「失敗しない家づくり」勉強会 実践塾

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2013年までのコラム

2014年までのコラム

コラム878 2015年12月28日

問題がどんどん増えていく住宅

 住宅の世界は品質が向上するどころか、一つのことばかり解決しようとして、それによって別の副作用が出て
しまうようなことをずーっとやり続けて、逆に質の低下を招いていると思います。

自然物の一つである人間の世界に化学物の製品が入り込んできて何が起きてきたか。これだけ長い時間をか
けてたくさんの症例が出ているにもかかわらず、「使うのをやめる」ではなく「別の設備で解決する」というやり方
でものごとを解決しようとしている行政には本当に健康に住める住宅とは何かをわかっていないとしか言いよう
がないと考えるべきなのか。

いやいやこれはCMで成り立っているテレビ業界と同じで、広告主の悪口は言えないというのと同じで、税金を
払ってくれている企業のお蔭で行政の運営が成り立っているのだから「使用禁止」などという決断は出来ないと
いうことなのだろうと考えるのが理屈に合っていると思うのです。

確かに「使用禁止」にするのは簡単ですが、その企業で働いている人に対して行政が首を切ることと同じですか
ら、やるなら補償までしろと言われるのは明白です。けっきょくはそれが怖いから臭いものにはふたをして別の
何かをさせるという方法をとるのだと思います。

そういうふうに考えていくとパズルのピースはピッタリと当てはまるのです。

このコラムでも燃えると有毒ガスを出す建材のことをずっと書いてきました。私らも何か事故があればそれが牙
をむくことは重々分かっていて販売しています。していますが、そのことが建て主さんが納得して選んだものなの
か、そうでないものなのか、そのほとんどが後者だと思います。ということは、中身がわからず使っていると同じ
ことですから「本当の自分の家」を作っているとは言えないのです。

他にも「耐震」の問題があります。これも行政はことの良否を数字でしか評価していません。数字が高くなけれ
ばダメなものという考え方です。それなら昔の建物はすべて不合格ですから存在すらしなかったはずです。
しかし、きちんと残っているし、これからも建ち続けるはずです。それをどう説明するのか・・です。

世の中にカチカチの家ばかり出来ていって、揺れないことが良いことと言う考えが出てそれが当たり前になると
カチカチである鉄筋コンクリートの建物は壊れないことになるのですが、3.11の地震ではその鉄筋コンクリートの
建物が壊れ、まわりの木造の建物は瓦が落ちたくらいで大きな被害がなかったという事実をどう説明するのでし
ょうか。これらのことを見ても一つのことだけを考えてやったのではだめだということがわかると思います。

何のために、誰のために家を作るのか・・・本質を理解しないで進んでしまうことの恐ろしさをもっと知らなければ
ならないと思うのです。

世の中は、建て主さんの知らないところで工法と資材がどんどん変化していっています。そのことを少しでも知っ
ていただくためにまた来年も情報を発信していきたいと思います。

それでは良い新年をお迎え下さい。


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コラム877 2015年12月24日

お寺さんの危機

 最近は仏式のお葬式が少なくなっていて、その延長と言うかお墓の問題などもあってそれに拍車をかけてい
ると危機感を募らせている人たちがいます。当然のようにそれはお寺さんであって、いままでゆるぎない存在を
示し誇ってきた人たちです。

お葬式のお布施が安いと突き返されたとか、呼んでもいないのに3人も来たとか、どうも当家とのコミュニケーシ
ョンがうまくいっていないだけではなく、一方的な「こうだろう」と思って動いてしまうお寺さんにも非があるようで
す。

そんな話しは頼まなくても拡散するのは早く、どこどこの坊主は金儲け主義だとか言われると、やはり火のない
ところには煙は立たずではなく、煙だけでも敬遠されるようで評判の下がるのには時間がかからないようです。

どこかの国のように、生まれたときから一つの宗教で他には選択肢がまったくないということがない我が国では
信仰の自由はしっかりと守られていて、どんな宗教を選んでも咎められることはありません。そういった環境で育
ってきた人はいろいろな選択をしています。かくいう私も長男ではないため先祖の仏さんを継ぐ必要はありませ
ん。

還暦を過ぎ、お墓をどうしようかという話しもチラホラ出てきたときに次男の嫁さんが亡くなり、前から考えていた
笠間市福原の樹木葬という神式墓地を見つけました。結局は私らより嫁さんに一番乗りされてしまいましたが、
こういうケースは結構世の中でもあるようで、全国的に増えているというのもうなずける気がします。

高度経済成長時代に何をせずとも暮らしていけたお坊さんも、現状維持どころか相続する人が遠方に勤務して
いて墓地放棄なども目立つようになってくると足元をさらわれる思いです。おまけにネットで格安の葬儀をやる
業者も出てきて坊さんの拝み料まで明示して注文をとる方式が増えてくると、それこそ死活問題になっていきま
す。

池の鯉に悠々とえさをやっていられるのも時間の問題になってきそうです。


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コラム876 2015年12月22日

OSBボードがベタベタ・・

 年末になると、一年お世話になった方への挨拶をかねてカレンダー配りをしますが、ここ二年ばかりは個人事
情により時間がとれないため、遠方の方へは郵送で失礼させていただいています。ということで近隣の方へ回
るだけなのですが、久しぶりに外へ出るといろいろな問題のある現場と出会えます。

数日前、市内のある私鉄沿線に建っているアパートを見かけました。この業界では比較的名前の通った○○○
21という会社のものでしたが、その使われていた資材は今ではあまり驚かなくなったOSBボードでした。

ご存知のように、木造の建物でも最近はスジカイの代わりに壁面全体にペタっと張ってしまう、面材工法という
やり方が主流になってきました。トステム(現LIXIL)はずっと前からSW工法というやり方で面材を使っています。
トヨタホームも面材使用です。

ほかにも屋根に使用しているHMもいます。BESSというログハウスの会社、三井ホームなどです。

まあ、それぞれ自社の商品としてこれは「売り」の部分なのでしょうけれど、本当に本気でそう思って売っている
のかは定かではありません。

ここまでいろいろな会社で使われていると素材の危険性など感じることはないのでしょうけれど、皆が使ったか
らといってそのものの品質が高くなるわけではなく、結局OSBはOSBであり接着剤で固めた製品に変わりは
ありません。

展示場や完成見学会などで見て契約に至った人などは、ここまで見ているかどうかは分かりませんが、見てい
たとしてもその資材がどのようなものか、どのくらいの耐久実績があるものなのかを知る人はまずいないと思い
ます。

みんなが使っているから、となりもそうだから・・・はアテになりません。

この場合はアパートですから当然のようにオーナーさんが他にいるわけです。何年経とうとも最終責任は所有
者が負うことになるので個人には金額的被害が及びませんが、自分の家を建てる場合にはすべて自分の責任
になります。

OSBボードは100%接着力で成り立っているものですからそれが弱ってしまったらアウトということです。
これは建物の崩壊を意味します。それが何時くるのか、私は35年か40年だろうと思っています。

残念ですが、いま65歳の私にはその時生きているかどうか、それを確認することは出来ません。


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コラム875 2015年12月20日

集成材の弱点

 私の事務所では以前に製材をやっていたため、最終的に製品にならない端材を処理するために薪ストーブを
設置し、今でも使っています。「製材をやっていた」という表現をしたのは、今は木質の良い木材を認めてくれる
人が少なくなり社会情勢に合わなくなってしまいやめたと言うことです。

それはそれとして、その端材が出ていたときには燃料には困りませんでしたけれど、去年あたりからその端材も
使い尽くしてしまいました。それらがなくなっても製材機は現役で残っているため、製品の挽き直しなどで出る端
材があるためそれを燃料にしています。

その挽き直しと言うのはいろいろな材があって、中には集成材を挽く時もあります。当然、半端に残ったこれらも
燃料になるのですが、ある程度長さがあるものなので、ストーブに入る程度にカットする必要があります。
その切断作業をやるのは通常丸ノコでやるのですが、物が少なかったのでナタでカットすることにしました。

今回カットしたのは、造作用といわれる集成フリー板の端材です。
造作用でも構造用でも共通していることは、タテ方向はフィンガージョイントと言って、指と指を交互に挟めたよう
な形状で接着していること、こうすると接面が大きくなり丈夫になると言われます。

そこで分かったことは
継ぎ目でないところはかなりの力でナタを振り下ろしても簡単に折れないのに、接合部分に振り下ろすと簡単に
折れるということでした。まあ、当然といえば当然なのですけれども。

ここから想像できることは
ムクならかなりのネバリ腰があるが、継いだものは簡単に折れると言うこと、つまり、同寸の比較で言えば
ある程度までの衝撃には耐えられるけれど、それ以上になると崩壊(折れる)するのは集成材の方が先だと
言うこと。

確かに、製作者(使用者)の言うように巾をつないだ方向は強かったです。タテ割りをしようと接着面にナタをい
れても別のところが裂けましたから、接着強度のあるうちは強いというのは本当です。しかし、タテの継ぎ目は
完全に弱点になると思います。
構造用の集成材は1.8m以上継ぎ目をとばすという規定もあるようですが、そのどこかには継ぎ目が存在する
わけですから弱点としては逃げられない部分です。

私は、特に構造体では集成材は使うべきではないと主張してきました。世間ではまだ強度がムクの1.5倍などと
言っている人もいるようですが、その考え方は変わりません。

ものごとはいろいろやってみなければわかりません。まして、経年変化については誰も肌で感じていないのに
「丈夫、狂わない」と言っています。どこまで本当なのか「歴史が証明する」と言えばちょっとオーバーになります
が、動かない事実だと思っています。


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コラム874 2015年12月17日

外壁の再塗装A

 見てもらった塗装やさんと別れ際、ちょっと立ち話をしました。当然のことながら今の現場の話です。
なぜ、あのような現象になったのか。

「あれは完全な下塗りの不備だね」「つまり、汚れをしっかり落としていないところがあるからさ」
「せっかく高圧洗浄をかけたのだろうけれど汚れが落ちていない所がある可能性が大きいと言うこと」
「その後の乾燥が不完全だったことも考えられる」
「特に外壁が横張りだから合わせ目の所の水分が抜けにくいんだ」
「だから板と板の間付近が剥がれが目立つんだと思うよ」
「そのため、次の作業の目止め(シーラー剤)がしっかり食い込まなかったと思う」
「ただ、あの状態を修復できるかと言うと俺にも難しいなあ」
「あの状態では、どんなことをやってももとの除去できない部分があるから上にもう一度塗っても完全に塗料が
乗らないんだ」
「俺もやったときにそこで見ていたわけではないし、神様みたいな断定的な言い方は出来ないしな」
「けして逃げているわけではないけれど、誤解されないように柔らかく言って、やった業者に対処してもらったほ
うが良いと言ったんだ」
「ああなった状態ではとても俺は完璧に再塗装出来ますとは言えないよ」とのことでした。

確かにすべて剥げ落ちたのならもう一度シーラー剤でしっかり下地を作れるけれど、それができないならいくら
優秀な塗料であっても数年後には浮いてきてしまうわけです。

作業は何でもそうですけれど、やるべきときにきちんとやらないと後から高いツケが来るということですね。


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コラム873 2015年12月16日

外壁の再塗装

 父親の時代からの古い取引先である市内の土木業者さんがあります。先日、そちらへ伺ったところ、「久保さ
ん、ちょっと見ていってよ」「外壁材が浮いてきてしまったんだよ」と言われ、そこの事務所の周りに張ってある外
壁を見せていただきました。

よく見てみると張ってある製品は12日に書いた現場の製品と同じメーカーのものでしたが、しかし、こちらの事務
所に使用されたものはサイズが1.8m×45cm×16mmという当時としては標準より厚いものでした。そのものが
横張りに張られていてあちこちで塗装剥離が起きていました。

聞いてみると、2011年の震災後に再塗装をしたとのこと、その塗装の剥がれでした。もともとの張られた素材
の塗装については、施工された年数からすると15〜20年くらい経っていると推定できますが、どれくらい最初の
塗装面に対して汚れ落しと目止め処理をやったかはわかりません。これらについては詳しいことをご本人に聞い
ても分からないということなので、実際に再塗装をやった業者の人に聞いてもらうしかないことをお話ししました。

今回、声をかけられたことについては、これだけの症状が出ると言うことについて昨日今日に出たわけではない
ので少なくとも一年前くらいからは出ていたのではないかと想像できます。そうすると、再塗装してからわずか二
年ほどで部分剥離が始まっていたことになります。

前回書いたように、この製品は発売された初期の段階から住宅公社の建売り住宅などにも採用されて以来、生
地板(きじいた)そのものの膨れ等のクレームは一件もなかったものです。今回見せていただいた事務所も同じ
ように生地板がしっかりしていました。結論としては100%再塗装にあるとの判断で間違いないと思いました。

しかし、こちらの方がどうも私の説明だけでは納得されていないみたいなので、数日後、知り合いの塗装やさん
を連れて行って現状を見てもらい、第三者的な立場で判断し説明してもらいました。その見解はまったく私と同じ
ものでした。やっとご本人も納得できたようで、施工した業者の人に来てもらい釈明してもらうとおっしゃっていま
した。

また時間が経ったらお邪魔して、その後どうなったかを聞いてみたいと思います。


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コラム872 2015年12月14日

今月の勉強会

 昨日、予定通り今月の勉強会を開きました。テーマは「設計の話し」と言うことで2時間聞いていただきました。
参加は14名、質問なども交え活発な勉強会となりました。
また、遠くからおいでの方もいらっしゃって大変お疲れ様でした。ご参加ありがとうございました。

次回は新年1月10日(第二日曜日)に行なう予定です。テーマは「工法の話し」で進めてまいりたいと思ってい
ます。資料をそろえる都合もありますのでご希望の方は電話かメールでお知らせ下さい。
メールはトップページに(アットマークを変えて)表示してありますので、お手数ですが修正してご使用下さい。

1996年から始まったこの勉強会も満20年になろうとしています。この間、延べ人数4530人の方が参加されまし
た。そして、大勢の方と知り合うことが出来ました。単なる勉強したいから参加しているという方もいらっしゃいま
す。それぞれ個人的な理由はおありでしょうけれどもおいでくださるのは大歓迎です。

この会は、皆さん一般には知ることが出来ない情報を出す努力をしてまいりました。これからも出来る限り続け
ていきたいと思っております。どうぞよろしくお願い致します。


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コラム871 2015年12月12日

本当に使用に適した素材か

 先日、13年ほど前に勉強会を通じて建てられた家で外壁の塗装工事をやることになり、足場を組んだので
その劣化状況を見せていただきました。そこで感じたのは、いかなる建材を使っても太陽に勝てるものはない
ということでした。

今の主流となる外壁材は防火サイディングですが、これも他の建材がたくさんある中で(比較と言う意味で)選
ばれてきた経緯があります。金属系・モルタル系・窯業系とあるなかで総合的に考えると欠点なしとは言えない
までも「防火・防災・耐久性・遮音性・耐震性・施工性」などでまあまあ合格点が得られると考えられ採用されて
きました。

それにもう一つデザイン性から化粧破風などにも使われています。

どこにどのように使われているかは現場によってさまざまですが、使われる主流としては主役の座をキープして
きました。そういった総合的な観点から見れば落第とはいえないのですが、やはり10年からの外での環境では
想像以上に厳しい結果が出るのだと感じました。

塗装とコーキング劣化については大体想像できましたが、どうしても避けられないことに「収縮」がありました。
施工もきちんと指定の釘で打ち付けられていていましたが、特に化粧破風は形状が細長いこともあり、一方方
向への収縮がもろに釘の打ち付け部分に歪みが集中し、割れを起こしているところも出ていました。

割れが出ることによって、それまであるべきところに止まっていたものがフリー状態になり数ミリ程度浮いてしま
ったりしていました。こうなるとひどくなる前に交換しておかなければ危険な状態にもなるので、そこの部分だけ
は同寸法のものに取り替えることになりました。雨じまいの件は外壁の上に張りつけた格好になっているものな
ので中に雨が浸入すると言うことはないのですが、今後のことを考えれば交換が一番良いのではと考えました。

窯業系といいますが、実際は、品物は焼いたものではなく、鉱物成分が工場で成型プレスされたものです。
この現場で使われているものは主にセメント成分と木片チップの混ざったものでした。これら主要な部分を生地
板(きじばん)と言いますが、これ自体は40年くらいノークレームで剥離等を起こしたということがない、住宅業
界では優秀な部類に入るものでした。

ですから、納品に関してもある意味自信を持って販売していたと言うこともあり、この状態を見たときには正直
ちょっとショックでした。

以前には単なるトタンと言われるようなものから、木屑圧縮系のサイディング、昔から施工されてきたモルタル、
鉄板に断熱材のついたもの、などなど多くのものが使われてきました。そういった中で選ばれてきたものなので
すが、何事もなく・・・というまでには行かないようで、ある種の難しさを感じました。


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コラム870 2015年12月11日

部落の中にもダイワハウスA

 農家の敷地は結構広いと言っても、やはり四つに区切ってしまうと町場の住宅地並みに狭いです。しかも、こ
の辺の部落では北側に風除けの木を植えているのでその真北はけっこうな日陰になります。広い土地では影
響がなくても区割りしてしまうともろに日陰に入ってしまいます。

それを知っていてかどうかは知りませんが、街場並みに区切られたその土地は今の時期最大日陰になるので
ざっと目視でみても1Fの中ほどまでが影響を受けるようです。

今日で建て方作業をして5日ほどになりますが、この建物は工場生産比率の高いものなのでクレーンが三日間
来て吊り上げ作業をやっていました。見た目ではだいぶ出来ているようなのですが、屋根は大概コロニアルと言
う薄い平スレート状の素材を使うためパーツごとに吊り上げても何箇所かの接合部分は合板の状態のままで、
現場処理する必要があります。その証拠には今朝方、4tトラックが接合部分に使うコロニアルを雨の中、荷卸し
ていましたから間違いありません。

今日の台風崩れのような南東の吹きつける雨にはまだまだ無防備で、周りには防塵ネットが張られているため
車で通っただけの目視でははっきりと分かりませんが、きっと建物内もほうも雨が影響しているものと思います。

このようにいくら工場生産比率を上げたといっても、現場での天気はどうしようもなく完全に屋根がふさがるまで
に5日以上もかかるのですから理想どおりには行きません。形の上では壁も窓も付いていますから早く出来て
いるように見えますが、逆にこのスタイルでは入ってしまった雨は周りが囲われてしまっているために乾くという
ことが出来にくくなってしまいます。

雨が降らなければラッキーで、降られたら柔軟な対応が出来ないというのでは「効率」という言葉も吹き飛んでし
まいます。もともと、雨の多い日本ではこういう点を回避できるように建て方を工夫しており、まずは屋根、何は
なくとも防水紙まで張ってしまうことを優先しています。たとえ、ナナメに吹き込んだ雨でも柱だけしか建っていな
いのですから、翌日の天気が回復すれば簡単に乾いてしまいます。

こういった光景はおそらく建て主さんは見ることもなく進行していくことでしょう。それは作る側にとっては好都合
なことで「何事もなかった」ように工事を進められるということになります。


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コラム869 2015年12月08日

部落の中にもダイワハウス

 当部落は40数年前に都市計画法により市街化区域と調整区域とに分けられ後者となりました。以来、その線
引きは変わることなく維持されているため、農地を宅地にすることは原則として出来ないことになっています。

それまでに住んでいた所は宅地として認められていますが、たとえそのとなりの土地であっても農地であれば
例外なく農地法優先で判断されます。

しかし、比較的簡単に農地を潰して家を建てることが出来るのは親族の枝分かれ的な昔の分家にあたる場合
に限って許されていました。それを悪用して子供(兄弟姉妹)の名義で建てて後日売却してしまうやり方が流行
し、その後追い対策もとられほぼ無理になりました。

その法律も時代に合わなくなり、後継者のいない農家にとっては「土地を売却できない」という事態になってき
ており、宅地に関しては同じ学区内に10年以上住んでいれば購入する権利が認められるようになりました。

そのせいかどうか、最近昔の農家の場所にまったく新しい住人が増えてくるようになりました。農家と言えば、そ
の敷地も結構広い所があり、町の感覚で家を建てるなら4区画くらいは可能である広さを持っています。

その名の通り、しばらく人の住んでいない部落内の土地がありましたが、いつの間にか工事用柵が出来たかと
思うと基礎工事が始まっていました。そこに建とうとしているのは大手HMのダイワハウスで建て主さんの名前
も地元の人ではない名前でした。

これは学区内で生まれ育ってお嫁に行って名前が変った人でも購入権利があるために、一概にまったくの他所
から来た人であっても奥さんが当地の出身であれば問題はなく、そういうケースが結構多いのではないかと思
っています。

こうなるともう調整区域と言うのはほとんど役に立っていない法律みたいで「ザル法」といっても言い過ぎではな
いと思います。

ただし、調整区域であるために上水道はかなりひかれていますが、下水についてはほとんど望みナシで、浄化
槽設置の上、道路側溝に放流する方法しかありません。住宅ならまだ浄化槽設置で放流できるのですが、非住
宅の場合はそれも認められておらず、排水まで宅内処理をするように指導されます。

今回のお宅は完全な住宅のようでそれらは問題のないようですが、今まで何十年も部落の人が住んでいた「集
落」で少しづつ転入者が増えてくると古い部落も徐々に変わってきているのだなと感じます。


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コラム868 2015年12月04日

杭は届いているのかA

 ここ数年、瑕疵担保保険なるものが出てから地盤改良指導が出るケースが多い気がします。調査会社を疑る
わけではないのですが、調査そのものは非常に安く感じる金額で約3.5万円から4.0万円ほどです。

実際に調査する方は結構遠い所からやってきます。私らの依頼する先では東京近辺から来るようです。調査の
作業は大体2人で1チームで行なっていて約1時間から2時間ほどで終わりますが、チームの持ってくる道具は
すべて同じではなく全部手動でやるものも、完全機械操作でやるもの、一部だけモーターを使用するものがあり
ます。

どれも原理としては同じことをやるのですが、すべて手動でやるチームなどは特に夏はすごい汗をかきながらや
っています。このHPにも現場紹介の中で実際の写真が掲載してありますのでご覧下さい。
簡単にお話ししますと、先のとがったヤジリに100kgの圧力をかけて垂直に突き刺し、硬い支持層までどれくらい
深さがあるか、途中はどのような地層かを計測するものです。

今に時代ですからすべて機械でやったほうが手っ取り早いと思ったのですが、途中の地層状況を察知するには
手作業でやったほうがわかるとのこと、シャリシャリ・ジャリジャリ・ガリガリと土の質によって微妙に音が違うらし
く、なるほどと思ったことがあります。他にも支持層までの間に水が流れていたりもするそうで、引き抜いたヤジ
リにその形跡が必ずついてきます。

現場ではなるべく私らも立会いをするようにして、作業を眺めることにしています。だんだん経験を積んでくると
ヤジリの沈み込み方を見ているとその土地の地耐力がわかるようになります。

調査は通常ですと4点行ないます。家の建つ四隅が基準になりますが、その中でばらついた内容だと真ん中も
再度行なうようにしています。しかし、4点とも100kgのおもりでも自沈せず同じような貫入の仕方であれば、支
持層に載っている地層は不同沈下を起こす確率はほとんどなく優良な地盤と言えます。

規模は違いますが大手建設会社でやることもHメーカーでやることも理屈は同じですから、現場さえ見ていれば
良否が判断できるわけです。それをデータでごまかそうとしても「あれっ」と感じますからまじめな数字で記載さえ
していれば偽装なんて起きるわけがないのです。

なぜその先にいろいろなことが起きてくるのか、それは現場だけのことではなく組織のあり方が絡んでくるので
あとのほうから「ものすごい高いツケ」を払わされることになるのです。

きょうも例の現場の脇を通ってきましたが、田んぼまでの高低差を考慮すると「足りてないなあ」と思いますね。


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コラム867 2015年12月02日

杭は届いているのか

 事務所に出てくる途中のある団地で新築工事が始まっています。そこは昔、深い谷になっていた田んぼでし
た。埋め立て当初から将来何か問題が出てくるだろうなと思いながらおりましたが、さすがに近隣の人たちは
事情を知っているだけに購入する人はいませんでした。

人の噂も・・・と言いますが、最近この分譲残地がボツボツ売れているらしく、あちこちで建築される姿を見ること
が出来ます。つい先日も下の田んぼへおりていくメインストリートになる道路を走っていくと三井・トヨタの会社が
数軒はなれたところにりっぱな工事フェンスを作ってそれぞれ作業を始めていました。

トヨタの方は地盤調査をしたようで杭打ち作業が行なわれていましたが三井のほうは何もされていなくて基礎が
出来上がっていました。もともとの土地柄を考慮すれば通常の住宅地のような規模で済むはずはないのですが
そこは大手のやること、お客さんにはきちんと言い訳が出来るようになっているのでしょう。

この造成にはかなりのコンクリガラやいろんな所から残土が運び込まれてきています。それも半端な高さ(深さ)
ではありません。まともな地盤調査などやっても意味がないほど実態を把握できるような地層ではないはずなの
ですが、そこは買う人も他所からの転入者ですから「大手だし、天下のトヨタだから」と完全に信じきっていること
でしょう。

土地に関しては大手だろうと零細だろうと、何十年経っても地層が変わるわけではなく10m以上埋めた谷津に
は何ら変わりありません。ただ、もとの形状が山崩れが起きるようなV字型ではなく底が田んぼだったV字地形
でしたので一番下側の擁壁が壊れない限りは下流にずり落ちることはないと見ています。

それにしても怖い住宅地であり、もとの谷津を知っている人ならば絶対買わないところでもあります。
通りがけに杭打ち作業を見ただけですが、杭の総量から見て、とてももとの地形の支持層まで届いているとは
思えない本数でしたね。


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コラム866 2015年12月01日

大手って何なのだろうA

 住宅とは直接関係ないところで、秋田の太平物産という肥料会社が有機肥料の偽装を行なって民事再生を
申請したとネット情報に出ていました。年間の売上65億円に対して30億円の補償をしなければならないとなれ
ば経営がひっくり返るのは当たり前のことです。

販売量の7割がJA全農窓口だったと言うことで大きな組織を信じて購入していた「有機農法」を看板にして農産
物を生産していた農家はその「お墨付き」を使うことが出来なくなってしまいました。それに対する補償額は全農
が支払うことになるだろうと言われています。

でも、それは中間のやりとりで、本当の被害者は一般消費者であるわけです。広く一般に買われていった「有機
栽培」を信じてすでに胃袋を通過してしまったものまでには至っていません。
それはそれで解決の仕様がないのであきらめるとしても、お粗末なのは農水省の抜き打ち検査です。

そもそも抜き打ち検査に検査リストがあり、それらから該当品を除外していたとのコメントがあります。そんな抜
き打ちは抜き打ちでも何でもなくタダの定期検査みたいなものだと思います。一方、会社側では抜き打ちで持ち
帰った製品にも不正品は入っていたとコメントしており、こうなると「どっちもどっち」で行政も何をやっていたのか
と疑われても仕方がないと思います。

こうなると日本も中国を笑っているどころではなく足元からひっくり返ってしまいそうですが、なぜこういうことにな
ったのかと言う原因に興味があります。

会社が価格競争に押しつぶされて利益確保のためにやったのか。
大きな会社ゆえに上層部からもっと利益を出せと命令されたのか。
あるいはJAなどから無言の圧力があったのかとか・・・。
要望が多すぎて生産が追いつかず数合わせのために混ぜものをやったのか。

大きな組織になればなるほど予定・工程がマニュアル化されがんじがらめになっていきます。そういう中で担当
者は自分の所の手落ちをカバーするために行なったとすれば、それは組織のあり方そのものがおかしいと言う
ことであります。

横浜のマンション杭打ち偽装も同じ要因で起こっているわけで、これとて業種の違いだけで背景は同じだという
ことです。

こうなると大きな組織ほど怪しいことがたくさんあるということになります。まあそれは個人の受け止め方ですか
ら好き好きという範囲で考えられてもいいですが、頭の隅にこびりついたことは間違いありません。


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コラム865 2015年11月30日

大手って何なのだろう

 ここ40年、住宅の主導権を握ってきたのは間違いなく大手ハウスメーカー・ビルダーです。自由経済の世界で
すからその裏づけになる需要があったということになります。こういう中で私が学校卒業以来ずっとこの建築業
界を見てきて「いかに住宅が消費者の手から離れてきたか」ということを強く感じています。

住まいは、「造る」「建てる」から「買う」になってしまいました。今の消費者行動パターンから見ても、展示場に見
に行く・ネット情報を得る・住宅本を読む・・あたりから入ってきています。しかし、そこには昔から家に携わってき
た大工さんの姿はまったくありません。

消費者から見れば情報の出ていないものはないものと同じと捉えられているのでしょうか、初期の行動パターン
を見てみるとそれが大きくずれていないことに少し落胆します。

そもそも、住宅の供給側の形態では世界と日本のパターンが違いすぎます。外国ではセキスイだのダイワだの
と言った大規模住宅会社なんてありません。それに日本という南北に長い国で同じような建物が建ってしまうと
いうことも異様であります。

行政も地震だの火災だの言う割にはすべて数字で評価しようとして変な方向にいく住宅を作り出しています。
長期優良住宅ひとつとってもすべては数字で評価した結果しか見ません。壁倍率と言うのも高ければよいと言う
ものではなく、いかにしなやかに地震エネルギーをやり過ごすかという観点が抜け落ちています。

結局は壁倍率は高ければ高いほど良いという見方をされ、Hメーカーは数字が高いものを売りにして顧客獲得
に走っています。それは建築現場の進行を見ていれば一目で分かります。

消費者は住宅の変化に気付かず、行政の指導はすべて善だと解釈しています。確認申請が通れば、その通り
に作れば質の良いものが出来ると思っています。ある意味それは「危険部分」を含んでしまうことになります。

人々は食料を手に入れようとするときには「中国産か」「農薬の危険は」とか神経質になるほどアンテナを張りま
す。しかし、住まいに関してはほとんど無防備です。どんな素材が使われているのか、どんな加工方法なのか、
部材の耐久性はどのくらいか、などはまずフリーパス状態です。

そこには「大手だから安心だろう」「みんなやっているんだから間違いはないだろう」という中身をみていないとこ
ろがあります。普段の生活で内容を知らないで買うということはまずないのに住宅となるとはなっから信じてしま
うのはどう考えてもおかしいことです。常識的には100円200円のものは穴のあくほど見るのに2000万円となる
と疑いもしないというのは異常です。

VWの不正だって世の中に何万台もの不適切車が走っているのに発覚するまで相当の期間がありました。
杭偽装の問題も、がんじがらめになった下請けが悪いことは分かっていてやったことで、罪悪感なんて殆どない
ことが見たって分かります

ましてこの業界、確認申請が通ってしまえば水戸黄門の印籠をもらったも同然です。それを業者は免罪符のよ
うに使うし、消費者はまったく疑いもせずに「良いもの」と信じています。
結局、日本人は「疑ってかかるよりブランド力」を信じたほうが楽だからなのでしょう。


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コラム864 2015年11月26日

現場を見てない上層部

 ガチガチに予定が決められた現場は何があろうともその通りに遂行することを求められていきます。ですから
最初につまずくと(何か問題が発生した場合)そのあとの工事がすべてずれ込んでいきます。引渡し(竣工)日
がスタートするときから決まっているのですから、最初から何もないことの想定では遅れが出るのは当然のこと
で、むしろ期日内に終わることのほうがおかしいのです。

資材の調達などは段取りの良し悪しで遅れることはあるでしょうが、人的なミスをしなければ計算どおりにいくは
ずです。しかし、お天気ばかりはどうにもなりません。365日雨が降らない国なら何の問題もないでしょうが、4日
に一度は雨が降っているこの国で、天候不順による遅れを考慮していなかったらまず予定の着地には届かない
でしょう。杭打ちや基礎工事ならなおさら屋根のないところでやる作業なので100%影響が出ます。

住宅・ビル・マンションでも地盤調査の上に改良資材を準備しますが、それでも現場をすべて調査しているわけで
はないので現場での誤差が出ると思います。そのときにも「杭が足りない」「入荷するまで三日かかる」などとい
うことになれば、その後の作業がすべて三日ずれ込むことになります。まして、追加予算も出ないとなればなお
さらです。

大手になればなるほどこういったケースを嫌い、すべて工程どおりに進めるように上からの圧力がかかります。
下請けとしては絶対に外せない工事であればあるほどツジツマ合わせをしてでも予定内に納めようとします。
良い悪いは別として、それしか道はないから突き進むわけです。

もう一つ、気をつけなければならないのが遺跡等の埋蔵などが分かった場合です。こればかりは文化財保護法
で建築よりも優先され、どこでもあるわけではありませんが思わぬストップを喰らうことがあります。

まだまだ解決には程遠い偽装事件ですが、このことは構造的に根が深いものがあり、氷山の一角といえばその
通り、この会社ばかりではなく、きちんと期日を守っている会社・大きな会社ほどこの危険性があるということを
物語っています。


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コラム863 2015年11月25日

現場を知らない上層部

 前回書いた「びしょ濡れの現場」以外にも世の中にはたくさんのびしょ濡れを見ることが出来ます。
これらの背景には「現場を知らない上層部の顔」が見えてきます。これは今の現場は「現場作業をしている人」
は「タダの作業者」であって指示されたことだけをやる人で「意思を持って動いている人」ではないのです。

住宅会社といっても現場作業に従事する人はほとんどおらず、事務所に詰めて机の上で現場ではどのようにす
れば利益が出るか、どのようにすればお客受けがいいかを年中考えている人たちがいます。いわば、紙の上で
の「競争に勝てる家」を作るためにシュミレーションをしているのです。

今の家造りはこういうバック事情の中で、資材に多少金額がかかっても、手間期間が短縮できて全体が安くな
る、しかも見栄えが落ちないように研究されているのです。ですから、現場に課せられる仕事の段取り・作業
命令は絶対であり、それに従わない作業者はどんどんはじかれていきます。

営業力を持たない大工さんたちは自分たちよりも素人に近い監督に管理され、決められた工期で工事内容をこ
なしていかねばなりません。たくさん現場をやっている会社ほど各作業現場での作業能力を比較し個人的に競
わせ優秀な人の手間を基準に据え、能率の悪い仕事しか出来ない人は賃金が落ちていくように仕組まれます。

現場作業の優秀な人でも何かあれば失敗した内容によって責任をとらされますから、指示内容のなかで無難に
作業し、手間からはみ出るようなことは一切やらないし、「顧客には余計なことは一切言うな」と住宅会社から
きつく言われているのです。

世間の工事現場ではみなこのような背景があって、進行上不都合・不適切なことがあっても「俺には責任のな
いこと」とされ、濡れていようがかびていようが修正されることはありません。さらに都合の良いことに、完成した
ものだけ見て契約し、現場にはほとんど来ない建て主さんが多いことです。

たとえ、見に来たとしても、営業マンに気付いたことを言ったとしても「丸め込みのプロ」の訓練を受けた人に言
われれば「そうなのかな」と引き下がってしまいケンカにもならないでしょう。まして、分譲建売りともなれば中間
なんて見る機会もありません。


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コラム862 2015年11月19日

これでいいのか、びしょ濡れ住宅

 最近の住宅は、ツーバイを含め木造と言っているものまでびしょびしょに濡らしながら建てています。資材は
乾燥したものでなければいけないとか言われている割には日本の天気を無視したやり方でやられています。

自宅から会社事務所に向かう1kmくらいの所に日立製作所の寮が建っていたところがあり、いまはその寮は
解体され、広い敷地の一部が分譲されています。すでに先行して二軒の家が建っていますが、三軒目に建った
家は完全なパネル工法の家で、ここのところの天候不順で何度も雨に当てられています。

作業の進み具合は、1Fの壁が終わり2F床の施工に入ったところです。その様子を見ているとまさに無防備状態
であります。屋根がない訳ですから降った雨は外へ出ていくことは出来ません。理由は簡単、1Fの壁に邪魔さ
れて100%建物内にとどまります。それはやがて床下へ染み込んで行き、床断熱をたっぷり濡らし、ベタ基礎の
上に溜まり続けます。

このことは2Fの部分を作るときも同じです。屋根が出来るまでの雨降りは2Fの床をずぶ濡れにし、外に漏れる
ことなく、下へ下へと降りていきます。行き着く所は同じく床下へ・・・です。そして、作業はそんなことはなかった
かのように次々と進められていきます。

忘れ去られた床下の水はベタ基礎の下に防水シートが敷かれているために行き場がなく全体がプール状態に
なります。このシートはベタのコンクリートを打つ場合には早く水が引き過ぎないように作用するためコンクリート
の硬化作用にとっては良いのですが、このように固まってしまってからの排水に関してはマイナス作用となって
しまいます。

コップの頭を塞がれた中身の水はどこへも逃げ場がなく、ただただコンクリートが水を吸って外皮部分から乾い
てくれるのを待つだけで、とてもとても全部が乾くまでには時間がかかります。そのうちに気温が上がったりすれ
ば、カビの大発生となり、近辺の合板や木材が腐りだします。

これに追い討ちをかけるのが基礎パッキン工法です。従前のような通気口のないこのタイプでは、外壁の仕上
げに隠れてしまい直線的に風が抜けてくれません。よほど風が強くない限り床下の空気はどんよりと淀んでしま
い動いてくれません。これがさらに状況を悪化させます。

乾燥した資材が湿気る濡れることは良くないことですが、その次に腐りが始まることは住宅寿命に致命的なダメ
ージを与えます。直近では何ともなくとも必ず資材寿命を縮めます。それは10年で起こるのか、15年で起こるの
かわかりませんが、カビの発生、腐りは必ず起きてきます。早い例では5年で症状が起きたケースがあります。

アパートなら「引っ越せば・・」で済みますが、持ち家となれば大修理が必要となり、ローンもたっぷり残っている
所にさらに修繕費用が必要になりダブルパンチを食らうことになります。

なぜ、こうまでして作業するのでしょうか。私には理解できません。


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コラム861 2015年11月12日

デザイン・コストが優先される住宅

 雑用で外出する機会があるといろいろな道を通るようにしています。そこで目にするのは街の変化であり、住
宅の変化です。職業柄、どうしても建物に目がいってしまうのですが、誰が主導権を握ってその住宅を作ってき
たかが想像できます。

一番先に除外されるのが建て主であることはほぼ間違いありませんが、そこの住宅に住んで影響を受けるのは
建て主さんなんですね。実に不思議だと思います。昔から「住宅は新製品の実験台」だと言われてきました。
実に「言い得て妙」であると思います。

