□花ことばのひみつ −うわさのミニ巫女−第四巻 感想


花ことばのひみつ -うわさのミニ巫女- (講談社青い鳥文庫)花ことばのひみつ -うわさのミニ巫女- (講談社青い鳥文庫)
中島 みなみ

講談社 2009-06-16
売り上げランキング : 141327

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


年末の大祓に初詣の準備と何かと忙しい岡枝神社
そこに手書きおみくじのひみつをさぐろうと巫女のバイトとしてきたかなえ
高校生のかなえが、神社が特別好きというわけでもないのに、自分より色々知ってたり、仕事をこなしたりするのを見て、モヤモヤする結実。塔子さんもかなえを褒めたりするので、塔子さんを取られた気がしてちょっと嫉妬まじり。
福銭作りを任された結実のもとには、あまり話したことのないクラスメートの理子が、やってくる。
ツンとしてあまりしゃべらない理子といっしょの作業は、気まずい空気で結実は気が重い。
そんな結実の気分を変えるのは、姉穂波の友人志乃に誘われていった花の撮影で見た彗星蘭という花だった。
彗星蘭の花言葉は「特別な人」
おおまかな粗筋としてはこんなところなんだけど、年末の岡枝神社で市民による絵画や写真の展示会がひとつの鍵になって、ここに理子のヒミツ、花ことば、真由美や戸山、大庭さん他、サブキャラたちがそれぞれの登場人物の役割をにない、今回も伏線、構成、それぞれの登場人物の役割の組み立て方が神懸っているので、簡単に説明できないのでパス。
タイトルどおり要所要所で花と花言葉が出てきて面白いです。特に結実が真由美に黄色のガーベラを贈るところはちょっと感動モノでした。

さて、今回一番読んでて面白いなーと思ったのは、理子と結実の絡み。
理子はファッションセンスもよくて、地味な結実から見てちょっと気後れしてしまう存在。
理子はもともと口数が少なく、話の苦手な結実は、はじめの内は、理子とほとんど会話らしい会話もできなかったのだが、徐々に打ち解けていくことができ、最初に登場したときのツンとしたイメージとはまったく違う理子とうい女の子のことがわかっていく過程が、丁寧に描かれている。
そしてその理子の口から、福銭作りに参加したのは、「結実と話してみたかった」からで、理子から見て、結実が「一人でいるのが平気な強い子」で、神社で巫女をしているような「自分をもっている」からということを聞かされる。
特に自分では、当たり前としか思っていない自分の自然な姿を、理子からは「特別」なものとして、知らないうちに認められていたというという事実は結実にとっては、まったく想像していなかったことで、あまりの驚きに結局理子に対して、なにも答えることができなかった。
その反面、油絵を描いている理子は、自分の絵に人を感動させる特別なものがないことに悩んでいたが、結実の目から見て理子の絵は間違いなく「特別」なものだった。
その他にも、結実自身は認めないが、姉やその友達の志乃から書道の才能を認められたり、結実自身はちょっとうざったいと思っている母親の細かくてうるさい所も、志乃から見れば、細かいことによく気が利くと肯定的に捉えらえられたりと、作品全体を通して、自分ではなんでもないと思っていること、欠点と思っていることでも、他の人から見れば、それが美点であったり、特別なものとして捉えられるんだ、ということが描かれている。

ここまでの話の中で、結実は、かなえのこともあって、人と自分を比べて、自分の劣っているところを気に病んだり、やっかんだり、誰かに褒められたい、認められたいと思えば思うほど空回りしては落ち込み、自分は誰かにとって「特別な人」なのかとずーっとモヤモヤしっぱなしだった。
結実に限らず、こういったマイナスの感情を抱いてしまうのは、子供としてはごく自然なことなんではないかと思う。そういった悩みを抱える子供に対するメッセージとしての彗星蘭の花言葉、「人にはだれだってその人にしかない輝きがある。人はだれだって、だれかにとって特別な人」という言葉の本当の意味が、本作で、鮮やかにそしてさりげなく描き出されているのではないかと思いました。

前三作もそうでしたが、読み終わったあと、なんかこう幸せな気持ちになれるんですよね。
ということで今回のお話も満足でした。

ただし今回はちょっとだけ不満点をあげておきます。
個人的に一巻二巻と比べると、三巻四巻の話はちょっとだけ物足りなかったりします。
それは手書きおみくじの扱い方。
一巻二巻は、手書きおみくじが結実自身の意図や目的と離れた偶然性が加味されて、事態が思わぬ好転をするというところが非常に作品を不可思議にして面白くしていたのが、三巻四巻では、手書きおみくじの偶然性がなくなって、結実の目的をそのまま達成するためのただの手段になってしまっているのは、ちょっとつまらないかなと。
一巻二巻にあったヒネリが欲しかったなと。
まあ毎回偶然が重なって上手くいくというのをやりすぎるのもうそ臭くなるのでどうかとは思うのですが。

さて、理子という新キャラも登場しなにやら結実と友達フラグが立ちそうなところで終わってしまったので、次回以降真由美との絡みも含めて、さらにキャラの掘り下げがかかれるといいなあと思いつつ、次巻がまちどおしくあります。