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クイックディスクって覚えてますか?まだまだフロッピーディスクドライブがとても高価だった頃、過渡的な技術のひとつとして一部のPCに採用されていました。開発したのはミツミ電機。

シャープMZ-1500など、一部のマイコンに標準で搭載されていましたが、少し登場する時期が遅かったせいか、結局PC用としてはそれほど普及することもなく、ひっそりと姿を消してしまいました。というのもたしかに5インチフロッピーディスクドライブは高価だったのですが、クイックディスクをシャープが採用した1984年は、そろそろ安価な3.5インチドライブが庶民にも普及し始めていたからではないかという気がします。NECは5インチドライブ搭載の PC-9801F を発売しましたが、家庭用下位機種PC-6601には3.5インチフロッピードライブを一つ搭載し、¥143000という価格で発売。3.5インチフロッピードライブ元祖SONYもSMC-777に3.5インチFDDを一つ搭載し¥168000で発売していました。東芝でもパソピアシリーズ用に発売した5.25インチ2ドライブユニットは¥158000と本体価格¥119800よりも高価でしたが、3.5インチドライブユニットは¥69800で発売していました。加えて、そろそろ中古パソコン/周辺機器を扱う業者も登場し始めていたため、比較的手軽にフロッピーディスクを使用できる環境が整い始めていたと思われます。

 さて、クイックディスクの規格ですが、これはフロッピーディスクのようにランダムアクセスの出来るディスクではありません。シーケンシャルファイルとよばれるもので、ディスクには渦巻き状(蚊取り線香のような形)に情報が記録されていて、頭から順に情報を読むことしかできません。ようするに当時主流であったカセットテープの高速版でした。それでも現在のインターネット通信速度よりもはるかに遅い、カセットテープに記録されたファイルを毎回数十分かけて読むことに比べればクイックディスクは格段の進歩であり、一定の役割は果たしたのではないでしょうか。当時の広告によるとロードランナーを16秒でLOADできると宣伝しています (^_^; くわえて、ドライブ自体も比較的安価でした。MZ2200/2000/700用のドライブが、標準価格¥24800 これに別売¥9800のインターフェースの組み合わせでFDもどきが使えるとなれば、それはそれで使えますし、一枚¥200程度の安価なディスクが供給されていたことも見逃せません。

 この クイックディスク、結果としてはわずかにシャープMZシリーズや一部のMSXに搭載されただけでしたが、思わぬところで一気に一般家庭に普及してしまうのでした。当時すでに160万台ともいわれたそのディスクシステムとは・・・
 任天堂 ファミリーコンピュータのディスクシステム!!!!
 そう、一時は一世を風靡し、今でも家庭用ゲーム機の代名詞となっている、ファミコンには専用ディスクシステムがありましたよね?そしてあのディスクは、いわゆるフロッピーディスクのようにランダムアクセスはできなかったことを覚えておられますか?だから1枚のディスクにはだいたい1本のゲームを書き込んで、それを一気に読み込ませてゲームをしました。あとはせいぜいユーザーキャラのデータとか、くんでるパーティーのデータを記録しておくくらいのこと。じつはファミコンディスクシステムの規格はクイックディスクそのものでした。もっともファミコンディスクはクイックディスクにくらべディスケットのおおきさが少し違います。ドライブに差し込む向きに持つと手前に1センチくらい出っ張っていてNINTENDOという刻印があります。この部分のない普通のクイックディスクのディスケットはファミコンディスクでは使えないようになっていました.。ooO(゜ペ/)/ 普通に文具屋さんで買えば、クイックディスクの生ディスクは高くても¥500、しかしこのNINTENDOという刻印のついたものは中古ディスクでも古いゲーム入りの物しかなく1枚¥2000はしました。もちろん任天堂版生ディスクなど売ってません。

 さてこのディスクシステムの中身はクイックディスクと同じですから、渦巻き状に記録されたシーケンシャルファイルなので、ディスクにセクタというような概念はありません。なのでドライブ2台を直結するとダビングできてしまうんです。ディスクのインターフェース、つまり本体とつなぐ部分のコネクタの5番がwrite data 9番がread data なのでこれを直結。あとは2番の電源をつないで、モーター制御は3番と4番ピンだから、ここに6v電圧をかけてタイミングを取る。こうすればダビングができてしまう。普通のクイックディスクに貼り付けて、ファミコンディスクドライブにも使えるようにするためのプラスチック製のディスクワッカーというものが売られていたので、それをはりつけたクイックディスクに今までのゲームを保存しておけば、古いゲームを失うことなくおもちゃ屋さんで新しいゲームを買う事ができました。

 さてこのファミコンディスクシステム、簡単にコピーできるとなるとだまっていない○天堂さん。ではどんな対抗策を出したのか。当時の「バックアップ活用テクニック」誌によると、ディスクシステムが100万台を超えたあたりから、ディスクシステムの基盤が変更になっているようです。データを書き込むwrite gate のラインに割り込ませた論理回路がlowになっていないと write gate がつながっていないわけなのですが、これが勝手に1秒立つと high になってしまい、信号はそこでとぎれて書き込めなくなってしまうというモノだったようです。結局読み出し専用のディスクシステムというような、きわめて中途半端でつかいづらいものが市場に出回ってしまったのでした。のちにスーパーファミコンが発表されたときには、すでにファミコンディスクシステムなど、影も形も残っていませんでしたよね。
 さて、その後のファミコンディスクのプロテクトですが、このさらに後にさらにプロテクト回路が追加されたようですが、これについてはすでに手元に資料も残っていませんし、どんなプロテクトをかけていたのかもわかりません。だからかどうか、いまでもファミコンマニアの間では初期のディスクドライブを探してきて入手される方が多いらしいですね。もちろん古くなるとトラブルもありますが。多いのはモータから回転をディスクに伝えるベルトが劣化して切れているケースがかなり多いとか。