建てる側(業者・設計士)は次々と出てくる資材を使い試しするチャンスであるし、資材を作る側としては一番先
に取り入れてもらうにはだれに情報を届けたほうが良いのか、それは工事を実行する人に知ってもらうのが最
良と考えていました。ですから、見積りが来て初めて新品種の型番等を知ることになり、あわててメーカーに問
合せすると言ったことが何度かありました。昔から、私らの所よりも設計士の所にカタログが届いていたのはそう
いう理由からだったのです。

確かに主導権を握って住宅界をリードしてきたのは設計士でしたが、いまではビルダーが抱える若干の設計士
とパソコンでそのトレンドが引っ張られています。そこには相変わらず建て主さんは不在で、いかに消費者受け
するか、そのうえで原価のダウンをどのようにするかを研究されています。彼らにとって「無駄」というのはコスト
を下げるために出来ることを意味し、クレームの出ないレベルであれば建物にとって良いか悪いかは関係ありま
せん。

研究されるものは工法から資材あるいはセット物などの完成品まであります。例えばネダレス工法なら構造体
も909mm間隔でマスのようになっており、24mmや28mmの厚い合板が一枚、パタッと乗ると言った具合。
工期も早くするためには大工さんの手間がかからないような方式が採用され、多少部材価格が高くとも全体で
安く上がるやり方が優先されます。このネダレス工法もその典型と言えます。

工期を早くするには大きな面積をパタパタと施工できることが必須になります。その代表格はスジカイの代わり
の面材使用でしょう。これなどは確実に工期はスジカイ施工よりも短縮できます。たとえ、面材の金額が高くなっ
ても工期が短縮できれば工事全体で早く終わるわけですから商品回転率に貢献することになります。

大手のビルダーでは工期が45日とか言われるものがあります。こういった建物には左官などのいわゆる水物
はまず使われません。塗り壁などは水でこねて塗りつけるものですから乾かす時間が必要になってきます。そ
れだけですでに一週間などの期間がかかってしまい、業者の完成工期を延ばしてしまいます。

そういった現場では、壁のように見える「壁クロス」が貼られて和室が出来上がりとなります。同じように見えま
すが壁ではなくクロスですから湿気の調整機能もゼロですし、クロスの化学物質がじわじわとしみ出てきます。
そういうことを知らない消費者の方はほとんどがものごとを性善説で見ており、我が身に危険が迫ってくることな
ど考えもしません。

世の中、メリットがあれば必ずその裏にデメリットが存在します。これはひねた考えでも何でもなく、正面から見
た現実です。


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コラム860 2015年11月10日

近所の競売物件E

 相変わらず仮設トイレは設置されていません。今でもきっと立ちションなのでしょう。リフォーム現場で設備が
入るのは最後でしょうし、仮に早く設置されたとしても使うことはしないでしょうから現場が終わるまでずっと「立
ちション」なのでしょう。工事が終わるころには「ほどよいニオイ」がたちこめることでしょう

今朝も雨の中、資材が運び入れられていました。ここの土地は直角台形の斜面部分に道路が接している土地
なので、ちょっと何かが置かれていると車が道路にはみ出してしまいます。販売チラシには「駐車場2台分確保」
と書かれていましたが普通の運転技術の人ではとても無理のような感じです。

数日前に単管足場が組まれ防風ネットが張られましたから余計敷地余裕がなくなっています。そこへきて、この
駐車スペースにはすでに大工さんのライトバンが止まっており余裕はすでにありません。今朝の納入車も道路
に駐車したままで荷物を下ろしていました。道幅も5mしかなく誰か車を止めていると通行は出来ません。朝晩は
けっこう団地内の人の車が通るのですが、みんな事情を知っているので迂回して出勤しているようです。

内装の中身をチラッとみてみると、和室はほとんど洋室に作りかえられています。本来なら旧壁を落として下地を
やりかえるのでしょうが、そこは省略されていて塗り壁と和室柱のギャップを補助桟で埋めて石膏ボードを張っ
ています。こうすればゴミは出ませんから好都合なのでしょう。仮にこの新居住者が仕上り面を見てもわかるこ
とはありません。

床は畳を撤去したあと、その下地はそのままで調整用の桟を打ちつけ床の仕上り面が平らになるように下地合
板が張られました。仕上げ材は普通のハウスメーカーが使うような安いタイプの12mmフローリングです。
石膏ボードはこれまでに3回ほど運び入れられました。現場が狭いから一度には無理なので分けて納入してい
るものと思います。それらを合計すると150枚は下らないでしょう。枚数から想像しても壁・天井はすべてクロス
であることは間違いないと思います。

これはけして違反建築でも何でもないですが、これでは私らが主張しているきれいな空気環境は望めません。
他人様の家ですからどうこう言えることではないですが、どうぞ病気にならないでくださいねと祈るだけです。


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コラム859 2015年11月09日

今月の勉強会

 昨日は、予定通り11月の勉強会を開きました。9名の参加をいただきました。遠路よりお越しの方もおり、大変
お疲れ様でした。

今回は業者の話ということで基礎屋さんが出席してくれました。同じ建築の世界でも業種が違うと知識の中身も
まるきり別世界です。コンクリートの話しは特に興味が湧きました。目の前で作業されていることでもその内容が
わかっていて見ているのかそうではないのかは大変な違いです。

昔の基礎と今の違い、立ち上がりの高さが影響を及ぼすこと、床下の通風と換気口、犬走りとシロアリの関係、
独立基礎など、時間もいっぱいに話していただきました。

棟梁からも、ホールダウン金物やアンカーボルトの位置と土台・スジカイの関係などを話していただきました。みなさんも
ただ漠然とコンクリートが流されて基礎が作られているのではないことをあらためて勉強出来たと思います。

聞いていた皆さんも通常書類の中だけでしか縁のない業種に入ると思いますが「なるほど、そうだったのか」と
別の角度から理解をされたのではないかと思います。

出席してくださった基礎屋さん、棟梁、あらためてありがとうございました。


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コラム858 2015年11月06日

偽装杭打ちから学ぶことA

 杭打ち(地盤改良)の指導は住宅でも多く出ており、マンションほどは大規模でないにしても地耐力3.0を下回
るとほとんど「改良指導」という書類が届きます。しかし、これには受け止め方がさまざまで、住宅でそこまでやら
せるのかという意見が多いのも事実です。

私らの場合は、検査するときには必ず現場立会いをやっています。これらの作業を見ているだけでも回数を重
ねると中身の良否がわかってきます。

通常、スウェーデンサンディング方式で行ないますが、まず住宅の建つ四隅を行い、同じようなデータであれば4ヵ所で
終り、1カ所でも違う感触であれば家の中心をもう一度調査します。これは今まで見てきた経験からみると妥当
な調査の仕方だと思います。

この作業で約1時間から2時間ほど、記録したデータをもとに通常の基礎でOKか、地盤を改良した上で基礎作
業を行なうかの分析データが送られてきます。最近、いろいろなところで偽装データの話が出てきますが、それ
に関係しているのかどうか分かりませんが改良指導を強く言ってくる地盤調査会社が目立つ気がします。

どこまでがだめでどこまでならOKかという、いわゆるグレーゾーンのケースが多くみられます。疑わしきは・・・と
いうことなのか、分析してOKだと思っても何かあったら責任を取らせられるのがいやだから改良指導を出してく
るのか。その裏事情は分かりませんが、今まで同じような家が建っていて異常は見つからなかった場合でも指
導がくる場合が多くあり、こちらとしてもその真意をつかみかねています。

それは建て主さんも同じ思いを持っているようで、今回の水戸市双葉台の建て主さんも同じでした。ここの場合
地耐力は4点とも3.0でした。調査していたときから「ここは大丈夫だな」と思っていましたら、鋼管杭打ち指導が
来てしまいました。その内容は3.1に達していないからという理由だったのですが、ここはどこも平均していてバラ
つきがない土地でしたので意外でした。

わずか0.1で100万円近い出費を強いられるわけですから建て主さんとしても悩んでしまいます。結果的には
建て主さんと設計士さん棟梁が協議して杭は打たない方向で行くという結論を出しました。

その理由は、今までにも(あの震災にも)屋根瓦がほんの少しずれただけで大きな被害がなかったこと、
建て替える家の形状もほとんど同じであること、周囲の地区の被害もほとんど出ていないことがあげられました。
以前の布基礎よりベタ基礎で施工するので地耐力が増すこと、データをみても平均していること、特に大きな欠
落点がないことでした。

なぜ、杭打ちをするか、それは硬さ(深さ)にムラがあると不同沈下することです。たとえ数値が0.1足りないとし
ても地盤が平均していて同沈下することで傾斜が起こってしまう心配はないと思われることです。仮に全体で2c
m下がったとしても家自体には何の影響もないわけです。

横浜のマンションの場合は知らされないで起こったことです。我々の場合は三者で充分検討のうえ結論を出し
ています。そこの違いは大きいと思います。


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コラム857 2015年11月04日

偽装杭打ちから学ぶこと

 まだまだ、横浜マンションLaLaの杭打ち偽装問題は広がり続けています。これはマンションですから少なくとも
一本にかかる圧力は住宅の基礎杭打ちなどのレベルではないはずです。マスコミでは「旭化成建材」がいつも
画面に登場していますが、実際にこの親は三井であるはずで、窓口責任をとるのはすべてこちらの役目と見て
いました。

ところが、全棟建て替え・引越し費用・慰謝料まで出すと格好良いことを言ってその後は殆ど顔を見せません。
過去に姉歯の耐震偽装でヒューザーの例がありましたが彼の会社は破産させられました。根底の問題は全く
同じなのに片方は良いとこ取りで安泰を決め込んでおり、ちょっと客観的にみても腑に落ちません。

建築を請け負うということは親がすべてを行なうのが筋です。しかし、この業界の構成はピラミッド型になってお
り、孫、曾孫、さらにその下までいます。得意分野でそれぞれ活躍するというのは理想ですが、体の良い王様と
奴隷である関係には変わりありません。

何かがあったらすべて親が責任をとるといったら今のゼネコンは存在し得ないかもしれません。それでも生き抜
くとなれば3次4次下請けとは言え、すべてに立ち会ってチェックするはずです。こんな簡単なことがなぜゼネコ
ンで出来ないのか不思議だと思います。

消費者も「やすいことは良いことだ」と言うばかりではなく、もっと質を重視する目を持ち、価値ある物にお金を出
すと言う考え方にならない限り、いつまでも騙される体質は直らないと感じます。

財閥はなぜ財閥なのか・・・、それはやることをやらないでお金を溜め込んだからだと言われても反論できないと
思います。


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コラム857 2015年11月02日

近所の競売物件D

 それはやっちゃいかんだろう・・ 立小便!

かなりのリフォームになるこの家では水回りの設備も更新するようで、当然のようにキッチン・トイレ・バスなどは
入れ替えの対象です。ということは、工事の人にとっての生理的現象は仮設トイレがないと用が足せないことに
なります。

駐車場確保のこともありますが仮設トイレは今の時代必須です。それが最初からこの現場はありませんでした。
不思議だなと思っていましたが、案の定でした。西側お隣との間にシャー。さすがに北側は向うさんの南側にな
り恥ずかしさがあるのかなぜか狭いほうで用足し。

これだけの工事をやるにしてはこの会社の管理が良いとはいえません。販売用のポストを設置するのならまず
は工事用の駐車場確保と仮設トイレの設置でしょう。いくら自分の敷地内とは言え、これはモラルの問題です。

最初に入っていた会社案内のチラシは、この家の宣伝チラシに変わっていました。売り出し価格も当初より
200万円くらい高い設定になっていました。1500万円近い価格で売り出すということになっていましたが、工事
内容を見ていると最終的に値引きを想定しても充分に経費は確保しているように感じます。

二ヶ月近い工事期間を考慮したならば仮設トイレの費用など数万円で済むことです。そんな金額をケチってどう
するのと言いたいところです。

私の管理している現場ではないので、路上駐車なら言えますが宅内の立小便まではねえ。


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コラム856 2015年10月30日

近所の競売物件C

 ここの現場は三人の大工職人さんが来ています。それぞれバラバラに車で来るので一台だけは現場に頭を突
っ込んで尻をちょっと道路に出した格好で停めています。他の二台はどこか近くの畑のあるようなところへ寄せ
て停めているようです。

一昨日の夕方、近所の人から路上駐車をしないで欲しいといわれたようで、帰り際に西側の駐車場を貸してい
るお隣さんに聞いていました。どうもこの元請さんはそういった手配はしていないようで駐車するなら個人的に
見つけるように仕向けているようです。

通常なら、そんなことは出来ないのでしょうが、まだまだこの業界では意識が低く見て見ぬふりでやってしまおう
という風潮があるようです。

孫の散歩のふりをして近づいて行って聞いてみると、断片的な話しですが、一台は空いているからそこへ停める
ようになったみたいで、あとの一台はどこか他を探すみたいです。

確かに巾の広い道路なら問題もないでしょうが、この時代に作られた団地と言うのは、せいぜい5mくらいの巾
しかなく、ちょっとした資材の積み下ろしなら許されるとしても一日中路上駐車では苦情が出るのは当然です。
今の時代、何かをやるにはそういったこともきちんとしてからやらなければ、家の人も評判を悪くしてしまいます。

それにしてもここの職人さんは8時から5時まででぴたっと作業をやめてしまいますね。聞くところによると、この
人たちは1日いくらの「常用」扱いということで動いているそうです。

なるほど、それで余計なことはやらないのか・・・と。


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コラム855 2015年10月29日

近所の競売物件B

 少しづつ、内容が分かってきました。ここの西側お隣さんの話では、銀行から375万円で買ってくれないかと持
ちかけられたそうです。このお隣さんは自分の敷地の西側に親から受け継いだ土地があり、現在は近所の人に
駐車場にして貸しています。よって、もうこれ以上余分な土地は要らないということでこの話しは断わったそうで
す。
銀行も抜け目がないようで、何とか競売にする前にほどほどの値段で売り払ってしまおうという考えでしたが、
そうはうまくは行かなかったようです。

現場では大工さんが作業を開始しましたが、最初はまずは不要部分の解体からです。しみになった壁・天井・床
などをはがして外に置いてある1t袋という吊り下げられるようになっているゴミ袋に入れていきます。解体ゴミと
いうのは結構がさばるので、たちまち3袋が一杯になっていました。袋はその日の夕方には運び出されたようで
す。

その翌日には新しく取り付ける資材が搬入されてきました。その内容を見ると部屋には石膏ボードとベニヤ、外
には下地用木材が一抱えほど積まれていました。何をどのくらい手をかけるのかこれからその内容が次第に分
かってくると思います。

屋根や樋は現在のままで塗装をするのだとか、給水・排水管もいじらないでそのままらしいです。なるほど、ほど
ほどに塗装で新しく見せる作戦らしいです。それではコストもかからないでしょうから1290万円ではぼろ儲けに
なりますね。(買う人はその後の手入れが大変になりますが)

もう少し見てみないと詳しくは分かりませんが、ビジネスとして割り切ってやる人は「見せ方」が上手であるという
ことは間違いないですね。


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コラム854 2015年10月28日

近所の競売物件A

 この敷地は変形で直角台形の斜面に道路が接しています。面積は約50坪程度ですからけして利用しやすい
ほうではありません。当時、造成販売した頃はこういう土地でも結構売れてしまったでしょうが、今ではこの倍は
ないと狭いと言われ、買い手はつかないでしょう。

私から見て、この家はリフォームするには金がかかりすぎ、手を加えるのは投資とリターンのバランスが取れな
いと思っています。(競売がかなり安くなっていれば別ですが)想像ですが350万円くらいで落札したのではない
でしょうか。
その根拠としては、この辺の土地価格が坪10万円程度であること。訳有りの物件だから七掛けとして350万円。

建物はゼロとみて、ゴミ屋敷のゴミ処理料が80万円、リフォームにかける床・壁・外壁・屋根・給排水・キッチン設
備・トイレ・風呂まで範囲に入るので500〜600万円はかかると想定。
計算上は360万円ほど利益が出る設定でスタート、売り値ダウンも100万円くらい見て正味260万円というところ
が最終的に落ち着くところでしょうか。

まあ、この手のリフォームはどこまで金をかけるかでしょうが、駐車スペースが1台しかないこと、向こう側のおと
なりさんがネコ屋敷と言われるほどたくさんのネコがいること、そしてだらしのない飼い方で近所の評判が悪いこ
となどを考慮すると、ここに引越してくる人はかなり勇気のある人でないと嫌気が差すことは確実であります。


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コラム853 2015年10月27日

近所の競売物件

 我が家から50mほど離れた住宅地の一角に競売に付された一軒の家があります。数年前からもと住人の方
はどこへ行ったのか空家状態が続いていました。人の住んでいない家というものはたちまちゴミ屋敷に近い状
態になり、テラス・カーポートの屋根はボロボロ、庭木も伸び放題。となりの人にはいい迷惑で、自分のところに
どんどん伸びてくる枝を切ってはその敷地に投げ込んでいました。

つい2週間ほど前のこと、
このたび、めでたく競売が成立したのか、八王子ナンバーの業者がきて、塀の所に「好評販売中」の幟を何本
か立て、門のポストに自由持ち帰りチラシBOXを設置していました。聞くところによるとリフォームした後に再販
するそうです。

図々しく近づいていって「どのくらいで売りに出るのですか」と聞いてみたところ、「そうですねえ、まだはっきりし
た金額は出ていませんが、1290万円くらいを予定しています」というお返事でした。

う〜ん、1290万円か、難しいだろうな・・、かなりこれは競売額が安くなければ足を出すかもしれないと思いまし
た。

この家の築年数は約35〜40年ほど、家の傷み具合もかなりきています。その営業さんとお会いした数日後、ゴ
ミ片付け委託の業者らしき人たちが3〜4人で5日くらいかけて「家以外のゴミ」をせっせと片付けていました。

「いやあ、この家はひどいわ」「いままでで最悪の家だね」「二階には飲みかけのペットボトルまであったわ」
「私らは依頼されたからやっているけど、どうやったらこんなに汚く生活できるのかね」とぼやいていました。

競売されるくらいだからよほど荒れた生活をしていたのでしょう。
その「もとゴミ屋敷」がきれいになって、いよいよリフォーム作業が始まりました。


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コラム852 2015年10月26日

杭打ち偽装

 震災などで大きな力を受けて傾いたのとは違う建物の異常は、単に「きちんと仕事をしなかった」ために起こっ
た欠陥事件でした。名の知れない工事業者ならまだしも、一応は「一流」と言われたブランド力を持っている会社
だから話題性も倍増したと思います。

三井不動産グループ(三井不動産レジデンシャル)は、いち早く建て替えを表明しました。しかし、この裏ではイメ
ージダウンを回避するためにと評する人も多数いて見方が分かれるところです。まあ、親はそれでいいとして、
こういうマンションの建て替えとなると住民の多数が賛同しないと実現は難しいと聞きます。果たして、即工事に
かかれるのでしょうか。

仮に最速で実現したとしても4〜5年はかかるのではないかとみています。事の発端は接続部のひび割れ段違
い現象が起きたことですが、不正をしたといわれる41ヶ所の現場では群を抜いて23ヶ所と愛知県が多く、知事も
自分の県を最優先にやるべきだという意見を表明しています。

これほどの不正をなぜ出来たのか不思議な気もします。その理由を「一流だから」と言ったかどうかは知りませ
んが、もしそうだとしたら「一流って何なのだろう」「チェックもフリーパス」だったのだろうかと思ってしまいます。

硬い支持層まで入っていないとか届いたけれど改ざんしたとかいろいろ言われていますが、傾いたのは事実で
そのほかの現場で同じようであればこの会社はすでに吹き飛んでいることは間違いないでしょう。下請けといわ
れていますから元請が存在するはずで、心配なのは関係した会社全部だと思います。

小亀、孫亀がひっくり返ると親亀がこける・・・

単純に言って、杭打ち作業なら現場で見ていればちょっとかじった人なら誰でも分かると思うのですがねえ。
親の責任として立会いもやっていなかったのでしょう。


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コラム851 2015年10月24日

太陽光発電その後A

 世の中で一番信用できないものが「国の統計」だそうです。特にいまは中国が当てはまるようですが、それは
それとして。

「300kwの発電で250kwになってしまうというのは、装置自体の自家消費が入るからなのですか」
    「いや、それも多少ありますが、直流を交流にするということはそっくりは出来ないんです」
    「それを理解していただくにはかなりの専門的な説明をしないといけないのですが」
「キューピクルの中身は我々の受電設備と殆ど同じなのですか」
    「はい、交流を生産・送電しますから理論的にはほぼ逆になります」
    「主なるものはトランスとコンデンサですね」
「だから、きちんとした管理が必要でということなのですね」
    「はい、そういうことになります」

私らの小さな受電設備(65kw)でも毎月管理者が来て絶縁状況などを詳しくチェックしていきます。勿論有料で
一ヶ月あたり15,000円の費用がかかります。この設備だと我々よりももっと管理費が高くつくのは確実だと思い
ます。

「お天気相手だから300kwでもピークの数字ですよね」
    「はい、その通りです」「お天気によって発電量はさまざまです」
    「見積り計算するときは全国平均的なデータをもとに算出するようにしています」
    「ここでは1.6m×1mのパネルを使用しています」「一枚あたりの発電量は270wです」
「この制度(FIT)が出来た当初よりも設備価格が下がっていると聞きますが」
    「はい、確かに機材の一部は下がったものがありますが全体的に見ると数%というところですかね」
「それではネット上で言われているほど投資額が下がったわけではないのですね」
    「はい、一部の機材は当てはまるものもありますが人件費などは若干上がっていますから」」
    「当初、40円台だったものがいまは27円ですから、初期にやられた方よりは回収期間がかかります」
    「ですから、当初にやられた方よりは間違いなく不利になります」
「警備の面から言えば殆ど無人ですよね」「盗難の可能性も充分あると思うのですが確率としてはどの位・・・」
    「そこまでのデータはありませんで、お引渡しをしてしまってからですから特に統計はとっておりません」
    「はい、それはオーナー様で保険を掛けていただくしかありませんねえ」

う〜ん、思ったよりずっと大変そう。


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コラム850 2015年10月23日

太陽光発電その後

 二日ほど前、事務所ナナメ右前方奥の設置された太陽光発電の担当業者がすべての工事が終了しましたの
でと挨拶に見えました。この際だからこちらも知りたいことがあったのでお茶などをお出しして少し中身のことを
聞いて見ました。

単刀直入に、まず「高圧変圧設備の値段はいかほどですか」という質問です。
    「約400万円ほどです」とおっしゃっていました。
「その耐用年数はどのくらいですか」と聞きましたところ
    「そうですね、メンテをしながらという条件ですが17年とみております」
    「何しろ、高圧ですから保守管理が必ず必要ですから」

たしかに、私のところの受電設備も月に一度保安協会の人が来てチェックしています。
6600Vの線に乗せるのですから何かあったら大変ですからね、当然だと思います。

「高調波とかの心配はないのでしょうか」
    「以前の中国製の製品ならそういうトラブルがあったようですが、私どもは対策をしっかりととっています」
    「出さないというわけにはいきませんが、それは極力鉄で覆って外部には漏れないようにしましたから」
    「それでも、ここは数Ωに落とすのに苦労し、27本のアース棒を打ち込みました」
「300kwの発電で実際に送電できるのはどのくらいになるんですか」
    「はい、実際にはピーク計算で300kw出たとして電力会社に出せるのは250kwになります」
「投資金が回収できるのはどのくらいかかるのでしょうか」
    「私どもの設備だけで言えば13〜14年で回収できると見ています」
    「こちらのオーナー様が他にどれだけ工事費がかかったかは存じておりませんがそれは別になります」

ふむふむ、そうなると山林伐採・処理、柵の外の工事、つまり6600Vの電線のあるところまでの電柱と電線の
費用は別ということになります。単純に考えても15年以上は元金回収にかかるということです。

大変な冒険です。


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コラム849 2015年10月22日

県内業者(ビルダー)の自己破産A

 昨日の続きですが、このビルダーの負債額は6億と出ていました。仕掛かり棟数(未完成)が25棟と言われて
いますから平均仕上り月数を5ヶ月とすれば月5棟を受注していたことになります。

これから計算すると一棟あたり2000万円とすれば1億円が月商と推測され、毎月の支払いが正常に行なわれ
ていたとすれば、納入月も入れて2億円が工事金関係の負債分ということになります。 ということは4億円は
時間差攻撃で浮かした金額ということになります。つまり、結果的に4か月分の支払うべき分を支払わず他へ流
用していたということです。

この「支払うべき分」というのが資材等の納入業者への支払い引き伸ばしで浮かせていたことになります。
あくまでも想像の域ですが、この会社は手間を除くほかの支払いを4ヶ月から5ヶ月くらい支払わなかったという
こと、そういう資金繰りでやっていたということです。展示場建設などの資金は、ある程度銀行借り入れをしてい
たと思いますが、極力押さえ各納入業者には使う部材等はただ同然の提供をさせていたと思います。

それでも展示場一ヶ所を開くということは当たり前に作った建築費の7割くらいは資金が固定します。タダ金で
やろうと思えば思うほど関係業者に負担をさせることになります。
HPにあるように水戸と北茨城にすでに展示場があり、他、今年の5月にもいわきの展示場をオープンしました。
これも急に負債額が増えた原因だと思います。

ここまでは私の「あくまで想像」の実態です。「あくまで想像」ですから。

このほかにも金銭の絡まない無償労働があります。
大概のビルダーは棟数をエサに「お前の所から資材を買ってやるからイベントのときに協力しろ」と圧力をかけて
きます。それで断わるとパッと納入業者を換えられてしまいます。ですから、継続して買ってもらいたいと考える
業者(建材メーカー)は日曜日でも祭日でもビルダーの半纏(ハッピ)を着せられ、さも社員のような顔をして、そ
のビルダーのイベントに協力させられます。

一度くらいならまだしも、あっちの見学会、こっちの見学会、どこどこの見学会と、月に何度もタダ働きさせられる
と本業の労働意欲さえなくなります。ある建材メーカーの担当者は嫌気がさしてこの業界から去っていきました。
今であれば「タダ働きのブラック企業」でネット上で血祭りにされ社会問題になるのでしょうけれど。

他人のふんどしで相撲を取り、儲かったら俺の腕!、損をしたら他人に押し付ける。そんな経営構造がこの建築
業界には堂々とまかり通っているのです。


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コラム848 2015年10月21日

県内業者(ビルダー)の自己破産

 以前からきな臭い噂のあった北茨城市のビルダーが自己破産しました。この一ヶ月前にはここと取引のあっ
た栃木の販売店が自己破産しています。連鎖というケースよりも、相手の不払いで自分が先に参ってしまった
ケースです。ビルダーは棟数をやっていることをエサに価格と支払いサイトを徐々に延ばしていきます。販売店
は数字の魔力に負けて少しづつ自分の首を絞めていきます。しかし、それも時間の問題で必ず終りが来ます。

数年前にもこれと似た倒産劇が水戸市でありましたが筋書きはほとんど同じです。販売店も規模を縮小するの
は難しいし粗利が薄くとも売上は欲しいとなる。そこへ支払いサイトを延ばされたのでは底なし沼に足を突っ込
んだことと同じになるわけです。形は商取引ですが体の良い「飼い殺し」です。

こういうことは何度でも繰り返されます。そのたびに建て主さんと現場作業者・納入業者の両方から被害者が
出ます。メディアでは建て主ばかり被害者として取り上げられますがけしてそればかりではありません。

ネット上ではこの会社の噂が以前から出ていましたが、適当に身内の人が客のふりをして打ち消していたりして
真実はなかなか分かりません。建て主さんはこういった情報程度しか入ってこないでしょうけれど、現場をやっ
ている職人さんはナマでみていますから情報は確かです。両方ともダメになる数日前から「確実である」という
話しが出ていました。

ここでしっかりと確認しておかなければならないことがあります。建て主さんは建物が完成して登記して初めて
法律的に自分のものと主張できます。それまでは依頼したビルダーに所有権があります。納材業者も同じです。
裁判になっても「債権者」としての立場で争うことになります。

優良だと言われている業者でも煙が出掛かっている会社でも真実の裏事情はほとんどわかりません。
唯一、自分で出来ることは「過払い」をしないことでしょうか。何事にも100%の信用なんてしてはいけません。

信用の意味は少しずれますが、三井住友だってあのザマですから。
旭化成建材の後から出てきた情報は「他にも10数件のごまかしをやっていた」だったでしょ。
やっぱり、一ヶ所だけではなかったのですよ。


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コラム847 2015年10月20日

下請けのやったことで・・・A

 前回、単独の建物だったら傾斜の異変を誰が気付いたか、殆どの人が2cmくらいでは(高さからして)気が付
かないだろうと書きました。いまやマンションと言えば10F以上はザラです。ましてや、都市部なら土地が高いか
ら階数をたくさんに設定しないと一戸あたりのコストに跳ね返ってきてしまいます。

ここ、ひたちなか市の駅周辺でさえ12F建てというのは普通ですから想像できることです。杭が支持層まで届い
ていないと言うのですから徐々に傾きは大きくなってくると思います。もしこの建物が担体で何事もなく2cm位で
傾きが落ち着いてしまったなら果たして分かったかどうか。私は分からないと思います。あくまで偏見です。

こうすれば絶対こうなると分かっていれば工事担当者(不正をした人)もやらなかったと思います。一件出たとい
うことは他の工事はどうだったのかと疑いたくなります。私の偏見ですが、他でもやっているでしょう。組織で動
いているのですから個人プレイなどは考えられません。

当然のように国交省もその線で動くでしょうが、恐々としているのは他の建設会社も同じだと思います。これによ
って、また役人の書類が増え検査が増え建築コストが上がっていきます。かつてのアネハがそうでしたから間
違いないでしょう。

一会社の不正はその後の世間の仕事を複雑にします。大義名分とは行政のためにあるようなもので、これでま
た公務員を少しだけ増やす口実ができてしまいました。安倍君の「一億総活躍?」「何とか大臣」なんてわざわざ
作らなくても長いスパンでみると、国民の負担は増えるばかりです。同じ建物を作るにしても「事務系コスト」は
これで格段に高くなっていくのは確実です。

ある意味、2%インフレを奨励している国としては腹の中ではほくそ笑んでいるのではないかと思います。だって
一つの建物で、結果的に二倍の金をかき回したことになるのですから。

こういうのは成長率には入らないか。


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コラム846 2015年10月19日

下請けのやったことで・・・

 天下の三井住友建設が大きなミスをしたが、それは本体が欠陥ではなく、下請けの杭打ち作業を担当した旭
化成建材という会社だった。「一流」という、いわゆるブランドはあっけなく崩れ落ち株価の急落も止まらない。

基礎がダメならそのうえの「上物」は建物として成立しないわけですから当然といえば当然です。なぜ分かった
かというと独立したA棟とB棟とをつなぐ「渡り廊下」みたいな部分にずれができて発覚したようで、これが単体だ
けの建物だったら気付く人はまだいなかったのではないでしょうか。

いずれにしても手抜きをやったのは事実のようで、あとからごめんなさいと言っているのですから一流ブランド会
社としては建て替えしかないと思います。

建て替えが出来る(資力のある)会社だからまだ良いとしても、このような一流と言われる会社がなぜ手抜きを
することになったのか。私はその裏側の事情のほうが興味があります。

建設業界の構造はピラミッド型になっていて、大手であっても自分で直接手を下す工事は殆どなく、どこかの
協力会社(下請け)があり、そのまた孫請けまでいると言われています。そのような構成で世の中の工事は進め
られており、ほぼ例外なく「王様と奴隷」の関係になります。

建築業界に限らずそのような関係は存在しますが、ある程度経験が必要でしかも転職が難しいのはこの職種
の特異性だと思います。組織の中で失敗は許されない「成功」だけが生きる道とされる立場になってしまうと
人間窮地に追い込まれると「何とかしてしまおう」ということになり、不正に手を染めることになってしまいます。

けして、不正をやった担当者を擁護するつもりはありませんが、組織の構造からして「そうならざるを得ない」状
況に置かれてしまうのです。物にはすべてコストがあり赤字を続ければ破綻を意味します。昔のように右肩上が
りの時代は今の現場で損をしても次の現場で何とかチャラになるといったことが出来ました。いまの時代はそれ
がまったく出来ません。つまり、赤字は直接「死に至る」ことを意味します。

売上は確保しなければならず、必ず利益を出さなければならないというのは中小であろうと大手であろうと同じ
なんですね。私は最初から「大手だから安心だ」などということは信じていませんけど、世の中ではまだまだブラ
ンド志向は根強いですからこういったことが起きても不思議ではないと思っています。

こういったケースはまだまだ出てくると思います。いわゆる「氷山の一角」というやつです。「建て替えをします」と
いう親会社はその下に責任を取らせまた絞り上げますから全体で見れば潰れるようなことはないでしょうけれど
も、不正をやった会社は致命的な傷を受けるでしょう。

本質は「アネハ」のときと同じなのです。


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コラム845 2015年10月16日その2

まだ屋根が出来ない

 コラム840 9/25に書いた「びしょ濡れの現場」の話しですが、お隣の住人 I さんから今朝ほど電話があり、
「まだ、屋根が出来てねえぞ」ということでした。前回お邪魔したのが19日だったと思いますので、単純計算でも
一ヶ月かかっても屋根までいってないということになります。

私が今まで見てきた現場の中でも最長記録だと思いますが、これだけ長ければ1F床下はどのようになっている
か、少なくとも数センチくらいは水が溜まっているものと想像がつきます。良いか悪いかは別として、これから起
こるであろう現象は「カビ」です。この家は100%カビの発生があります。そのことにより床下は早期に腐りだし
10年以内に床が落ちるでしょう。

なぜ、10年以内と言えるのか、それはこれらの部材が腐りやすいタイプの木材を使っているからです。私が見
た限り、SPF(スプルス・パイン・ファー)という輸入材で、日本で言えば北海道産のモミの木と同じような性質の木材
ですから、適している地域は北海道くらいという樹種です。

そういう木が使われているので、いくら耐水性の合板が乗っていても合板だけで構造体が作られているわけで
はないので片側の車輪がこけるのと同じことになります。
その場合、床の上に壁が乗っている構造なので、その部分を除いてすべて切り取ることになります。

工事を請けた業者はどのように考えているのかわかりませんが、これではあまりにも工事怠慢です。建て主さん
はこの状況を知っているのか知らないのか、はたまたこの意味を理解していないのか、どちらにしても家のダメ
ージは半端ではありません。

我々から見たら将来起こるであろう事はほぼ分かります。恥ずかしくてとてもこのようなダラダラ工事は出来ま
せん。でも、この現場では「やめる・作り直す」などということはないでしょう。そんなことやるはずもないし、わか
っていないのですから100%あり得ません。

今、世の中ってこんな業者ばかり増えてしまいました。直近で事が起こらなければ問題なし、10年先のことまで
は考えない。腐って落ちたときにはまた別の業者が工事をやる・・・という、まったく責任感のない業界の流れみ
たいなものが全体に行き渡ってしまい「他がそうなんだから自分がなぜやらなきゃいけない」という風潮にみん
なが浸っているから怖くないということなのでしょう。

東洋工業の免震ゴム問題、三井住友の基礎杭ごまかしなどなど、大手から小手まで格付けにも値しないような
施工しかやらない時代に「分からなければ・・・」という風潮が後押ししてしまうこの業界の病巣は根深いものが
あります。


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コラム847 2015年10月16日

最初は消しゴム一個から

 マイナンバー汚職が毎日のように話題になっています。普通なら自分の会社が受注したいから何とか役人に
取り入って甘い汁を吸わせて・・・となるのが常識的だと思うのですが、今では堂々と役人のほうから請求する
んですね。

100万円渡しても15億円受注できれば蚊に刺されたようなものでしょうけれど、公務員がそんなことをしたらいけ
ないという倫理はいつ頃から消え去ってしまったのでしょうね。この人だって入省したころには「国民のため・・」
とか訓示されて、まあ、腹の底からそうは思わなかったでしょうけれど対外的には正義ぶったパフォーマンス程
度はしていたと思います。

昔から言われてきたことですが、大ドロボーも最初から大それたことをしていたわけではないと言います。
初犯のときはドキドキしながら消しゴム一個を頂戴し、そのドキドキ感がたまらなく、また少しづつ量が増え仕舞
いには新聞に出るほどの大罪をやってしまうのだと思います。

この人もおおよそこういうストーリーを辿ったものと想像できます。けして同情はしませんが高い代償を払わされ
た結果になったと思います。まじめにお勤めしていれば「3本」くらいの退職金は出たでしょうに、家族がいれば
その人たちに対しても裏切ったことになるし、社会的にもバッシングを受けて「割に合わない行為」をしてしまった
わけです。

一人のしくじりは全体の足並みを乱すといいますが、マイナンバーをスタートさせるという前に、こともあろうに
関係省庁から不正者を出してしまったのですからトリプルCに格下げと言われても何も反論できないと思います。
まずは国民全員とか言う前に役人のマイナンバーを徹底させる必要があります。


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コラム846 2015年10月15日

OSBボードの家

 10/05に書いた市内のOSBボード張りの現場ですが、その後屋根工事が行なわれ長尺鉄板で施工されまし
た。それまでの間は窓だけが防風シートでふさがれていましたが、昨日そこを通ったら壁全体が防風シートが張
られていました。

その張り方ですが、MAX針(ホチキスの大きな針)でOSBに直接ポンポン打たれていました。これまでにたくさ
ん雨に当てられてきた水気はそのままだと思います。そこに直接張られるということはこの防水紙は正常な働き
をしないということでもあります。

濡れた合板の上にこの防水紙を張っても同じ現象になります。防水紙(防湿シート)は水は通さず蒸気は通すと
いう性質を持っているため、濡れたものの上に直接張ってしまうと水を溜め込むことになってしまうということです。
もっと物理的に言えば、水の分子は大きいから通さず、水蒸気の分子は小さいので通すということです。

知ってか知らずか、よその現場でもこういう施工をたくさん見かけます。きっと現場ではその理論も知らずただ
張っておけばよいと思っているからだと思います。まあ、ないよりはマシかと思うほかないと思います。

過去のGウール系断熱材のときもそうでしたが、ただただ詰め込めばそれでいいと思っている職人さんが多い
のと、それらをみている管理者(現場監督)がそのことを知らないということでもあります。

間違った施工方法で規定の性能が出ないというのは、「お金の無駄、ドブに捨てる」以上の損失になります。

さあ、この現場もこういった小さなミス施工のあとで何も修正されず次の作業が進んでいくことでしょう。これによ
って水分をたっぷり吸った資材が見えなくなっていきますので、カビの心配・耐久性の減少は免れないと思いま
す。
現場では粛々と次の工程に移っていくと思われますのでまたこの脇を通ったときには注視してみたいと思います。


