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裁判提訴の報道


朝日新聞(社会面・全国)1月26日朝刊


告発本で処分
撤回求め提訴

感染研研究官


 内部告発書の出版などに対する処分は、正当な言論活動に対する弾圧だ、などとして、著者で国立感染症研究所(感染研、東京都新宿区)の研究官・新井秀雄さん(58)が25日、国や感染研に処分の撤回と500万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。
 新井さんは昨年11月「科学者として」と題する本を出版するなどして、住宅密集地にある感染研での実験の危険性を警告。1997年に行われた外部による査察の報告書が、感染研の幹部により偽造されたと指摘する記述も含まれている。
 感染研は今月4日、新井さんが著作などを通じて、「研究所の研究内容や運営実態をわい曲し、信用を著しく傷つけた」などとして厳重注意処分とした。


週刊文春(2月8日号)


「菌まき散らし疑惑」
今度は科学者に訴えられた「国立感染症研究所」


「私が週刊文春にお話ししたり、著書に書いた内容は、7年前の『予研=感染研の移転・実験差し止め要求裁判』で原告側証人として証言したことがほとんどで、裁判所に証拠として残っています。
 しかも、その内容は、私の科学者としての良心や、クリスチャンとしての信条に基づいて語ったことばかりです。
 それを『歪曲』や『誹謗中傷』と言われるのは、『思想及び良心の自由』や『信教の自由』、『表現の自由』に反すること。まったく納得できません」
 日頃は温厚な新井秀雄氏(58)が、顔を真っ赤にして怒ったのには、十分な理由がある。
 新井氏は、国立感染症研究所(新宿区戸山。竹田美文所長。職員は約400人。以下『感染研』)の主任研究官で、百日咳菌や溶血連鎖球菌の研究を行っている国家公務員である。
 氏は、小誌昨年11月2日号で「恐怖の病原体が東京中にばらまかれている」と実名内部告発を行い、同時期に『科学者として』(幻冬舎刊)を出版した。
 ところが新井氏のそれらの行為に対して、感染研は、1月4日、竹田所長名で『厳重注意書』を手渡したのである。内容は以下の通り。 <当研究所の研究内容や運営実態を歪曲し、幹部職員を事実に反して誹謗中傷する内容を発表したことは、当研究所の信用を著しく傷つけ、公務の円滑な遂行に支障を来たすものであり、まことに遺憾である>
 そして、今年6月の勤勉手当て(ボーナス)の約8パーセント(約4万6千円)をカットすると通告した。
 この感染研の処分に対して新井氏は、1月25日、高村正彦・法務大臣と竹田所長、倉田毅副所長らの3名を相手どり、『処分無効』と『慰謝料500万円』を求める民事訴訟を、東京地裁に提訴したのである。
 いったい、小誌記事のどこが『歪曲』で、どこが『誹謗中傷』なのか。
 話は、新井氏が査問された、昨年11月27日までさかのぼる。
 新井氏が所属する細菌部部長から呼び出しがあり、所長室に行くと、所長のほかに副所長、総務部長など6人の幹部が待っていた。
 新井氏は、「私は、一体何のために呼ばれたんでしょうか」とたずねると、所長が、小誌記事のコピーに赤線を引いた部分を指しながら、「これについて、あなたはどう思いますか」
 と、質問したという。
 その箇所は−。
@<「恐怖の病原体が東京中にばらまかれている」(タイトル)>
A<倉田部長の行為は「私文書偽造」や「法廷侮辱罪」に相当する。しかし、彼は、裁判所に偽造文書を提出した"功績"で副所長(現職)に昇進した>
B<狂犬病ウィルスが神経細胞をよく伝わるという性質を利用して、狂犬病ウィルスに遺伝子を組み込んで、"運び屋"として使おうというアイディアを持っている研究者もいる。(中略)私には恐ろしくてできません>
C<今年のたしか6月頃にも、50代半ばの研究室の女性スタッフが、やはりガンで亡くなったばかりです>
・・・などであったという。
所長が問題にした4点のうち、@はタイトルだし、Aは、小誌編集部が作成した文章であるから、文責および編集権は小誌編集部にある。
Aの「倉田部長の行為」とは、『予研=感染研裁判』の中で、被告側(感染研)が指名した米国人査察班による鑑定書の署名が、偽造だったというスキャンダルである。
新井氏は著書で、<それが感染研の倉田毅・感染病理部長(当時)が書いたものだということがわかった。大スキャンダルだ。倉田氏は自分からそれを明らかにした>と指摘。原告団は、倉田部長を刑事告発して、現在、東京地検が調査中である。
Bは、感染研に限定しない一般論だ。
Cについては、所長が「名誉毀損」だと言ったそうだが、事実であり、実名を書いているわけでもない。
いったいどこに問題があるのか。小誌も問題点といわれた箇所を徹底的に検証してみたが、さっぱりわからない。
新井氏は、感染研や病原体の研究を否定しているのではない。早稲田大学に隣接している住宅密集地に、地域住民の反対があるのに、機動隊を導入して研究所を強行建設したことを批判しているだけである。
実際、氏は、<施設内で働く人も、周辺住民も、もっと友好的な形で、必要な研究ができるはずです。なぜ、そのような選択をしないのかと、問題提起をしているのです>と小誌記事を結んでいる。
しかし感染研は査問から5週間後に、突然処分を言い渡し、処分に納得がいかない新井氏が、総務部長に処分の理由を尋ねたところ、
「実は(幹部が)政務次官に呼びつけられた。津島雄二厚生大臣(当時)から彼(新井氏)を辞めさせろと言われた」
 と、責任転嫁したという。
 ところが、両代議士に取材を申し込んだところ、津島代議士は取材拒否だったが、当時の厚生政務次官だった福島豊代議士の秘書からは、
「大臣から指示を受けたこともなければ、指示をしたこともありません。一体どこから、そういう話が出てきたんでしょうか。(新井氏の)処分のことも、初めて聞きました」
 小誌は、感染研に対して、1月26日に取材を申し込んだ。しかし、感染研側は、<明日中にご返事します>(29日)<勝手ながら返事はそれ(午後3時)以後とさせて頂く>などと、期限を一方的に引き延ばし、結局、回答はなかった。
 感染研には、科学研究の場にあるまじき、真実を隠蔽し、責任逃れの体質しかないようだ。  


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