※ネタバレ有ります

◇「魔法少女リリカルなのはTheMOVIE1st」感想〜何度も見てしまうワケ、何度も泣いてしまうワケ


この映画、基本的にリリカルなのはというシリーズの基点になる話なので、おそらく全くシリーズ作品に触れていない人でも、予備知識無しで見て十分理解できるし楽しめる作りになっている。
そういう意味では、初心者入門用としてオススメすることもできる映画になっているのではないかと思います。

一方でシリーズを見ているからこそ気になってしまう部分ももちろんある。
二時間で話を納めないといけないため、やや話が性急で詰まった印象をいだいてしまったり、アリサや鈴香との関係描写もバッサリきられているため、なのはのキャラの掘り下げや動機が弱く感じられてしまう部分もある。
これは何度か見ていて気づいたんだけど、TV版のなのはの方が、フェイトを助けようとする必死のアプローチがけっこう多かったけど、映画ではかなり削られている。
例えば、プレシアがフェイトに事実をつきつけるところで、なのはが「もうやめて」とフェイトをかばうシーンが無い。
最たるものが、プレシアが奈落に落ちようとするのを助けようと危なくなるフェイトになのはが手を伸ばして、フェイトがその手を取るというシーン。
そういうところで、TVシリーズと比べると、ちょっとずつニュアンスが変わっているところは多い。
しかし、今回の劇場版では、フェイト、特にTV版では、説明不足だったフェイトの母、プレシア・テスタロッサの描写に時間が割かれ、フェイトを中心とした、フェイトとなのはの物語として再構成されている。
TV版をなのはを中心とした、なのはとフェイトの物語だったと考えると、TV版と劇場版で上手く棲み分けできているとも言える。

なので、この映画化は、TVシリーズの単純な総集編、ダイジェストというわけではない。
この映画の最大の魅力は、初見の人が見ても難なく理解できる映画であると同時に、シリーズを熟知しているファンほど、新しい発見と驚きが用意されていることであり、コアなファンであれば有るほど、過去に見てきたシリーズ作品の様々な記憶が繋がり、蘇り、感動が再生される事にあるのではないかと思う。

まず、冒頭のなのはのモノローグシーン。
フェイトとリボン交換をして別れた後、事件をなのはが回想しての語りになっている。
これを見ただけで、コアなファンは今までTVで見てきた名シーンの数々が思い出され泣けてしまう。


また、プレシアがアリシアの亡骸と奈落に落ちて行くシーンで、回想の中のアリシアがプレシアに「私妹が欲しい!」とせがむシーン
ここはTV第二期A’sでフェイトが闇の書に取り込まれたときに見るフェイトが望んだ夢の世界で、フェイトがアリシアの妹になっているというシーンとリンクする。
フェイトの望んだ世界と、アリシアが望んだ「妹」が繋がり、フェイトがまるで、アリシアからプレシアに送られた贈り物のようにうつり、プレシアの「私はいつも気づくのが遅すぎる」というセリフの重みと切なさが倍増して、号泣してしまう。
その他にも、アリシアの利き手のことや魔法光の色など、映画の中では深く触れていない部分でも、プレシア関連や、アルフ、リニスの背景は小説やドラマCDで描かれていたことがしっかり頭に入っていると、この映画の中でもう一度それらが繋がり、思い入れがより深まってくる。

そしてラストのリボン交換の「名前を呼んで」のシーン。
フェイトの「困ったことがあったら私の名前を呼んで、きっと助けにいくから」というセリフ
これがA’s第一話のなのはがヴィータに襲撃を受けピンチになったときフェイトちゃん!」と叫んだ後、フェイトがさっそうと現れる、あの「友達だ」の名シーンにつながり、TV版以上に泣ける。

そして一回目の上映を見終わって、二回目を見る時、冒頭のモノローグでまた映画で見た名シーンの記憶が再生されて泣いてしまうのだ。

その他にも泣きポイントがたくさんあるのだけれど、見るたびに泣きポイントがかわってくるのが不思議。
初回ではそうでもなかった、挿入歌のDon’t be longが流れるところでの、フェイト「ふたりなら」
なのは「うん!「うん!うん!」
のとことか、
なのは「はじめよう最初で最後の本気の勝負!」
のとことか、
エンディングのフェイトの満面の笑み(例のフィルムにすごい値が付いたとこ)とか
気がつくとじんわり涙があふれてしまう。
これは、映画そのものというより、作品に対する思い入れで色々な思いが交錯して感極まってしまうのではないかと思う。

三嶋プロデューサの「知ってても泣ける」というのは、まさにその通りで、知っているからこそ、むしろ余計に泣ける映画になっている。
出来云々関係なく、恐ろしいほどこの映画は、「なのは」のファンであればあるほど感動と中毒性があるのだ。
この作品、リピートポイントのおかげで、ファンが何度も足を運んでいるという印象を与えているかもしれないが、たぶん特典がなくても繰り返し見たくなるファンは少なくないはずだ。
そうの上で特典がつくからこそ、ほいほい足を運んでしまうのだろ。

「リリカルなのは」という作品は、傍から見ればちょっと常軌を逸した形でファンに愛されている。
けれど、そのファンの愛を裏切らず、製作サイドもそれに答えようと気を配り努力していることが実感できる。
そういうファンと製作サイドの幸福な関係があっての今回の劇場版であり、大成功であるのではないかと思う。



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魔法光、利き手についてはここで描かれている。
TV版とは違うなのはとフェイトのガチバトルも最高

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