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コラム845 2015年10月14日

近所の太陽光発電

 週明けの13日、数台の高所作業車が300kw設備のほうに結線するための6600V用電線を張っていました。
作業はほぼ一日で終わったようで、今日は残りの作業をやるのか数人の姿が見えるだけでした。
いよいよ、残すは最終検査のみのようで予定通り今月末には正式稼動になるようです。

よく、これらの設備はドロボーに狙われるといいます。一応は周囲を柵で囲んでありますが、プロにとっては何の
問題にもならないというか防御しているようには見えないでしょう。

以前に、うちの工場の屋根の下に止めてあった4tユニックが盗まれたときなどは、道路の脇のステンレス製の
チェーンが大きなカッターで一発で切られ、ハンドルロックまでかかっていたトラックを数分間で持っていかれまし
たからプロの恐ろしさは大体分かります。

夜(昼も)無人のこういった設備はお宝が横たわっているようにしか彼らからは見えないはずです。防犯カメラ・
警報器・記録システムなどのセキュリティーがなければ無防備そのものですから何がしかの対策は必要です。
しかし、そこまでは対策が行き届いているようには見えません。

幸いなことに、ここに入っていくには2tショートボディーの車までしか入っていけない狭い道路しかないことでしょ
うか。


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コラム847 2015年10月13日

今月の勉強会

 不思議なことに、20年近くこの勉強会をやっていてザーザー降りの雨にたたられたことはなかったのですが
今回だけは別でした。とはいっても朝口だけで、会が終わるころにはあがってしまい、傘ナシでOKでした。
神様と運は信じないほうの私ですが、雨運には結構強いようです。

さて、今月も予定通り勉強会を開きました。テーマは「予算の話し」で2時間たっぷり聞いていただきました。
参加された方は13名、最後までお付き合いいただきありがとうございました。

内容としては、過去に実際に建てられた方の見積書を参考に、その内容についてどのように解釈したらよいの
か、また各書類の持っている意味を詳しくお話しいたしました。図面との連動、見積書と仕様書の関係、予算の
練り直しなど、実際に実行するときに必ずといってよいほどぶつかることです。

どこまで理解していただけたか不安ですが、真意は伝わったと感じています。また来月は「業者の話し」と題して
実際に現場で活躍している方に出席してもらい普段聞けないような話をしてもらいたいと思っています。
またお時間の許す方はご参加下さい。


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コラム846 2015年10月09日

ホームセンターと材木屋

 昔から材木屋は地域の資産家がやっていたと聞きます。(うちの場合はまったく該当しませんが)
それゆえか、面倒見がいいとか親分肌だとか言われることが多かったようです。しかしながら、どんな商売でも
売ったお金を回収しなければ支払いが出来なくなるし、ましてや手形などで決済していたとなると致命的な結果
になります。

競争の世界というものは非情なところであります。たとえば石膏ボード一枚でも20円も高ければ「あんたの店は
高い」と言われ、そういう話がいつの間にか広がっています。比較になるのは大概ホームセンター(HS)の価格
です。しかし、HSの価格というのは現金(クレジット決済もあるが)支払いで自分で積んで引き取ってくるのが
原則です。

そういうところと私らの価格構成を比較されても所詮無理な所があります。こちらは現場まで配達して、しかも掛
売り伝票で月締めの集金日まで現金が回収されません。燃料等の配送費、その人件費、事務費そしてこの期
間のキャッシュフローをクリアしていかなければなりません。

材木屋というものは月額売上の最低で三倍の資金がなければやっていけないと言われます。これは翌月の締
めまでに100%回収出来ての話です。これがたくさん在庫を持って商売するとなると六倍くらいの資金がないと
ショートしてしまいます。こんな効率の悪い商売は他にはないと嘆いている人もたくさんいますが今さら転職など
障害が大きすぎて出来ませんし、まず本人の頭がが切り替えられないでしょう。

嘆き節みたいになりましたが、世間の多くの材木屋はそんな中で悪戦苦闘しています。その点、HSを考えた人
は頭が良いと思います。現金引取りで貸し倒れナシ、しかも安いと思われているのですから怖いものナシです。
しかも、HSは支払いのほうが120日とかのロングサイトです。利益は薄くとも商品回転率を考えれば市中の
材木屋以上に稼いでいることになります。

しかしまあ、良いことばかりはありません。木材に関してはある程度「目利き」の世界です。新建材・金物みたい
に品質が一定していないので紙の上で計算したようには行かないのです。一般の人ばかり買いに行くのなら
問題ないでしょうが、今はかなりのプロが通っています。その人たちは「木材を買うなら入荷直後を狙え」と分か
っていて良い品質のものを先取りしていってしまいます。

そうなると、残りはカスばかりということになって「ろくなものが残っていない」ということになります。木材だって
全部売れてナンボの世界ですからこれでは利益が出ません。それらが高い授業料になったのか、今では木材
に関しては我々のほうがお買い得になっています。

最近は、一般の人もHSではろくな木材がないから・・と、私らの所に買いにくる人もいます。


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コラム845 2015年10月08日

電線の設置A

 昨日、7台くらい止まっていた電設作業車は、よくもあれだけの細い道を入って行けたものだと感心しました。
今までにも50kw設置のほうには農家の方の2tトラックが出入りしていましたから何ということはありませんでし
たが、300kw設備のほうには乗用車程度しか出入りしていませんでした。

なぜ、出入りしていなかったか(できなかったか)というと、お隣のもと住人さんが植木を植えて枝葉がどんどん
伸びてきて通れなかったというのが真相なのです。昔は通称リヤカ道と言って5尺(1.5m)もあれば通行には
不自由しませんでした。今ではどこでも自家用車があり暗黙の了解でお互いに後ろに下がって便利なように
使っていました。でも、ここの亡くなったおじいさんはちょっと頑固で自分の所はもともと下がっていたと言って
枝葉ぐらいは切りましたが後へは下がらなかったのです。

ここへ建柱作業の特殊車両が我が会社の敷地を通らずこの農道を入っていったのですから感心しました。
もっとも車幅は1.5mぎりぎりでしょうからタイヤ一本の余裕もなかったと思います。当然ながらバックミラーは倒し
ておかないと不可能です。きっとドアあたりは相当こすっていると思います。見た所、ピカピカの新車は一台もあ
りませんでしたから以前からその点は計算済みだったのでしょう。

入ってしまえば後は早いですね。人間二人が乗れる程度の作業BOXがあちこちに腕を伸ばしてテキパキと仕
事をしていました。これだけの車両数がくるということは短時間で終わらせることを予定していたのでしょう。予想
に反して二日とかかりませんでした。お見事でした。残るはいよいよ設備との結線です。


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コラム844 2015年10月07日

電線の設置

 いよいよ、太陽光発電の本線への結線作業が始まりました。今朝は7台くらいの電設作業車が事務所前の道
路に待機していました。先ほどその作業を見てきたところ、この部落の一番奥に住んでいる(いた)方のお宅へ
供給していた電柱のすぐとなりにもっと背丈の高い電柱が立てられていて、どうもその電柱に新線を乗せるよう
です。

この工事が終わればいよいよ発電設備との結線が行なわれますが、外部からみた様子では一日では終わる
作業には見えません。少なくみても二日はかかるだろうと思っています。

作業するといっても工事車が止めただけで人ひとり通れないような昔の農道ですから、奥に住んでいる数軒の
方の生活には少なからず影響します。その辺のところは工事会社も配慮してくれていると思いますが、大変なの
は間違いありません。

最終的な接続検査はこの後になると思いますが、東電の立会いもあるでしょうし、そのはっきりした予定は決ま
っていないようです。あとは不要な高調波が出ないことを祈るだけでしょうか。
当初、中国産の安い設備にはこの心配がかなりあったらしいですが、国産の製品に限ってはその心配はない
ですと高圧電気管理者の方が話しておりました。製品は三菱製、こちらとしては一安心です。

やはり、安ければいいという人もいて中国製はかなりのシェアをとっているらしいですが、後々のことを考えれば
メンテナンスのかからないものを選んだほうが良いというのは住宅も同じようです。

それにしても300kwのほうの位置が南側に伐採し切れていない立ち木があって、どうみても冬の時期にはその
一部が日陰になってしまうようです。この辺の所はオーナーさんは計算済みなのでしょうか。
こういう山林というのは隣地の境が曖昧で迂闊に切ると問題になるらしく、思い切って伐採できない所があった
らしいです。そんな理由からなのかちょっと不安なところが見えます。


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コラム843 2015年10月05日

面材がOSBボード

 自宅と事務所の間は車で移動するのですが、時々コースを変えてみると町並みの変化が楽しめます。
目につくのはやはり建築現場ですが、それらをみていると、今の流行というか建築の流れが変わっていくのが
わかります。

ひたちなか市でも古いほうの団地があるのですが、その団地のワンブロック西側に新しく事務所なのか住宅な
のか、ちょっとはっきりしない建物が建ちました。やはり、今時の通気口のない基礎パッキン方式で、プレカット
加工の構造体、屋根板は当然のように針葉樹合板、壁も今風の面材を使ったやり方でした。

その面材が良く見てみるとOSBボードなのです。最近これが随所に使われるようになってきました。ログハウス
でも屋根に使っているのをみましたし、三井ホームでも屋根材としてこれを使っていました。LIXIL(トステム)で
は以前からSW(スーパーウォール)工法で使っているのは知っていましたが、最近は合板の代わりになるところ
はHメーカーを問わずいたるところで使われているように見えます。

こういったものを総称して「木屑圧縮板」と私は呼んでいますが、はたしてこのようなものを屋根材や耐力壁の
要所に使ってしまって良いものだろうかと疑問に思っています。「丈夫だ、丈夫だ」と言われても、もともとは
小さな木片(木屑)です。接着剤の信頼性がいくら上がったとはいえ、人の住む建物の重要な部分にこれほど
簡単に使われてしまって良いものだろうかと思うのです。

確かに建材を販売するにあたっては国交省の認定をとっているかもしれません。それでも使うべきではないと
思っているのです。私はこれまでに合板類の接着剤劣化による剥離を数多く見てきました。たとえ、構造用の
糊で優秀だといっても所詮石油製品の産物です。自然の劣化は必ずあります。

使用を推奨する側は「指定の釘を使って規則どおりのピッチで打てば・・」と太鼓判を押したようなことをいいます。
ものの考え方が「動かなければ壊れない」という単純すぎる発想になってきています。しかし、その陰には動か
ない部分を支えている力の集中する箇所が必ずできることです。それが開口部の角々に集中してがっちり見え
ているようで実はすごいエネルギーが集中している箇所を作っています。

現実に潰れなければそれでいいのでしょうが、今の建材には耐久性がどこまで確実かという点ではデータが
まだ不足していて胸を張って主張できるレベルではありません。先行きに不安のある建材をこれほど平気で使
ってしまうこの業界には建て主さんを実験台にしているとしか思えないようなことが多々あります。

ただ、建て主さんも何の疑いも持たないから表面上では問題にならないだけで、私から見ればすごい爆弾を抱
えてしまっているとしか見えないのです。

ここのOSBボードも誰がそう決めたのかなあ。何年持つかな。
それもそうだけど、これだけ接着剤製品に囲まれている部屋の空気は吸いたくないなあ。


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コラム842 2015年10月02日

近所の太陽光発電・・その後

 9月いっぱいで稼動するはずだった近所の太陽光発電ですが、本線から100mほど入っている立地条件なも
ので、その中間に少なくとも2本の電柱を立てなくてはならず出発点の自分の所と合わせて3本の建柱が必要
となります。その工事がまだ着手されておらず、稼動については少なくとも今月下旬頃にずれ込みそうです。

先日そのオーナーが来社され、当社の敷地内を通行して作業車などが現場に出入りできたことのお礼を述べに
立ち寄られました。そのときのお話しで、該当敷地内については予定通りほぼ終わったのですが結線がまだで
あることを心配されていました。

せっかくオーナーにお立ち寄りいただいたので、ちょっと立ち入ってお話を伺いました。
この発電規模は300KWということで、6600Vに昇圧して接続する所が一箇所と、ちょっと離れたところに50KW
設備を設置したのが200Vで接続するということでした。上記の本線につなぐために必要な建柱費用はどうなる
のか聞いてみたところ、こういうケース(電気を売る場合)は売主が費用を負担するのだそうです。

なかなか電力会社もしっかりしています。最近は事情が事情だから余計そうなるのかもしれません。
それはそれとして、この設備、どのくらいかかったのかをお聞きしてみました。木の伐採から地ならしまで含める
と1億2千万円ほどだということでした。合計350KW(最高発電量)の設備で実効発電量に換算してみるとどの
位になるのかは後日ゆっくりと計算してみたいと思いますが、最近のお天気は気まぐれなところもあるので、充
分余裕を持って計算しないと「誤算」が生じるのではないかと思っています。

設置費用の大部分を銀行借り入れで賄うのでしょうが、最低でも元を取るだけで10年はかかると思っています。
帳簿上数字が出るといってもそれはその殆どが銀行のほうへと吸い取られていくわけで、現実は結構厳しいも
のになると思います。

FIT固定買取制度というものを作ってしまった国ははたしてどこまでこの制度をまじめに実行するのか。今までの
たくさんのバラマキ補助金とはちょっと違うこの制度は最後まで確実に実行されるのか心配な点もあります。
もし、そういうことになったらこういったケースは成り立たなくなりますのでオーナーは気が抜けないと思います。

かけたハシゴを外すのは得意な国ですから。


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コラム841 2015年09月30日

歪んでしまった面材

 先週のウィークデイはずいぶんと雨が降りました。久方ぶりに上棟があったのでお祝いに水戸市双葉台に行っ
て来ました。その帰り道、ちょっと異様な光景を見てしまいました。何と、ある新築現場で建てた直後に張られた
(スジカイの代わりになる)面材が大きく歪んでいたのです。たぶん、それまでの雨で乾燥していた資材が雨に
当てられ水を含んでしまい膨れ上がり、逃げ場のないところが暴れたのだと思います。

大きさにして1m四方くらいの窓のところが両方とも外側へ膨れ出ていました。最初は目の錯覚かと思いました
が、ちょうど赤信号で止まった脇でしたのでしみじみと見てみると。やっぱり歪んで見えました。考えられるのは
水濡れしかありません。膨れ巾は最大で3cmはあったでしょうか。

思わず、カメラで一枚証拠写真を撮ろうとしたところ、運悪く中から作業をしている人がゴミを外へ出そうと思った
のか首を出した所でした。う〜ん、残念。世紀の名場面をとり逃がしてしまいました。
そのうちに信号が青になってしまい、涙をのんでその場を離れましたがその歪んだ状況が目に焼きついてしま
いました。まったくもって惜しいことをしました。

張られていた製品は業界でも名の通ったメジャーな商品です。製品の欠陥などはまず考えられませんから、何
といっても施工のまずさということになります。今年のようなお天気は滅多にあるものではありませんがそれでも
管理のまずさは明らかです。

たぶん、まったく逃げの隙間を空けないで張ってしまったことが一番の原因ではないかと思います。
その次は、この建物を担当した(受注した)のが大工さんではなく会社であること。大工さんは手間で雇われた
ただの作業者で管理することも俺にはそこまで関係ないと思っていることが考えられます。

隙間もなしにずぶぬれになった資材は数日間の雨に充分すぎるだけの水を吸ってしまったに違いありません。
このように一度濡れてしまった乾燥品の面材はどうやって乾燥しても元のように戻りません。
この後の作業としては白い防風シートが貼られ外部サイディングの下地が取り付けられます。

自分の仕事だったらこういうことは恥ずかしいですからすぐに(部分的にでも)取り替えるでしょう。でも、それは
ないと思います。キュウキュウした手間で早いとこ作業をすすめてしまおうと考えている人にそんなことは期待で
きません。

ほんの何秒か見ただけの現場ですが、頭の中にはそのあとどのように処理されるか想像できてしまいました。
多分、ここの現場監督がこれを見たとしても何もやられず上記作業が進んでいくと思います。隠れてしまえば分
かりませんからあえて取替えなどということはされないでしょう。そうなれば一部だけでは済みませんから手間も
資材も余計な出費になるだけですから100%やられないでしょう。


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コラム840 2015年09月25日

濡れたままの作業A

 野菜が高いという世間の話は本当で、その原因は天候不順。つまり、雨が多いということを裏付けています。
こんな天気でも現場はお構いなしにどんどん進められていきます。夕べからの小雨は次第に本格的になってき
ました。

この現場も今日はお休みかもしれません。拝見した数日前からしてもまだまだ屋根は出来ていないと思います
が、水平に張られた構造用合板の床板はたっぷりと水を吸っていると思います。仏の顔も三度といいますが、
これだけ何度も雨に当てられるといくら構造用の糊で水は心配ないと言っても限度を超えています。

乾物のように乾いたスライス板を何層も接着しているその糊は良いとしても、薄い板そのものは無防備なわけ
で小口(こぐち)からどんどん水がしみ込んでいきます。これは一種の毛管現象といえるでしょうが、一度入った
水は殆ど抜けてくれません。しかも、その下にはしっかりと断熱材が敷きこまれているのです。

現場では「俺らは手間でやってんだから関係ねえよ」という職人さんがびしょびしょになったままでどんどん自分
のやるべき作業をやっていきます。現場となりの I さんも目の前でその作業を見てかなりのカルチャーショックを
受けたようですが、これが今の住宅建築の実体です。

「最初はシーとみたいのを敷いてたわよ」と言っていましたが、それは作業者にとってはただの邪魔物。私が見
た床には何も敷かれておらず単なるパフォーマンスでしかないのがわかります。「変なところにある水抜き穴」も
今日あたりの雨でまた大きなシミを作っていることでしょうが、知らぬは建て主さんばかりなりです。

気候環境もまるで違うものを日本に持ってきて、「輸入住宅」と、さも素晴らしいもののように宣伝していますが、
このような現場の状況をお知らせするなどというのは皆無だと思います。これでよいのか・・・と、いつも思うので
すが、悲しいかなこれが大手を振って闊歩している住宅の姿なのです。

この家もこの先、石膏ボードが山のように運び込まれクロス屋さんが大活躍します。別にクロス屋さんが良いと
か悪いとかいう話ではありません。そういった仕上げになってしまうこの工法に対して、「もうちょっと建て主さん
勉強してよ」という気持ちが出てくるのです。

でもね、目の前でやられている人には酷でとても言えません。


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コラム840 2015年09月24日

濡れたままの作業

 先日、勉強会で家を建てた人から「うちの後に面白い現場があるから見に来なよ」と連絡を受け、さっそく
お邪魔しました。

「この家、二階建てだっていう話しなのに通し柱がないのよ」「なんか、朝の九時半頃来てだらだら仕事している
から、どこまで進んだのかわかんないのよ」「ここのところの雨でかなり濡れていたわよ」と、こちらの奥様の談。

外には作業員らしい日に焼けた男の人が二人、11時近く遅い休憩なのかタバコをふかし、スマホをずっといじっ
ていました。奥さんの言うとおり、格好からしてテキパキと動く職人さんには見えません。身なりで人を判断して
はいけませんが何となく見えてしまうものです。

「 I さん、これはね、ツーバイフォーといって、柱を使わない建築なんだよ」「床から作っていって次に壁を作り、その
後、二階の床を・・・」と説明しました。「ああ、なんかその名前聞いたことがある」「わかったわ、それがこれなの」

まさに現場で部材を一から組み立てていくツーバイフォーの建築でした。

「う〜ん、これね、屋根が出来るまでに少なくともあと三週間はかかるよ」って言ったら、奥さん驚いていました。
「ええ〜、だって床はかなりびしょびしょよ」「このまま作業やっちゃっていいの?」「建て主さん知らないのかしら」
「少なくとも、こういうことは知らないでしょうね」って言ったら、「ええっ、私だったらやり直してもらうわ」ですって。

現場は青いメッシュのシートがかけられ、写真が撮りにくい状況です。でも、何とか奥の部屋の小窓から良い
アングルが一枚撮れました。このビルダー、結構地元では名が知れていて受注しているらしいです。この現場も
発注者は若い方のようで、何となく形に憧れきれいに出来た所を見て決めたのでしょう。

基礎のサイドには水抜き穴があって、そこのところはまだ濡れているのがわかります。


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コラム839 2015年09月17日

土地の良し悪し

 今回の台風崩れの大雨で堤防が決壊しかなりの家が濁流で破壊されました。ネットニュースによれば、まだ
行方不明者が1名おり、連絡もとれていないと書かれていました。
被災された方々へは心よりお見舞い申し上げます

あらためて該当地を見てみると、鬼怒川・小貝川に挟まれたほとんど起伏のない低地であることが分かります。
仮に反対側の決壊があっても同じような被害が出るような全体がほぼ平らな低地になっています。

みなさん、「今までにこんなことはなかった」とおっしゃっていましたが、これだけの雨が降る近年の現象では
そのようなことは何の役にも立たないというのが心情ではないでしょうか。

被害にあわれた方は今後復旧の壁が大きくはだかると思いますが、いくら住み慣れた土地でも同じ所に構える
というのは相当に勇気のいることだと思います。

原発が「想定外」で大事故になったのも、高台であったならと悔やまれます。河川水害でも理屈は同じです。
やはり堤防の高さ以下ではもしものときに被害を避けることは難しいと思います。

昔からその土地に住んでいる人なら経験もあるでしょうが、他所から移り住んできた人にはなかなかそこまでは
理解できないと思いますが、ちょっと気遣えば低地か高台かの違いはわかるはずです。土地の値段も当然違う
でしょうが、金額に惑わされず危険回避を心がければ、将来の受けるかもしれない被害は避けられる確率が高
くなるはずです。


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コラム838 2015年09月16日

還付という言い回しA

 給料の税金は源泉税という名目で事務的に天引きされていますが、昔はけっこう還付の額が多かった気がし
ます。年末調整という作業で徴収か還付かに分かれるわけですが、圧倒的に還付のほうが多いというのは
毎月の徴収が多すぎるということでもあります。

年末に確定した税額は、12月に徴収し、1月の10日に納める分から差し引き、それを本人に戻すということをや
るわけですが、戻しきれない場合はさらに1月の給与の源泉税徴収額から支払うということを繰り返します。
これを3月までやって、なお、戻しきれない場合は還付請求を税務署に出します。

この還付請求というのが結構面倒で、いつの月だったか4月の給料から徴収した源泉税で戻してしまったら
さっそく税務署から電話があり「それはまずいんです、きちんと書類で出してください」と言われてしまいました。
こちらとしてはわざわざ別の手続きをしなくても良いように効率よく処理しようと考えていたのですが、役人のや
ることは規則どおりにやらないとダメらしく融通の利かなさにあきれました。

よくよく考えてみると3ヶ月も還付して戻しきれないほど徴収しているということは完全な取り過ぎなわけです。
優秀な役人が考えるならせいぜい1ヶ月くらいで調整できるように設定すればいいのに思ったりします。
これを日本全国規模でみるなら国民の金を強制的に短期間ですが只取りしていると同じことでその額はけして
小さくはないと思います。国も銀行もタダの金を溜め込むのがうまいのは同じだなと思いました。


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コラム837 2015年09月15日

還付という言い回し

 いつの時代でも税金というものは一度とったらなかなか返さないと傾向は変わらないようです。今度の消費税
10%にアップされることも、選挙の票欲しさなのか心から弱者救済と思うのか不明ですが、2%分を還付すると
いう協議をしているとのこと。きっとこの案は潰れるでしょうけど。

そのやり方を見てみると実に行政の「役人的考え」であると思ってしまいます。
まずは10%分を払って、個人番号カードにポイントとしてたくわえ、パソコンから還付申請をし、のちに口座へ
振り込まれるというもの。 「こんなもの、誰ができるか」という声が聞こえてきそうです。

実際、現実離れしているのは明白ですし、パソコンを使って・・・などというのは「使えない人には返さない」と
言っているのと同じことです。これらを扱うセンターを作ってとなるとまた行政役人の大儀名分の就職先を作って
やるようなもので、何の御利益もありません。

イギリスなどでは食品の税率なども細かく分かれていると聞きますが、それを日本でやると販売店の事務処理
がまた増えるし、小さな商店などは処理がこなせなくなるかもしれません。何をやるにしても費用がかかってくる
のに行政はどんどん事務量を増やすことばかり国民に強いてきます。

税金は国を動かしていくのには必要なものですけれど、その国自身はひとつも身を切るようなことはやっていま
せん。ツジツマをあわすことは紙の上でいくらでも出来るでしょうが、現実に動かなくてはならないほうはいつも
カヤの外です。

こんなことばかりやっているとどこかの国みたいに公務員だらけになって経済が破綻するのは目に見えていま
すね。100万円のお金を得るのに80万円もかかるなら20万円節約したほうがやらずに済むわけです。
そんな発想ってないんでしょか。


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コラム836 2015年09月14日

プレミアム商品券の威力

 最近、あちこちの商店街で「プレミアム商品券」を発売しています。ここ、ひたちなか市もその発売日が昨日で
した。商工会議所からは少し前から「混雑しますがよろしくお願いします」と連絡を受けていました。しかし今回、
初めてこのようなイベントにぶつかりそのすごさに驚きました。いやいや、1万円で1万2千円の魅力とはこれ程
人をひきつけるものなのか・・・、その集客力たるやパワーとはすごいものでした。

私は予定通り会場へ入るためにいつもの位置に車を入れようとすると、警備員の方が「ここは入れません」と
言われました。「これこれの勉強会で・・」とわけを説明して荷物だけおろさせてもらい、別の場所に車を移動しま
した。

商品券の発売時間は9時半からということで、参加者の方も早くおいでになられた方のほうが駐車できず、間際
に来られた方のほうが販売開始早々購入できて帰る人も出たため駐車できたようです。

と言うわけで20年も勉強会をやっていてこんな混雑にぶつかったのは初めてという経験をしました。何とか予定
通りに開けて良かったと思います。参加された方には大変なご迷惑をおかけしましたことを商工会に代わって
お詫び申し上げます

さて、今回は13名の方にご参加いただきありがとうございました。
「素材の話」ということで二時間たっぷり聞いていただきましたがいかがでしたでしょうか。
次回は「予算の話」を予定しております。お時間の許す方は是非ご参加下さい。


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コラム835 2015年09月12日

うちの近所の現場 その後B

 10日に書いた、わずかですが変化が・・・という点について。何か道路に面した(西側になる)基礎のあたりが
中央3mくらい、なだらかな富士山のように湿って見えるような感じがするのです。これは一体何なのか。
我がボンクラ頭で考えたのではわからない症状です。

中に詰まっている発泡スチロールに何か変化が出ているのか、はたまた、どこかの給水でも漏れ出しているの
か。何しろ升を伏せたような基礎なのでのぞき窓もないし、孫を散歩に連れて出て前を通るたびに気になってい
ます。

いまの給水の仕組みは強化ポリというゆるやかには曲がるけど90度近くには曲がらないという人差し指位の
太さの樹脂管を使います。ヘッダーという分岐器具で各方面に振り分けて家の床下を這い回らせます。
ただし、こういった床下のない家ではただ埋め込むだけしかできず、何か不都合があっても漏れているなくらい
のことは分かりますが目視検査すら出来ません。

そういった設備の原因でなっているのかもしれないし、そうではないのかもしれない・・・でも、わからない。
ま、他人の家だから私が気をもむ必要もないのですが、もう少しすればもっと何かはっきりした症状が出るので
はないでしょうか。

この家は北面が総二階なのでご他聞に漏れず黒くカビだしています。これは当然といえば当然のことなのです
が、こういうタイプの家は屋根の出(軒)がほんの少ししか出ていませんから、北側の雨が降るたびに広い範囲
で当たっています。

今年で梅雨を8回越したことになりますので、条件から言えば出て当たり前ということでしょう。生活から見て
高級車が3台保有していますから余裕のある方なのでしょう。もうすぐ、塗装屋さんが訪問し塗り替えませんか
と営業活動が始まるものと思います。


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コラム834 2015年09月11日

うちの近所の現場 その後A

 基礎が升を伏せたような形をしているということはどういうデメリットが出るかを考えてみます。

まず、床下の管理が出来ない。これは、給水・排水のトラブルに対処できないということになります。
何か異常を感じたら床をはがすしかないということでもあります。仮にその下で漏水などがあった場合は、
どこまで被害が及んでいるかも床をはがさないとわからないということになります。

排水つまりも同じことです。同じ経路を使うことは出来ないので給水排水すべてが露出の配管になるわけです。
それとコンクリートが床のすぐ下に迫っているので空気の流れが殆どないから床下地材がはやく傷むことです。

一番心配なのは、柱の荷重がかかっているところが(外周以外の内側は)何もないスラブの上に位置している
部分が数多くあるということです。コンクリートはどろどろしていて比重も2以上ありますから、発泡スチロールの
上に鉄筋を組んで打設するときも下がることが予想されます。

事実、この現場では枠を取り外した後、土台を敷くのに内側が下がっており水平ではないのがわかりました。
直接、コンクリートに土台を敷くか基礎パッキンを入れて土台を敷くかは関係なく、水平にはなっていないので
調整用の薄いパッキンを入れなければならないのです。ここの現場は基礎パッキン+調整材を使っていました。

遠くからでも分かったのは、その上棟日の前日の晩、けっこう雨が降ったのですが、朝方、作業をする大工さん
がスラブ中央に溜まった水をちりとりで一生懸命かき出していたのです。その後には職人さんの動き回った足跡
がベタベタついていました。

このスラブは少なくとも15cmの厚みがあると想像できます。たとえば、6帖一間だけでも計算上3.4tの自重が
あることになります。これを支えるには下が発泡スチロールでは下がって当然と思います。それでもやってしまう
勇気には敬服してしまいます。

何とかパッキンを入れながら水平に土台を敷いたとしても、その後にどんどん荷重が加わっていくわけですから
見えなくなった後もずっと何もないところで家の重みを支えていくことになります。これで下がらないはずはあり
ません。


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コラム833 2015年09月10日

うちの近所の現場 その後

 私が今までに一番驚いた建築の施工方法はマスをひっくり返したような基礎でした。当時の写真の記録を見
ると2007年となっていて、今から8年前であることが分かります。今ではそこには建て主さんが住んでおり、外
から見ると何の変化もないように見えるのですが、近づいて注意して見るとわずかですが変化が感じられます。

建築したのは地元ではまあまあ名の知れている某ビルダーですが、その建築方法というのは実に斬新的で、
我々のようにこの業界に長くいるものでは到底考えつかないような工法を採用しています(いました)。

通常、基礎というのは家の重量がかかるところの土をよく締めて捨てコンを打ち、その上にきちんとした立ち上
がりを打ちます。今では底辺一面にコンクリートをベタ打ちして立ち上がりをつけるのでベタ基礎という呼び名で
言われているのはご存知の通りです。ですから各部屋の床下には土は見えず一面にコンクリートが見えるだけ
です。
このベタ基礎を客観的に見てみると、物を測る升(ます)のような形をしています。この升は底が下に面している
から地べたに対してきちんとした耐力が発揮出来るのですが、何とこのビルダーはこれを180度ひっくり返した
使い方をしています。

なぜ、ひっくり返ったような基礎を採用しているのか、そこには「会社の利益追求魂」みたいなものが感じられま
す。コンクリートというものはドロドロの流体でありますから、一回で升の形を作るというわけには行きません。
どうやってもベース部分と立ち上がり部分を同時に打つことは出来ず別々に作業を分けなければなりません。

そこにこの会社は目をつけたのでしょうか、コンクリートを一回打ちで済ませる方法をとったのです。
家の外側はどうやっても省くことは出来ませんが、内側は見えませんから省略して枠を組むことが出来、見かけ
は豆腐を型に流し込んだように見えます。型枠を外してみると堂々たるコンクリートの塊に見えます。通常なら
立ち上がり部分にと同じ高さになる平らな面に土台を敷いてしまえばいいと考えました。

しかし、それでは升いっぱいのコンクリートが必要になってしまい逆効果になってしまいます。そこで考えたのが
最初は砕石を敷きこみ土俵のように形づくり、そこにコンクリートを流し込めばいいと考えました。しかし、土俵の
ように作ってもサイドが切り立っては出来ないため、その形を維持するために今度は発泡スチロールを使うこと
を考えたのです。

これならまあまあ形としては何とかなります。しかし、その発泡スチロールは次第に沈み込むし縮むし、ちょうど
トンネルの空洞部分が出来る格好になります。すでにコンクリートは固まっていますから、ちょっとやそっとの
重量では下がらないでしょうが全体で見れば何十トンという重さが加わっているものですから変化がないはず
はありません。

形をキープするためだけに入れた発泡スチロールですが、取り外せないのでそのままになっています。そこが
問題で、これらをものともしないシロアリさんに格好の住みかを提供してしまうことになります。いまごろはぬくぬく
とコロニーの拡大に精を出しているものと思います。

省力というのは確かに大事なことなのですが、その前に本質を取り違えないことが大事であると考えます。


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コラム832 2015年09月07日

面材にOSBボードC

 今の時代ほど住宅のポリシーが本質からずれているものはないと思います。
気候環境の無視
素材の適材無視
建て主意見無視

これが食料だったらどうでしょう。産地・生産者表示、農薬表示など安全に関する情報をわずか100〜200円ほど
のものでさえ明示しています。道の駅などでは写真まで貼ってあるものがあります。

住宅会社は大きな資本力で宣伝パワーにまかせてブランド力の洗脳作業は抜け目なくやっていますが、その
中身といえば闇の中といっても過言ではないと思います。

住宅展示場という完成品を見せて、それで客が納得したという契約のとり方をやっています。その中には、例え
ば畳一つとっても、見ている側は昔と同じ畳だと思ってみていますが同じに見えるのは表面だけで、中身の素
材は驚くほど変化しています。

和室だって柱が見えると言っても「柱のようなもの」であり、壁も「壁に見えるクロス」であったりします。
開口部の枠も木屑圧縮材で表面に木目シートが貼ってあったりで昔のものとは全然違っています。

声高に叫ばれているのは高気密・高断熱と耐震強度のことばかりです。確かに大事なことですが、その裏で
雨に濡れ放題のような工事をしていて床下も乾いたかどうか確認すらしないまま、どんどん石膏ボードが運び
入れられ、屋根には太陽光発電が乗っかり「ゼロエネルギー達成」などと言われ優秀な家を装っています。

それらの家に使われている資材がほとんど工業製品で占められ、ゴミを出していませんとか言っていても結局
のところどこかにゴミを移動して自分の所にありませんと言っているだけで地球にやさしいとか貢献などしていま
せん。

先日も、積水を抜いて日本一になったといわれている某Hメーカーが、雨の中、クレーン作業をしていてサッシ・
外壁までついたユニットをとび職の人が雨合羽を着ながらボルト締めしていました。

建て主さんはこれを見てどう感じているのでしょうか。


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コラム831 2015年09月04日

面材にOSBボードB

 あらためてOSBボードについて書いてみます。この製品はどこで生まれたかというと北米が発祥です。
当然、そこの素材を使って作られていますから日本の価格よりはずっと安いことになります。それを船便で
運んできてもまだまだ他の建築資材から見れば安いのでHメーカーも飛びつくように使うのでしょうけれども。

ゴボウの笹欠き(ささがき)という切り方をご存知だと思いますが、アスペンという雑木をこれと同じようなカットの
仕方をした原料にして接着剤で固めたものがOSBボードといいます。オリエンテドストランドボードという頭文字から
この名前がきています。

ですから、畳一枚くらいの大きさのものでも原料の一つひとつの大きさは数センチの切削物が集まったものです
から信頼性は「接着剤が命」になるわけです。

はたして、こういう製品を住宅の重要な部分に使ってしまって良いものなのでしょうか。なぜ、こんな否定的な
ことを言うのかというと、この手の「木屑圧縮材」は日本にも昔からあり、私らもいろいろな商品名で同類物を
扱ってきて、やはり100%接着剤に頼っているものは危険だと身体でわかっているからです。

同類商品でパーチクルボード(以下PB)という商品があります。これなどは40年も前に建築資材や本棚の原料
として使われてきました。いまから10年ほど前に倉庫の一部にこのPBが使ってあったのですが、物の見事に
崩壊していました。棚の板に使っていたのですがぼそっとそっくり抜け落ちたのです。

いまでもその抜け落ちた木屑状態のものをとっておいて勉強会の資料として使っていますが、それはそれは
危なっかしいものです。(新しいうちの状態も知っていますが当時まったくそのようなことは感じませんでした)
いくら技術が発達したとはいえ、所詮接着剤に変わりはありません。それらがこれから30年後にどうなるか
想像するのは簡単なことです。

名前の知れた一流といわれる住宅会社でもこれですから、その建物の行く末は「心配の塊」です。
行政が何と言おうと、有名な誰かがCMでにっこりしようとも製品の寿命にはまったく関係のないことです。
車では一流でも家には無知としか言えません。

この建て主さんは名前を信頼して「ブランドを買った」のかもしれません。


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コラム830 2015年09月03日

面材にOSBボードA

 日本の住宅寿命はなぜ短いのか、いつも統計が出されるたびに論議されます。その根本となる理由は各自
違いがありますが、ハード面、ソフト面の両方からきていると思います。

ソフト面は、住みづらいというのが一番の理由だと思います。
       他、家族構成が変わるからなどもあげられます。

ハード面は、一部に傷みが出てきた・周囲と比べ古くなったからというのがあると思います。

今までだったら上記のような理由がほとんどでしたが、これからは使用した資材が不安だからという今までに
なかった理由が加わってきます。(住んでいる方は気付かないと思いますが・・・)

建築というのはある意味、現場でいろいろな方法が試され、想像していた以上にもたないとか良い結果が出な
かったとか枝葉を伸ばしては剪定を繰り返してた歴史があります。今だってその繰り返しではないかと言われれ
ばそうなのですが、使われる部材に大きな違いがあります。

構造体では土台・柱・桁・梁・、造作といわれる付帯物の床・壁・天井・屋根材に至るまで素材の変化が甚だし
いのです。集成材の危険性もずっと書いてきましたが最近ではこれに表題のOSBボードが加わるようになって
来ました。

昨日のコラムの通り、いまではどこのHメーカーでも簡単にこういった木屑圧縮板を採用しています。この理由は
「安い」からです。しかも、国交省の「使用を認めるお札」を携えているから始末が悪いといえます。特に新建材
はJAS規格をとったものが多く使われており、これを建築面から見ると「どこどこに使ってはいけない」という縛り
は、特にF☆☆☆☆(フォースター)の基準を守っていればフリーパスみたいなものです。

ですから、大手のHメーカーから地域のビルダーまで「使って何が悪い」ということになってしまうのです。

資材の活用で、捨てるようなものから使えるものを作って経済活性化することは大事ですが、長期的に見たら
あきらかに危険性がある物だということは分かるはずなのです。そこの点がこれからの住宅寿命を短くするだろ
うという私的理由です。しかもそこには崩壊という危険を含んだものが加わってしまうのです。



