町外れの古びた建物でレゥを発見したときには、すでにレゥは目を閉じようとしているところだった。
そのそばには恭介と前に街で会った少女が泣きながらレゥに話しかけていた。
すぐに連絡を入れなかった恭介を叱りつけ、すぐさま一番近い研修施設に向かう。
俺はタクシーの助手席に乗り込み、昨今のニュースやら野球の試合だのを運転手に話しかける。
声が小さくて聞こえはしないが、後ろではリースが懸命にレゥに語りかけ、肉体の崩壊を防ごうとしているに違いない。
ほとんど一方的に運転手に話しかけているうち、車は30分くらいで施設に着いた。
レゥの腕はリースに持たせ、俺はボディを抱えて研究施設に歩いていく。
気持ちは走って行きたいくらいだったが、これ以上レゥのボディにダメージは与えたくない。
なるべく揺らさないように、ゆっくりと進む。
「う…、ん……」 レゥが声を上げる。
「気がついたか?」
「ここは……?」
「ウチの関連の研究施設だ。ここでお前を直すんだ」
「そうですよレゥ。すぐに良くなりますからね」 リースも努めて優しく語りかける。
「でも…。 あ…」
レゥが何か気がついたように俺の顔を見ている。
「何だ?俺の顔に何かついてるか?」
「きょうへいさんのおめめ…… あかいんだね」
言われてはじめて気がついた。どうやら、レゥを運んでいるうちにサングラスがずれてしまっていたらしい。
結果、レゥに俺の瞳を見られる事となったわけだ。
確かに俺の目は赤い。それはつまり、俺もレゥやリースと同じレプリスであるということだ。
…このことはなるべくなら隠しておきたかった事なのだが。特に恭介と、そのそばにいるレゥには。
俺は観念したようにレゥに言う。
「ああ、そうだな。俺も…お前たちと一緒だ」
それを聞いたレゥは、何故か安心したようにふうと息を吐き、つぶやいた。
「なんだぁ… やっぱり、レゥとおにいちゃんは…、おんなじ…なんだ……」そう言って目を閉じようとする。
「おんなじ…? おい、レゥ!目を閉じるな!しっかりしろ!」
「レゥ!気をしっかり持って!」リースも横から声を上げる。
「おにい、ちゃん… レゥ… は…」
レゥの目が閉じられる。しばらくして何かの千切れる様な音。
間違いなく、それは俺が抱えているものから聞こえてきていた。
「恭平様…」リースが心配そうに俺の顔を覗き込む。
「リース。お前から見てどうだ。」
リースは何も言わず、首を横に振るのみ。
「そうか」
レゥは、その機能を停止した。
…しかし、俺にはまだやるべき事がある。
「リース。飛行機の手配をしろ。早朝の第1便でアメリカに帰る」
「かしこまりました。恭介さんたちはどうするのですか?」
「面会謝絶とでも言っておけ」
「わかりました」
「…俺はな、嘘をついたことがないんだ」
俺はリースに言った。もしかしたら、レゥにも言っているのかも知れない。
「俺は恭介に嘘をついたことはない。さっき俺はあいつに大丈夫だ、と言った。
だからレゥを直してあいつの所に帰してやらないといけないんだ。だから、今日、発つ」
それを聞いたリースは少し嬉しそうに笑って、言った。
「私も、そのお手伝いを致します」