実は俺クロ・シロ・トラの三兄弟だったんだけど、1歳4ヵ月の頃にはひとりぼっちになってしまったにゃん。そのおかげでことさらばあちゃんに大事にしてもらっているいるけど、時々寂しくなるにゃん。
俺たち三匹は、7月の暑いある日いじめっ子トッチの部屋の屋根裏で産声を上げたにゃん。可愛い声でミャンミャンと鳴く俺らの声を聞いていじめっ子トッチが、子猫の声がすると大騒ぎをしたからさあ大変。何で猫が天井にいるんだってわけで男勝りのおかんが、天井によじ登ってきたにゃん。俺らのおかあちゃんは俺らを守ろうと抵抗してくれたが、そこは人間と猫、追い払われしまいまだ目もよく見えない俺らだけ取り残されてしまったんだ。

残された俺たちはまだ小さかったけれども、、本能で危機を感じ逃げようとして断熱材の隙間から床下まで落ちてしまったんだ。慌てたのはおとんとおかん、なんてたって夏真っ盛り床下で俺たちが死んでしまったら大変と思ったらしい。そこで、登場したのは大工の叔父さん、風穴部分のコンクリートを砕き鉄枠を外して床下に落ちて鳴いていた俺たち三匹を助けてくれたにゃん。おとんとおかんは母猫が迎えに来るだろうと俺たちをダンボール箱に入れて待っていたんだけど、すぐ近くまでは来てもとうとう連れて行ってはくれなかったんだ。三日くらいそんなことをしていたけれども迎えに来ることはないだろうということで、俺たちの処遇に困っていたようにゃん。ばあちゃんが俺たちを可愛がってくれて、そのままここの家の居候となっ訳にゃん。で、にいにいが毛が長く真っ白な妹をシロ、毛並みは短く全身が鯖模様の弟をトラ、そしてシロとトラを合わせたような俺をクロと呼んだのさ。「シロ」「クロ」「トラ」とばあちゃんが餌を作っては呼んでくれたにゃん。

俺たち兄弟はそれぞれ個性があって何事にもすばやい俺とおとなしいシロ、トラはのろまでいつもまともに餌を食べられない、だからばあちゃんはいつもトラが食べ終わるまで俺たちを捕まえていたんだ。ついたあだ名は「まぬけのトラ」ってな訳さ。トラはなぜかじいちゃんが雨戸を開け始めると何処にいてもすっ飛んいって、じいちゃんの周りをついてまわっていたんだ。だからじいちゃんはとてもトラが
かわいっかったようだ。

のろまでまぬけだけれども、小首をかしげてものを見る愛嬌のあるトラは皆から愛されていたにゃん。ところが寒い冬を三匹で体を寄せ合って乗り越えたのに、春うららかなある日急に元気がなくなってご飯も食べれない状態になり、翌日玄関の前で力つきってしまったにゃん。皆とっても悲しんだにゃん。その後秋になりシロまでが交通事故で俺の前から去っていってしまったんだ。俺一匹になってからは、ばあちゃんがそれはかわいがってくれるにゃん。おとんといじめっ子トッチも帰ってくるなり「や〜い、クロ元気か」といいながら俺にちょっかいを出してくるにゃん。俺にすりゃ甚だ迷惑なんだけど
同じDNAを感じる愛情表現なんだよな。

悲しいことだけれども俺たち動物は、弱肉強食という自然の摂理のまま淘汰されてしまうにゃん。二匹のために俺は精一杯生きていこうと思っているにゃん。こんな俺でもばあちゃんの生きがいになっているから、生きていることの意味を見つけてはいるのさ。