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コラム829 2015年09月02日

面材にOSBボード

 会社に来る途中の団地の中に、名前は有名な某Hメーカーの家が建っています。
言わずと知れた世界に冠たる自動車メーカーの関連会社です。
私の通ってくる裏道の二軒ほど奥に建っているので見過ごしていましたが、さすがに面材を張る段階になれば
目立つので「おーっ」と思いました。

OSBボードというのは私から見れば梱包材あたりなら使っても良いかと考える程度の商品で、家の構造体を
支える大事な所に使うには役者不足だと思っているものです。よって、うちの会社ではこの商品は在庫は置い
ていません。

市中の大工さんもたとえ仕事があったとしてもさすがにこれだけは使わないと思っていたら、マルマルホームと
かいうクラスの業者は平気で使ってしまいますからこれまたちょっと驚きです。「自分の家ならやらない」と言う
典型的なビジネス的考え方です。

以前に、ログハウスの屋根材がOSBボード張りだったのには驚きましたが、有名自動車メーカーの関連会社も
簡単にこれを使ってしまうことにもっと驚いています。まあ、LIXILのSW工法というのもOSBボードが面材に使
われていますから大きなHメーカーほど目の前に出ているデータしか見ていないのでしょう。

是非これは記念写真を撮らなければと思い、一旦通り過ぎた路地を一回りして一枚だけパチリとやってきました
が、なにせ平日ですから作業者が結構いて警察にでも通報されそうで近づくことが出来ません。

この脇を通るたびに、ついに家は梱包材にまで成り下がったかという思いが頭から離れません。
建て主さんの将来を考えると背筋がぞーっとする思いです。


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コラム828 2015年09月01日

非課税マジック

 消費税の課税基準には中身によって課税・非課税とわかれるものがあります。また国内で販売されても最終
的には外国へ出て行くものには課税がされない決まりになっています。これとまったく逆で外国で作られ輸入さ
れたものも日本に入ってきたところで税金の対象になることも知っていなければなりません。

中国人旅行客の爆買いのニュース等で、後のほうに免税と書かれている紙を見るのは輸出されることと同じだ
から消費税がかからないということです。しかし、その販売業者では仕入れに関して税金を支払っているので
いわゆる「仮払い扱い」になった消費税を取り戻さなくてはなりません。やらなければ全額自己負担になってしま
います。ここにも還付請求しないから返さないという国のしたたかな策が盛り込まれています。

非課税というと何か全然税金がかからないものと考えてしまいますが、この国の納税の仕組みから言えば内容
がかなり違うことに気付きます。税法を見ると非課税項目が10個も出てきます。

1 土地の譲渡・貸付
2 有価証券等の譲渡
3 支払い手段の譲渡
4 預貯金利子・保険料
5 印紙切手の売り渡し譲渡
6 商品券プリペイドカードの譲渡
7 登記・登録・免許・検定・公文書交付など
8 外国為替の役務提供
9 社会保険医療の給付
10介護保険サービス提供

詳しく言えば 1の部分、土地の売り買いに消費税はかからないといいますが、土地の測量や管理にかかった
費用は別。貸付というのは駐車場などで青空駐車として貸した場合は非課税ですが管理として砕石を敷いて
駐車場のデコボコを直したりすれば経費の中に消費税が入っているわけで、これらを駐車料の売上で賄ってい
れば当然原価になってしまいます。

正確に言えば、事業の運営のためにかかった費用で税が含まれていればその申告期に還付の請求をすべきと
いうことになります。しかし、この還付請求をしている人がどれだけいるでしょうか。私の回りを見てもそんなこと
をやっている人はおりません。

ということは青空駐車場は非課税といってもしっかりと国は消費税をとっていることになります。


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コラム827 2015年08月31日

国立大病院の赤字理由

 全国43の国立大付属病院の合同決算が出て、84億円の赤字と報じられました。その理由が変わっていて
笑ってしまいました。何と消費税のせいだというのです。

確か、医療行為には消費税はかからないという取り決めがあります。
でも、仕入れにかかる物品、設備の税負担の支払いは現実に行なわれていますが、これは免税の扱いと同じ
わけですから、決算時の精算で還付請求を出せばよいことだと思います。

消費税とは名前のごとく最終的に消費する者が負担する税金で、中間にいる者が負担すべきものではありませ
ん。医療機関なら仕入れたものが患者に対して請求すべきものではないのですからいくら仕入れ業者に払った
としても自分が負担すべきものではないはずです。

ですから国税に対しても堂々と還付請求を出すべきで、それが出来ないというなら税制そのものがおかしいの
ですから裁判でも何でもやればよいのです。

国立大ともなれば財務のプロがいて、そこいらの商店のおっさんレベルの税知識ではないはずです。医療行為
の免税項目も知らなかったとなれば即刻退席してもらったほうが良いでしょう。
支払うべき税金、払わなくても良い税金、その振り分けは私ら零細企業の会計係だって知っています。

それを消費税のせいで赤字になったとは、単なる財務の収支管理が出来ていない能力のない経営者と同じで
す。

消費税という税金はあくまで支払うべき最終消費者が支払うものです。
国税庁は赤字になったのが自分のせいだと書かれて腹が立たないのでしょうか。

ま、ふところに入るのがAからBになっただけだから関係ないか。

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コラム826 2015年08月28日

樹脂製品の信頼性

 今日のネットニュースに、樹脂製の折畳式踏み台が破損して怪我をするケースが増えているので要注意と
出ていました。使い方にも問題はあったようですが、ものがものだけに使用者の製品に対する過信という点も
充分にあったと思います。

ひとくちに樹脂といっても耐久性はそれぞれで、予想される荷重には充分耐えられるように設計していると思い
ます。しかし、世間では「予想を超える使い方」をしてしまうのも事実ですし、結果として破損しているのは実際に
あるわけですからケガをするだけ損というものです。

これら樹脂製のものを壊れるものとして使っていればまた対応は違ってくるし、それ以前にこういったものは使
わないという選択肢も出てくると思います。製品として出回っているのだから壊れるはずがない大丈夫なはずだ
と考えるのか、その前に別の選択をするのか消費者は選択が可能なはずです。

これと同じことは住宅の部材にも当てはまります。その代表的なものは基礎パッキンでしょう。いくら技術が発達
したとはいえ、一軒の家の重量は60tくらいあります。その土台の下に敷き詰め、解体されるまで荷重を受けるも
のなのに樹脂製でよいのかという疑問が頭から離れません。

厚みとしては20mmから25mm程度のものが標準のようですが、市場(しじょう)には単体式のものと連続式の
物が出回っています。どちらにしても樹脂製であることには変わりありません。外壁や土台水切りに隠れてしま
い直射日光には当たらないといっても樹脂は樹脂です。

仮に住宅寿命を50年として大きな地震が一回もないと言えるでしょうか。ただ単に静かに樹脂の上に土台が載
っているわけではありません。49年11ヶ月で遭遇することだってあるはずです。そのときはそのとき、わずか
20mmくらい下がるだけと考えるのか、いや困ると考えるのか個人の自由ですが、可能性はゼロではないので
す。

その基礎パッキンですが、今度はアメリカの住宅産業へ輸出すると書かれていました。
「理にかなっている」「日本での納入実績が20万棟あるので信頼性が高い」ということです。
確かに理にかなっていて20万棟あるかもしれませんが、未来の未知部分が証明されていないし、実績ではあり
ません。

それに、アメリカにだってクモの巣はあるでしょうし、ホコリだってあるはずです。
そんなところで空気なんて動くはずないです。その先はどうなるか想像は出来ます。


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コラム825 2015年08月27日

無抽選で柱プレゼント当選

 昨年までは2.5倍から3.0倍程度の競争率だった20万円補助の「柱プレゼント」ですが、今年から枠がぐっと広
がり、年間で2倍の600棟の該当数となりました。おかげで第一期と二期も定員オーバーとはならず無抽選で
応募者全員が恩恵にあずかれました。

当勉強会からも該当者がおりましたので参加いたしましたが抽選にならずほっとしております。

茨城県の場合は森林湖沼環境税を利用してこの補助制度が行なわれていますが、建築者にとっては20万円は
かなり魅力的な金額です。これは県産材の振興を目的として数年前から実行されてきましたが、年度予算の
関係でどうしても年間を通してというわけには行かず、3月末から4月にかけては該当しない人が出てしまい、
その辺の改善が必要ではないかと思っています。

当初の募集時には問題もありました。比較的棟数をこなす県内のビルダーがこの制度の盲点を突いて予備軍
的な人まで応募させて、中には本人が知らないうちに応募してしまい、自分の営業成績の囲い込みをやって
しまいあとからトラブルになったりしたのです。

そういうズルをする人が出てきたのでその後の応募は段々厳しくなり、書類では確認申請の写しが提出できる
こと、抽選は本人以外はダメということになったりしました。いつの時代にも我田引水をやる人はいます。
まあ、きちんとやることは良いことなのでこれからも公平性は保って欲しいと思います。

一つ気になることは
この制度がどれだけ一般市民に告知できていて、県産材の普及に貢献しているかという点です。たとえば、鉄
骨造りやパネル構造の家を考えていた人が「やっぱり、こっちにしよう」という乗り換えを考えるか考えたかです。
それには何か市民PRが殆どされていないような気がするのですが、私の思い違いでしょうか。

税金を使ってやるわけですから公平性は大事ですが、ある程度の補助を出して振興させるということはどこかの
誰かの需要を切り替えさせるということですから大きな意味での税金を使った妨害になることでもあります。
それは考えておりませんというのなら振興という言葉は何と解釈してよいのか分からないことになります。

どこでどのように効果が出たかを検証するのは予想以上に難しそうです。


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コラム824 2015年08月24日

何をやっても潰れない

 機構と名がつくもので過去に不要だとまで言われた社会保険事務所ですが、これまた名前だけ変わっても
やっている中身は旧態と変わらないことが報じられています。過去五年間で1万5千件越えということは、平均
して、年間3千件は間違った仕事をしているということです。

我々の世界でも事務処理の間違いはないとは言いませんが、それでも毎月のチェックでどこがおかしくて数字
が合わないのかは修正されます。
たしかに年金の窓口対応などは昔よりずっと良くなっています。でも、やっていることはズボラそのものであまり
変わりませんね。

二年ほど前に機構から電話がかかってきて、「標準報酬月額変更届が出ていません」と言われました。確かに
作って郵送したのですが、届いていないというのです。その言い方が「俺らは間違っていない」「あんたがやって
いないだろう」という態度がありありだったので、こちらもカチンと来て「それじゃあ、こっちとしては間違いなく送
ったんだから、いつでも台帳を見に来い」「二度も同じことをやらせるな」「こっちから送る書類も書留にするから
そっちから送ってくる書類も書留にしろ」と言ってやりました。

先日も個人情報の入った書類(ディスク)をご丁寧にパスワードまでメモに入れて普通郵便で送っていたという
お粗末な仕事が紹介されました。
日本の郵便はそれほど優秀と過信しているのか、「今までどおりでやったのだから何が悪い」としか考えていな
いほどのお粗末さです。

結局は「何をやってもクビにならない、会社は潰れない」と根底にあるからで、社会主義みたいな空気を吸いす
ぎてしまった悪弊がまだまだ残っているということになります。

まだやってんでしょうかね、何十文字打ったら30分休みとか・・・


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コラム823 2015年08月19日

分業という危険性

 2012年12月、中央自動車道笹子トンネルで起きた天井崩落事故から3年弱が経ちましたが、すでに世の中
から忘れ去られたかの感じがします。
当時、ボルトの腐食は見当たらず接着剤劣化と報じられました。私もその考えには賛成で他の施工方法もあっ
たと思いますが「これでいいんだ」という技術のおごりがあったのは確かだと思います。

その工法とはコンクリートに穴をあけ樹脂を注入し、ボルトを突っ込むといった100%樹脂接着剤に頼る方法でし
た。これは下への重力に対して頼るのは接着剤の塊だけで他には何も補助するものがないタイプでした。

あらかじめコンクリート内に埋め込んだものに接続し支えるといったタイプではないため、接着剤の劣化イコール
崩落へ直結というものです。

私らの工場でもコンクリートに穴をあけボルトを打ち込み機械を留めるという方法はしますが、重量はすべて地
面にかかるというものでボルトは横に対する動きを固定するという役割が主になります。

笹子トンネルの場合はこれをまったく逆にした形になるわけで、私らの頭では到底採用しないだろうという種類
だと考えています。こういうことがいとも簡単に不特定多数の人が通るトンネルに施工されていたなんて、知っ
ていたら絶対通りたくない道路だと思います。

私はこの事故を単なるトンネルだけのものとは思っていません。これは今の住宅にもそっくり当てはまることで、
集成材と木屑圧縮板を多用したものが街中にはあふれかえっています。これを危険と考えるか安全と思ってい
るのか個人の考え方一つですが、私は危険そのものであると思っています。

見えない
管理できない
センサーすらない

これらを使っているビルダー・Hメーカーは誰一人として危険だとは言っていません。言えば売れなくなるからで
自分なら使うかと問われれば「やらない」と答えるはずです。

今、各地で大型の非住宅建築、いわゆる住む目的ではない建物、学校や体育館、公共的な施設などで集成材
が当たり前のように使われています。これも、まだ目に見えるところに使っているならチェックも出来ますが、内
装で隠れてしまうような作り方の建物はこれらのトンネルと同じことです。

世の中の出来事を見ると
「自分は指示通りにやった」「設計上では問題ない」「管理はきちんとされているはずだ」と自分のやったことに
は問題ないという人が大勢います。

住宅だって同じ事、「国交省の認定がある」「俺は指示通りの仕事をしただけだ」「法律には違反していない」と
誰も悪者はいません。トンネルならまだ管理責任者がいますが、自宅ならそれは自分しかいません。

「今回の地震でかなりの家が崩壊した模様です」と報じられなければいいがと思っています。
その頃には私は生きていませんが。


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コラム822 2015年08月18日

意匠性も大事だけれど

 近年の住宅の特徴といえば、屋根の軒が出ていない、窓が縦長タイプの狭いものが何個もつく、庇がない、
基礎換気口がない、1F屋根のない総二階建てが多い、太陽光発電を載せる為か片屋根が多い・・・などです。

住宅は建てた時代の流行を表すと言いますが、まさにそれを地でいっている気がします。それは外見も内装も
同じことで、よくリフォーム希望のお宅へ伺ったとき、「これは何年ごろのものですね」というと「よくわかりますね」
と驚かれることがあります。

私らとしては、当時その建材等を扱っていたのですから、数年くらいの誤差で施工年数を言い当てることが出来
ます。大きく違っていたとしても5年でしょうか。それですから、その年代に建てられた建物の特徴がよく出てい
るということでもあるのです。

なかには、住宅とは思えないような意匠性に富んだ建物に出会うことがあります。完成した家ですから構造体ま
では見えませんが大体中身が想像できます。

住宅業者はある意味、競争の世界で生きているのでまずは他の業者に勝たねばなりません。そのためには
いわゆる「顔を良く見せる」ことが大事になってきます。ですから、しゃれて見えるように作るのは彼らの宿命と
いえるのかもしれません。

意匠デザインも良く、中身もよく、おまけに安価であれば言うことナシですが、そう簡単に三拍子そろって勝負に
勝てるわけではありません。表面に出ることは三拍子ですが業者としての利益も絡んでくるとどこでそれを絞り
出すかということになってきます。

そういった環境から派生してくるものは「同じように見えて非なるもの」の産物です。

まず、家を建てる前に「自分の思っているものと現実のかけ離れた中身を知ること」が大事な作業になってきま
す。それには自分の描いている理想の家はどうあるべきかを自分自身でわかっていなければなりません。


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コラム821 2015年08月11日(火)

8月9日の勉強会

 いつもならお盆の頃には暑さも一段落ついてきた感じがするのですが、今年は今までになく身体に堪える気
がします。庭先の草花を見てもかなり日照り状態で参っている様子です。
元気なのは雑草だけみたいに見えますが、その草たちもパサパサに乾いた土のなかでかろうじて生きているよ
うに見えます。

さて、今月も定例の勉強会を行ないましたが、本当にお暑い中、14名の方が参加してくださいました。遠路より
おいでくださった方もいらっしゃり心より御礼申し上げます。

今回は「工法の話」と題して各ハウスメーカー(HM)、ビルダーの実際に行なっている工法とそれに使われてい
る資材の特徴などを業界の納入者の目から見た意見を率直にお話しいたしました。

主なる内容は日本の従来からある木造住宅の変化、外国からきた住宅の工法がどのように国内では影響が
出るか、当たり前に見ていたのでは得られない情報などについて二時間ほぼ目いっぱいにお話いたしました。

次回はその工法に使われている資材がどのような欠点を抱えているのかをお話ししたいと思います。
9月の予定は13日になっています。お時間のある方はご参加下さい。

しばらく勉強会の方の現場が途切れておりましたが、水戸市双葉台に工事を着工いたしました。ちょうど、次回
の勉強会の頃には上棟の運びとなると思います。詳しくはこちらまでお問合せ下さい。事前にご連絡いただけれ
ば棟梁が現場で説明をしてくれます。黙ってみていてもわからないことがありますので是非声をかけてください。

今年から「柱プレゼント」補助金制度も2倍に枠が広がり大部分の人が抽選なしで恩恵にあずかれるようになり
ましたのでこちらの建て主さんも応募いたしました。この制度は地域材振興を目的に行なわれており、大手ハウ
スメーカーなどでは該当しないように設定されており、地域密着型の補助制度になっています。


早くこの暑さが一段落して欲しいと思っているのですが、この先どうなるのでしょうか。
「今年の夏は冷夏が予想される」といっていた人もいたようですがねえ・・・


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コラム820 2015年08月07日(金)

近所の大規模太陽光発電

 私の事務所から南西へ100mほどのところに業務用の太陽光発電の設置工事が行なわれています。
つい数日前に砕石敷きが終わり、今度は架台の固定杭の設置が始まりました。同時に周囲の進入禁止柵の
支柱工事も進んでいます。

何しろ電気を扱うエリアなので不慮の侵入者がいると感電などの感電などの危険が伴ないますから、その辺の
ところは設置条件にもきちっと定められていると思います。

ここの気になる点は、南側に山林があること、それもかなりの高さで密集しているため、冬の直射日光は高さの
1.8倍の陰が出来ます。目測で想像しても敷地部分がすっぽりと陰になってしまうのは明瞭です。
ご存知のように発電パネルは直射日光が真上(直角)に当たった状態がその性能の規定の出力レベルになり
ます。
これが日陰となると半分以下に落ちると私は認識しています。まあ、ゼロにはならないから、年間の発電量で考
えればどうということはないでしょうが平均レベルが下がることには間違いありません。
(たぶん、ここは夏に勝負をかけているのでしょう)

それはそれでいいのですが、この設備は厄介なことを抱えていると電気保安協会の人が教えてくれました。

ご存知のように太陽光パネルというのは直流を生み出します。しかし、社会的に通用しているのは交流という
電気的に言うと電圧が1秒間に50回変動するタイプですから、まっ平らな電圧を波型に変換してやらねばなりま
せん。そのためには「変換器」という装置が必要で、それに波型の波形にタイミングを合わせたものでないと
電力会社の電線に接続することが出来ません。

この装置が高調波という余計な邪魔物を出してしまい、近所の機器に悪い影響を与えてしまうのだそうです。

今ではどこの家でも漏電ブレーカーというものが付いていますが、これにこの高調波が入ってしまうと漏電と判断し
てブレーカーが下がってしまうのです。もちろん、私のところの高圧変圧器にも微弱なものでも反応する機器がつい
ていますから、直線で50m以上は離れているとは言え、反応してしまうかもしれません。

もし、そうなるとパソコン等の操作中であれば打ち込んでいる資料は吹き飛びますし、電話・FAXも止まってしま
います。

今の設備ですからそのようなことはないと思いますが、ないとも限らないので注意しなければなりません。


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コラム819 2015年07月27日(月)

あれから一年が経ち

 ちょうど昨年の7月22日に次男の嫁さんが倒れ8日後の30日に亡くなりました。9月1日に息子と3人の孫が
茨城に引っ越してきて私たちと同居するようになりました。
お葬式も神式で行なったので仏教で言う一周忌なるものの一年祭を7月19日に済ませました。

これで一区切りがついたと思っていたところへまたまたアクシデントが起こりました。

息子が一年祭をやる前に三日ほど高熱が続き、何か風邪とは違う症状でした。医者へ行き診察してもらった
ところ肺炎であることが分かり強い抗生物質を処方されました。そのときに血液を採取し検査をしました。
その結果、血液中のCRPという数値に異常があることが分かり、それが何からきているのかをさらに調べまし
た。
抗生物質で肺炎の症状は治まったものの今度は血液のガンである悪性リンパ腫であることがわかり、出来る
だけ早く入院して治療を開始したほうが良いと言われたのです。

詳しい検査の結果は非ホジキンタイプの濾胞性という種類であることがわかり、嫁さんの倒れた7/22に入院と
なってしまいました。この種のリンパ腫は進行速度が遅く完治が難しいタイプと言われ抗がん剤治療を繰り返し
受けてもいつかは再発するのだそうです。

1〜2年で命を落とすことはありませんと言われましたが、何故なのという気持ちがいつも頭にあってどうしても
受け入れることが出来ません。今日はそのセカンドオピニオンについても病院から説明を受け、本人にどうする
かを決めてもらうことになるのですが、我々家族は今までのデータを聞いてひっくり返りようがないこの状況を
どうしても受け入れられなくて悩んでいます。

今まででしたら、土日は息子が休みなので孫の面倒は息子に任せて勉強会をやってきました。しかし、これから
は365日孫の面倒を見なければならず、この勉強会の継続が難しくなってきました。7月も緊急事態で娘が来て
くれ助けてくれましたが、そうそういつも頼るわけにも行かないので何とかせねばと思っています。

このコラムもそういった理由で前回から随分と空いてしまいました。頻繁に更新されていたのに何か変だなと思
われた方もいらっしゃると思いますが心よりお詫びいたします。

というわけで、今後もこのように日にちが空くと思いますが出来る限りアップを致しますのでどうぞご理解下さい。


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コラム818 2015年07月10日(木)

木を正しく知るE

 近頃の住宅建築現場を見ると殆どが***ホームのプレカット加工で、しかも、その大部分が集成材で占められ
ています。大手ハウスメーカーから中小のビルダーまで同じような素材です。ということは、世の中全体を100と
すれば80は同じような中身ということになります。

建て方が済むとすぐに面材が張られ中が見えなくなってしまいます。別に見える見えないはどうでも良いのです
が、この面材も大手建材メーカーのもので**ライトなどという呼び名で何の疑いもなく使われています。

こうなると、大工さんの技術などというものは殆ど必要がなくなり鳶(とび)職さんの領域で充分に建物が建って
しまいます。今の建物は釘打ち機と丸ノコさえあれば建てられると言われます。それだけ作業が簡略化され、経
験が要らないことを意味しています。

行政の見方も耐力壁等の考え方が単なる数字が満たされていれば問題なしと解釈されています。数字さえ出
れば使用OKという考え方です。10年後、20年後あるいは50年後の変化は考えられていません。このままで
行くといつか来るであろう危険はまったく考慮されていないのです。

こういう考えを持っている人間はこの業界にはいなくなってしまったのでしょうか。それとも、隣がやっているの
だから行政が認めているのだから何が悪いという考え方しか持っていないのでしょうか。もし、自分が家を建て
るとして同じことをやるのだろうかとなったらきっとノーと言うに違いないと思います。
それが今の建築業界の姿だと思います。

結果が出ていないのにお前はアホかといわれるかもしれませんが、本心から言えば自分なら怖くて出来ないと
いう考えなので他人にも勧めないということです。

集成材に頼らなくてもまだまだ資材は間に合っています。面材に頼らなくても壁強度の取り方はあります。
それを建て主さんに知ってもらわないことには何も変わりません。不思議にも思われません。
今ほど「建てられてしまった家」を家造りだと勘違いしている人は8割以上いると感じます。

今の家造りには二つの大きな問題があります。一つは空気環境の危険、二つ目は構造体崩壊の危険です。


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コラム817 2015年07月08日(水)

木を正しく知るD

 何故木を使うのか、それは比較的近隣にあり、加工がしやすく扱いやすい、乾燥させて使えば長持ちする、
何よりも「生物として生理的に合っている」というのが一番の理由だと思っています。

かといって、必ずしも木は万能ではなく燃える・腐る・反る・割れる・ねじれる・・・などの家にとって都合の良くな
いこともあります。しかし、それらは総合的に考えられるべきで全体の見方で言えば合格点であるという判断を
されると思います。

木を知ろうとするときよく法隆寺等の話しが参考に出されます。1000年かけて育った木は1000年もつとか、木は
方位のままに使えとか言われますが、必ずしもこれは正しいことばかりではないと思っています。間違っていると
は言わないが合っていないと言ったほうが正しいかもしれません。

これらを並べて言うなら、30年の樹齢のものは30年でダメになるということを意味しますが、乾燥させた状態で
使うなら100年以上は持ちこたえられます。方位のままになどといわれたら、山と積まれた原木市場の丸太は
どこから出材されてきたのか分からず住宅寿命が縮まってしまうことになります。

25年そこそこで壊されているのは住まい手(住人)の意思でやられていることで、一つひとつの部材がダメだか
ら壊されているわけではありません。たとえば、シロアリに少しやられたからといって壊してしまうのは、最初の
材の選択と基礎の施工に配慮がなかったからであり、それなりの知識で対抗すればメンテナンスは必要ですが
解体してしまうというところまでは行かないはずです。

地震でも被害を受けて診断をしてもらっても外見上の目視でやるわけで構造体一つひとつをチェックできるわけ
ではなく、揺れるということが地震ショックを吸収した結果なのに壁が割れているから半壊とか簡単に言われま
す。ものの見方考え方が違うのですから判断が分かれてしまうのは致し方ないですが「住めない」と言うことと
一くくりされてしまうのは何とも合点がいきません。

今の建築を見ていると、構造体は何も木ではなくてもいいような作られ方です。断熱材は木を窒息させるような
充填の仕方をされているし、木組みなど必要かと思うような合板をベタベタ使ってしまうし、耐震金物でガチガチ
に固められるし、木の特徴を活かしてなどという建物は見当たりません。

いくら神社仏閣とは違うといっても、いま西岡棟梁が見たら「何だこれは・・」と鼻で笑われてしまいます。


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コラム816 2015年07月07日(火)

木を正しく知るC

 自然物である木材が乾燥し縮む割れる反るというのは我々からすると当たり前のことと考えるのですが、これ
がハウスメーカーから見ると「許せない・クレームだ」ということになります。そのため、製材所では人工的に乾燥
をかけ含水率18%ととかにしたものを市場(しじょう)に出してきます。

それでも、ハウスメーカーは価格が需給関係で上がったり下がったり変動の激しい国産材を嫌い、誰が扱って
も問題が出ないようなもの「集成材」を好んで使います。これらは殆ど外国から輸入された材を使っているため
国産材振興と叫ばれているいまも殆ど変わらず価格主導権を握っています。

この集成材が現在の杉・桧よりも優秀であれば問題ないのですが、日本において適材と言えるかどうか
疑問視するような材種であると私は感じていますがHメーカーはそうではないのです。

木を長く扱っているものであればあるほどこの考え方は強く持っていると思いますが、何せ住宅業界を引っ張っ
ているのが大手ハウスメーカーであるだけに、そこが要望するものを納めると言う指導力のない業界を露呈して
いると言えます。

良いものか悪いものか結果が出るのは一年二年ではありません。しかし、この日本で長い間使われてきたもの
がいとも簡単に変えられていくのを見ていると業界のプロ意識も地に落ちたと感じます。いまは技術の進歩によ
り、どんどん新しいものが生み出されています。それ自体は良いことだと思いますが実績がないものを安易に取
り入れていってしまうことはかなりの危険を抱えこむことにもなると言えます。

新技術も使い方だと思います。たとえば、大館の樹海ドームのように公共の施設で人が住まないもの、そして
目視でチェックが出来るものだったらどんどん使うべきです。そういったケースが「人が住まう住宅」には合致し
ません。同じ建物といっても構造体がまるで見えなくなってしまう今の住宅は質が大きく違い危険を感じ取ること
すら出来ません。

そういったリスクを回避しながら資材を選ばなければならなくなった今は、建て主さんも大変な時代だと思いま
す。そんなことは言っても、選ぶ前にハウスメーカーでは決まってしまっている素材ですから展示場に行った時
点で勝負はすでに決まってしまっています。

いま、集成材の危険性を叫んでいるのはごく少数です。しかし、このリスクは必ずやって来ます。そのときすでに
私らはこの世にいませんが誰かがどこかで犠牲になると想像しています。


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コラム815 2015年07月06日(月)

木を正しく知るB

 一回の伐採で何百本も出材されてくるようないわゆる柱材・桁材などを製材するような規模では、木自体が
まだ若い方の樹齢を使うことになるので百年以上経ったような木とは別の考え方をします。

山全体の特徴としてどこの斜面のどちら側に育ったのか、むしろそういった考え方のほうが木質を大きくはずす
ということは少なく、柱にむいている場所柄なのか桁材にむいている場所柄なのかを判断しています。

それはすでに山で切り倒され4mに切られたものか3mに切られたものかですでに用途が決まってしまっていま
すから製材所の人が選べるというものではありません。ただ、どれだけロスが少なく挽けるかを見ながら入札を
するということです。

山林における丸太の出材はその山の木をどのくらいの樹齢まで育てて伐るのかで皆伐(かいばつ)か間伐か
違ってきます。間伐というのは良い木を育てるために残す木と切り倒してしまう木を分けることを言います。

そのわけ方は病気の木を間引く、光を受けられるように間引く、と理由はありますが結果的には100年150年と
いう太径木(たいけいぼく)を育てるために分けることを言います。ですから10年で間引かれるものも50年で
間引かれるものも80年のものも本命が残っていれば間伐材ということになります。

木材というのは農作物と同じでそのほとんどがセリで行なわれます。このやり方は需要が上回っているときは
どんどん高値が出ますから山の原木にもその恩恵が行きますが、世の中に材が豊富に出回っているときには
良いものからしか売れていかないので全体的な丸太価格も下がってしまいます。

そのしわ寄せが連鎖していき、最終的には山の立ち木価格に影響が出ることになります。今は各業種が分業化
しており、山の所有者が作業者だとは限りません。製品市場→製材所→原木市場→出材者→山林所有者とな
り、最終取り分がゼロなどという事もあります。

これでは今後の植林などは問題外で、放置しておいたほうがまだましだとなってしまい、全国的に手入れのされ
ていない山林が多くなっているというのはご承知の通りです。こうなると種苗業者も減り続けます。何でもそうで
すが一度減ってしまったものはもとに戻らないと言います。植林しないのですから売れないのは当たり前で、
この状態が長く続けば、建築業界の大工さんがいなくなるということと同じ現象が起こっています。

いま、世間ではバイオマスなどと盛んに言われ機械重機が採用され効率よく出材されるようになってきましたが、
使うほうは「今ある木」を伐採しているのですから伐り終わってしまえばなくなります。
そのあとをどうするかなどということがあまり語られていません。
日本という国はいつもこうなんです。


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コラム814 2015年07月03日(金)

木を正しく知るA

 山に生えている植物すべてがそうですが、そこの環境、つまり温度・水・風・密集度・土と大きな関係があり、
このほかに(木にとっての)害虫・火災なども大きな影響を与えます。

木が生長するには葉っぱが必要です。大きく枝を張り出し葉をたくさんつけられ、日光をたくさん浴びられれば
成長が早く進みます。ということは年輪密度が大きく(粗く)なることを意味します。現実的にいえば、野原に
一本だけ他の木に邪魔されず充分に枝を伸ばせ葉をつけられる木は早く大きく成長できるということです。

しかし、一本だけということは風当たりもまともに喰らうということでもあり、その土地の風の吹く度合い特徴が
そのまま木の反力となり成長しているということでもあります。

一方で、群生している木は光の量などは一本木よりも制限されますが、風当たりは団体で受けますから一番外
側の木がその影響を受け、内側の木はそれよりも弱くなります。ということで、群生させて育てた方が反力の少
ない木が育つと言うことになります。

日本の地形は言葉の通り山に木を植えています。南に面しているところもあれば北面のところもあります。当然
光の当たり方と風の受け方が違ってきます。南面と言うのはひな壇に植わっているようなものです。ということは
北側の木の南面の枝が積極的に成長できる環境ということです。

一方、北面に植わっている木は北側の木の方が低い位置になり南面の木の環境と逆になります。光の当たり
方も南面よりソフトになり枝の張り方も南面より緩和されて育ちます。これらは長い年月をかけて育つ木には
年輪もやや細かく反力も若干ゆるく育つということになります。

前回、アテ(反力)について書きましたが、風で影響を受けることよりむしろ枝の張り具合で反力がついてしまう
ことのほうが多いと私は考えています。すべての植物は地球の重力に逆らってまっすぐ上に伸び、太陽の光を
たくさん浴びようとするDNAを持っています。だから、山でまっすぐに見えた木でも製材してみたら曲がりが出た
と言うことにもなるのです。

今の製品・丸太が出荷されてくる仕組みを少し書いてみます。
まず、山の所有者がいるわけですが、必ずしもこの人たちが山を手入れしているとは限りません。先代から引き
継いだけどどこまでうちのものなのかわからないなんて人もいます。

実際には伐採・植林などをやる林業家という職業があり、森林組合などもこういった作業に従事しています。
その次に山から丸太を出材して原木市場へ届ける運送屋さんがいます。この人たちのトラックは丸太をつかみ
やすいような手のような装置がついたクレーンを装備していて一人で作業が出来るようになっています。

原木市場に着いた丸太は大きさ別に分けられ、それぞれ購入希望のある製材所へと販売されます。
ただ、これらの木がどこでどういうふうに育ってきたかというのは原木市場で積み上げられた丸太を見ただけで
はわかりません。しかし、熟練した者が見ると切り口を見ただけで「この木は曲がる確率が多い」とかがわかると
言います。

よく、西岡棟梁が書いた本に「木は生育した条件のままに使え」とありますが、これは神社仏閣みたいな大規模
な建築の場合にあてはまる言葉で、我々のような一般住宅に当てはめて考えようとしても無理があります。
一般的に出回っている10.5cm角や12.0cm角で「これは南側の木かな」などと講釈を語っても無意味です。

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コラム813 2015年07月02日(木)

木を正しく知る

 今の時代、木造という雰囲気だけを売りにして、木がまったく見えないような家を建てておいて堂々と木造住
宅といっているHメーカー・ビルダーがたくさんいます。たしかに構造体にはそれらしき木のようなものは使われ
ていますが、完成したところを見ると木らしいものはほとんど見えず、どこかの事務所みたいな壁ばかりで横並
びに同じように見えてしまうのは私だけではないと思います。

現実がこれだけ乖離したものになっているのはよその世界を見てもあまりないと思います。それはともかく、木
造を目指して作るのであればもっと木の知識を幅広く持っていなければ良い意味でも悪い意味でも相手に振り
回されて一巻の終わりになってしまいます。

「木」が好きでという人は、そうでない人よりも知識はそれなりに多く持っていると思いますが、悲しいかな、その
情報入手の手段というのは我々よりも少ないと思います。当たり前ですが。
そこで数回にわたって木材を正しく使いこなすため「木の何たるか」を書いてみたいと思います。

住宅を建てるのに我々は「住んでいる地球の中の何か」しか使えないということです。ですから手軽に使えるも
のは石ころ・竹・木・・・北の国であれば氷も入ります。レンガ・コンクリートなどもありますが人工的に手を加えな
いと使えないのでここの所では除外します。

手っ取り早く・・・という意味では「木」が一番適しているということになりますが、ひと口に木といっても広葉樹・針
葉樹と多様でその特徴は分かれます。大きく分類すれば家には直材が必要ですから針葉樹が適しているという
ことになります。広葉樹は好き勝手に枝を張り成長していきますから建築に適した直材は針葉樹から比べると
圧倒的に少ないのです。

木は成長するときに外界の影響を強く受けながら育ちます。風・光・気温・栄養(土の具合)などが成長に微妙に
影響していきます。風当たりの強い所に育った木は風に対する反力を持ちながら育つために俗にいう「アテ」を
持つようになります。アテというのは表現が難しいですが人間に例えれば押し倒されないようにする筋肉みたい
なもので樹木(幹)についた防御反応の結果といえます。

これは人間みたいに必要なときに力を入れて不要なときには力を抜くというような芸当は出来ませんから、力を
入れっぱなしの筋肉と考えたほうが良いでしょう。当然ながら立ち木状態から倒されて丸太になったときには
強風に堪えなければならない状態から解放されますから無負荷状態といえるわけで、丸太状態の中でほんの
少しだけ強い反力を持った方向に反ります。

それともう一つ、枝の張り方が加わります。枝は四方に満遍なく伸びますが北半球では南からの光が多く射し込
みます。そうすると北側に張り出した枝はその後の木の南側に張り出した木と競合します。すると後の木の南側
の木の枝が勝ち、前の木の枝は衰退していきます。これを一本の木としてみれば南側に多く枝を張り出した木
がたくさん育つということになります。

木はそれぞれ自立して育っていくのですから南側の枝を支えるためにバランスをとろうとして木の幹に反力が生
じます。これらをよく理解しておいて下さい。 つづく


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コラム812 2015年07月01日(水)

公道でなければ・・

 前項の太陽光発電などの場合は道路があってもなくても設置は出来ますが、住宅の場合は厳しい決まりが
あります。たとえ道路のように見えても、きちんと登記された公道でなければ道路があるとは認められません。

その昔、ややこしい法律がなかった頃から家が建っていたとしても、今もう一度家を建てようとすると今の法律
を基準として行動しなくてはなりません。対象敷地が公道に面していなければ建て替えは出来ないことになって
います。たとえリヤカー道と称されるような狭い道でも公道であればセットバックという措置を取らなくてはいけま
せんが建築することは出来ます。

セットバックというのは各自土地所有者がそれぞれに何かをやるとき(塀を架け替えるときも)、道路の総巾を
最低4mとらなければならないという決めごとです。つまり道路の中心から2m下がるということで向こう側の人も
将来何かをやるときには2m下がって計4mの道路を確保するというものです。まったく気の長い話で、何十年
かかるかわかりませんが・・。

道路として登記されていないところに家が建っている場合が世間には結構ありまして、過去にもお一人いらっし
ゃいました。そこのお宅には大型トラックでも進入できるくらいの道路(に見える通路)がありました。
お話が進んでいくと当然敷地の確認がされますが、そこで道路に見えたのは近所の人が共同で使っていた他
人様の土地だったことがわかり、このお宅の公道に面している部分がまったくなかったことが判明したのです。

