真さに、きゅんきゅんきてしまう。
特に章吉のみこに対する接し方が、やさしくしたい、好意を表したいという思いとは裏腹に、恥ずかしくて上手くできず照れ隠しをしてしまうという葛藤が台詞や態度のとり方で細やかに描写されていて、そうそう男の子ってこうだよなぁという、おそろしくリアリティがあった。
いやもう、なんでこんな瑞々しいものが描けてしまうんでしょう、舛成監督は。

さてこの回の最高の名シーンは、ハンバーガーを食べるのを失敗してしまうみこではないかと。口の周りをソースでべたべたにしてしまって、それを目の前の男の子に見られていることを恥らうというシュチュエーション。
恥らうみこのかわいさは言うに及ばず、それを描写するしつこいくらいの間の長さが、それを見てしまった章吉のきまずさもあらわしているようで、ともかく秀逸。
女の子のどんな仕草がかわいいか?というのを突き詰めていくのも「かみちゅ!」という作品の醍醐味であるわけですが、こういった日常的なひとコマを切り出してくるセンスはほんとさすがという他ない。
DVD第13話「やりたい放題」
2006/2/22発売DVD第7巻収録
脚本:倉田英之/絵コンテ:こでらかつゆき/演出:高島大輔/作監:櫻井親良

▼あらすじ

神社の娘としてクリスマスに対抗してゆりえ様感謝祭を企画する祀。しぶしぶ付き合うゆりえと光恵だが、商店街でビラを配っていると商店街の人たちから、営業妨害だと、邪険にされてしまう。それでもあきらめない祀は・・・


▼コメント

「クリスマスは敵よ!!」
相変わらず、暴走する祀ではあるが、クリスマスなんていう西洋のよくわからん神様のお祭りに浮かれる庶民に渇をいれ、日本古来の神道の普及に粉骨砕身するその姿に感動した!うそですが。
クリスマス時は、神社の身入りが少ないから対抗意識を燃やしたくなる気もわかるが、正月でがっぽり稼げるんだからいいじゃないか、なぜそこまで、クリスマスを嫌うのか、はっ、もしや脚本家がなにかクリスマスに恨みが・・・

というのは、おいといて、 クリスマスネタ「やりたい放題」というタイトルから、キリストVS神道の血で血を洗う宗教戦争勃発か、はたまた日本的いい加減さで神社でクリスマスでゆりえサンタか、というコメディ話を想像してたら、意外や三枝家のアットホーム話でした。
商店街の人が家まで抗議に来たのを、祀のお父さんが祀を叱らず擁護して許してしまうのは、ちょっと甘すぎー、と思わないでもないけど。
まあ、ほのぼのはかみちゅの基本だし、祀がお父さんに「ありがと」というとこが珍しくかわいらしかったので許す。

・光恵が八島さまが体を借りてライブをやろうとすることに抗議するところは、光恵がかなりマジで嫌がってて、はらはらした。
・健児君に頭をぽんぽんとされて喜ぶゆりえが、やけにかわいかった。
TVでは放映されてなかったエピソードやシーンで、ちょっとづつ健児くんのゆりえに対する接し方が変化しているのがかかれていて、バレンタインの話への布石が置かれている。
そういう意味ではTV放映版は、ややその辺の描写が足りてないといわざるを得ないのだけれど。
・おもちゃのクリスマスセールのちらしにファミコンとセガマークVとプッチャンらしきなぞの人形が
・章ちゃんがゼビウスやってた


DVD第16話「ほらね、春が来た」
2006/3/29発売DVD第8巻収録
脚本:倉田英之/絵コンテ:こでらかつゆき/演出:舛成孝ニ/作画監督:千葉崇洋

▼ あらすじ

春休み、来福神社の大掃除の手伝いにきたゆりえと光恵。
健児も祀に呼ばれ、終業式以来久しぶりに健児と顔をあわせたゆりえ。しかし健児は習字の筆に夢中で、思うように話ができないでいた。そこに突然あらわれた犬が筆をくわえて走り去り、健児とゆりえは、いっしょに犬を追いかけ始める。


▼コメント

TV版最終話のおよそ一月半後くらいにあたる、エピローグ的なお話。
告白して付き合い始めたはいいけど、緊張しまくりのゆりえに対してマイペースの健ちゃんという組み合わせで、大した進展もせず、電話するしないというだけの話で盛り上がる恋人同士の甘酸っぱさは、もはや現代では、現実どころか少女漫画ですら絶滅してしまったんじゃないかという、シュチュエーション。
岩の上での健児くんとゆりえのやり取りでエンディングに突入してもいいくらいの雰囲気だったけど、そこから、三人娘が来福神社にお泊りして恋話をして、朝を迎えるところまでいってエンド。
TV版最終話が、ゆりえの恋の成就でクライマックス的な盛り上がりで、1話からのゆりえの成長に焦点を絞っていたのに対し、DVD版最終話はゆりえと祀、光恵の三人に焦点を戻しててもう一度幕を閉めたといった感じ。
終わっているようで終わっていない最終回で、ゆりえたちの時間はこれからもゆったりと続いていくんだろうなぁと、そんなことを思わせる最終回でした。

一見、続きを作ろうと思えば作れるように見える終わり方なんだけれど、「かみちゅ!」という作品にはゆったりとそれでいて確実に流れていく時間がしっかりと描かれていることを考えると、続きを作れば作るほど、時間が経過することによってゆりえ達が中学を卒業してしまう時に近づいてしまい、「中学生であるゆりえ」を描くという、作品の根本からずれていってしまうので、それはやはりNGなのではないかと。
続きを作ることなく「中学二年生の春休み」で物語に幕を引き、「ゆりえたちの時間はこれからもゆったりと続いていくんだろうなぁ」と思わせることで、ゆりえたちが中学生である時間をを永遠に遅延し続けることができる。
妄想としての美化された幸福な中学時代を永久保存するという意味でこの終わらせ方というか、ここで終わることがやはり「かみちゅ!」的には最良であるのではないかと私は思います。

最後に

ゆりえ「いろんなことがあったなぁ」
祀「なにいってるの、まだまだこれからよぉ、楽しいこといーっぱいおきるんだからぁ」


というこの台詞の裏に、ある種の切なさを感じてしまう自分はやはりもうおっさんだなぁと、思ってしまいました。


その他

・相変わらず、全編通してゆったりとした話はこびににもかかわらず、小ネタは盛りだくさん。あげればきりがないので割愛しますが、作画や芝居を含めたこの密度の高さゆえに何度も見直しても楽しめるのは、かみちゅの長所のひとつ。
・健児君がゆりえをのせて自転車で犬を追いかけるのだけれど、尾道でそれは無茶だろう、と先日行ってきたばっかりなので実感。(歩いてきた場所も結構出てきて楽しかった)
あと微妙に「耳をすませば」な気がしてなりません。
・章ちゃんとみこの微妙な関係が今後どうなるか気になるー
章ちゃんとみこで外伝一本くらいならあってもいいかなぁ。


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