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チャイルドライン全国フォーラム
認定特定非営利活動法人 チャイルドライン支援センター 代表理事 清川 輝基
緊急アピール
 日本の子どもたちは、今、これまでになかった苛酷な環境の中で育つ事を強いられていま
す。子どもの貧困率は、世界の先進国の中で群を抜いて高く、一日の唯一のまともな食事
が学校給食だけ、という子どもも珍しくありません。また世界一のメディア漬けが振興する中
で、生身の人間のぬくもりよりも無機質なメディア機器との接触が増えた子どもたちは深い孤
独の闇に迷っています。毎日1.7人の子どもが自ら命を絶ち、3人に1人の15歳児が孤独を
訴えています。中学生の不登校率は史上最高を記録し、小学校、中学校、高校での校内暴力
事件も年々増え、2007年には5万件を越え史上最多となりました。
 子どもたちは、こうした形で「生きにくさ」を表現しているのです。
 こうした状況の中、無料でかけられる電話に踏み切った全国のチャイルドラインには、子ども
たちの声が年間18万件以上も寄せられています。日々子どもたちの声を受けとめている私た
ちは、日本の子どもたちの「生きにくさ」「育ちにくさ」をこのまま放置することは絶対に許されな
いと考えています。
 そして、チャイルドラインんに電話してくる子どもたちの状況を踏まえて、私たちは次の
ような対策が緊急に必要だと考え、子どもに関する全ての人々に訴えます。
 その一つは、乳幼児から児童支援の必要性です。
親の子育て力の低はは、ストレートに子どもたちの自己肯定感の低下や親子の愛着形成不全
につながっています。乳幼児期のきめ細かな育児サポート体制を地域社会で確立することが
緊急に必要です。
 二つ目が、貧困の連鎖を断ち切るための施策です。
親の経済的な困難が、子どもたちの心身の発達を著しく歪めています。不安定雇用や長時間
労働が子どもたちの孤独感を深め、安らぎを奪っています。親の経済格差が子どもの教育格
差となり貧困や反社会行動が再生産されることは、なんとしても防がなくてはなりません。
 三つ目が、「子どもの権利条約」を学ぶ機会の設定です。
大人も子どもも、子どもがひとりの人間として様々な権利を持つ主体であることを知る必要があ
ります。教師も含めて子どもの問題に関わる大人たちが、「子どもの権利」について学習し、家
庭・学校・地域、あらゆる場面で子どもの声に耳を傾けることが当たり前の社会を目指す第一
歩を踏み出しましょう。
 2009年は『子どもにとっての最善の利益を保障することは大人たちの責務』と謳った「子ども
の権利条約」が国連総会で採択されて20年、日本が批准して15年の節目の年に当たります。
 今回チャイルドライン支援センター10周年の締めくくりとして行われる全国フォーラムを機
に、日々チャイルドラインに携わり誰よりも子どもの現実を肌身で感じている私たちは、それ
ぞれの地域で多くの人々と手をつなぎ、子どもにとっての最善の利益を目指す取組みの先頭
に立つ事を改めて確認し、その決意をここに宣言します。
2009年11月21日