こうなると、公道までの自分専用の土地を借地するしかなく、その相談を土地所有者にお願いしましたが、相手
だって自分の土地をよその人に貸してやれるほどの余裕がなければそれも無理ということで残念ながらそこの
敷地は建築を断念せざるを得ませんでした。現実にはそこを通って生活しているのですけれど、そこはよそ様の
土地であり自分の建築に必要な条件を満たすわけではないという解釈なんです。どこまでいっても法律は法律
なんですね。

こういうことは世間ではままあることでして、では他所へ移ることができない人はどうすればいいのかというと
そこの状態でずっと生活している限りは文句を言われないので、上手に手入れしながら住み続けるという事に
なってきます。でも、いつかは住宅寿命も来ますから限界もあります。


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コラム811 2015年06月30日(火)

道路か否か

 今回の太陽光発電の設置は予想以上に伐採費用がかかるようです。本日、二ヶ所設置予定である土地の
その1カ所に大型重機が運び込まれました。事務所から見ると南西方向に見える土地はまず入口付近から
作業が始められました。

ここに行くための道路はいわゆるリヤカー道というほどのもので、巾は1.8m(現況)ほどしかありません。そこを
大型重機(約2.4m巾)が通って行きました。住宅地なら絶対不可能な進入です。ほとんど障害物のない畑です
から問題も出ませんがそれでもキャタピラ分だけは完全に越境しています。

オーナーの方が言っていましたけど、「この土地は何も利用することなく何十年と来てしまいました。」
「いま、太陽光発電のチャンスを逃すと永久に利用することはなかったと思います。」
「本当はどこまでが自分の山林なのかもよくわかっていなかったんですよ。」
「でも、これで少しは山林の手入れも出来るし先祖様も喜ぶでしょう。」

今の時代、こういうオーナーさんもいるんですねえ。

道路としては現在ほぼまっすぐになっていますが、昔はたしか山林手前でクランクに曲がっていたはずです。
私らの記憶でもこの奥に一軒だけ家があったのですがそこの家へ行くときもまっすぐではなく曲がって行ったと
記憶しています。まあ、文句を言う人がいなければ問題はないでしょうけれど、オーナーさんの記憶も意外と
いいかげんなところがあり、公図を見てはっきりわかったと言っていました。

登記上の問題と実際の生活とは別ですからこういうことも結構あります。ただ、もう一箇所の設置場所に入って
いくには公の道路はなく生活の都合上使っている道路があるだけで、昔、ここの奥に建っていた古い家が建て
替えをしようとしたときに許可が下りず別の土地に建てたというケースがあり、妙に納得してしまいました。

道路に見えても道路ではない、畑に見えても道路だったりといろいろありますね。


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コラム810 2015年06月29日(月)

神棚と祖霊舎(みたまや)A

 ネット検索していた祖霊舎ですが、思い切って掲載されていた東京のT商店へ電話して見ました。
対応してくれた係りの人に品物の在庫確認をお願いし、送り先を書いたものをFAXで送信しました。
今は、こういった祭事のものまでネットで購入できるようになったことに驚いています。かなり時代遅れですが。

仏教と比較して言えば、お墓は必要でも樹木葬の場合は石の心配がないし、お経をあげてもらう法要も内容が
簡素で費用も安い。ろうそく、線香を焚かないから祖霊舎から火を出すなどという火災の心配が少ない。
良い所ばかりではないですが、全般的にみれば身心の負担にならないような費用で済むようです。

近所のお葬式でも神式を経験し、叔父の葬儀も神式でしたので何となくですが家人と神式がいいねと話しており
ました。私は次男なので長男が先祖の仏さんを受け継ぎます。したがって、私はいわゆる新家(しんや)という呼
び方で仏壇に関してはフリーの立場です。そんなわけでのんびりと構えていたのですが急に必要性が出来てし
まい、事情が事情だけに最初は慌てました。

とは言うものの、神棚のほかに祖霊舎(みたまや)が必要だということも知らなかったのですから呆れるくらいの
ノーテンキものです。担当してくれた係りの人が荷物の到着は7/4(土)であることを知らせてくれました。こういう
ものでも代引きって出来るんですね。便利な世の中です。

まあ、何とか品物の手配が出来て、あとは荷物の到着を待つだけですが、人間は亡くなってからもいろいろと
掛かりがかかるようになっているのですね。

一番下のチビ助(三番目の孫)は何もわからず一歳と三ヶ月になりました。四ヶ月のときに母親に亡くなられてし
まったのですから写真を見せても誰だかわからない顔をしています。
もう少し成長してくれば写真の人が「お母さん」だということがわかってくるでしょう。


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コラム809 2015年06月22日(月)

神棚と祖霊舎(みたまや)

 日本人は生まれたとき、お祝いに行くのが神社、メリークリスマスはキリスト様、家を建てるときにお願いする
地鎮祭は神式、亡くなった時に頼むのはほとんど仏式のお坊さんと外国では考えられない何でもありの国です
が、そう言っている私らも神様は信じていないくせにお墓は神式の樹木葬でいいねとか話していました。

50号線で笠間・小山方面に行くとき福原という場所があるのですが、ここに出雲大社の出張所みたいな割りと
大きな建物があります。ここの裏手にその樹木葬の墓地が数年前から売り出されていて私らもその一画を入手
しました。名前は常陸の国の何とかと書かれているのですがいつも覚えられません。

樹木・・・というからろうそくや線香は禁止で(当たり前ですが)お参りに行くときのお花なども帰るときには下げて
くるなど細かいルールがあります。起伏のある雑木林の樹木を間引き整備して傾斜なりに番号がついており、
細いですがきちんと舗装された道路がありすぐ近くまで乗用車なら入っていけるようになっています。

派手さはありませんが落ち着いた雰囲気のところで私らも気に入っていました。まあ、順序から言えば私らが先
に入る予定だったのですが、世の中はわからないもので、次男の嫁さんが急死して一番先に入ってしまいまし
た。亡くなったのが去年の7月でしたので、そろそろ1年祭(仏教の一年忌にあたる法要)を考えているのです
が、その前に仏壇にあたる祖霊舎(みたまや)を準備しなければということになりました。

恥ずかしい話しながら、私は神棚があるんだからそれでいいんじゃないのと言っていました。家人からそんなわ
けには行かないと言われ、仏壇屋さんに行ってみました。さすがに仏教のほうの仏壇はずらりと並んでいますが、
神式のものは一つか二つ程度しかなく、ネットで検索してみることにしました。

さすがに今のネット社会は何でもありますね。大きさは何号とかいう言い方で大きさがわかるようになっていま
す。数万円から買えるものや、40万円以上もするものなど仏式と変わりないようなりっぱなものまで掲載されて
いました。一応、その中の23号というサイズが部屋に置くにはちょうど良いサイズでしたので、大きさの面では、
ほぼそれに決めようと思っています。

仏式と比較と言うと何が語弊があるかもしれませんが、神式はお金がかかりませんね、何をやっても。


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コラム808 2015年06月19日(金)

時間がかかるらしい

 6/16に掲載したソーラーの設置工事ですが、業者の話によると休耕地に設置するのではなく、お隣の山林に
やるのだそうです。何でも、休耕地というのはあくまで畑であって、都市計画法でいう市街化調整区域に位置
するここの土地は畑以外に使用してはいけない。むろん住宅などにもダメという当然と言えば当然の土地であ
るわけで、こちらの思っていた畑に設置ではなく山林にそれをやるのだそうです。

なるほど、山林かと変に納得してしまいましたが、これがまたちょっと大変な作業が多くて、簡単にはいかない
工事だなと思いました。

それは木の伐採量が半端ではないこと、仮に搬出してバイオマス発電等に持っていくとしても搬出経路が狭い
こと。うちの工場前の土場を借りるくらいですから、その先の農道も昔のいわゆる「リヤカー道」と言われるくらい
の道幅しかなく2t車までしか入れず効率がものすごく悪いという点です。

仮にその作業が出来たとして、次には土台造りのための砕石搬入があります。これも2t車で入れることになりま
すので、木の搬出よりも道路にダメージが出ることです。通常は一日数回程度の乗用車が行き来する程度で
ほどほどに砕石を敷いてならした程度の道ですから、これから先の工事で受けるダメージの全体ボリュームは
容易に想像できます。

木の伐採量が半端ではないと書きましたが、その山林はすでに何年も人が立ち入ったことがなく、例えば山菜
やきのこを取りに行くなどという話しは100%無理で人が踏み込める状態ではないこと。一応、道らしい道はある
のですが、犬が散歩に行ってもそこまで行くと後ずさりするほど木が倒れているわで、道路と山林の区切りさえ
判別が難しい状態になっているのです。

昔は農家の焚きつけやサツマイモの発芽を促すために松葉拾いなどということも頻繁にやられていましたから
運動靴だけでも入れましたが、今では安全靴に完全防備の姿で行かないとまず「動く」という動作すらできない
でしょう。

言葉で言い表すのはちょっと難しいですが少しは理解できたでしょうか。そのような場所の工事になるのです。
「仕事ですからやりますけどね」「でもね、これをきちんと片付けるには3ヶ月はかかるかな」と言った現場監督
さんの言葉が妙に重たく感じます。

それでもオーナーさんはメリットがあると思ってやるのでしょうね。


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コラム807 2015年06月18日(木)

おかしな基準法

 住宅建築(建物)の世界はいつ頃から行政が口を出してくるようになったのか、別にそのことに対してはどうで
も良いのですが、「このようにしなさい」「しなければ建てさせませんよ」と言いながら、何かあったらその責任を
取らないという点なのです。

口を出すなら金も出せという言葉がありますが、行政は「口は出すが責任は取らない」と言った表現のほうが
ピッタリしていると思います。市の担当行政(建築課)は確認申請の窓口ですが、このバックには国交省の決め
事があって動いています。

少し前の簡易宿泊所火災のときもそうでした。すべてが「事が起こってから」なのです。建築基準法によって
書類上の中身が問題なければ認可しています。その先、書類どおりになっていなければ工事を差し止められる
となっています。いまは完了検査というものも行なわれます。それでいて建物が存在しているはずなのにいつも
何かが起こってから基準法違反だのと騒ぎ出します。

これはビジネスとしてお金を得ているから大きな問題になりましたが、一般の住宅にも当てはめて言えば似たよ
うなものであることには変わりありません。

火事になるということは避けなければいけないですが、絶対ということは人間ですから無理です。しかし、火事に
なっても逃げられるということが大事で、そこのところが逃げられないような素材を使っておいて警報器をつけれ
ばいいなどという非常に曖昧なことになっています。

法律で防火基準といっても死なないということを指しているわけではなく、あくまでも他へ延焼しないという措置
にとどまっています。ですから行政の「不燃」という概念がもともと違っていて、国交省・環境庁・経済産業省がバ
ラバラ意見のままで寄せ集まったというのが現実だと思います。

F☆☆☆☆マークの指針もそうですが、本来人間の居る空間において支障の出るものは禁止すべきなのに、そ
の基準決めの生温さがいつも存在します。揮発物の発生をこれこれ以下にしろというのは本来ゼロでなければ
いけないもののすり替えでしかありません。それでいて24時間換気だの火災警報器だのと言うのは本末転倒と
言わざるを得ません。

建築基準法というのは一体誰を守ろうとしているのか何を守ろうとしているのでしょうか。


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コラム806 2015年06月16日(火)

メガソーラの設置工事

 去る6月3日コラム下段に書きました太陽光発電の設置ですが、いよいよ事務所奥の休耕地利用の工事が
始まりました。昨日、我が工場の土場奥に工事用出入口を設置し、今朝は重機が運ばれてきました。

太陽光を受けるのですから光が当たらなければ何もなりません。あいにくその休耕地は南側が雑木林です。
しかもそれらの木がかなり高い位置まで生長していて、このままではパネルを設置しても意味がないので、まず
はそこの木を伐採することから始めるということです。この雑木林も同一所有者なので特に問題はありません。

話しの具合では設置場所はここともう一つお隣の家(今は住んでいない)の右奥にある休耕地を整備するとの
事。合計二ヶ所で発電をやるそうです。
ということはもう一ヶ所はうちの裏道を入っていくことになるので2tダンプでぎりぎりなのでここより大変みたい
です。

まずは邪魔物をどかして砕石を敷き、ベースになるコンクリート土台を作るそうで、生コンやさんなどどうやって
入ってくるのか他人様のことでも心配してしまいます。

担当の監督さんいわく、「今頃こんなのやったって遅いだろうにねえ」「まあ、頼まれたから俺らはやるけど・・・」
と、おっしゃっていました。

でも、東電に売るんだからまんざらでもないと思うのですがねえ。九州みたいに拒否(保留)はされないでしょ。


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コラム805 2015年06月15日(月)

今月の勉強会

 昨日は予定通り勉強会を開催いたしました。お忙しい中、12名の方の参加をいただきました。
今回はゲストに畳屋さんと棟梁に出席してもらい、普段皆さんが見聞きできないようなことをサンプルなどを交え
て話して頂きました。

私自身も毎回独演会みたいに話していますが、住宅建築に関しては多くの業者が関わってくるために自分以外
の世界を知る良い機会にもなります。今では各業者が住宅会社の一作業者となってしまい個人的に顔を合わせ
ることもなく現場が進行していきます。

そんな疎遠になりがちなパートを知っていただくためにこのような機会を設けています。今回は主に畳屋さんに
お話しいただきましたがみなさん目が輝いて聞き入っておられました。設計書には単なる畳と書かれただけのも
のでも、実際に目の前でサンプルをいろいろ見てみると実に奥が深いと感じます。

この勉強会は普段から実践現場を見ながら話されていることと現場で進行していることを並行して両面からの
知識知恵を得ることを目標にしております。一回の講義では得られることに限りがありますが半年・一年と続けて
もらえれば何が自分にとって大事なことなのかわかってくると思います。

このHPのトップにも書いてありますが、重要なのは表に出てくる情報ではなく、言われていないことを知ることの
ほうが大切だということです。

また次回もお時間がありましたらご参加下さい。


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コラム804 2015年06月12日

法律を変えればいい

 またもや悲惨な事故が繰り返された。北海道砂川町の一家4人死亡事故は言葉にならない。安全に人を運ぶ
と言う便利な機械がバカな人間の扱いで凶器になってしまうのだから車を普及させたフォード氏もあちらの世界
で嘆いていることだろう。

「保険に入っていないから逃げた」と言っている様だが酒を飲んでいたのも後からわかった。要するに保険うん
ぬんで逃げたのではなく酒を飲んでいたことで致命的になると思い逃げたと解釈すべきだろう。他人の命がか
かっているのに自分のことしか考えないどうしようもないアホだ。

以前、福岡でも市役所職員がワゴン車に追突し、子供3人が亡くなった事故がありました。あの時も本人は逃げ
てしまい、しかも同僚に水を持ってこさせ・・・と、自己中心的な行動をとりました。どちらも共通していることは酒を
飲んでいて現場から逃げたことです。

腹が立つのは警察の対応です。アルコール検知が出来なかった・・・と生温い対応しかしないことです。こういっ
た「逃げ得」を許さないためには、逃げたら即飲酒泥酔状態だと見なすことだと思います。簡単なことです、法律
を一本解釈を変えればいいんです。その他に「逃げたこと自体が二倍の罪」になるようにすることです。

庶民の生きる手段として生活費を切り詰める人が増えてきて、車も普通車から軽自動車に切り替える人が多く
見られます。事故がなければ何事もないですが、一旦事故になるとやはり軽は弱いです。今後もこのような事故
が起きないように早急に対処してもらいたいと思います。亡くなった方のご冥福をお祈りいたします。


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コラム803 2015年06月11日

団地内の現場

 ここ数週間の内に通勤途中の団地内で一般住宅とアパートの建築が進んでいます。どちらも市内の同一業者
が建てています。この業者は壁面に「面材」を使っています。いわゆるスジカイの代わりのものです。
最近の建物はこの面材を使う現場が多く見受けられるようになりました。

メーカーからはいろいろとメリットが言われますがどうもこの手は好きではありません。理由は以前から書いてい
るように硬い家になるからです。

何故、木造で作るのか。その意味を深く考えている人はいないと思います。ただ木造だから良いのではないかと
考えているか、他がみなそうだからか、行政が認めているのだから何がいけないのか・・・だと思います。

なぜ、昔の家が残ってきたか、100年とか150年とか経っている家はそれなりの地震被害に遭遇していたはずな
のに今でも健在なのか。そこまで遡って考えると何か答えが見つかる気がします。

とてつもない地震パワーは別として通常起こりうる100〜500年に一度というレベルでの話しですが、我々が今
までに経験してきた東北(東日本大震災)くらいのエネルギー地震で繰り返し同じようなエネルギーを受けたとし
ます。そのときに今の釘(ほとんどエアー打ち)で留める面材は果たして耐えられるのだろうかという疑問です。

多分、有識者は大丈夫というでしょうが、私はそうは思わないのです。かといって、そうならば今のスジカイは
大丈夫なのかというと、面材よりは良いかもしれないが完全ではないと思っています。
面で支えるというのはツーバイフォーも同じですが、あちらとの違いは面材が合板であること、木造に使われている
ものは鉱物資源だという点で違いがあります。

かつて、基礎コンクリートの換気口の角がひび割れするのが許せないと、大半の家が基礎パッキンに変わって
しまいました。これは角であるからゆえそこへエネルギーが集中し亀裂が入るということで嫌われました。
それならば、そのことは掃き出し窓や高窓の部分と同じ考えで開口部の角へ割れが入るという理論は同じわけ
です。

これらのことは面材方式が採用されてまだ日が浅いこともあって、しかも見えないところになってしまうからわか
らないだけであって傷口が確認できずどうすることも出来ないというのが現実です。私が言いたいのは揺れない
から丈夫だというのは理屈に合わないということです。

これは長期優良住宅の仕様でも同じことで、そういった「優良である」とされている建物でも言われていない建
物でも中身は大して変わっていないということです。私ら町場の大工さんを顧客としてきた業界では大規模実験
など出来る環境ではなく、やりたくてもそのお金はどこからも出ません。結局は今までやってきた経験から「これ
なら大丈夫だろう」というものをやり続けていくしかありません。

でも、明らかにそうだろうと思うことがあり、こういう考え方は的を大きく外すことはありません。もちろん、こういう
ことは地震災害がきたときに外れて欲しいのですが、あまりにも効率が優先された簡略化住宅について異論を
持たずにいられません。

竹やぶがどうして崩壊しないかというとゆらりゆらりゆれて地震ショックを吸収できるからで、あれがピンと立った
ままであれば同じようには行かないと思います。建物もまったく竹やぶと同じとは言いませんがゆらりゆらり揺れ
てショックを吸収するという考えを入れていかないと将来大きな被害が出るような気がします。

この団地の現場も、私らが確認できるまで自分の命がもちませんが・・・


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コラム802 2015年06月10日

かけたハシゴを外される

 原発事故以来、以前にも増して太陽光発電が業界の「売り」になっていました。過去形の表現をしたのは経済
産業省がFIT(固定価格買取制度)の見直しをすると言い出したからです。これは以前からの業務用のメガ発電
に対する「予想より増えすぎ」に対してバランスの取れた比率に持っていこうとする調整の意味で、ぶら下げた
アメダマはそろそろ外すよというサインです。

「良い値で買い取る」というのは、自由経済の世界では自然の成り行きとして需給バランスで決まるものであり、
電気の世界は独占的な価格設定であるけれども一応発電コストは出ているわけです。ですから日本全国価格
が共通などということは製造コスト面から言えば同じではないはずです。

ましてや発電となれば大規模な設備が必要で大企業と零細企業の製造コストは段違いに存在するはずです。
FITというのはそこを無理して「でかいおまけ」をつけるからおやりなさいと言っているので、高く買わされる人が
必ず出てくるはずです。買い取るのは大きな電力会社ですが自分の所のコストよりはるかに高いものを仕入れ
させられるわけですから会社の存続にもかかってきます。

それを誰に負担させるかという点で広く薄く一般の消費者(需要家)に振り分けてしまう仕組みを作ったのです。
こうすれば電力会社は痛くも痒くもなく事業は安泰なのですが、一つだけ不安があり、それは安定した発電が得
られないということです。

家庭用の屋根に載せたレベルなら蚊に刺されたみたいな感じで何ともないでしょうが、本腰を入れてメガ発電を
やる業者が増えてくると穏やかではなくなります。これをこのままやり続けると送電線のパンクを起こします。
高圧鉄塔に張られているぶっといワイヤーでも流せる電流は無制限というわけには行かず上限があります。

太陽光は昼間でしかも日が照れば一斉に電気を起こしますから不安定な要素だらけです。屋根に載った機器な
ら基本的に自家消費が原則で残りを売るという仕組みになっています。ところが全量売電のメガとなればどこも
かしこも一斉にガツンと数字があがる訳です。これでは送電線が限界を超えてしまうと破壊されてしまうのでそう
なる前に安全なレベルで制御しなければなりません。

その意味からも「買取量の保留」という言い方をして事実上拒否してくるわけです。太陽光発電の先進国のドイ
ツでさえこのFIT買取制度をやめました。それだけバランス取りが難しいことを表しています。行く行くは日本もそ
うなるだろうと思っていましたが早くもその状況になってきました。

ビジネスとして早々と手をつけたところはまだ良いとして、これは良いらしいからとこれから資金調達や計画を進
めている所では穏やかではなくなってきます。

もともと、補助金というアメダマをしゃぶらせてやらせようとするのですからいつか無理は表面化してきます。
補助金という魔物にはくれぐれも騙されないようにしなければなりません。
念を押しておきますが、家庭用の太陽光発電はまだこの範囲には入っておりません。


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コラム801 2015年06月09日

瑕疵担保責任保険とアフターサービス

 ご存知のように、瑕疵担保責任保険(以下瑕疵保険)とアフターサービス契約の違いは、保険は業者が強制
的に加入し、瑕疵があったならば無償で修理するというものですが、何が対象になるかと言うと、構造体の欠陥
と雨漏りだけというものです。

アフターサービスはどこまでを含めるか建て主さんと業者で任意で決めるもので、年数も保証内容も任意で、大
概瑕疵保険期間が終了した後に継続で取り交わすというものが多いです。ですからこの契約は10年後以降に
結ぶというのが大半のようです。

世間では「瑕疵保険」がすべてをカバーしてくれるものと思っている人も多いようですが、実際の中身は大きく
違っています。外壁の自然劣化、新建材フロアのヤケ、ひび割れなどの劣化、壁クロスの汚れ・色あせなど通常
の劣化からくるものは対象外ですから要注意ということです。

 5/27で書いた「巧みな保証システム」でもその後の10年を保証するにはまず家の全塗装をするのが原則とか
言われたのだと思います。あくまで個人の想像ですが、アフターメンテナンス契約でも「自然劣化」は対象外で、
おそらくこういうケースは営業力でリフォームへと誘導されるのではないでしょうか。

この家の人もこのようにお金がかかることを最初から言われていたならば果たしてこの住宅を契約したかという
ことですが、かかる金額は言われずに「保証」という言葉だけが頭に焼き付いてしまいわからなかったのだと思
います。

この家のあと10年で何が起きるかというと何も起きないでしょう。そしてもう一回10年の契約を結ばされ30年め
でたく相手の思う壺にはまるのですが、その先まではこの住宅会社は契約しないでしょう。HPにも書いていな
かったし、全部の構造体に集成材使用していますから中身がわかっている側としては深入りは避けると思いま
す。

現在70歳くらいの方ですから10年後は確実に80歳となるわけです。私らよりずっとお金持ちで健康そうな方で
すからきっと二回目の契約もなさるでしょう。二回あわせて340万円・・・じつにおいしい契約です。
6/6に足場が外されましたが一回170万円の仕事としては実に儲かる内容でした。

およそ半分の費用が会社に吸い込まれたと感じています。何も起こらない時期にきちんとメンテ保険料をいただ
いて、危険領域に入ったら「自然劣化は・・・」と言い、保証の対象外ですから実に熟視したプロだと思います。


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コラム800 2015年06月08日

医院が休院

 もう一ヶ月以上になるでしょうか、私宅の近所に開院していた個人医(内科)の先生が脳梗塞で入院し、その
医院はそれ以来ずっと休院しています。病名が風邪やケガと違ってこれは長期戦になるといわれていましたが
一向に回復する気配は聞かれず時折事情を知らずに来院して張り紙を見て帰って行く人を見かけます。

年齢は私よりもずっと若く(10歳くらいは若いと思う)、家人も何かといえばこの先生に診ていただいていました。
彼女は神経性胃腸炎といわれるくらい下痢がしょっちゅう繰り返す体質でした。
「久保さん、下痢じゃ死なないから安心しなさい」「僕だってしょっちゅうやっているよ」と言われていたくらいで、
かかりつけみたいになっていました。

まあ、お医者さんはここだけではないから困ることはないと思いますが、今は院外処方といって薬が隣り合わせ
みたいなところに薬局が出来ていて、一応別の領域になっています。ここはどうするんだろうねと心配されてい
ますが、ま、本命の稼ぎどころが休止となってしまったのですから、わざわざ他から処方箋を持ってここまで来る
人もいないでしょうから閉店となるのでしょうね。

道路を挟んだ反対側にはこの医院のデイサービスの建物があるのですが、ここは継続してやっているようです。

お医者さんはインフルエンザ等が流行してもきちんと診察しているのだから無敵だと思っていましたが、脳梗塞
は別格だったのですね。最近は「再起は無理なんじゃないの」といううわさも出ています。
一日も早い回復を願っております。


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コラム799 2015年06月05日

今の家が何故危険なのか

 私は18歳のときからこの業界に籍をおいておりますが、最初はいかに目の前の配達(忙しさ)をこなすか、
いかに多くの荷物を運ぶかに奔走していました。それがまじめに仕事をやることだとも思っていましたが、自分が
家庭を持つようになってから「住まいの本当の目的」というものを考えるようになりました。

便利な新建材が出始まってからはほとんどの大工さんが「これはいい!」と何の疑いもせずに使い、販売店も
売上をどんどん上げていくには新建材の販売は欠かせないものと考えていました。害がまったく出なければ
それでよかったのでしょうが、やがてこれで大きな代償を払うことになってしまいました。

それはバタバタとした時代が過ぎ、ゆっくりとものごとを考えられるようになった90年のころに何か違和感を感じ
るようになったのです。まだまだ何人かの配達要員がいたころ、私はその指示を出す役割にまわることが多くな
ってきて、いわゆるデスクワークというやつです。

座り仕事が多くなってくるとどうしても筋力の低下が起きてきます。あるとき、倉庫のゴミ片づけをやっていて
とても大きなショックのギックリ腰をやってしまいました。これで動けない状態が8日間つづき、本格的に復帰でき
たのは一ヶ月ほどかかりました。

それからは筋力体力の維持にと水泳を始めたのですが、8年位したら消毒用の塩素に反応するようになってし
まったのです。もうどうにも鼻水が止まらなくなり、プールに行った翌日は箱ティッシュが手離せなくなってしまっ
たのです。こうなるともうプールはあきらめなくてはならず、そうなるとまた腰痛の悩みがぶり返してきます。

それからと言うもの、何かにつけてニオイに敏感になり、特に新建材の発するニオイには人一倍敏感になりまし
た。そこで93年の大阪寝屋川シックハウス事件を知ったのです。それからです、なぜ自分がこんなにニオイに敏
感になり塩素に反応するようになってしまったのかを考えると、自分が独身の頃から住んでいた住環境が原因
だったのではないかと考えたのでした。

住環境といえるようなものかどうかわかりませんが、寝起きしていた部屋が建材倉庫事務所の奥にあり、いつも
倉庫の揮発物をたっぷり吸っていたのだと思います。夏などは朝起きるとまず建材倉庫の窓開けから始まります。
そうしないととてもとても目がチリチリしていられないのです。これで毎日毎日過ごしていたのですから今振り返
ってみれば何と怖い生活をしていたものかと思います。本当に無知というのは怖いものです。もう遅いですが。

そう考えると体調が変わってしまったこともみんなツジツマが合うのです。それならばそうならないようにすれば
いいと思い、この勉強会を始めたのですが何しろ情報発信などどうやったらよいのかわからなかったのでいろい
ろ考えました。結局はこの世界は工事業者に説得しても受け入れてもらえるような環境ではなく、直接消費者の
方へ情報発信しなければ何も変わらないのだということがわかったのです。


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コラム798 2015年06月04日

木の含水率について

 その昔、私が高校を卒業してこの業種に就いたころ、この業界はネコの手も借りたいほどの忙しさがありました。
前日に宵積み(よいづみ)をしたトラックで朝から配達に出て、午後にはもう一回積込みをして配達し夕方に戻る
のですが、そこで終わりではなく明日の朝に出る分を積み込んでからやっと一日の作業が終わるというパターン
でした。

そういう時代の頃でしたから、当然資材も入ってくるのを待っていて積み込むなどというのはごく普通のことでし
た。今で言う「新建材」も「木材」も同じで、木材というのは倉庫に立てかけてほどよく乾燥してから出庫するもの
ですがその時間がない状態でした。入荷、即出荷というのが構造材から造作材に至るまで同じような扱いでし
た。

こういった連鎖は品物を作っている山(製材工場)でも同じわけで、昨日カラスが止まっていた木が今日は製品
になって出てきたとまで言われました。この時代には生(なま)が当たり前で乾燥などということはほとんどの人
が出来ないことでした。

当然のように大工さんは生材を削り加工し組み立てていきますから数年もすると木材がほどよく乾いて縮みます。
すると組んだ仕口(しくち)がスキてきてガタガタになります。建て主さんは不満が募りますがこの時代は誰もが
そうだったので諦めながら生活をしていました。

この時の木材含水率を考えると、製材所のところでは100%、我々の所では在庫を持っていた店でも80%、ほと
んど乾いているとは言えないものが流通していました。誰の責任と言うことではなく需要が供給を上回ってし
まい乾燥させることもできなかったというのが現実だったと思います。

その昔、家を建てるということは一大事業であり、当家の主は大工さんを連れ山へ行き必要な木材を手当てして
自宅の軒下などに最低でも一年は乾かしてから建てるというのが通常の考え方でした。それらの時代と比較す
ると何と気違い地味た見たことをやったものだと思います。

乾燥度合いもこのくらいやれば木は安定した状態になり含水率も20〜25%くらいに落ち着きます。こうなれば
建築後もクレームが出ることなく、多少夜中にピリッピリッと音がすることはあっても何の心配も要りません。
でも、生材だとこのピリッピリッ音が半端じゃなくします。当家の人が心配するのも無理ないくらいの音です。

納材業者が言うのも変ですが、時代状況が違うとしか弁解のしようがないというところです。
今では主要な構造体もだいぶ乾燥材が使われています。しかし、その乾燥材を作るためには大量の石油が使
われていることを思えば手放しでは喜んでもいられません。

昔からやられてきた自然乾燥(天乾てんかん)という方法なら場所と資金さえあれば化石燃料を使うこともなく
製品化できるのですが、見積りが決まったら即納という世の中の流れでは自分の所だけのんびりとしている
わけにも行かずというのが現実です。

天乾なら多少のひび割れはあっても色艶とねばりは昔どおりあるのですけれどね。


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コラム797 2015年06月03日

LVLとCLTA

 この二つの製品の違いを挙げてみます。LVLはベニヤ板に近い性質、CLTは集成材に近い性質をしています。
LVLは原料素材が薄いためカーブ(曲面)加工が可能なため、アール屋根などの梁(横架材)に使用出来ますが、
CLTはどちらかというと壁面を形成するほうが得意です。
これらに使用する接着剤はレゾルシノール系でほぼ同じ。この接着剤は猛毒と言ったほうが的確なくらい毒性の
強いものです。

構造用に使えるくらいですから水に対しては強いですが、火に対してはガスを噴出します。製造工場内では高
性能なマスクをしていないと倒れてしまうくらい刺激性の強いものです。(実際に工場見学した同業知人の話)

LVLは(前項でも書きましたが)アール梁が出来るといっても、所詮接着剤でカチカチに固めたものです。しかし
いくら強度のある接着剤だといっても相手は自然物の木ですから薄いなりの伸び縮みはしています。たとえば
半径4mのアール梁を作ったとして最初はカラカラに乾燥した素材でも幾分かの水分を含むと伸びますから計算
上のアールが伸びてしまって極端な話し、半径4.5mとか5.0mとかのカーブになってしまいます。

鉄骨のように冷えて固まっているものは安定していますが、そこは自然物である木は湿気を吸ったり吐いたりで
1%くらいの動きがあるためにアール部分で悪さをするようになってしまうということです。アールが動くということ
は梁間(横の寸法)が広くなったり狭くなったりしてそれ以上の動きをしてしまうということにもなります。

何でも木で作れるといっても工業物みたいに考えていると現場サイドでは困ることになってしまいます。
そういう「動いてしまうもの」は資材として不適格なわけで、バックではそのような理由があって段々と使われなく
なってきたのだと私は考えています。

CLTは肉厚があるからと「燃え代(もえしろ)」が考慮されているようですが、これとて張り付けたものが厚いから
といって裏側に燃えるまで時間がかかり耐火性能があるというのは屁理屈に過ぎません。それをいうならムク材
は最初から優秀な耐火材であるわけで「木は燃えるから耐火にならない」という昔の話は何なのだということに
なります。

燃えるのに時間がかかるとかかからないとかの問題を言われますが、本来ならば火事が起きたときに有毒ガス
を出さないで安全に退避できるのはどれくらいのものなのかという時間表示のほうが人間にとって大事なので
はないかと思うのですが、その辺の考え方が行政はまるで持っていないようです。

それらを問題とするならば今の日本の建築はほとんどバツということになってしまうので、国が言う「混乱を招く」
という大儀で蹴飛ばされてしまうのでしょう。それは単に製造メーカーを保護しているだけに過ぎないのですが。

加えて言えば、このCLTは本来持っている木のしなりはほとんど期待できません。タテヨコでがっちり固められて
しまったものは合板と同じ動きしかしません。


先日、当事務所の50mくらい奥に耕作されていない畑があるのですが、その所有者が来て、太陽光発電をやり
たいのですが、お宅の敷地を通らせていただけませんかという話しがありました。
そこの畑に行くには昔の農道(俗称リヤカー道)というくらいの普通乗用車が1台やっと通れるくらいの裏道があ
るのですが、どうもその道幅では県道から直接資材を搬入することが出来ないようなのです。
私の敷地を横切って行けば残りわずかな10mくらいの両側何の障害物もない畑で直線道路なので、車輪さえ
はみ出さなければ他人の畑に入らなくても現地にたどり着けます。
昨日、その工事関係者なのか、現場の確認に二台の車でやってきました。どうも本気で太陽光発電を設置する
ようです。これから先、目の前で工事を見られるとあって非常に興味を持って見ています。


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コラム796 2015年06月02日

LVLとCLT

 いま、日本の建築資材製造メーカーとしては国産材を使ったLVLとCLTの製造に動き出しています。
LVLはラミネーテッドベニヤランバーの略称、CLTはクロスラミネーテッドティンバーと言い、その頭文字をとって
います。

LVLは一枚一枚の素材がベニヤ板のように薄いものですが繊維方向を揃えて貼っているもので、見た目には
ベニヤ板の厚物といった感じがします。原料としては大根のカツラ剥きのような薄いもので、大きな包丁で作るイ
メージです。
CLTは直交集成材という呼び名があり、ラミナーと呼ばれる素材が巾なりに並んでいてそれがベニヤ板のように
直交して張り付けられています。この原料は製材機で挽いて作ります。ラミナーの形は間柱に似ています。

LVLはある程度の規格サイズみたいなものがありますが大型の建物などの供給はほとんど特注のサイズになり
ます。使用場所は梁が多く、アール調のカーブ梁も出来るため最初は多くの設計士が採用しましたが長期的に
みると不都合がかなり出たようでこのカーブ梁は最近あまり採用されなくなっています。

CLTは直接建物の耐力壁を形成することからほとんどが設計図面に合わせた特注品になります。
一枚の部材寸法が大きな厚みがあり、燃え代(もえしろ)の時間もかなり稼げると、耐火の面から期待されてい
ます。(それをいうならムク材は最初からそうだったろう・・・と思うのですが)

CLTはもともとヨーロッパのほうで先行開発されたもので、今までにはなかった建築資材になります。これらは
メーカー側のいわゆる製造協会などの組織もなかったので、やっと最近出来たくらいです。
まだまだこの製品の歴史は浅いということです。いずれの資材も接着剤が大きく絡んできますので喜んでばかり
はいられません。


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コラム795 2015年06月01日

ないものもある量販店

 私の事務所近くには、昔 水戸射爆場という米軍が使用していた広い敷地があり、今は新光町という名前にな
り、買物の拠点になっているスーパーモールのような郊外型の店舗がいくつも進出してきています。
その中に、ジョイフルホンダ有り、ケーズデンキ有り、ヤマダデンキ有り、スーパーコストコ、TOHOシネマ、etc

私は趣味でアマチュア無線をやっていますが、家庭内の環境制限であまり声を出すことが出来ません。
その無線機を置いておく所を我々の世界では「シャック」と言いますが、1m巾ほどの狭い廊下の隅にあります。
このシャックでイヤホンを耳に入れツートツート(CW)とやっています。

このようにすれば声を出すこともなく世界と交信出来ます。でも、家人の理解がほとんどなく「それって何が楽し
いの?」といつも言われます。以前、声を出せば「何そんなつまらないことを言っているの」と言われたこともあり
、最近は孫がすぐそばで寝ていることが多くなったので余計に声を出すことは出来なくなりました。

まあ、それが理由ではないのですが、もともとCWが好きでアメリカあたりの人と会話するのと同じようにトンツー
で交信したいと思っていました。なんと言っても英語力がないものでその域に達していませんがカタコト英語で楽
しんでいます。

ただ、困ったことが一つあって軽いインタフェアー(混信)が起こります。それもすべてではなくラジオのNHK総合
にだけ出ます。原因は電源側から回り込むことを突き止めました。その対策として高周波を阻止するフィルターを
100V側の電源コードに入れることにしました。

最初はコンセントの延長コードにそれを入れようと思い量販店を訪れたのですが、ほとんどそのような出来合い
のものはなく一般的な3口、4口などのものばかりでした。しかたがないので家に戻りネット通販を探しました。
さすが、そのような専門分野がたくさんあり、その中からフェライトコアという高い周波数だけ阻止するパーツを探
し当てました。

この部品は長さが3cm直径2cmくらいのちくわをタテ半分に割ったような形をしています。これをラジオの電源コ
ードに挟めるようにしてつけます。最初10個つけましたがまだ混信するので思い切って20個つけました。
これできっちり混信は止まりました。

いまはパソコンや携帯など高い周波数を使うものが身の回りにあふれています。そういった機器から出る雑音
がけっこう他のものに障害を与えています。今回はこのフェライトコアの挿入で止まりましたが、文明の利器があ
ふれるほどこういった対策は必要になってきます。

