映画『科学者として −笑顔と告発−』は、科学者としての自分の営みと社会(市 民)とのはざまに出現した問題に、正面から誠実に応えようとした新井秀雄さんの感 動的な物語です。 新井さんは自分の勤務する研究所の移転計画の危険性や問題点をただ1人、決然と訴 えたわけで、私の経験からしても、その困難や孤立感は相当なものだったと思いま す。しかし、この映画の中で、新井さんは決して警世の英雄としてでなく、多くの分 からぬことや悩みを抱えながら、当たり前の人間としてやるべきことを、決して気張 らずに、淡々として、笑みを浮かべる余裕すらもってやっている、そういう人間とし て描かれています。それが、新井さんの地なのでしょう。そこの所がとてもよいと思 います。 本当は科学者はみんなそんなでなければいけないのだけれど、市民と共に生きる新井 さんは希有な例でしょう。この映画が、新井さんに続く人を多く生み出すことを切に 期待したいと思います。 高木仁三郎 |