平成18年9月10日(日)  14:00〜16:00
    場所 エルおおさか(大阪府立労働センター)
    主催 大阪府栄養士会 透析食研究会
   

透析患者さんのための栄養食事学習会

         
よりよい透析生活を続けるために

 長期透析患者さんのほとんどが無尿のため、適切な水分摂取量でないと
次の透析までに過度の体重増加が認められる。透析間の体重増加量は、中2日で
ドライウェイトの5%以内、中1日で3%以内となるように水分の摂取量を調節し、体への
負担を抑える。水分摂取量と食塩摂取量は密接な関係があり、水分を過剰に摂取する
患者は食塩の摂取にも問題がある。

水分を摂り過ぎた時の症状・身体の変化
・体重増加
・体のむくみ(浮腫)
・咳が出る
・寝ていると苦しい
・血圧の上昇
・貧血
・心胸比が大きくなる(50%以上)

合併症として・・
・高血圧症
・心不全
・肺水腫

水分摂取量を減らすための工夫
・食塩を摂り過ぎないようにする。
・指示水分量を計って飲む。
・調理法を工夫する。
・冷たい飲み物は飲み過ぎやすいため、熱い飲み物を利用する。
・氷をなめる。
・ミント系のすっきりとした飴やガムを食べたり、ペパーミント水などで口をすすぐ。

水分管理

リン

 リンは骨格内、筋肉、脳、神経などに存在し、細胞の増殖、酵素作用の増減、
緩衝作用、神経刺激伝導、脂質代謝などに関与し、生体にとって不可欠である。
しかし、血中に蓄積すると、インタクトPTH分泌亢進による繊維性骨炎、ビタミンDの
活性化障害による骨軟化症、異所性石灰化などの問題が起こる。

 健常人のP摂取量は成人で1日約1000〜1200mgとされるが、透析患者さんでは
Pの除去は便からの排泄と透析で除去できる量に頼るしかないため、P制限食が基本で、
1日の摂取量は700〜800mg以下が目標とされている。                              

 P100mgに相当する魚、肉類、豆類、卵、乳製品、お菓子の実際の量を計ったものを
写真(国保日高総合病院 栄養科 吉村 幸代先生の資料)を見せて、Pの含有量には
差があるので、選び方でも変わってくることを伝えた。PはKと違って、食材料の扱い方や
調理法によって減る率は少なく、P含有量の少ない食品の選択が必要である。

食欲不振時の上手な食事の摂り方
      透析患者さんんお栄養障害

食欲不振
・夏ばて
・不規則な生活
・発熱
・寝不足
・ストレス

食事摂取量低下
・エネルギー不足
・たんぱく質不足
・各種栄養不足
・体重減少
・体力低下

低栄養
・体重減少や体液量過剰
・アルブミン値の低下
・K・BUNの上昇
・骨がもろくなる

栄養障害
・感染症にかかりやすい
・尿毒症状が進む
・基礎疾患(特に糖尿病)の悪化につながる。
・薬剤効果に影響する。

 具体的に献立例を見せながら説明。
・粥のみではなく、雑炊にするなど単品でも多くの食材を摂れるようにする。
・一般の食品だけで補えない時は、エネルギー補給用の特殊食品などの利用。
・酸味利用したり、嗜好優先して食べやすい献立を考える。
・果物、水分への偏りには注意する。

季節に応じた食生活管理

秋・・いろいろな美味しい食べ物の収穫の季節。特に注意したいのは、Kの多い食品。
冬〜春・・冬から春にかけて忘年会やクリスマス、お正月、新年会などのイベントが
盛りだくさん。行事を楽しむ事も大切ですが、雰囲気を楽しみながら、食べ過ぎ、飲みすぎ注意。
夏・・食欲低下や水分摂取の増加が考えられる。塩分の摂り方を1日4〜5gに抑えられれば、のどの
渇きに苦しむことなく水分摂取量を1日500ml以下に抑えることが出来る。

 無事学習会が終わりほっとしています。大盛況で、透析食の基礎の話が中心でしたが、まとまりある学習会
になったと思います。個別栄養指導も行い、私がお話させて頂いた方はPのことを気にされていました。なかなかPの
多い食品を教えられても教えられても、忘れてしまうとのことでした。マンネリ化しがちではありますが、継続した指導の
必要性を感じました。私達の思いが患者さんに伝わっていたら嬉しいし、これからも透析研究会で得たものを
生かせるように頑張りたいです。業者にも何社か参加して頂いて、サンプルがたくさん用意されていたので、患者さんも
興味津々で喜ばれていました。栄養士同士で心一つにして向き合えて、とても勉強になりました。