それにしても世の中で気付いていないのかこういった混信除去の部品が量販店になかったとは意外でした。


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コラム794 2015年05月30日

ヤマダデンキ撤退

 ここ地元ひたちなか市では昔からケーズデンキが量販店として知られていますが、売上日本一のヤマダデン
キが国道6号日立製作所前に進出してからは田舎の激戦区と言われるようになりました。人口別に見ると東京・
茨城・東北を比較すると、特に東北秋田あたりとは10倍以上の開きになるのではないでしょうか。

まるで1000ピースのパズルを埋めるかのように次々と大きなお店を展開させていきました。しかし、この地球上
ではどこかで限界というものがありヤマダデンキもその例に漏れませんでした。水戸の駅南すぐそばに開店した
時も大々的に宣伝されケーズデンキもヒヤヒヤしたことと思います。

ところがこの駅南店は駅から徒歩0分で中心地には間違いないのですが、車ではとにかく入りにくい店でした。
一度行ったらもういいわという感じがするくらいで、同じ水戸市のちょっと南に寄った50号バイパス店のほうがず
っと入りやすいのです。いくら都市型を目指すといっても東京ではないのですから、車が止めにくいといった理由
は嫌われるもとになるという田舎の法則を甘く見ていたのだと思います。

それらのことが原因ではないかと思うのですが、この駅南店はこの先遠くない時期に撤退となるようです。
量販店の一つや二つはなくなっても困らないのですが、住宅業界とてこれと同じようなことを繰り返しています。

FC(フランチャイズ)と呼ばれるものがそれですが、オーナーを募ってマニュアル指導しロイヤリティ収入でのし上がっ
ていくやり方です。指導だけでやっているうちは良いのですが売上の確保手段として資材も扱うようになり本部
だけが潤うような体制にしてしまうためコツさえつかんだ人には飽きられ離脱されてしまいます。

ヤマダデンキがS×L(エスバイエル)と手を組んだというのも事実上成功したとは言い難いものです。
それでも今度はソフトバンクとどうのこうのと騒いでいます。
売上日本一をキープしていくということは大変なことなのですね。

客観的な見方をすれば、小さな田んぼにアメリカ大地を工作するような大きなトラクターで乗り込んでしまったよ
うなもので、自分本位でものごとを考えている、あるいは相手業者を潰せばいいというだけで進出していたとも
考えられるので、本当の消費者動向をつかんでいなかったと言えると思います。
全国で41店舗も撤退するということは「大きさだけでは勝てなかった・・」それを物語っています。

これだけの店を撤退させるとなると特別損失も桁違いに大きいものになりますが、そこはこういう店はキャッシュ
フローがしっかりしていますから簡単に潰れるようなことにはなりません。何しろ「売り」は現金で支払いは数ヶ月
先ですから、この分だけで手元にお金がわんさか残ってしまいます。零細企業だったら後始末費用も出せない
で倒産でしょうね。

気になっているのはイメージキャラクターの高橋尚子さん、いったいいくらもらっているのかな。


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コラム793 2015年05月29日

海外子会社の破綻

 いまでは「泣く子も黙るLIXIL(リクシル)」となった住宅資材の大会社でありますが、この海外子会社のJoYou
(ジョゥユウ)が破綻したと業界紙に出ていました。その額 410億円(保有株式250億、子会社債務保証160億円)
だそうです。これだけM&Aを繰り返してきた組織ですから中には泥水も含まれているのでしょうが、我々田舎
の零細業者には感覚がつかめないほどの大金です。

会社を買い取る場合はお金またはそれに順ずるものが必要です。通常は現金を出してその会社の株を買うこと
になりますが株式会社の場合は全資産を買い取るわけではなく経営権を動かせる分だけの持ち株(シェア)を持
てばいいことになるのですが、それにしても大金には変わりありません。

大手の会社ほど自己資金で賄えますが、どこの会社もあふれるほどの資金で動いているわけではありません。
この辺が裏にどれだけの資金力のあるパートナーがいるかで決まってくるのでしょうが、そのパートナーがどの
ような形でマネーを出してくるのかで会社の財務バランスが変化します。財務諸表の関係はご存知のように左
側の欄に資産(自分の持っているお金・建物・債権)など、右側には負債・資本(未払いの買掛などの借金、資本
金)などが書かれています。

この会社が今解散したとして支払うべき負債を全部清算した場合に何がしかが残ればこの会社の資産状況は
一応健全と言うことになります。しかし、負債額を払いきれない場合は債務超過という呼び方で事実上の破産を
意味します。現実はもっと複雑に絡み合っているので負債が上回っていても即破産にはならないのですが内容
が悪いという意味では変わりありません。

負債と資本は同じ右側にあるいつかは返さなくてはならないものです。しかし、負債というのは比較的短期であ
りますが、資本というのは解散しなければ基本的に配当などの利益配分だけの利子払いをしていれば良いとい
う考え方のものですからこの金額が多ければ多いほど会社の財務は安定しているということになります。

どんな会社でもこの資本・債務比率で苦労しているのですが、資金を調達するなら資本金の領域でお金を出し
てくれるのが一番その会社にとって安泰ということになります。ただ、お金を出すほうから見ればさっさと現金が
戻ってくるような普通預金型で利益を出そうと考えますから簡単ではありません。

「価値」の判断は厄介な部分があって他人様がその会社をどう評価するかと言う点でも数字が変わってきてしま
いますから、人間の作った株式というものは理解しにくく一筋縄ではいかないものです。

いずれにしても破綻となれば財務表左側の現金に順ずる価値の欄がゼロになることですからそれなりの規模で
ダメージは受けることになります。常にM&Aはそういう危険をはらんでいるということです。


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コラム792 2015年05月28日

空家特別措置法

 人口減少の余波は空家の増加にも影響があります。この近辺でも東北の震災後にその傾向が見られるように
なってきました。自費で解体される方はまだ良いとしても放置されたままでというと徐々に問題が出てきます。

こういうケースになるのは高齢で自分たちでは手入れが出来ないとか、子供はすでに他のところで生活をして
いて戻ってこないとか、子供もいないとか、相続を放棄されているとか何通りかのケースが考えられます。
入院または施設に入ってしまっているなどのこともこれからは加わると思います。

すべての人に相続する人がいるとも限らないし、入院先で亡くなってしまうケースもあることを考えれば、人それ
ぞれの多用な障害があって空家となることが考えられます。最後は行政代執行ということになりその費用は税
金で処理されのちに土地などの処分という形が取られるのでしょうが、借地だったらそれも出来なくなります。

その場合は地主にその負担が行くのでしょうか。いずれにしても人口減少の余波というものは雪解け後のゴミが
露出してきたような状況になるわけです。

よく親がいいます、「このくらいあれば俺の葬式代はあるだろうから覚えておいてくれ」と。
しかし、これからはそれに家の処分費も入れておいてくださいとお願いするようになるかもしれません。


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コラム791 2015年05月27日

巧みな保証システムB

 日本の人口が減少傾向にあり、どこのHメーカー・ビルダーもシェアー確保に躍起になっているのはわかるの
ですが、どうも私が見る限りでは自分のことしか考えていないやり方としか見えないと感じています。

建て主さんにとっては「保証」という言葉はすべてを守ってくれると考えがちですが、よくよく考えてみれば何も
起こらないところに保証料を払っているようなシステムに対してもっと疑問を持つべきだと思います。

たしかに家は手入れが必要なことはあります。しかし、何にどれだけ必要かということを理解していないと大事な
お金をドブに捨てることになってしまいます。家は大きな金額だからという心理を利用して「保証」というエサをち
らつかせるやり方には正等ではありません。

営業側からすれば、外壁のコーキングだって10年そこそこしか持ちませんと言います。たしかに寿命としては
10年程度のものだと思いますが、それが即雨漏りになり躯体に影響を及ぼすということにはなりません。

雨が漏るというのはそのほとんどがサッシ周りのコーキング部分からと屋根の谷、立ち上がり部分からです。
サッシ周りの雨水処理は防湿シートにブチルテープを併用しサッシのツバの部分で完全にストップするように施
工されています。

そのうえにコーキングを処理しているのでちょっとぐらい劣化した程度では雨は中に入ることはありません。
仮に入ったとしても、防湿シートの外側を伝ってすーっと下部に落ちて行き、土台部分から外へ出てしまうような
施工になっています

たった10年で170万円もかけるくらいなら最初にもっとメンテナンスが不要な施工にすればよいものをと思ってし
まうのですが、そこはあと10年を保証するには・・・と言われ、建て主さんも保証が受けられなくなると困ると思い
込み、またお金が払えるからそうなってしまうのだろうなと思います。

この家の本当の危険性はこんなことじゃないのですが、そこにはこの建て主さんは気づいていないようです。


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コラム790 2015年05月26日

巧みな保証システムA

 ひと口に170万円と言っても高いのか安いのか(それはまずないが)その工事内容によるものと思います。
一体何にそれだけの金額がかかるのか、納得がいけばいいのですが、私見では到底そこまでいっていないと
みました。

ものごとにはすべて原価構成があります。ここの現場を見てみれば単管足場がかかっており、その後に壁の洗
浄作業が行なわれる予定です。その後、コーキングの再処理がされ、再塗装になるものと思います。
他にもバルコニーの防水、屋根の点検が行なわれるとHPには書かれていましたから併行されるのでしょう。

昨日の朝は、その屋根の点検が行なわれていましたが二人が屋根に上って何やら見渡しただけのようでした。
バルコニーについては防水業者がFRPの再塗布をするのでしょう、多分。

あらためて、ここの家の概要を書いておきます。外壁全体の下側55%はレンガ調タイル張りで残り上側が防火
サイディング張りです。屋根は現代風の焼いた平瓦で特に塗装の必要のないものです。ですから再塗装の可能
性のある場所は外壁の二階部分と軒天を含む屋根破風部分だけということになります。

バルコニーの再塗布といっても面積は大きくはありませんのでその規模から言えば10万円以下だと思います。
単管足場が高くても17万円ほど、二階部分の塗装は軒裏含めても40万円程度、コーキング処理10万円以下、
屋根は点検だけですからほぼゼロ、会社経費を20%入れたとしても90万円なら仕上がる工事です。これから先
の保証料を勘案したとしても100万円を超えることはまずないと思われる工事です。

有償メンテナンスとしてこれらをやらなければ次の保証をしませんというのはどうみても内容的なバランスが取
れているとは言えません。これをいとも簡単にやってしまうのですからすごいと言わざるをえません。
私ら、どうやっても良心が咎めてしまってここまでの金額は主張できませんね。まさに脱帽です。


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コラム789 2015年05月25日

巧みな保証システム

 世の中、何ともうまい仕組みを作る人がいるものだと感心します。それは住宅の保証システムです。
今では「瑕疵(かし)担保責任保険」というものがすべての住宅に義務付けられておりますが、それとはまた別の
各住宅会社独自の保証という意味です。

この瑕疵担保責任保険というものはどこまでが補填範囲かというと、構造体の欠陥と雨漏りだけが対象になって
います。ですから外壁塗装が色あせたなどというのは保証の対象外ということになります。もし、雨漏り等のアク
シデントがあった場合は工事をやった会社が存続していればそこの会社が修理義務を負います。

もし、潰れてしまって苦情を言う先がなくなってしまった場合はこの保険会社がカバーしてくれるという仕組みに
なっています。保険ですから当たり前ですが・・・。しかし、この保険の有効期間はたった10年です。

多くのHメーカー・ビルダーはその後の保証として独自の方法をとっています。まず、瑕疵担保責任保険の期限
切れの保証を10年単位で二回、つまりあわせて30年保証と謳っています。しかし、そこはタダではありません。
言ってみれば最初の瑕疵担保責任保険についても業者の経費の中に含まれているのですから、すべての保険
料は建て主さんが払っていることになるのですが。

11年目からの保証というのはほとんど「有償のメンテナンスをやればその先を保証しますよ」というものです。
このときの有償というのがポイントです。外壁の塗りなおし、防水コーキングの更新などが必須条件になってい
ます。問題はこの金額です。

うちの近所の人が某ビルダーで建てて10年が経ち、このケースにあてはまりました。単管足場がかけられ近所
のうちらにも担当の人がタオルを持って回ってきて挨拶してくれましたが、当家の人とちょっと立ち話のときに聞
いてみたらその金額に驚きました。何とそのメンテナンス料が170万円というではないですか。


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コラム788 2015年05月21日

エコアイドル?

 世の中、何でもエコという文字がつけば良いように捉えられていますが最近の車にもそれはあるようです。
よく、信号で止まっていると軽自動車に多い気がするのですが青信号になり発進するたびにエンジンのスタータ
が作動している車があります。

都会の混雑する道路で渋滞に巻き込まれ10分で行ける所が30分もかかるというならわかるのですが、この辺
の田舎道で頻繁にエンジンを止めるこの装置を働かせる意味はどこにあるのだろうかと思ってしまいます。
ほんの数秒で発進するくらいの「つかの間の停車」にどれだけの効果があるのかはっきりしたデータでもあれば
まだしも、私の考えではスタータを動かすほうが全体的なエネルギーがかかってしまうような気がします。

今回、私事ですが、娘の乗っている3ナンバーが車検切れで、更新するには修理費も結構かかると言うので、
家内が乗っているデミオを娘が乗って、家内が軽を乗るという案がまとまり、その「エコアイドル」という装置の
ついた(別に希望したわけではない)車がやってきました。

引渡しのときに受けた説明で、いちいち信号ストップで作動しないようにスイッチを教えてもらいましたが、一度
エンジンを止めてしまうとまたそのスイッチを押しておかないとリセットされてまた作動してしまうそうです。

これだけ頻繁に止めていたらバッテリーは大丈夫なのでしょうか。スタータ装置は傷まないのでしょうか。
踏切などで長い時間待たされるときなどは私もエンジンを切ったりしますが、それは運転している人が考えてや
ればいい事で、わざわざこんな装置まで作ってエコアイドルのマークまでわざわざ目立つように作って比較検証
はきちんとやったのでしょうか。

場合によってはエコになりません・・・なんてどこかに書かれていないのでしょうか。
新品の内は良いでしょうけれども、やがて使い込んでくるとバタッと修理費でそれ以上に費用倒れしてしまうと思
うのですがいかがなものでしょうか。

ほんと、今の車って「小さな親切大きなお世話」の仕組みがあるんですねえ。
それは今の住宅と共通していますかね。24時間換気・火災警報器の義務化・・・似たようなものです。


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コラム787 2015年05月20日

廃材はまだそのまま

 4月20日に書いた部落内の片付かない新築廃材ですが、相変わらず道路に出る角に置かれたままです。
わざわざ止まってみるわけには行かない所なのでちらっと横目で見るしか出来ませんが、確認できた範囲では
外壁材の切れ端だけのようです。

その量はちょうどこの家の分のカット端材らしくパレットの上にピチッと積まれています。その脇には搬入された
ときのビニールの梱包材と、二枚重ねになっている本体が折れないようにと脇に添えてある養生桟が短く折ら
れて袋に入った状態で置いてあります。もうそろそろ袋も太陽の光で劣化してきた様子でずいぶんくたびれて
見えました。

石膏の廃材は置いていないようで他には建築廃材と言えるものはこれだけです。いずれにしても片付けなけれ
ばいけないもので、当時の関係者が忘れたという雰囲気ではなさそうです。新築なのですからゴミバケットも分
別をして分けておいたのならすぐに片付けそうなものですがそのままというのはどうも理解に苦しみます。

旧道路沿いではありますが結構目につく場所なので家の人は気にならないのでしょうか。ここの人は結構庭木
などもきちんと手入れしていてきれいに住んでいた人なのですが、何か業者ともめて置いていかれてしまったの
でしょうか。

けっこう、この部落内は気になることが多いです。


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コラム786 2015年05月19日

なかなか進まぬ・・・

 5/12に書きました排水管が土をかぶっていない現場ですが、やっと合併処理槽も埋められその部分だけは土
が覆われました。位置も北東の角でした。しかし、きちんとしたコンクリートが打たれたわけではなく、槽の三つ
ある点検口の首だけが妙に伸びた格好で、大相撲の土俵みたいに必要な所だけが盛り上がっていて、いかに
も最低限の土を盛ったという感じでした。

浄化槽の首の高さも結構高くなっていて道路レベルを基準とした場合、全体の四分の一程度は出ていましたの
で、ここまで車が止まれる駐車スペースではないようです。そうなるとどこまで土を盛って擁壁を設定するのかも
考えなければなりません。これらを早めにやらないとせっかく盛り土した部分が雨で流されてしまいます。

本格的な土留めはやらないのか、別の業者の担当なのか、何かの理由がありそうです。先週後半には東電の
工事車両が四台ほど来ていて交通整理の警備員の方も裏道ながら忙しそうに棒を振っていました。今週あたり
には新生活が始まっても「住むには住める」と思いますが、見ているこちらとしても何ともやることをやっていない
と気になって仕方がありません。


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コラム785 2015年05月18日

近所の新築

 先週の金曜日から近所で新築の建て方作業が行なわれています。通りの脇にはハイエースが3台ほど止まっ
ていて、その奥でクレーン車が資材を吊り揚げて二階建ての建物が出来上がっていきます。ここの現場も例に
もれず「プレカット加工」でした。

工場加工してきたものは現場を見るとすぐわかります。透明の薄いビニールがかけられているからです。まだ、
どこの業者が担当しているのか建築許可看板が見えないのでわかりませんが、使われているのは全部真っ白
い木ばかりでした。そして「床勝ち工法」でしたので柱が立つ前に床板合板が張られるやり方で進められていま
した。

日曜日の午後には屋根野地合板が張られ青いシートが見えましたから土曜日に降った雨にはタップリ濡れたも
のと思います。この工法の欠点は従来の木造よりも時間がかかること、この現場もクレーン車が二日来ていまし
た。見た感じから推測しても我々の常識からすればこの規模だと一日で用は足りる規模です。確かに効率優先
の考え方からすれば良いと判断されるのでしょうが、雨に濡れ重機が二日も必要だという点はマイナス点だと思
います。

屋根材も今としては当然のように「合板」でした。確かに作業は早いですが屋根野地に合板はあまりお勧めでは
ありません。まあ、平スレート(コロニアル葺き)だったら仕方ないでしょうが、瓦だったらムク板のほうが良いことは
明白です。

この感じで行くと、壁には面材が使われると想像できます。「地震に強い」と言われている面材ですが所詮釘で
止まっているだけのものです。昔の木組みとは理論が違います。どんな面材が搬入されてくるのかわかりません
が、だいたいこの辺で使われるものは「あれ」でしょう。

どこの現場を見ていても「あれ」が張られた後には防風(防湿)シートが張られるのですが、この施工方法は大
体直張りが多くて間を空けて張っている現場は見たことがありません。このシートは必ず両面を浮かして空気に
触れるようにしておかないと湿気を逃がしてはくれません。このメカニズムを理解している業者が意外と少なくて
あちこちの面材施工現場で間違ったやり方でやられています。

まあ、よそ様の現場ですからとやかく言う筋のものでもありませんが、きちんと施工してくださいと指導書を同封
している製造メーカーとしては歯がゆい思いをしていると思います。


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コラム784 2015年05月15日

早朝からの取り締まり

 ここのところ、一緒に寝起きしている孫(三番目)が一歳二ヶ月となり体力がついたのか、夜中に起きなくなっ
たかわりにけっこう早起きしてしまい、つられてこちらも起きてしまいます。家の中で遊んでいるのはすぐに飽き
てしまい「外へ連れて行け・・・」としゃべれないなりに意思表示をはっきりしてきます。

そんなわけで晴れた日には家の周りを抱っこしながら何周かする羽目になっています。自宅から大通りへ出る
路地があるのですが、ここに朝からパトカーが止まっていて何かを狙っています。
傍観していた時刻は0540から0600まででしたが、二台の車が捕まりました。遠巻きに見ているとどうも運転中の
携帯電話使用らしいです。

運転者もまさかこんな路地の影に潜んでいるとは思わず、堂々と使っていたんでしょうね。確かに違反している
ことには間違いないのですが、捕まえるほうのパトカーも違反しています。路地とはいえ乗用車が2台はすれ違
える道路巾があります。日本の道路交通法は左側を走ることになっていますが、このパトカーは建物の陰に隠
れる格好で右側に止まっており獲物を発見するとウーとサイレンを鳴らし急発進していました。

一台目を処理し終わるとまたもとの位置に帰ってきて同じ右側に止めて潜んでいます。
二回とも同じです。完全なる逆側駐車、しかも停止線から3mも離れていません。
もっとも右側に停止線はありませんが。

パトカーはセダン型の2000ccクラス、ナンバーは大きな数字だけしか見えませんが78-82でした。早朝のためか
うまい具合にここの路地から出る車はなかったものの、完全な違反です。相手から見えないようにして違反する
のを待っているような待ち伏せ型は個人的にもあまり好きではありませんね。やり方が汚い。

しかもここの場所は角が居酒屋さんになっていて夜はいつも車が路上駐車しているところです。こちらも住民とし
て通りに出るのに危ないからいい迷惑をしている所です。いつだったか、娘が高校生のときに「違法駐車を取り
締まってください」と警察に電話したこともありましたが、そのときは動きもせずにこんな早朝に姑息な取締りです
から「信頼」などというレベルのものではありませんね。

世の中、何でも表と裏があるもので危険だからと頼んだことは死者が出ない限りは動かないし、自分たちとして
は大義名文を掲げて違反金集めに力を入れているのですから押して知るべしでしょう。「ノルマはない」などと言
ったってちゃんとあるんですよ。

違法な取締りで違法な行為を取り締まられた方がお気の毒です。

もし、このコラムをご覧になることがありましたらご一報下さい。日時と場所を証言して差し上げます。


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コラム783 2015年05月13日

住宅を席巻するメーカーも・・

 数年前にヤマダデンキがS×L(エスバイエル)と一緒になりました。そのときはかなりの経済効果を狙っていると
書かれていましたが、その後エスバイエルの成績が飛躍的に伸びたという話しは聞いていません。
このように次々と住宅業界もM&Aの時代が進むのかと思ったのですが「うまみ」はあまりないと計算したのか
異業種からの声はかからないようです。

これから人口減で家はますます建たなくなるといわれている中で、華やかに見える住宅展示場も争奪戦はさら
に激化していきます。昨年の同月来場者比較ではさらに少なくなってきていることに危機感を持っているようで、
理由は消費税の実施後の落ち込みよりもさらに落ち込んでいることにあります。

住宅メーカー同士の合併というのはそう簡単に行かないと思っています。AとBの会社の「売り」が違っていて、
合併後のラップしている「節約できる部分」がどこまで可能かという点で両者の意見が簡単には一致しないから
です。唯一、共通している点はプレカット会社への発注量の優位性くらいでしょう。

消費者にとっても劇的に中身がアップするわけでもなく、木造と言っても木が見えるような家ではもともとないの
ですから「どんぐりの背比べ」と言われても反論できません。ある程度営業母体を持った会社なら確定的な数字
をあげていかないとHメーカー・ビルダーが全員残れることはなく誰かがイス取りゲームから外れて行きます。

先々のことを考えているHメーカー・ビルダーはすでに海外進出を試験的に行なっており、県内の名の知れた
ビルダーも台湾などに住宅を輸出しています。住宅はその土地の素材でその土地の気候環境を生かした造りを
するのが一番だと思っていますが、このような会社はただただ数字を追っかけるだけの「ビジネス」として捉えて
いますから「相手の立場になって考える」という考え方の芯が違います。

国内で終始活動していかなければならない組織としては流れに取り残された三日月湖の水を飲んで暮らすよう
になるので、いずれドコカの組織が敗退するとなれば誰かが砂をかけられるケースが出てくることは必死で、た
とえ組織の中に誰か良い人がいたとしても窮地を救うようなことは出来ないと思います。
このようなことはもうすぐ起こりそうな雰囲気で、過去の富士ハウスのような被害者が出ないとも限りません。


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コラム782 2015年05月12日

なかなか進まない・・

 5月のはじめに書きました部落内の某一流工務店の現場ですが、その後も特に動きはないようで相変わらず
排水管が露出状態で土をかぶせる様子すらありません。担当業者が立て込んでいるのかどうか分かりませんが
外壁まで工場セットして建てた割には最後の工事があまりにも「ほったらかし」でお粗末です。

建て主さんも余裕がある人なのか、通常だったらとっくに引越ししている時期ですが、なにせどういう契約をして
いるのかまったく分かりませんから現実を見つめるだけしか出来ません。

現状から判断すると、某一流工務店は外柵工事は関知していないように見えます。仮に契約しているならば、
早く工事金を回収するにはこれらの工事をもたもたしているわけがありませんから契約外であると考えて間違い
ないと思います。

まあ、外柵は良いとしても合併処理槽を埋め込んだ形跡が未だないので、建物本体は出来たとしても実際には
生活するのは無理です。建て主が金を払わないとか、某一流工務店がやる気がないからのかわかりませんが
引越しの予想を立てるのも難しいところです。

今夜から台風崩れの大雨が降ると報道されています。家の部分だけちょこっと土盛りしただけの状態では、ます
ます排水管が露出になってしまうのではないかと、よそ様のことでも心配しております。


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コラム781 2015年05月09日

パワハラA

 住宅の世界にも似たようなことはたくさんあり、特に営業母体を持っている大手ほどこの傾向はあります。
とはいっても、一営業所単位で見れば大手も中小零細も同じなわけでパワハラと言えるかどうかは当人のみぞ
知るというところでしょうか。大きな展示場・ハウジングセンターと呼ばれるところなどはその縮図と言えます。

彼らにとっては「ビジネス」ですから顧客を獲得して利益を上げていかねばなりません。一事業所に5人の営業
マンがいるとすればリアルタイムで獲得棟数を棒グラフで表し、成績の悪い人はいつも激励?のお言葉を頂戴
します。

もともと、彼ら営業マンの給与体系は基本給が安く設定されており獲得棟数によってぐんと金額が伸びるように
なっています。上は1000万円を楽に越えるような優秀な人から基本給だけでもんもんとする人まで、それらの
中で上級者はほんの一握りだけ、大半は親戚知人を頼って何とかお願いします・・の短期使い捨て型です。

ほとんどの組織は後者の使い捨て型の営業マンで成り立っていると言えるでしょう。よく「業務拡張のため社員
募集」と書かれている求人チラシを見ることがあります。あれは社員を欲しがっているのではなく、使い捨て型の
営業マンを募集しているのです。

それを信じて入ってみると中身は大きく違っており、「親戚でも知人でもいいから仕事を取って来い」と言われ続
けます。まじめな人ほど親兄弟親戚などに頼み込み義理で受注し何とか形を作ろうとしますが、そこは長く続か
ず簡単に壁にぶち当たってしまいます。そうなると安い基本給では食べていけず地獄に近いノルマ環境に見切
りをつけて・・・ということになり、組織の思う壺にはまります。

会社としては仕事のとれない営業マンは要らないのでパワハラにならないにやめる方向へ仕向けます。しかし、
今では営業マンばかりではなく工事関係者にまでそのノルマは触手が伸びているようで、親戚知人あるいは
自分の家を無理に建てさせられたという話しにまでいっているようです。もちろん、この裏には「仕事を続けて行
きたいなら何らかの形で協力しろ」と半ば脅しみたいなことも言われるらしく油断もスキもあったものではない世
の中になってしまいました。

こういう手には労働基準もへったくれもないですから見えてくるのは「力関係」だけです。


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コラム780 2015年05月08日

パワハラ

 どこの世界にも社員・従業員に対して業績を上げるために叱咤することはあるにしても、それが裁判になると
なると穏やかではなくなります。美容の世界にもそれはあったようで、たかの友梨ビューティークリニック創業者
が辞任すると報道されていました。

パワハラというのはどこまでがその領域なのか受け止めるほうの裁量によると思いますが、ヤクザの脅しも受け
たものがそう感じれば犯罪になるということで、この場合も言った本人はいくらそうではないと言っても聞き入れ
られないようです。

まあ、自分はロールスロイスを乗っていて従業員には残業代を払わない、一時間以上も説教する、などをやって
裁判になれば和解で済ませるとなればマスコミも放ってはおかない話題になるでしょう。
これで今はやりのブラック企業と言われてしまえば客離れが一番怖いのは経営者だと思います。

ここまで大きくなった企業でもこうですから、世の中にあるもっともっと小さな美容の世界はもっとひどいのでは
ないでしょうか。

昔、私の従妹が同じように美容師になるために修行していたお店もそうでした。給料は適当、残業は付かない、
健康保険は入っていない、それらを言うと締め付けがくる。何年かガマンして仕事を続けましたが限界を越え、
やめてしまいました。

両親は何度か掛け合い労働環境を改善しようとしましたが、一向にラチが明かないので本人に諦めろと言い、
それっきりになりました。今だったらバックのマスコミを担ぎ出すという手段もあったでしょうが、そのときには
それは無理でした。

権力の世界はどこにでもあるようで、トップの人間は自分が辛い時代を過ごしたことは忘れてしまって、ピラミッド
の頂点を守るだけに終始してしまい、底辺がなくなってしまい三角錐の土台そのものが崩れていくということを
忘れてしまっているのでしょうね。

私には安倍君が美容室に行って髪を切ることが法律違反だといわれていることのほうが理解できませんけど。


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コラム779 2015年05月07日

何をもたついているのかA

 道路まで1.5mくらいしか離れていない北側の排水管はやはり露出でした。エコキュートが載っている足元は
ネコの額ほどのコンクリートスペースでやっとこさ家に張り付いているようにしか見えません。まるでスキー場の
急斜面に立っているような格好です。

さて、この建物が建っている敷地は東側しか空いておらず、道路に接している面は東側と北側の二方向です。
当然ながら合併浄化槽も東側に設置することになります。現場には東側にも排水マスがありますのでこれらの
連携をとるには北西の角からスタートして北東の角を通り南東の角へまとめるというのがベストだと思います。

南東からの排水も北東の角へまとめてしまえばよいと思いますが、それでは水量が足りないとき、取りこぼし等
が出る恐れがあり、一番奥にお風呂があったほうが排水の勢いがつくので最良の排水パターンになります。

ということは北側に向かって傾斜しているからそのまま傾斜を利用してUターンさせ、駐車場の高さに合わせた
北東の角の浄化槽の高さまで排水をもってくるという方法が一番理にかなっていると思います。北側道路には
側溝がありますので浄化した水はそこへ流すというパターンになると思います。

よほど敷地条件が悪くない限りは浄化槽は南には持ってきませんから、この家の場合も実行するなら北東の角
になるでしょう。この浄化槽の部分を駐車できるようにするとなると、浄化槽の上には耐圧のコンクリートを敷設
しなければならず費用もかかりますから多分やらないでしょう。それでも4台はスペースがとれそうですから困る
ことはないと思います。

しかし、連休前までには合併浄化槽は搬入されていません。でも、これだけの傾斜なら土留めが一番先だろうと
思うのですが・・・。 さて、はたしてどのように施工されるのか楽しみです。


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コラム778 2015年05月01日

何をもたついているのか

 当コラム2月中旬に書いた某有名工務店の現場ですが、家の仮設足場は外されましたが、まだ周囲の立ち入
り禁止ネットが張られたままで引き渡しも出来ていないようです。

ここは建て方のとき外壁までくっ付いてきて「あらもうここまでできてしまったの」と驚いた現場ですが、その後は
いたってのんびりしたものでどうも施工者(大工さんの数)は一人でコツコツだったようです。

営業トークとしては「うちはほとんどを工場で生産していますから完成は早いですよ」と言っていたのでしょうが、
これでは私らのペースよりも遅いと言えます。

先日は仮設足場が外されたからか、外回りの給・排水工事が行なわれていて、小さな重機が土を掘り返してい
ました。その後、柵の入口は閉じたままで誰も作業をしている様子はありません。土地自体は北側にゆるやかに
傾斜している所で、その上、建っているところをさらに土盛りしているので、道路からは最大で腰の高さくらいに
なります。

給排水工事の部分も土留めしていないのでかなりの傾斜になっており、雨が降ったら土は流れてしまうだろうな
と思いながら脇を通っています。多分、ここの建て主さんはこんな部分までは気付いていないのではないかと思
います。

我々だったら「支障なく生活が出来るように」と現場を確認しながら建て主さんと家以外の部分でかかる費用の
ことを見積りして進めますが、大きい有名な工務店は持分がそれぞれ違うためにそこまで行き届かないことがあ
ります。どうもここはそのケースだったようです。

工事を進めるにしても、家が出来てしまってから後の工事となるとやりにくさもあるのでこういうことは先にやって
しまうのがベストです。今になって土留めが出来ていないということは、当初、話の中になかったと考えるのが妥
当でしょうね。

よそ様の現場を観察できるのは楽しいことです。いろいろとその経緯まで想像できます。

さてさて、この土盛り傾斜はどうするのかな。建て主さんが後から芝でも張るのかな。


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コラム777 2015年04月30日

フラッシュバックか

 昨年の7月22日に息子から「嫁さんが倒れた」と連絡を受け、大阪に駆けつけ、それ以来当地ひたちなか市で
三人の孫を面倒見て9ヶ月が過ぎました。当時は4歳・2歳・0歳(4ヶ月)の孫たちもそれぞれに誕生日が来て
いまは5歳・3歳・1歳となりました。

大分、田舎の暮らしにも慣れたかなと思いましたが、今朝ご近所のおじいさんが自転車で出かけ戻ってきたとき
ちょうど家の前で転倒し腰を強打し、幸い家の目の前でしたので家の人に中へ担ぎ込まれたのですが、その後
どうしても自力では動けないということで救急車の出動をお願いしたようでちょっと大事になりました。

そのときの二番目の孫の行動が異常でした。そろそろ保育園に行く時間でしたので、支度をして庭先で遊んで
いましたらどこからかピーポーピーポーと音がし段々近づいてきたのです。ちょうど私の家の前で止まり物々しく
なり救急隊員が動いているのを見たら急に泣き出し「家の中へ入る」「幼稚園には行かない」と、普通ではない
取り乱しようでした。

私は三番目を抱っこしていましたので家内になだめすかしてもらおうとしましたが、全然だめで言うことを聞きま
せん。それでもバスが来てしまったので無理やり乗せて見送りましたが、後で考えれば当時の混乱を思い出し
自分でもどうしていいのかわからなくなってしまったのではないかと思います。
3歳とはいえまだ言葉の使い方もきちんとは理解しておらず、「ただ今」「お帰り」 「行ってきます」「行ってらっし
ゃい」も逆に言っていたり、昨日今日明日の使い方もおかしいときがあります。

それでも、お母さんが倒れ救急車で連れて行かれ自分たちも脇に乗せられていったあのときの泣き続けた記憶
はきっとしっかり焼き付いていたのでしょう。園児バスに乗ってからは少し落ち着いたみたいに見えましたが、小
さいながらの記憶は消えていなかったのだとしみじみ思いました。

じじばばとしても記憶となると何の手助けも出来ませんが、ただ時間が過ぎて自然に落ち着くのを待つのが一番
だと思っています。数日前の予防接種は泣かないで出来たんですけどねえ。

長男はどうしていたかというと、どこの誰がどうしたのか興味が旺盛で「道路に出るな」と引き止めていました。
2歳違うとこうも違うのかなと思いました。


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コラム776 2015年04月24日

外皮計算って・・、そこまでやらせるの?

