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日常と非日常のはざまで

 科学者は特別な人間ではない。私たちと同じ日常を営んでいる人間である。だが、
人の知り得ない未知の世界に深く踏み込み、そこで日々行われている実験が、どのよ
うな結果をもたらすのかという責任を全面的に負うことができない弱い人間でもある。

 日常と非日常をたえず往還している科学者は、いつしか非日常が日常となり、日常
が非日常となったとき、科学を自己目的化してしまうおそれがある。このとき、危険
であると知りながらエイズ・ウィルスの混入した血液製剤を使用してしまうという恐
ろしい事態を平然と行うのだ。もっとも合理的なはずの科学者がもっとも非合理的な
陥穽に落ちるのである。科学者はたえず自己と向き合わねばならない。自己と向き合
うことで科学者としての良心に問いかけることができるのだ。「わたしは何者だろう
?」と。いわば人間の共通認識の場に立てるのである。

                       梁 石日(ヤン・ソギル)[作家]


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