 住宅の世界ではこれまでになく数字の締め付けが厳しくなっています。今回出てきたものは住宅全体から熱
が逃げていく外皮計算というものが必要になり、数年後にはそれがすべての建物に義務化されるというもので
す。
ということは、ある数字が基準になり、それに達していないものは建てさせないということでもあります。
この国はいったいどこまで個人の所有物に口を挟み続けていくのでしょう。

誤解しないで下さい。業界人として納得出来ることまで何も問題としているわけではありません。しかし、最近の
「縛り」をみるとそう思わざるを得ません。

一時間の半分の空気量を入れ替えろだの、煙を感知する器具をつけろだの、断熱材は何ミリ以上にしろだの、
行政の管轄が国交・環境・経済産業とバラバラになっているうえ、協調もせず自分の所だけでこうしろと言って
いる点です。

煙を感知して親切にお知らせしなければ死ぬような建材なら使わせなければいいのに、窓があっても意識して
換気しなければ健康に悪いから機械をつけてきちんと管理しろとか、住むやつはバカだからこっちがやってやる
という上からの目線、石油がもったいないから断熱材は今まで以上にでかいものを使え・・、これっておかしいで
すよ。

これだけ親切な国なら、しまいには今日は温度が何度で湿度がこうだから保温力のある何とかを着て重ね着は
何枚しろとか言い出すのではないかと思います。

「大儀としてのこうあるべきだ」と言うのはわからないでもないですが、空気の入れ替えまで口を挟んでくるとな
るとこれはもう自分たちで工夫しながら良いものを目指していく自由主義の国ではなく、すべて国が管理するか
ら黙って言うとおりにしろと言っていることと同じです。

ものを設備しろ・・、このようにしろ・・、というその裏側には、ある一定の業種・人間から陳情されたあるいは圧力
をかけられたと考えるほうがツジツマが合うようなことがいっぱい見えてきます。

確かに過去には欠陥住宅は小さな大工・工務店がすべて起こしている様な受け止め方をされるようなメディアの
報道もありました。でも、それはほんの一部の人たちがやっていたことで大半の業者は胸を張れる様な仕事をし
ようと努力しています。

地震があった場合などもそうです。これでも不十分だと耐震係数をどんどん数字を大きくしていきます。結局はコ
チコチの硬い家しか出来ないようにして昔の木組みはバツだという考え方に凝り固まってしまいます。それじゃあ
100年以上も建ち続けている古民家なんかはスジカイなんて一本もないじゃないかという矛盾はどう説明して
くれるのか。硬い家だからといって木屑圧縮材を使ってもパスだなんて40、50年後の強度は保証しているのか。
何のことはない「頭かくして尻隠さず」のザルをやっているのと同じです。


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コラム775 2015年04月23日

廃棄石膏ボードの行方

 今、一年間に生産される石膏ボードの総量は私の住んでいるひたちなか市全域を覆いつくせるだけの量に
なります。これらが日々工場で作られトラック便で出荷されています。
建築現場で使われる理由は「価格が安い」「燃えない」というのが主な理由です。

しかし、これらのものが使われているということは必ず近い将来住宅ゴミになって出てくることでもあります。この
時にこれらがどうのように処理されるのかというと現在は単純に「管理型処分場」に埋められるだけです。

製造メーカーのHPには「廃石膏ボードはリサイクルされています」と書かれています。これだけ見ていると何か
良いことだらけのように感じますが、実際は大違いで解体現場から出た廃石膏ボードは100%近く処分場行き
となっています。
メーカーの言うリサイクルはほんの少量の新規廃材というもので、現場で施工するときに出るカット廃材のことを
指し、これらを新しい石膏ボードに混ぜることが出来るのがわずか5〜10%程度のものなのです。

物は言いようで「リサイクルされています」と書かれていれば、再生紙のようにかなりの高い率で循環していると
勘違いします。メーカーとしてはウソはついていないわけでイメージを高めるにも法律違反ではないので問題な
いとして使っているのでしょうが大衆に誤解を与えるのは間違いありません。

なぜ、いままで埋め立てにしかしてこなかったのかと言うと、「採算が合わないから」というのが主な理由です。
しかし、これらの廃棄される量が社会問題を起こすのは時間の問題で私らも以前から違和感を持っていました。

そこで、チヨダウーテ(旧千代田石膏)とトクヤマという会社が協力してこれらの解体廃棄の石膏ボードを処理す
る施設を作りました。解体する石膏ボードは不純物・汚れがついているからこれらを除ければ天然石膏と同じよ
うに石膏の原料に戻すことが出来ます。つまり、二水石膏(製品)から焼石膏(原料)に戻せるということです

ここでまた別の疑問がわいてきます。日本の市場(しじょう)では吉野石膏という会社が大きなシェアを誇ってい
ます。しかし、これらをやりだしたのはずっとずっと生産量の低いほうの会社です。社会的責任からいえば当然
前者がやらなければいけないものをこれでは順序が逆だと思うのです。

それでいて堂々とHPでは「リサイクルしています」と言っているのですから表と裏の事情が大きく違います。
そんなことは普通では皆さんの知りえないことです。
世の中の仕組み・現実ってそんなものなのだとがっかりします。


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コラム774 2015年04月20日

片付かない新築廃材

 住宅を新しく建て替えようとすると旧家屋の解体廃材も出ますが新しく建てようとするほうのカット廃材もかなり
の量で出ます。通常であれば4tバケットで2杯くらいは出ますが、これらは再生に回されるものと埋め立てのみで
処理されるものがあります。これらの中で一番量が多く出るものが石膏ボードと外壁のカット屑です。

あるところ(市内)で奇妙なことが続いています。ある住宅の新築現場で、ある工務店かビルダーが建てた住宅な
のですが、すでに完成して数ヶ月過ぎとっくに住人の方も生活を始めているのですが、家の角口に上記のシロモ
ノが鎮座したままになっているのです。

木製パレットに50cmほど積まれた外壁のカット廃材と中身不明の袋入り廃材が10袋以上、いつ片付けられるの
かよそ様のことでも気になってしまいます。

通常であれば工事が終了し、引渡しが行なわれる前にきれいに片付けられるはずなのですが、いかがな理由な
のか推測しようにもわからないままずっと置かれたままになっています。まさか、建て主さんが何かに使うから取
っておいてなどと言うはずはなく、他にはこの工事を行なった業者が途中で倒産してしまい処理できなくなり、そ
のままになっているか。いずれの理由にしても撤去されていない所を見ると何がしかの問題があったことは想像
できます。

自宅に放置されたものでもそのままにしておけば廃棄物処理法でとがめられると思います。そうなると当家の責
任はゼロというわけにはいかないと思いますし、何かしらの処置が必要になってくるものと思います。

さてさて、この処理物がいつ運び出されるのか今後も観察を続けていきたいと思います。


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コラム773 2015年04月13日

4月の勉強会

 各学校の入学式も終わり、桜前線も大きくずれることなく散り去ろうとしています。お天気がイマイチ続かない
のも今の時期としては致し方ないところだと思います。
さて、今月も当勉強会を開くことが出来ました。今回の参加者数は16名となりました。

予定としては予算の話しでしたが、北茨城市のOさんが特別ゲストとして家造りの体験談を話してくださいました。
Oさんは2011年3月11日の震災でご両親の家が被害を受けました。その関係で急遽家を別の場所に建てる事と
なり私らの勉強会へ2年ほど通ってこられました。

ここ、ひたちなか市近辺では震災被害で家を建てなくてはならない状態になったという方はほとんどおらず、屋根
の修理位の被害で済んでいますからお話しをお聞きして他人事とは思えず身につまされました。何とか2月から
新しい生活を始めることが出来たとのことで図々しく出席をお願いしてしまいました。

普段は私の独演会ばかり聞かされている皆さんも、実際に家を建てられた方の生の声を聞くことが出来てとても
参考になったものと思います。

Oさん、遠路よりお越しいただきまして誠にありがとうございました。
また何年かして落ち着きましたら今度は生活体験談をお聞きしたいと思います。
その節はよろしくお願い致します。

さて、今月の予定でした「予算の話し」は来月に繰り下げてもう一度行ないたいと思います。
HPの勉強会情報をご確認のうえおいで下さい。


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コラム772 2015年04月10日

消費税に惑わされずに

 3 5 8 10 と言えば消費税、この業界も金額が大きいだけに税率アップには敏感です。当初の3%から見ると
最終的には3.3倍になるのですから穏やかではありません。

過去を振り返ってみるとこの税率アップを「駆け込み需要の取り込み」にハウスメーカーが「今なら・・」と攻勢をか
けました。木材も石油と同じく需給関係で価格が決まってきます。特に先物色が濃いと実勢以上に上下します。

何十年と言う長いスパンで見ればゆるやかに価格上昇が見られますが短期で見ればノコギリの刃のように上下
しているのが分かります。3から5、5から8へ上がったときも駆け込み・一服を繰り返し、むしろ一服感の出たとき
に実行した人のほうがいろいろな面で得をした感じがします。

よく、いつ頃が時期的にいいのですかと聞かれます。一年の中の時期ではなく税率アップ前だの円高円安などの
要因も含めてのことです。私らがいるこの業界の木材・建材を含めた建築資材は上記のような環境の中で5%か
ら30%くらいまで乱高下するときがあります。私自身、この業界に長くいるのでこういった経験は何度かしました。

振り返ってみれば治まる所に収まって台風一過のような感じがしますがその差を見れば微々たるもので落ち着
きます。「今やらなければ・・」と考えていたものが過ぎてみれば「あの騒ぎは何だったのだろう」と感じるのです。

先高一番のネックは「資材が入らない」「職人が足りない」ということでしょう。それが過ぎてしまうと「資材が捌け
ない」「職人が遊んでしまう」です。資材が売れないのは流通の問題ですから何とかしのげても、人の場合は違い
ます。

若い人はどんどん不安定な労働から逃げていきます。公務員の人たちとは違って休みだと手間賃が稼げないの
です。年配の職人さんはリタイヤを考えれば潮時かという判断も出来ますが、これから子供を育てていくような若
いお父さんだったら生活の不安を抱えるのは当然のことです。

このように波があればあるほど職人不足は深刻になっていきます。表の世界からだけ見ていると見えていないこ
とでも裏事情はかなり深刻になっています。いくら政府が緩和策を打ち出しても逃げ場のない税率アップの場合
は「上がる前に・・」と考えるのが唯一の防御ですから、住宅給付金などと飴玉を出しても大勢にはなかなか効き
目が出ないのが現実です。

議員定数もゼロ増5減なんてチンケなことをやっていないで、半数にしますなんて言う人がいないのでしょうか。


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コラム771 2015年04月06日

アパート増殖中

 私の住んでいるひたちなか市では、歯医者さんが供給過剰でどうやって患者さんを集めるのだろうかと思うほ
どです。それと同じく供給過剰なものがアパートと言われています。

昔、何か商売をやっていた場所や以前まで耕作されていた農地を使ってとか、いろいろな場所がアパートになっ
ていきます。このどちらも後継者不足からくる土地利用です。しかし、すでにこの市内では入居者不足で紙の上
で試算した通りにはなっていないのが現状です。

何もやらないのが一番お金がかからないのは当然なのですが、ちょっと先の相続を考えると中心地に近いほど
地価の高い場所になるため受け継ぐ人が大変な思いをするということで現所有者がその対策として建物を立て
て土地の評価額を下げる手段に出ているということなのです。

そういった需要層を狙ってか大手の二社が盛んにアパート建設の営業をかけています。しかし、需要のないとこ
ろに数字は成立しないもので、安易に相続対策で建ててしまったオーナーさんはその返済に四苦八苦して遂に
は所有権を奪われてしまうところも出ているようです。

これだけ個人情報が厳しくなった現在でも土地の所有者を調べるのは難しくはなく、該当の法務局へ出向き台帳
を閲覧して所有者を割り出すのはいとも簡単に出来ます。おまけに甲区乙区で抵当権の有無まで分かってしまい
ます。それをもとに営業マンが攻勢をかけますから、住宅を建築しようとしている顧客よりも水面下での資料作成
はずっと簡単に分かるのです。

世の中、「渡りに舟」とはよく言いますが、この手の会社にかかってしまうと渡りたくない人までお客にされてしま
います。アパートをメインにしている建築会社は何人もの営業マンを抱えていて数字を作っていかねばならない
ので、オーナーのことよりもいかにアパートを建てさせるかが使命みたいになっています。

当然のように供給が不足であろうが過剰であろうが関係なく自分の会社繁栄のために動きます。よく新聞等で
「一括借り上げ30年保証」などと出ているのを見ますが、それはオーナーの気を引くための作文で、誰がやっても
入居者がないものは数字のツジツマは成立せず、最終的には金融機関におさえられて競売ということになってい
きます。

生命保険の「重要な約款」という項目がありますが、あれなど健康な目の人でさえ疲れるほどの字の小ささで、
その量たるや半端ではないページ数に上ります。そこまではいかずとも、巧妙な契約方式で「保証」というのは
建築業者のことを指すのではないかと思うほどオーナーさんには不利なようになっています。
(入居者が8割をキープできていればそんなことはありません)

世の中、プロとアマが戦えば必ずプロが勝ちます。この手の話しに乗ってしまったらここまで覚悟しないと後悔しま
す。自分だけはそんなことはないだろうと思っても現実は現実です。甘くはありません。

先日も通った脇で「いい部屋増やしています」とにっこり笑ったタレントの女性の顔が足場のネットに掲げられて
いましたが、現場には木屑圧縮板と石膏ボードの山で、そりゃあ逆だろうと思いながら通り過ぎました。


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コラム770 2015年04月02日

変わってはいけないものB

 住宅のトレンドとして一時は「自然素材」という言葉をたくさん聞きました。しかし、この自然素材という意味を多く
の人、ハウスメーカーが誤解をしています。
「木造住宅」を語るときもハウスメーカー・ビルダーは集成材を木だと言って営業マンを教育しています。

私は集成材は接着樹脂が加えられているのだから自然素材ではなく工業製品だと言っています。
英語にしてもOFとFROMの使い分けがあるのに、なぜ集成材と言う加工されたものがイコール木という考え方
になるのか理解できません。
それはさておいて、自然素材は万能だというような宣伝をしていたHメーカーでも最近は言い方が古臭くなったと
感じたのかそういう表現がめっきり少なくなりました。

これと似たものに珪藻土がありました。これなども大手のHメーカーではすべて解決するかのように大げさにPR
していましたが今ではさっぱり聞きません。当初はこの製品が何でも吸収して問題を解消するかのように言われ
ました。しかし、そんな万能なものなど滅多にあるものではなく、結局は合成樹脂を混ぜているなど、珪藻土その
ものの特質を消してしまうことが知れてくると、誤りであったことも告知せず次のターゲットへと移って行ったのでし
た。

住宅業界・ハウスメーカー・ビルダーは常に目立つ「売り」を掲げます。これだけ合板・集成材・木屑圧縮材が使
われている今、何を零細な販売業者がごちょごちょ言っているのかと見る人もいると思います。
しかし、これは我々の大事な生活空間の「安全な空気環境」を維持するための最優先項目です。

世の中には最終的にものごとを決めるとき、いろいろ考えたのに「価格」で選んでしまう人がいます。よくよく洗っ
てからでないと残留農薬が心配される中国野菜は危険だからと買わないという人でも、人の住む住宅はそんな
ことはないだろうと考えています。けれどもそれは大きな間違いです。

いまや住宅の部材は自然素材と言われていながらかなり工業化した新建材が使われており、「潜在的危険度」
がジワッとあがっています。新建材製品のどこを見ても危険とはかかれておらず、星が四つあり安全ですとまで
書かれたものがたくさん出回っています。しかしこれらは揮発物の量が法律で決められた範囲の中だというだけ
で安全の基準とはいえないのです。

新建材製品を使うこと、クロス仕上げにすること、これらのほかにも接着剤が絡んだ製品が山のように使われて
いる今の住宅はけして安全などではないのです。


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コラム769 2015年04月01日

 変わってはいけないものA

 前回は接着剤の講義みたいになってしまいましたが、家は安全なものだという先入観がいくらか揺らいできた
のではないかと思います。生物の生存実験でも自然物の中では何の反応も示さないものがそれ以外のものに
接すると何らかの変化をきたすというデータは数多くあります。

まわりの手に入る資材だけで建てていた時代は何の心配もいりませんでした。ところが石油製品の時代になり
今までになかった「工業製品」が私生活に入り始めたときに人間の身体が意識のあるなしに関わらず反応する
ようになったのです。

このことは未だ拒否反応を示していないか方には受け止め方が全然違います。
「あっ、そう」「それはそれで分かったわ」で終わってしまいます。
私などは職業柄長いこと新建材の倉庫の片隅に寝起きしていました。特に夏は朝から窓を開けることから始まり
ます。

その時代にシックハウスなどという意識はまったくありませんでした。ただただ目がチカチカしみて息をするにも
大変だったと記憶しています。これらを吸い続けると大変なことになるなどという意識はまったくなく生活していた
のです。

高校を卒業して間もなくでしたからそんな知識などあるはずがなかったのです。今になってみて考えれば自分も
非常に危ない環境にいたわけで、化学物質過敏症にならなくて良かったと思っています。しかし、充分にそんな
空気を吸っていたのは間違いなく、石油系のもの特に塩素などには人一倍敏感になりました。食生活では酢の
ニオイもダメですね。
酢飯など嫌いではないのですが感じるとむせってしまいます。特にご飯に酢を入れてパタパタあおいでかき混ぜ
るときが一番ピークです。マヨネーズも酢を使っていますね、あれもゲホっときます。

以前は運動不足を補うためにプールに通っていましたが、途中からクシャミ・鼻だれがひどくなってやめました。
行ったそのときよりも次の日が症状がひどく朝からティッシュが離せなくなりました。
行かなかった次の日は全く出ません。
疑う余地もなく塩素でした。今でも帰宅してキッチンで何か塩素系の漂白を使っていたらドアを開けたとたんに分
かります。酢を使っていても分かります。でも、花粉症にはなっていません。不思議です。

今はプールも塩素使用量が抑えられてきているので反応するには至っていませんので通っていますが、孫の世
話で行けない日が続いています(これは仕方のないことです)

自分のことばかり書きましたが、一番危険な目にあっているのはその当事者ではないでしょうか。例えばシロアリ
の駆除業者などです。彼らこそ毎日強い薬の近くにいてその揮発物を吸っています。まあ、塗装屋さんもその仲
間になると思いますが、あまりにも各方面で使用量が多くなりその被害も水面下で広がっている気が致します。

業者は売っている方なのだからといえば簡単ですが、やはり人間としての被害者には変わりありません。家とし
て居住空間・作業空間にあってはならないものという観点から言えば同類になります。

大工さん・建築業者もちょっとした配慮でなくせるはずなのですが、どうもその辺がビジネスだからいいんだと簡
単に割り切ってしまうというか意識がなさ過ぎると思います。このシックハウスになった人は永遠の被害者になり
ます。どんなにお金を積んでも元通りの身体にはなりません。

一番のネックは「健康な人はなっていないからわからない」なのです。

この国は経済が回る事が最優先でものごとが進められています。何だかんだときれいごとを言って票を集めよう
としていますが、一番困ることはお金が回らなくなることであり、そのため「多数」の数の原理から離れられない
宿命みたいなものを抱えています。

客観的に見れば非常に簡単なことです。揮発物の危険を回避すればよいのですから原発などよりもずっと簡単
なのです。それをやらないのは大勢の工業・産業従事者が路頭に迷うからで、一人の病気の人が出ることよりも
1万人の工場の人が困ることのほうが優先されるのです。

こういった状況の中で素人に近い建て主さんが何が出来るかです。危険回避できるだけの知恵を持つこと、使用
部材の拒否を出来る力を持つことです。

一昔前であればこんなことはまったく必要のなかった事項です。わざわざこのようなことをやらなければいけなく
なってしまった今の家造りは逆に不幸だと思います。


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コラム768 2015年03月31日

変わってはいけないもの

 もともとの住まい構造を50年60年とさかのぼれば使われていた素材は近隣の入手できる範囲のものに限られ
ていました。それが石油製品からたくさんの燃料や樹脂が作られ使われるようになって接着剤の技術が格段に
進歩し住宅の部材にもいろいろなものが使われだしました。

そのこと自体は「進歩」と言えるでしょうが、人間が住む事に適した環境になったかというと別の評価が出ると
思います。私自身、接着剤の揮発物問題・劣化の問題が解決したなら大いに使っても構わないと思っています。

今の住宅を客観的に見てみると「いかに安く作るか」「いかに他社との差別化を計るか」というまさにビジネスの
販売競争のために主導されています。そのことが特にだめだと言っているのではありません。

使われる建材のほとんどが石油系の接着剤がからんでいるためにどうしても避けられない危険域が作られてし
まいます。接着と言うのは物と物をくっつけることですがどうやってそれをやるかということです。通常の工作をす
るときと同じようにノリをつけて少し時間が経つのを待ちます。

このときにトロトロあるいはどろどろ状態でくっつけるものの表面にしっかり喰らいつき、その次には揮発してノリ
の本来の役目をさせるために邪魔者は消えるという流れになっていきます。これらのある時間だけの役目をさせ
るものを「架橋」といいます。

AとBの架け橋となり、役目が済んだら消滅する・・・ストーリーの上ではこうなのですが、ここでちょっとズレが生
じます。老兵は消え去るのみというところが残留者が出来てしまうのです。ここでこれらの残留物がおとなしくして
くれていれば問題ないのですが後からチョロチョロ出だすのです。

物量的には少しでもジワジワ出てこられるとそのときにはすでに室内のどこかということになりますから、人間が
その揮発物を知らずに吸うことになります。そういったメカニズムがわかったのが93年ころのことです。このころ
から「シックハウス症候群」という言葉が使われだしましたが、同じような建材を使っている業者は自分のことでは
ないとダンマリを決め込んでいました。

たしかに一個一個の建材は販売禁止になっているわけではなく世の中で堂々と売られ使われていましたから、
何で自分だけが気をつけなければいけないのかという姿勢でした。違反でないものを使って建てるのに何が悪
いという形は建てる業者ばかりではなく販売業者も同じでした。

しかし、ビジネスとして捉えている人たちは、人には違反ではないのだから・・・と続行し、もし自分がやるときは
そんなものは使わないという考えも持っていましたから、その辺のところがこの業界の狂っているところだという
のも私の中には強く感じていました。

みなさん多くの消費者の方が食べ物の農薬問題には敏感です。しかし、住宅の揮発物には鈍感です。私などは
一日中吸わなければならない空気のほうがよほど問題にすべきだと感じていますが世の中はそうは感じていな
いようです。


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コラム767 2015年03月26日

免震ゴムのデータ偽装

 ここのところ、大きな建物のいわゆる「免震装置」について建築業界のみならず世間でも話題になっています。

地震に対する備えというものはどのように対処するかというと三つの方法があります。
 1 通常の建物構造で地震に耐えられるようにする
 2 構造体の中に特殊なエネルギー吸収装置(制震装置)を組み込む
 3 構造体そのものを地面から切り離した状態(免震装置で浮かせる)エネルギーを吸収させる

今騒がれているのは3番です。
どのように免震をするかというのは建物が大きいだけあって使われる材料も限定されてきますが、一般的には
ゴムを使うか鉛のような柔らかい金属を使うかに絞られます。その「ゴム」のほうです。

親会社か子会社かはここでは別の問題として
いわゆる、東洋ゴムという会社が作ったものが数字をごまかして認定を受けて建築現場で使われてしまったと
いうことです。

何をごまかしたかを想像すると

1実際に建物が建っているのだから柔らかさの問題ではないと思う。
 硬すぎてうまく働かないということはあるかもしれない。

2共振する係数が大きく違うことは考えられる

3ネバリ係数が違うことは考えられる

4劣化の問題は実績(年数)が経っていないのだから分からないと思う

ゴムであるから2番3番が一番疑われる項目だと思う。

いずれにしても「やってはいけないこと」をやってしまったことには変わりがないわけで、取締役の人が深々と
頭を下げていましたが、これから大きなツケを払わされることになるのは間違いのないことです。

以前には木造住宅に使う樹脂サッシで耐火基準をごまかして問題になったということがありました。
このときもどのように施工してしまった現場を処置したのかはっきりとした情報は流されませんでしたが、それは
メディアにとってはすでに話題性の過ぎ去った項目と見られたのか業界内にいる我々としてもほとんど耳にする
ことはありませんでした。

国交省の考えもおかしなもので公表という基準を曖昧にしています。民間のマンション等については資産価値が
下がる恐れがあるとかおかしな理由で公表されていません。それはこれからそのような可能性のある建物を買
おうとしている人にとっては不利益になることで片方の利益だけを保護するというのはどうにも理解できません。

いずれにしても、子供にはウソはいけませんと言っておきながら大人がウソをついていては話しになりません。


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コラム766 2015年03月25日

路チュー

 日本の政治家はどこまで素人なんだろうと思います。まあ、それをフォーカスするメディアも他にやることがない
のかなと思うほど、フライデー化していますが、突っつかれるほうもガードが甘いと言わざるを得ません。
それにしても「路チュー」とは座布団2枚の表現でした。

最初は路上駐車の略で路駐と言っているのかと思いましたが、これが違っていました。自分でも、こんな言葉を
理解出来ないでいるのですから時代について行ってないなと思いました。そんなことを思っていたら、敵も身の
隠し方が素早かったですね。病名を明らかにしないままあっという間に入院してしまいました。その期間二週間。

しかも、あとからボロが出て病室で喫煙騒ぎを起こしていたとは、どこが悪くて入院までしなければならなかった
のでしょうか。これでは偽装と思われてもなんとも弁解のしようがないのではないかと思います。

こういう手を使うのはこの方に限ったことではなく、過去にも何人かいらっしゃいましたね。要はほとぼりが冷める
まで隠れておれと言うことなんでしょう。本人の意思で入院したのか、周りから強制されたのか、本人が病名を
言わない限りは病院に聞いても「個人情報ですから」と拒否されるのがオチです。この保護法もこんな手口に使
えるのですから非常に便利です。

それにしても、タバコを吸えてぴたっと二週間で退院できる病気って何なのでしょうね。


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コラム765 2015年03月20日

プレカット工場の淘汰

 はるか20年以上前の話ですが、今では当たり前のようになった木材の工場加工システム「プレカット工場」は
「これからは大工さんが作業するよりずっとずっと正確に木材の加工が出来るんだって」と鳴り物入りで評価され
大工さんは自分の作業場が要らなくなり「ゴミも出ないし楽だからこれはいい」と言っていました。

当時の加工料は一坪当たり15,000円から16,000円くらいしたと記憶しています。その価格も工場間の競争により
いまや5,500〜6,000円あたりまで値下がりし完全な過当競争の時代になりました。こうして見ると市場(しじょう)
の競争原理というものは恐ろしいもので、機械の性能を格段に上げてコストダウンし受注競争に勝ち抜くところと
それが出来ずに撤退していくところが出てきます。

働くのは精密な加工をする機械ですので微調整も必要ですが機械そのものの寿命も必ずあります。その時期に
なって競争にも勝てる性能のものに更新しようとすれば簡単に億以上のお金が必要になります。それが可能な
のは設備資金の大半を補助金で賄える手段を持っているところ、または大臣に政治献金という貢物を差し出せる
ところだけという(これは冗談です)、大口の出資者がいるか借り入れが出来る体質か、資金投資が出来ない所
はそれまでということになります。

こういう現象は5,6年前にわかっていたことですが(正確に言えばスタートするときにわかっていたのですが)今
になって急に現実化してきたというか、微調整をやってやって何とか寿命を延ばしてきたがこれが限界という所
へ来てしまったというのが現実なのです。

更新出来ないということは減価償却すらまともに出来なかったということでもあると思います。それだけ市場が厳
しすぎたと言うことでもあるわけでどうしてこうなったかは明白であります。

どこの世界にも力関係と言うものがありそれにより逆作用しているということは充分に考えられます。
そもそもプレカット工場が出来たお蔭でタマホームやセンチュリーホーム、その他いろいろな全国タイプ地方タイプ
のビルダーが生まれてきました。それらビルダーが価格競争の刺激をしたのは間違いありません。

量をこなせる、受注があったから性能アップする、ビジネス的に数字を延ばしていく、それを見ていた他者がまた
参入してくる・・・そのことが結果的に過当競争となり自分の首を絞めていった。
まさにこの業界もネズミ算式にものごとを考えていたと言うことだと思います。

すでに大工さんの手加工技術は衰退しています。今後は大工さんそのものがいなくなります。
ビルダーと大工さんは運命共同体です。ということはこちらもやがて道連れになるでしょう。


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コラム764 2015年03月19日

他人事ではない有毒ガス

 昨日、秋田県の乳頭温泉の源泉管理をするところで3人の方がお亡くなりになったと報道されていました。
心よりご冥福をお祈りいたします。こういった有毒ガスに対する「人間のもろさ」をまじかにみると何か危険回避が
されてしかるべきだったのではないかと感じます。

原因は硫化水素ガスと言われていましたが、けして他人事ではなく、我々もそのすぐ近くにいるということを認識
している人はどれくらいいることだろうと思っています。「えっ、そんなものどこにあるの」とお思いの方もいると思
いますが自分たちの家のすぐ近くにそういった建材が使われています。

クロスの下に使われている「石膏ボード」です。そう、安全で安くて燃えなくて・・・と万能選手みたいな石膏ボード
です。

これの化学式はCaSO4・2H2Oと書かれています。この中にSというイオウの記号があります。
通常は安定していますが、変な処理の仕方をすると硫化水素という有毒ガスを生成します。

変な処理の仕方というのはどのようなことでしょう。
それは松江の東横インの硫化水素事故を思い出せばわかります。当時の西田社長が建築費を安く上げるため
に改装で出た廃棄石膏ボードを当該建物の地下に投棄させ、のちにこれが有毒ガスの硫化水素を発生させたと
いう廃棄物処理法違反で逮捕された事件です。

社長の逮捕はどうでも良いのですが、これらの石膏ボードは特に変わったものではなく皆さんが市販品で手に
入り使っている標準的なものです。イオウ成分が含まれている石膏ボードに水が加わり空気を遮断するとやがて
イオウのSと水(H2O)の水素のHが結合し硫化水素となるというものです。

東横インの場合もこれにピッタリあてはまってしまい、地下に投棄させたことによって雨水が入り込みその上空気
が遮断された状態になったのです。

もともとこれらの廃棄石膏ボードは管理型の処分場へ搬入されます。そこでどのような処理のされ方をするかと
いうとコンクリートあるいは分厚い遮断シートで作られた大きな大きな入れ物に、ダンプで運ばれた廃棄石膏ボ
ードをざーっと空けていっぱいになったら上に土をかぶせるという単純なものです。

これらの方法でいくと、かけた土は水を通すわけですから、H2Oが足されてかけた土で空気が遮断されるという
まったく上のガス発生メカニズムと同じになるのです。
ですから、これらの処分場の近辺ではタマゴの腐ったようなニオイがするという良い環境ではなくなるのです。

お金を出して廃棄物を処理したのだから私にはもう関係がないと言えるのか、自分たちが使用していた安いきれ
い早いの三拍子揃った建材が処理後このように問題になっても平気でいられるのか、環境問題には配慮してい
ますと胸を張るにはちょっと欠落した行動になってしまいます。

これらをまったく使わないということは出来ないと思いますが減らす工夫は出来るはずです。ただ、これらのことが
自覚されなければ事態を動かすことは出来ません。家を建てるときコストを考えるのは大事ですが、処分するとき
の後々まで気を配るのも環境配慮であります。


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コラム763 2015年03月17日

不評だった補助金申請

 テレビの世界を見てもお金をかけないで簡単に視聴率を取れるタイプの番組が増えてきてどこのチャンネルな
のかその特長さえわからなくなってきています。これと同じく世の中の経済の動きも簡単に刺激して活性化しよう
という政治の施策が住宅に関する補助金です。共通するオチは「何も変わっていない」という点でしょうか。

数百億の予算をかけて国産材のシェアを50%までもっていくと言う方針はけしてダメなわけではありませんが、
裁判所の官報みたいにHPに掲載したくらいで国民全体がその情報をつかめるわけではないし、もっと問題なの
はその申請手続きのややこしさです。

家を建てようとするいわば素人のような方が誰でも気軽にパソコンを扱えて出荷証明だの使用比率クリアだの
何が該当しているかなどというのはとても簡単に出来るレベルではありません。届け出る窓口でもどの地区で
どこが取り扱っているか素人の方がすっすと出来るレベルではありません。

一番の大きな目的は国産材のシェア回復なのにその適用範囲を外国産の木材まで入れてしまったというのが
最大の失敗だったろうと思います。当初から「木材利用・・・」としたのはTPPだの騒がれているときに外国産の
木を排除してまでも国産材の回復をおおっぴらにやったら国際的非難を浴びる・・そういった裏読みがあったの
かもしれません。

やったところが経済産業省ならまだしも、国内の森林資源を管理しようとしている林野庁ですから目的は決まって
いたはずです。腰抜け・ザル・八方美人といろいろ避難される要因はありましたが、予算を取ってしまった・始まっ
てしまったのですからあとは期間内に予算消化しろということになったのでしょう。ところがこの期限内の予定さえ
達成できず申請延長延長を繰り返しました。

シェアの奪還ならそれなりの覚悟と作戦があるはずで、避難されることが怖かったのならこんな予算は取るべき
ではなかったのです。40年50年と長い間かかって国産材の縮小が続いてきたのですから年度内の予算で簡単
に50%が達成できるなら何の苦労もありません。

今回のこの補助金制度をやって何が変わったか・・・実際には何も変わっていませんね。
若干のハウスメーカー・ビルダーが国産材使用比率をあげていくと表明しましたが売上作戦のネタにしたような
だけで現実の数字はほとんど変わりなしです。WW(ホワイトウッド)が劇的に減ったわけでもなく欧州赤松が極端に
減って国際的な摩擦を起こしたなどという話しは全然耳にしていません。

為替要因のほうが余程影響しています。

経済活性化が主だと言うならどれだけ建築戸数が前年比増えたか・・・これも増えていません。
結局は何も変わっていないのです。
数百億の金を使って何の結果を出したのか・・・何も出していないのです。
ただ、「予算を取ってしまったからやった」だけで終わろうとしています。

さてこの次はどのような優秀な補助金が出されてくるのでしょう。


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コラム762 2015年03月12日

いつの間にかUP

 先日、事務所の手提げ金庫のつり銭(10円玉)がなくなってしまったので金融機関で預金をしたついでに両替
をしてもらおうと思って備え付けの伝票に書いて窓口に出しました。ところが、「久保様、こちらの両替については
手数料が324円かかります」と言われてびっくりしました。

「えっ、10円玉一本でですか?」と聞き直してしまいました。すると、「はい、50枚以上になると手数料が・・・」と
言うのです。「じゃあ、49枚にしてお釣りをちょうだい」と言いましたら、「それでもかかります」なんです。
いつから銀行ってこんな暴利をむさぼるようになったのでしょう。

「それじゃあ、やめるからいいよ」と言って、何もやらずに帰って来ましたが、あきれてあきれて・・・、預金には
ろくな金利もつけないくせに、やることが実に自分勝手な殿様商売をやってられるものだと腹が立って×二乗。

いろいろ文句があるけれど、自分たちは日曜祭日・それに有給休暇・・・働かなくたって貸し付けの金利はとるし、
それも街金の方式と同じ金利先取りですから、借入者は満額の融資を受けたことにはなっていない。
わざとらしく店内には「ありがとう運動実施中」なんて書かれているし、何かのアテツケかと思うほど。

昨年も小切手帳が残り少なくなったので、新規を頼みに行って受け取ろうとしたとき、その料金がいきなり倍に
なっていて文句を言ったっけ。
世の中で何の断りもなく単なる小切手帳の冊が2倍ですから。こんなインフレどこを見たってありません。

自分の都合で出資比率を上げなければならなくなると「何とか何とかお願いしますよ」と担当者という人間が出て
きてお願い三昧。その決算書を見て「着実に経営しております」なんて理事長がコメントしているといったい誰の
力なんだと思います。

公正取引委員会もこれを野放しにしておいてはだめです。
消費者ローンの金利過払いはどこかの弁護士事務所がTV宣伝しているくらい厳しくなっているんですから、これ
ら、手数料暴利徴収にも是非ともメスを入れていただきたいですね。


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コラム761 2015年03月11日

あれから4年

 たしか、金曜日でした。結構寒い日だったので事務所では石油ストーブをつけており、私の別室(といってもの
やましい部屋ではありません)では薪のストーブを焚いていました。ちょうど薪をくべて数分くらい経った2時46分
でした。
グラグラと大きな揺れで始まり、ただ事ではない強さに逃げ口を確保してストーブの空気吸い込み口を絞って落ち
着くのを待ちましたが、おさまるどころかだんだんと強くなっていくので「もう火事になっても仕方がない」とストーブ
をあきらめ窓から脱出しました。

倉庫の木材はソバを茹でた状態みたいにめちゃくちゃになっていましたが幸いケガをしたものはおらず全員無事
でした。何度も余震が来るので中には入れずただただ治まるのを待つだけでした。

考えただけでも背筋が寒くなりますが、それから停電して何も情報が入ってこなくなり、東北の津波を知ったのは
確か、翌日だったと思います。当時、すべてのインフラが停止したった一本の黒電話だけが外部と連絡が取れる
手段でした。それもあとから気付く始末で冷静さを欠いていました。

この地区では井戸が主なのですが電気が来ていないのでポンプが動かず役に立ちませんでした。水の確保が
そのときほど難しいものだと知らされました。

自分ではアマチュア無線をやっていましたが車には取り付けていながらそれも頭に浮かばず、被害状況の把握
にも手間取りました。
あれから4年、いろいろと反省点もありますがいくら備えをしていてもあれだけのことが起きると何が出来るかは
疑問符がついてしまいます。

非常の通信と言えば、今までの経験から一番アテにならないのが携帯電話・スマホだと感じています。固定電話
についても電柱が倒れるような被害が出ていれば使えなくなります。その点は行政でも把握しているようですが
はたして衛星通信まで即座に対応できるようにしてある市町村はほとんどないと思います。

東北の地震でも一番役に立ったのがタクシー無線ということです。ただし、これらは電波の伝播性質からいうと
限られた範囲になります。10kmから15kmくらいまでしか到達しないという性質から、通信距離を何パターンか
考えた周波数帯を準備しておくのが理想だと考えます。

その点、アマチュア無線は持っている資格にもよりますが発射できる電波はさまざまな到達距離に対応できる
周波数と出力を備えています。天災などの一大事があった場合には各地のアマチュア無線家が「非常通信」を
行なって自治体との連携をとりながら状況把握・支援物資の必要性などをサポートしたと言われています。

電波が発射さえ出来れば受けてくれる人が全国にいますからまずはどのような手段で備えるかということになり
ます。今は車に積める無線機も豊富に出回っています。昔では考えられなかった周波数帯までコンパクトなアン
テナから電波を飛ばすことができるようになりました。

私も最低限、その設備は積み込んであります。いざという時にはいつでも非常通信が出来るようにしてあります
が、なるべくならこのような使い方はしなくて済むほうが良いのですがねえ。
大ナマズさん、お願いですからあまりガツンと脅かさないで下さい。


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コラム760 2015年03月10日

同級生の訃報

 私の育ったところは農村地区で95%が農家でした。田舎の特徴なのか小学校・中学校とほとんどメンバーが
変わることなく進級しました。学区が違うと入る中学も当然違うなどということはずっと後になって知ったことで、
クラス替えなどがあっても皆が兄弟姉妹のように全員の顔を知っていました。

さすがに高校はいろいろなところから集まってくるのでクラスの中の顔ぶれくらいしか名前は分かりませんでした
が、15歳までというものはそれが当たり前のような生活をしていました。今の年齢から逆算すると50年はさかの
ぼることになります。

その友の一人が昨日亡くなったと知らせがありお別れに行って来ました。彼は性格が明るくまじめで努力家で
土木を主にした自分の建設会社を経営していました。数年前に脳梗塞で倒れリハビリを熱心にやり若干の会話
障害が残りましたがほんの少しサポートを必要とする程度まで回復し、現役復帰はかないませんでしたが自宅で
暮らしておりました。

彼は二週間ほど前に腸閉塞をおこし、その発見が遅れたのか腸が壊死し手術が不可能な状態になってしまいま
した。最後は安らかな顔でしたと娘さんがお話ししておりましたが、同年代の友の顔を見て何の言葉も出ません
でした。
中学校のときはお互いに良い勉強ライバルで彼は工業学校へ私は商業系に進みましたが今となっては非常に
残念です。心よりご冥福をお祈りいたします。


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コラム759 2015年03月09日

今月の勉強会

 暦の上では春ですがまだまだお天気がはっきりしない日が続いています。
水戸偕楽園の梅祭りも降車専用の臨時駅まで設定されているのに、人の出がしとしと雨でくじかれている感じ
です。

さて、そんな小雨の中、今月も勉強会を開きました。足元の悪い中、18名の方の参加をいただきました。
今回は素材の話ということで、私の専門分野ですので熱を入れすぎちょっと時間をオーバーしてしまいましたが
最後までお付き合いいただきありがとうございました。


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コラム758 2015年03月05日

リフォームか新築かA

 ものには必ず寿命(選手生命)があります。特にマルチタスク・・多機能なものほど複雑(精密)になっていき
その良い例が電子機器だと思います。給湯器一つとっても昔のものは着火してお湯が出るだけのものでしたが
今はコントローラでお湯の温度からお風呂などではお湯張り・自動温度設定も可能になりました。

便利になって良いことはまことに結構なのですが、客観的に見ていると耐用年数が短くなったと感じます。
これには多機能を維持するにはそれなりのエリアの制限から部品や回路が極小化が必須になってくることで、
このため一個一個の部品が小さくなっていき接線回路も細く短くならざるを得ないため物質的劣化が早く進む
ことです。

正確に言えば表面の劣化は大きなものでも小さなものでも同じ現象で起こりますが、要はもとの厚みに対して
比率が何%くらい占めるのかというサビシロのようなもので、仮に1mmの鉄板が一年に0.1mmづつ腐食して
いくとしたら10年でボロボロになるわけですが、10mmあるものはあと9年分は正常でいるわけですから簡単に
は崩壊しないのと同じということです。

電力を食わないようにするためこれらには集積回路が使われ、これらの構成には写真の技術が活かされて成り
立っているようなものです。小さくなるがゆえ多機能が実現するということでもありますが、環境的に見て変わら
ないのが気候環境による自然劣化であると思います。

物質的には問題がなくても電子回路がダメで交換部品がすでになくなっている・・・などというケースは今でも
耳にします。これからはもっとこのようなことが起きてくるでしょう。そうなると最初の目論みは外れ想定外の出費
ということになってきます。

設備の更新はこれまでも必要だったですが、そのサイクルは15〜20年と長いものでした。しかし、上記のような
理由からこれからの新しいものほどその数字は短くなっていくと思ったほうが良いでしょう。

近頃の家は太陽光発電をつけるのが標準だと思っている人もいるようですが、その耐用年数まできちっと把握
している人はほとんどいないと思います。パネル自体は発電するだけですがそれは直流のもので、商用電源と
して使うには交流に変換しなければならないのです。その装置がどれだけ耐久性があるのかというのはあまり
知らされてきませんでした。

私もちょっとは電気を理解しているので予想がつくのですが、あの交流に変換する機械は8〜9年くらいだと想像
しています。これがダメになると売れないのはもちろんですが自宅でも使えません。単なる蓄電池に溜め込むだ
けなら何とかなると思いますが、それ以外はただの塊となってしまいます。これを交換するとなると20万円以上の
費用がかかると思います。

世の中には言われないことがいっぱいあるようで、後から出てきたお化けは所有者がすべて責任を追わなけれ
ばなりません。
設備を設置するということはこの更新時のことも考えてやらないと番狂わせになるので要注意なのです。

モノはすべてダメになる・・・よってそのタイミングも考慮すべし。


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コラム757 2015年03月02日

リフォームか新築か

 S53年ころ建てられた住宅というのは、あちこちで盛んに団地造成をされ、いわゆる供給より需要のほうが
上回っていた時代のものでした。それが今また建て替えの時期と考えられる時期にきたのか解体され新築され
る所と、世代交代であと引き受ける人がいないのか更地になるところが出てきています。

後者は別として、同地で継続して生活を考えている人にとってはリフォームして暮らすか建て替えるかを決める
時期にさしかかっています。そうなると何を基準に決めるかという点になります。

ここで考えなければならないのは建物が載る基礎です。この時代の基礎は意外と低いものが多く、その理由は
やはりコストを考えてのことだと思います。基準法でも35cmくらいあればOKでしたから周囲を見てもほぼ同じ
ような作りでした。

このコンクリートがどれだけ耐久性があるかというと、一般的には半永久と考えられがちですが意外と短いものだ
ということがわかります。その基準としては税務署の耐久資産の減価償却という考え方です。税法では何かの
資産を購入したときには買った年度だけで一度に損金に出来ないように減価償却という方法をとらせます。

簡単に言えば購入したものが何年くらいでダメになるかを表にしたもので、モノによってそれぞれ耐用年数という
ものを設定しています。これで見るとコンクリートの建物は(私の記憶では60年だったと思う)今は50年で償却す
る(していい)ことになっています。

これを例に取れば40年経った住宅基礎のコンクリートはあと10年そこそこの寿命であるということになります。
もちろんそこで崩壊してしまうというものではありませんのでまったく使えないものではないということなのですが
国が考えている耐久性のひとつとして捉えれば首都高速道路の橋脚問題もぐっと真実味が出てきます。

それらを考慮すれば今の住宅は100%基礎の上に載るタイプですから逃げ隠れできないことになります。それと
今までの経過期間での湿気状態が加わります。これは周りの環境にもよると思いますが、床下がカビていたり
空気の流れが悪いところですと何かを設備しない限りはまた同じことを繰り返すことになります。

自分があと何年この家に住み続けたいのか、この家の住宅寿命はどのくらいあるのかを熟慮していかないとつり
合いのとれない家になってしまい金の掛け損ということになってしまいます。


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コラム756 2015年02月25日

別の近所の現場B

 この現場は平屋でした。しかも今流行の太陽光を載せるのかと想像させる片屋根です。軒先はほとんど出て
いません。でも、ちょっと気になるのがその角度です。屋根としてはほぼ南面に対しての片流れです。しかしその
角度がゆるいのです。

太陽光発電を考えるとき一番良い効率を上げるのは受光する「光の束」を直角で受けることです。しかしながら
この地区は北緯36度くらいに位置しています。その上に地球自転の地軸傾斜がありますから夏と冬ではそれ
ぞれに光の角度が違ってきます。

でもここの現場はいやに角度がありません。赤道直下なら屋根が平らで問題なしですが、ここは北緯36.2度で
地軸傾斜23.4度を計算すると冬には約30度の角度でしか日が照らないことになり、夏冬平均して受光するには
54度位の入光角度にしなければならず、屋根角度は36度が最適という計算になります。

これは底辺が10に対してタテの高さが7の直角三角形の傾斜と同じになります。俗にいう7寸勾配ということに
なります。しかしながら、傾斜が大きければ屋根面積が増えていきますから、ましてコスト優先で軒先を出さない
ということであれば、傾斜は低いほうが面積が少ないのですからゆるい角度というのもうなずけます。

私の想像通りの施工をするならば、ここの家は平屋で前の家が二階建て、そして西側には背丈のある倉庫の
屋根があるという条件の土地です。東側だけはまだ畑なので朝の光は確保できますが11時以降の日照は微妙
なところです。ですから住宅メーカーでいくら良いことを言っても現実は日が当たらないことが予想され、計算上
の冬の発電量は得られないということになります。

あまりよその家を心配してもこちらの頭がハゲるだけですから、この後どうなるのか見守りたいと思います。


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コラム755 2015年02月17日

別の近所の現場A

 部落の中の「一流に見える某工務店」現場ですが、昨日通ったところ、1F部分しか出来ていないにもかかわら
ずの外壁と窓がついた状態で忙しく作業が続いていました。
どうもこの建物は出来るだけ工場で作ったものを現場で組み立てるように考えられたタイプのもののようです。

こういうタイプをプレファブリケートという言い方をしますが、我々業界のものは通称プレハブというと飯場(はんば)との
イメージが強く、人の住む建物を想像するには違和感があります。所詮安物・臨時という感しかありません。
そういった意味ではいまのプレハブは浦島太郎のごとく激変してきました。

この現場でも床が先に作られほぼ完成状態の壁を取りつけています。この方法はほとんどツーバイフォーと変わりま
せん。いくら工場で完成品に近く作られたとは言え、この雨の多く降る環境の日本でこういう建て方をしたら雨に
濡れることは避けられません。有名な神社仏閣でやられている大きな作業屋根が先に作られてその下で工事が
行なわれるなら納得も出来ますが、シートもほとんどかけられない状態で進められるのですから「濡れ放題」が
避けられないのは小学生にも分かることです。

いくら工場で完成品状態まで作るとしても家は大きなものですから運んでくるには何分割かに区切れた状態で
来ます。それを現場でつなぎ合わせていくのですから各パーツが繋がって屋根が出来るまで無防備な状態が
続くわけです。これらをすべて雨にあたらないようにするには重機・車・職人の手配など足並みを揃えなければ
なりません。全国の現場でこれらを実施するのはとても無理です。

かくして、雨の中で作業をする現場が出てくるわけで、効率を優先させるのにも限界があるということです。
今は建て主さんが上棟式もやらないというところも多くあり、その意味では現場に足繁く通ってくる建て主さんが
少ないというのは業者にとって有難いことでもあります。

建て主さんも時々来て「あら、もう窓がついて外壁まで張ってある」なんて驚いてはいられないのですよ。


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コラム754 2015年02月16日

畑の中の資材置き場

 近年は田んぼの耕作放棄が目立っていますが、これも高齢化による影響だと思います。また田んぼばかりでは
なく、畑の転用も目立っています。前コラムの場所も以前はれっきとした畑地でしたがいつの間にか住宅が建ち
始まり5〜6軒の集落になっています。

市街化調整区域も条件さえ満たせる人は売買できて家が建ちます。ただし、道路側溝がなければ宅内処理と
いって合併浄化槽の先に自家発散層を設置しなくてはなりませんが、側溝排水さえ可能であれば市街化区域
よりもずっと安く費用が済みます。

作物を作ることができなくなった耕作者はこのように時間はかかりますが農地転用して売却を考えています。
ある一定のレベルと超えると開発行為という県が絡んでくる許可が必要になるので、小粒でも何年か掛けて
じわじわと処分しているようです。

ほかにも資材置き場など面倒な手続きが必要ないような使い方で貸したりいろいろと知恵を絞っています。
私が事務所に通ってくる途中にもこのような使い方をしている所が数箇所ほどあります。その中にかなり大きな
面積の農地をつぶして何の資材か判断できませんがたくさんのパレット荷とトラック・フォークリフトが置かれて
います。

使用している畑は砕石を敷いただけの屋根もないところですので、濡れても差し支えない品物であることは間違
いないですが、問題は出入りするトラックです。一帯が畑だったこの近辺は道路といってもそれほど道幅は広くな
くせいぜい耕作するトラクターを載せた2t車程度が通っている農道に近いものです。曲がり角といってもちょっと
だけタイヤ痕がはみ出す程度で気にもなりませんでした。

どうも最近その辺が大きくえぐられたようなタイヤの跡がひどいのです。よほどヘタな運転をする人がいるのか、
大きな車が無理して通っているのか、どうも後者のようなのです。
どこの誰がこのようなところを通るのかと考えてみると、すぐ近くの資材置き場にしているところの大型トラックの
ようなのです。

その資材置き場はその先の住宅団地の道路を横切ってくれば広い巾のままでこの置場に入れるのですが、どう
もそちらはかなり遠回りになるらしく、運転手が楽をしてこの狭い農道のほうを近道しているようなのです。
この角地に畑を持っている人はうすうす知っているようで角に鉄のパイプを打ち込んで通りにくくしていますが、
そこをすれすれに曲がるものだから今まで以上に反対側にはみ出しめり込んで通るようになってしまいました。

何もこんな狭い所を通らなくても良いと思うのですが、どうも人間はずるく楽をしたがるようです。


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コラム753 2015年02月13日

別の近所の現場

 事務所に出てくる途中の部落の畑の中に基礎工事の始まった現場があります。さすがに一流みたいに感じる
某工務店です。基礎の根切り(ねぎり)が始まるときからりっぱな看板が良く見えるように立っています。

その基礎工事はいわゆる協力会社と言われる下請け工務店が作業しており、4tダンプトラック、ライトバン、他
職人さんの車と4台くらいが側道に止まって工事が続けられています。

基礎立ち上がりの枠が組まれ、生コンが打たれたと思ったら二日後には枠を外す作業が行なわれていました。
ところが、その通ったときに変な音がしていました。大型のハンマードリルの音でした。あれっと思ってルームミラーを
チラッとのぞいたら一生懸命立ち上がりのある部分を壊しているんです。

近づいていくときには気がつきませんでしたが、通過するときに今日はイヤに人数が多いなと思いました。
ヘルメットをかぶった監督らしき人が真剣な顔でさかんに携帯電話でどこかと話をしています。
ははーん、何かミスをしたなとわかるのですが、どの部分をミスしたのかまでは確認できず通り過ぎてしまいまし
た。考えられるのは芯墨の読み間違えかと思いながら気になるハンマードリルの音が妙に耳に残ったのでした。

こういう現場で高さを間違えると言うのは殆ど考えられません。一番ミスをしやすいのは芯を出した位置にきちん
と立ち上がり用の枠が組まれているかということです。図面に表記してある寸法が寸とミリの違いがあったりする
場合もあります。

いずれにしても壊しているということはもう一度正規の寸法で生コンを流すということでしょうが、ここで大きな問
題が出てきます。コンクリートを強くするための鉄筋です。芯の位置がずれているということは鉄筋の位置も間違
いなくおかしいのですからベタコンにすでに固定されている立ち上がり用の鉄筋は動かせないということです。

こういう場合はどうするか、鉄筋はそのままにしてコンクリートだけきれいに除去し、枠を片側だけそのままにし、
不足するほうへ土台が乗るだけ大きく枠を組み肉厚のある基礎を作るしかありません。
本当にそうするのかどうかは見ていなければ分かりませんが、多分そういった処置でしのぐのでしょう。

たぶん、上棟の日は決められていて、しかも建て主さんが来ないうちに処理してしまおうと思って一生懸命やって
いるのでしょう。あとでもめなければいいのですが・・・もめるでしょうね、きっと。
だって、ここは市街化調整区域、地元で生まれたか10年以上暮らしている人しか土地を買えませんから。

看板に出ていた建て主さんの名前はここの地元の人に多い姓名でしたから。


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コラム752 2015年02月12日

その後の近所の現場

 ばっちりとメッシュネットが張られ、その中の様子は良くわからなくなりましたが、作業をしている音を聞けば
一人分の音しか聞こえません。二階の西側にのみ縦長のしゃれた窓が二つ並んでいます。このほかは一階
にも窓はなく何か特別に理由でもあるのだろうかと思うほど開口部はありません。

いくぶん内陸になりますがそれでも夏は東西の風が吹く地区ですので殆ど窓がないこの家は蒸し暑いだろうな
と思うのですが、その辺のことはどのように相談してやったのか想像するしかありません。

殆ど軒先がないこの家の屋根は瓦棒という長尺鉄板葺きという種類でした。上棟時に見ていたところ、それほど
の断熱処理をしているとは見えなくて、内装工事のときにでもかなり厳重な施工をしない限りかなりの輻射熱に
なるだろうと考えられます。

まだ未完成ですが外壁も張られ出しました。その下には防風シートが張られていましたが近づいてみると遮熱型
のタイプが使われていました。その上にタテに胴縁(下地桟)がついていましたのでここの外壁は横張りタイプの
ものが張られることは分かっていました。

この外壁ですが想像通り、今の流行の金具納めタイプのもので一番上側の未施工の所には外壁を引っ掛けて
留める専用金具が見えていました。この金具についても個人的意見ですがお勧めは出来ないと思っています。
なぜならば、外壁の重なり目というのは「サネ」といって、フローリングと同じように右手でチョキを作って上から
たらし、左手の人指し指を下から入れるような雨水の入りにくい構造になっています。
この左手の人差し指部分のわずかな所(厚みの約半分以下)に金具を引っ掛けるのです。

通常ですと、標準的な外壁の巾(455mm)には1カ所につき3本のステンレス釘が使われます。タテ張りならこれが
30cm間隔に3本の釘が留められることになります。ところが横張りタイプは間柱455mmピッチのところに留める
ので釘留め比較で1.5倍間隔が空きます。そのうえにこの金具タイプは取り付けた金具に次の外壁を引っ掛けて
いくので実に一個の金具で455mm分一枚をまるまるもたせることになるのです。

これが地震の時などに何も負担がないはずはありません。しかし、現場ではきれいに二色に張り分けられ良い
デザインに見えるようになっています。建て主さんは多分こんな施工事情は知らないと思います。たとえ、現場を
見たとしてもこのような予備知識がなければそのデメリットさえ気付いていないでしょう。

そんな現場の進行を眺めながら「知らないことは幸せなことなのだろう」と思っています。
地震で大きく揺れたら外壁が落下することは充分に考えられることなのです。

お断りしておきますが、これはあくまで私の主観です。
外壁メーカーではそのようなことは一言も申しておりません。


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コラム751 2015年02月09日

2月の勉強会

 節分が過ぎ、暦の上では春となりましたがまだまだ不順な天気が続いております。そんな中、今月も勉強会を
開くことが出来ました。今回は雨の中、またちびっ子の珠算検定とも重なり、駐車場が混雑する中、24名の方が
参加され熱気あふれる勉強会となりました。お忙しい中ご参加くださいました皆さんにお礼申し上げます。

今回は会議所側から部屋の変更連絡があり、1F正面玄関を入ったすぐ右側の部屋で行ないました。
この場所はたしか以前には旅行代理店が入っていた部屋だったと思いますが、時代が変わったのか、人の流れ
が変化し、多分この場所では採算がとれなくなりここ一年前くらいに撤退したものと思われます。

そのような事情で初めて1Fで行ないましたが、いつもの部屋より若干広く囲みテーブルで24名の方のイスを
確保できました。それでも出入り口の自動ドアの作動音が結構大きく気になりましたが、広かった分、予備席を
使わなくても済みましたので良かったと思います。

テーマは工法という話しで、今建てられている日本の住宅は基本的にツーバイフォーと木造住宅になりますので
それらの特徴やそれぞれ持っている弱点などをお話しいたしました。特に最近の木造住宅は建て方が変化して
きておりますので、従前の工法と今行なわれている工法との違いを分かりやすく説明させていただきました。

完成してしまえばどこの業者・メーカーが作ったのか分かりにくい時代になりました。そのような中でその違いを
理解し自分に合ったものを手に入れるにはかなりの技量が必要です。住宅業界の内側から見続けてきた意見を
「何もたさず、何も引かず」言わせていただきました。

来月はもう3月、きっと暖かくなってくると思います。いまの工法には何が使われているか、何が不利な情報なの
かなど、今トレンドな話題も含めてお送りしたいと思います。また是非ご参加下さい。


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コラム750 2015年02月06日

直近の危険と彼方の危険

 住宅を客観的に見た場合、直近の危険は新建材から出る揮発物ということになると思います。また、長期的な
面から見れば接着剤の劣化崩落だと思います。これらは外的要因があるなしに関わらずという意味です。
これに地震・火災・台風などの災害・人的犯罪などの防犯という意味の危険でなければないに越したことはない
という「何かあったら」ということが加わります。

国や行政ではこの後の部分ばかりが騒がれていますが、台風を除いてはあるかないか、もしかしたら全然経験
しないで済んでしまうかも知れないものもあります。

家造り全体を見れば大手ハウスメーカー・ビルダーと地場の建築業者の占めている比率は6:4から8:2ほどの開きが
あると感じています。この両者ともあわせてどれほど揮発物に対する意識があるかというと、うすうす気付いては
いるが法律に違反していないのだから別に問題はないと考えているのが殆どだと思います。

特に安さを売りにしている大手のビルダーは合板と集成材は全体コストを下げる面においては欠かせないものと
なっています。しかし、F☆☆☆☆マークという印籠みたいなものが健康を保証してくれるなどということはないし、
集成材の初期強度が永遠に続く保証はなにもありません。

本質的なことを考えるとすれば自分に降りかかる危険を事前にどれだけ避けることが出来るのかということにな
ると思います。そこを軸に考えればやれることはたくさんあるはずです。私らからすればちょっと注意すればその
項目がたくさん見えるのに素通りしてしまっているという非常に残念な流れになっています。

何事も起こっていないのに何を騒いでいると言う人もいるでしょうが、私から見ると24時間換気をつけさせるよう
な新建材を使っておいて健康問題は治まったかのような考え方こそおかしいと思うし、笹子トンネルで起きたよう
な事故が住宅内でも起きるということを考えもしない国・地方行政の「今でしか通用しない数字の評価」を疑って
いないことが問題なのです。

24時間換気を直近の危険とするならば集成材・接着剤の劣化崩落は彼方の危険と言えるのです。


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コラム749 2015年01月29日

考え方の違いC

 ものごとはすべてにわたって共通していると感じます。街中の商店も過去には繁盛していた時期もありましたが
ここ十数年ほどでシャッター通りといわれるほど商業の流れが変わりました。少しづつ消費者も大きく品揃えの
あるところに集中していき、その流れの所にまたお店が集中するというのはHC(ホームセンター)SC(ショッピングセンター)
も同じで、それがスパイラルのように顕著になっていきました。

機械加工(プレカット)は一度出来上がると商業ベースのように年間伸び率何パーセントとか評価され、次第に二番
三番目の工場が構築され、その増殖の様子はSCと同じようになりました。これを消費者が選んだというよりは
ビルダーが選んだといったほうが良いくらいで、その流れで価格競争がおき、スタート時の半分以下という考えら
れないような金額になりました。

価格だけを問うなら何も問題はないように思うのですが、消費者はカヤの外で、進化といわれたその数々の中身
の変化は、デメリットが告知されないまま現場だけがどんどん作られています。
工法の変革は大事なことだと思いますが、その変化のスピードが急過ぎて実例実績がないまま工法と資材だけ
が理論だけでどんどん変わってしまっているというのが実感です。

もしも、住宅が100年200年というサイクルで真剣に考えられていたなら何が一番大事で先に来るかを考えてみ
ることだと思います。

行政が考えている、土台は基礎にきちんと緊結していなければならない・・という項目があります。
東京オリンピックに間に合わせるように作られた首都高速道路の橋脚は劣化が激しく、メンテナンスをどうする
のかを問われています。不滅のように思われていたコンクリートがわずか50年弱で大改修を迫られているの
ですから、同じコンクリートに載せている土台・柱・桁も例外ではないはずです。

それと同じく、40年も実績がない集成材が長期優良住宅とかにも何の問題もないかのように入っています。
合板についてはすでに50年以上の歴史がありますが、今までにはどこかで誰かが劣化剥離などの経験をして
います。

まだ記憶に新しい2012年12月中央自動車道笹子トンネルの天井版崩落の事故は完全に接着剤の劣化による
ものです。これなどはまったくの接着剤に頼った接合方法で、S52年の施工ですから35年でダメになった計算で
す。トンネルと住宅・・・、一見関係ないものと思いますが原因は接着剤の劣化ですから実は共通性大有りで、同
じと考えて差し支えないのです。

効率を良くしてコストを下げる → 機械に都合の良い集成材を多用する → 考えられない被害を招く

そのとき、私は生きていませんが・・・。


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コラム748 2015年01月28日

考え方の違いB

 全国の住宅需要のなかで、機械加工(プレカット)は今や大工さん不足の労働力を補う建築界の心臓部とまで
なりました。加工する手間も、人間と機械の比較では、大工さん加工を10とすると機械は4くらいで出来るという
データも出ていて、その価格差は三分の1近くまで開いています。これは確かに需要家(建築業者)としては魅力
ですが、しかし、これは規格型の同じような家を何棟も建てる場合にあてはまることで、注文型の家にはそのまま
あてはめられないところがあります。

昔の家は柱が太く、梁・桁を何段も重ねて、いわば門型というか机・いすのような脚だけがおりているような作り
をしていました。この何段も重ねて組むというのが機械加工では難しく、出来ないわけではありませんが費用倒
れしてしまうような高額な機械になってしまいます。
また、横架材が曲がっている丸太だとかは加工基準点がずれるために同じく機械設備が高価なものになってし
まうためにそこだけ人間が手加工をしているのが現状です。丸太の柱や基準以上の太さのものも同じです。

このように機械はある一定のもの以上は受け付けないので必ずしも人間より優れているとは限らないのです。
逆の言い方をすれば、木組みを単純にして機械に合うものを投入して効率を上げていくという考え方なのです。
ですから、横架材の背と腹(どちらに向ければ耐える力が発揮できるかという木の向き)、柱なら上下関係なく
(ムク柱は生育しているとおりの梢を上に元を下に向けるのが鉄則)、寸法にムラがなく刃切れの良い資材が好
まれていったのです。

これにピッタリの素材が集成材でした。小さな木片(ラミナ)をたくさん張り合わせて作る桁・平角はどちらに向けて
使ったらよいかなど考える必要はありません。柱だって上下を見なくてもOKです。それにきれいにプレーナー掛
けがしてあって材種も柔らかく刃切れが良いものですから現場に搬入してもきれいに見えます。これらは加工す
る工場にとってはうってつけのもとなりました。

と、ここまでは工場・建築業者の都合です。


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コラム747 2015年01月22日

考え方の違いA

 今は盛んに住宅の高品質化と言われます。地震に強いという判断も数字で表し大きい数字のほうが優れて
いると評価します。しかし、これは家をカチカチに固めて何ぼの数字を表していて動かないイコール丈夫という
考え方なのです。

昔、地震になったら竹やぶへ逃げ込めと言われたものです。竹はゆらゆらしていて崩れ落ちてくることはなく
もっとも安全な場所だと判断されていたのです。
この安全という意味は、地震エネルギーにも柳腰で対応しているから竹が崩壊しないということでもあります。

昔の家はまさにこの適度に揺れるという木組みの特徴を活かして地震から家を守っていたということです。
大黒柱・差し鴨居などというのはこれらの代表格の構造体です。しかし、この構造体を今の時代にやろうとすると
行政が認めません。建築基準法という規則では土台はコンクリートの基礎に緊結し柱間にナナメの材のスジカイ
という部材を入れなければ壁強度があるとは認めないのです。

スジカイは柱と共に三角形を形作ります。部材の大きさにもよりますが、緊結された三角形は理論上動きません
が、木材は若干のしなりを伴ないます。これがカチカチというものよりは若干のしなりを生み出しほんの少し逃げ
を作り出します。しなりは急激な動きのエネルギーを一瞬だけ遅らせることになり力を分散します。

これが昔からの木組みならもっとしなりが出て竹やぶの動きに近くなってきます。これを正確に言うと伝統工法と
言います。この工法は現在確認申請では受け付けておらず、文化財に指定されたような旧民家の再生や、神社
仏閣の建築にしか認められておりません。

一般民家でこの工法をやろうとすると基準法規定量のスジカイを別に入れろと言われます。
何かおかしいと思いますが、これが今の建築の「行政の常識」なのです。
木と木を組み合わせて折れ曲がる力を加えようとすると木一本一本の微妙な質の違いが邪魔し、確定した数字
が出せないというのがその理由です。

このように「数字で表せないものは評価の対象にならない」という考えが昔の工法を消滅させようとしているので
すから、いくら昔からの実績があっても話しにならないのです。

現在はスジカイに代わる物として「面材」が使われだしました。これらの素材は合板や木屑圧縮板あるいは鉱物
資源を使った面材など多岐にわたり、その耐用年数(実績)がまだないものでも初期数字だけで認められ高評価
を受けています。この面材こそがカチカチの家を作り出しています。この考え方はツーバイフォーの壁強度と同じ
考えです。

高評価を・・・というのは、建築業者・ビルダーにとってという意味です。一般の建て主さんがこれを絶賛している
わけではありません。こうして理論で考えられたものが全体の建築費を下げる手段としてどんどん採用されて
いっています。


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コラム746 2015年01月21日

考え方の違い

 前回、材がないわけではないと書きましたが、なぜそのような流れになってしまったのかいくつかの原因が挙
げられます。
 1 大工さんの不足
 2 機械化による性能・効率アップ 業務拡大
 3 建築価格のダウン
 4 手間をかけない新素材の開発

昔は「大工さんになる」ではなく、大工さんにでもなるか・・・という職につけない時代に世間的に言われていた
言葉がありました。やがて高度成長時代の真っ盛りになると就職するほうが断然有利になりとどんどん業種が
選ばれていき、大工職というのはなり手がない代表格みたいに言われるようになりました。

S48年のころの160万〜180万棟になると資材も何も間に合わない異常な状態となり、国が外国から直接住宅を
輸入すれば良いと言い出し、木材は仕入れれば売れ何の努力も要らないような時期が続きました。
当然のように製材所は作れば売れる時代を経験したわけで、振り返ってみればこのときを境に下り坂を転げて
きたのだと感じます。

年号が平成になり出したころから徐々に数字が減ってきて、それ以上に職人さんの数も減りだしました。
もともとのプレカット工場というのは大工さんの補填役を担っていたものです。どんどん職人さんの数が減っていく
中でいかに機械加工でそれらを補っていくかが問われました。

しかし、一度走り出してしまった仕組みはとどまる所を知らずどんどん増殖していきました。機械の加工能力向上、
売上というビジネスの数字競争、片方では大工さんは木屑が出ない・上棟時現場まで材が運び込まれるので
作業が楽と良い事尽くめのように考えられるようになりました。

楽をするということは作業効率を上げることにもつながり全面悪ではありませんが、機械加工の欠落した部分も
生み出しました。しかし、表立ってその部分に関しては声をあげる人はほとんどおらず、加工が正確だとかきれい
だとか、良い面だけが強調され現在に至っています。

お断りしておきますが、私は機械加工を全面否定しているわけではありません。確かに上に挙げたような理由は
間違ってはいませんが、機械により失ったものも確かにあると思っています。
昔の家は部材も太く、木組みと言えるだけのボリュームを持っていました。しかし、今はコスト優先の考えか、なる
だけ細い部材で曲がらず反らずの集成材を多用します。ホゾといってもダボのようなちょっと差し込む程度のもの
で、仮のスジカイ・金物補強なしでは安心して上に乗っていられないと大工さんは言います。

昔のスジカイが一本もなくて建っていたものと何が違うのか、私はそこに進歩を感じるより後退したものを感じま
す。


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コラム745 2015年01月20日

材がないわけではない

 この現場もそうですが、今の住宅はその殆どが工場で加工されるいわゆるプレカット方式です。
加工する工場というのは、発注者の木材搬入によって加工のみを受けるものと、材料も工場で用意したもので
材工共で受ける工場とがあります。

工場加工というのはそれぞれ出来ること出来ないことがあって機械加工できない部分については人間が手作業
でやりくりをしています。
機械の場合は必ずといって加工する基準点があります。それらを基準にして横架材の大きさからその下に刺さる
柱の長さを自動計算しホゾをつける作業をします。

ですから、材料はすべてまっすぐでねじれもなく反りもないようなものが求められます。それに一番都合の良い
のが集成材という構造体です。これらは何枚かのラミナという部材を張り合わせひとつの角材・平角(梁)に作ら
れているため、その殆どがクセのないまっすぐでぴたっとした寸法のものが出来ます。

そのことについては技術力の向上で品質の高いものが出来ています。ただ、耐久性(年数)が何年持つかは
未定の部分があります。

これら柱・桁(梁)などについては素材から国内で作られるものと外国から完成品で輸入されるものと原料だけ
輸入されて国内で作られるものとに分かれます。いずれにしても使用されるのはロシア・フィンランドあたりから生産
されるものが大勢を占めています。

なぜ、加工工場ではこれら集成材が多く使用されるのか。その理由は意外と簡単な所にあります。
木材というのは成長過程で反りぐせやネジレが多少なりとも生じます。これらは自然物が成長するにあたって
生きるための防衛本能が働く結果といっても間違いではありません。

いっぽう集成材は人工的に接着剤で張り合わせたものでクセが相殺されてまっすぐに形成されています。
ムク材なら木を見る目利きが必要なのですが集成材はまったくそれが不要です。つまり、工場では寸法さえ間違
わないように機械に入れさえすれば学卒の新人さんでも扱えるというわけです。
しかも、ご丁寧にカンナまでかけてあるのできれいに見えます。

他の理由もあります。それは適度な柔らかさがある樹種なので刃物切れが良いことです。これは供給する側に
とっては見栄えが良いので仕上がりがきれいと素人受けすることです。構造体ですから本当はそんなことよりも
もっと大事な役目があるのですけれども。

木のクセを見ながらというのは「即戦力」という意味では非常に非効率的です。その点、集成材は誰でも扱える
のですから加工会社から見れば優秀といえるのです。

こんな理由から世の中の流れは「集成材ありき」で動くようになってしまいました。これが良いのか悪いのか結果
が出るのは遥か先のことです。年数は言えませんが私は生きていません。
いつも言っていることですが、人工的に作られたものはいつかは壊れるということ。接着させたものはいつかは
劣化して剥がれるということです。

ムク材なら腐らない限り崩壊することはありません。なのに何故こうまでして集成材を構造体に使うのか、人生
最大の疑問です。

ムク材はないわけではないのです。


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コラム744 2015年01月19日

朝から積み替えA

 この家もやはりそうでした。屋根が片屋根で太陽光発電が載るようで、4日目にしてやっと屋根が出来上がり
ました。しかも、屋根の出(軒先)が殆どありません。いまや木造はツーバイフォーと同じになってしまいました。
柱が立っているというだけで建て方は殆どツーバイと変わらないのが見なくても分かります。

床が先に出来てそれから柱が立てられ二階の床を作ってさらに屋根部分を作る順序です。単管足場のネット越
しですが、大工さんが動いているのが床が平らに出来たところを歩いているのが分かるから床を先に作っている
ことがわかるのです。これじゃ4日もかかるわけです。

まだ冬の時期でしたから雨に当てられるのも一日だけで済みましたが、これが梅雨時だったら二度濡れは間違
いないでしょう。所詮、よそのお宅だからと眺めていますが自分だったら絶対にやらないと思います。

15日の夜は結構荒れた天気でした。ですからこの家の1Fの床はびしょ濡れだったはずです。それでも4日目で
屋根までいったということは濡れた床はお構いなしに作業が続けられたということになります。
あの晩は自分の庭にも水溜りが出来るほどでしたから、多分、あの床下も同じように水がたまったままでしょう。

効率を良くして総合的な価格を下げるといってもやっちゃいけないことってありますよね。
乾いている合板・集成材を濡らしてまでやるべきことではありません。まだ風に晒されている所はいいとしても、
床下にもぐった雨水はナベにフタをしたようなものですからなかなか抜けてはくれません。

現場の職人さんは手間で雇われている人ですから「管理」までは責任が及びません。ただ、与えられた作業を
早くこなすだけです。床下の水までかまっちゃいられないのが本音です。
「俺には関係ねえ、会社のやることだ」と。

これで木造住宅と堂々と言っているのですから世も末です。


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コラム743 2015年01月15日

朝から積み替え

 いつもの通り、孫たちを幼稚園バスのところへ送って行くと、公園脇で4tユニック車に満載した上棟材が2t車に
積み替えられていました。
なるほど、先日解体していたアパートの奥の民家の建て替え作業が今日やられるのだとわかりました。
解体作業も小さな車で搬出していたので、この4t車では道路巾が狭くて現場へ入れないのかとすぐに合点し、
しばし園児バスが来るまでその作業を見つめていました。

今時のハヤリのように、吊り上げているものの材種(資材)が集成材ばかりでした。あ〜あ、ここの家も例に漏れ
ず白い木のオンパレードだな、建て主さんはどこまでこれらの危険情報を知っているのかなと、ついついその先
の要らぬ心配までしてしまいました。

○○ホーム○○邸と印字された上棟材はすでに一度は現場へ運び終えたようで、二回目の搬入をやっている
最中でした。残り4山ほどの資材を、二人の運転手さんが通行する車を気にしながら受け台を調整して作業して
いました。

住宅地の中ではなかなか4t車が入れるような条件の良い所ばかりはありません。ここも入口が袋小路みたい
になっている接道形式になっていました。最初から小さな車で積んでくれば直接進入できるのにと思いながら
きっと遠方から積んでくるのでそちらのロスのほうが大きかったのかもしれません。

まあ、いずれにしろずっと雨が降っていなかった一月ですが、今日は荒れ模様の天気になるということでよそ様
のことながらこれから濡れてしまうだろう集成材の余計な心配などをしてしまいました。

チラッと見てみると、1月15日大安と暦には書かれていますが、何も雨の日にやらなくてもねえ。


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コラム742 2015年01月13日

風邪に手こずり・・

 還暦を過ぎるとどこの会社も雇ってくれないというのが身をもって分かる気がします。自分では丈夫だと思って
いたのに年末から風邪に悩まされています。幸いにしてインフルエンザではないのでマスクとうがいでしのいで
いましたが、のどの痛さと夜の咳込みに負けて医者へ行って来ました。
薬のおかげで何とか症状も治まり、今月の勉強会も無事に開催することが出来ました。

ということで、223回目となった家造り勉強会は晴天の中、商工会議所別室の成人式着物着付けと重なり、若い
晴れ着姿の新成人を横目で見ながら「設計の話し」をメインテーマにお話し致しました。
19名の方の参加をいただき有難うございました。県北地区から参加いただいた方もおりこちらも話しに熱が入り
ました。

家造りで重要なことは数々の失敗しやすいことを事前に察知し、いかにそれらを回避するかということであると
思います。ここまでは誰でも同じようなことを言うのですが、何が危険だから回避しなければならないかの項目
が違ってきているのです。

とかく高額な出費の伴なう建物ですから無意識でやることは非常に無謀と言えます。だからと言って業者を信じ
切ってお任せするというものも危険なことだと思います。情報というものは関係することすべてを提示し理解を深
めていかないと結果的に納得したことにはなりません。

世の中の半数以上が同じような考えで安いきれい簡単にと考えており、結果的に競争に勝たねばと思っている
ビルダー・ハウスメーカーでは不利な情報というものは出てこないのです。このような中で何が抜け落ちている
のかそれが分からないと家を建てたということにはならず建てられてしまったとなるのです。

回りくどいような言い方ですが、良い家というものはすべての情報をして自分で判断し選択して進んだものでしか
該当しないと思っています。自分のお金で自分が実行したということでなければ「家を建てた」とは言わないので
す。

ほとんど二時間私の独演会みたいでしたがその熱意の半分くらいは皆さんには届いたのではないかと思ってい
ます。

次回は「工法の話」を予定しています。
またのご参加をお待ちいたしております。


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コラム741 2015年01月01日
                                                 
                                                                     
新しいページに移項しました

 新年おめでとうございます。
本年もよろしく当コラムをお引き立てのほどお願い申し上げます。

以前から気にかかっていましたページの更新を致しました。従来のページは一年以上同じページに掲載がされて
いたため、月数が離れた所を見るには相当スクロールしなければならず自分でも不便を感じておりました。

当コラムは写真等はなるべく掲載せず言葉でお伝えするように心がけております。
画像は百聞は・・・のごとく見ればわかってしまうのですが、そこをあえて言葉でとこだわっているのは、作者の
へそ曲がりな性格とご理解下さい。

ホームページ作成ソフトの「どこでも配置モード」で本ページは作られていますが、ちょっと油断すると他のPC
画面文字ではズレが生じたりしてしまうようで、それを修正する技量は申し訳ありませんが持ち合わせておりま
せん。ただ、テキストの配置をずらす程度なら出来ますのでその方法で対応しています。

自分でもHPの画面チェックは行なっておりますが、ご覧になられる方のブラウザの種類によってそのズレ具合が
異なることがあるようです。そのような場合は再調整いたしますのでお手数ですがこちらまでご一報下さい。

今年の動きとしては
太陽光発電の買い受け自由化がどう動くか
廃棄物の処理料がどの程度アップするか
集成材・MDF・合板の使用デメリットがどれくらい出てくるか
面材使用の家のデメリットがどれだけ出てくるか
などなど、業界内から見て気になる点が多くあります。

当たり前の危険、知らなければならない廃棄物の問題など、今年も問題提起をしていきたいと思います。


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これはあくまで、個人的な意見として、長年この業界にいて感じていることを書いています。
素材を否定しているとか、個人を誹謗中傷しているわけではありません。

更新は不定期ですのでご了解ください。