3.ふたご座神話(前):究極のブラコン伝説〜ハーデス様マジ切れ事件
 

一応、左ポリュデウケス(弟)、右カストル(兄)。 
 
双子座のカストルとポリュデウケス(ポルックス)…もーこの双子もツッコミどころ満載だぞ!…この二人、ほんとうは父親が違う、異父双生児ってやつで…それで本当は四つ子なのね。……それ双子座じゃないんじゃねえの!? 
 
ってのが一番大きなツッコミどころ。とにかく、 
 
ポルックス
(=「ポリュデウケス」の愛称)「――兄貴っ!今からケンタウロス(半人半馬)のケイローンのところに弟子入りするって本当か!?当分帰ってこないのかっ!?」

カストル「ああ、本当だ。分かったらそこをどけ、ポルックス」

ポルックス「イヤだ、行くな!!俺は兄貴といつも一緒にいたいのに!何をするのも一緒、童貞喪失も一緒、死ぬのも一緒がいい!!さあ、今すぐ『一生ポリュデウケスのそばにいます』と誓約書に書いてその横にサインしろ!」 
 
カストル
「そんなものお前の脳漿で地面にしてやるわ!!どけよ!僕は行くぞ!!お前はもっとスパルタの王子としての自覚を持つがいい、ポルックス!」 
 
…そんなこと言いつつ
マジで童貞喪失も死ぬのも一緒だった双子のお話です。 
 
 
さて、カストルは一人、射手座のケイローンのもとに弟子入りしてしまうわけですが、 
 
ケイローン「――しかし、カストルよ。お前はすでにどんな荒ぶる馬をも御する技を体得している。私に教えを請うのは何ゆえだ?」 
 
カストル「ギリシャ一の賢者、射手座のケイローンよ。僕があなたのもとに来たのは他でもありません。僕のギリシャ一の馬を御する技と、ギリシャ一であるあなたの理性、どちらが勝つか勝負するためです!」 
 
ケイローン
「エ?いや、私は馬ではなくケンタウロス(半人半馬)…」 
 
カストル
「師匠、お座り!!」 
 
ケイローン
うおおおおうっ!?;あ、足が勝手にー!?ばかなーっ!?くそおおー!私は理性なき馬ではない、射手座のケイローンだ…!」 
 
カストル「く…っさすが、ギリシャ一の理性!しぶとい馬だ!!」 
 
ケイローン「だから私は馬ではな…」 
 
カストルお前は馬だ!!さあ、理性を捨てて僕をお前の背に乗せろ!我が名はカストル、全ての馬を御する者!僕に従え、荒ぶる馬よ!」 
 
ケイローン「うううう…
私、馬だっけ…!?;;」 
 
 
プライドとプライドのぶつかり合い、精神の削りあい…そんなやりとりがあってほしい、この二人の間には!
ケイローンって、「ギリシャ一の英雄の指導者」っていうよりは 
「あいつに子供預けときゃーどうにかしてくれんだろ」っていうギリシャ一の子供のお守り役のイメージの方が強いな。 
いいだよ、マジで…。 
さて、月日は流れて1年後。カストルがケイローンの元から帰ってきます。 
 
 
カストル「――ただいま、ポルックス。今帰ったぞ」 
 
ポルックス「『今帰ったぞ』ではないわ、バカ兄貴。お前、1年も俺をほったらかすとはどういうことだ!?」 
 
カストル「まあ、ちょっと師匠の上に乗るのに手こずってね。」 
 
ポルックス「はあ!?「上に乗る」!?まさか貴様、師匠と一線を越えた関係に!? 
 
カストル
「いや僕の師匠、下半身馬だから。そういう関係には…」 
 
ポルックス「下半身が馬だから何だってんだ!?俺知ってるぞ!そーゆーの、
獣姦っていうんだろ!?畜生、まだ体毛も生えそろってない兄貴をたぶらかすとは、ケイローンの奴めーー!!」 
 
カストルああもう何とでも言え。ポルックス、お前の方は、何か変わりはなかったか?しばらく見ない間にバカに磨きがかかったようだが…」 
 
 
ポルックス「ああ、まあ特に変わりはないが…そういや、ポセイドンって奴と仲良くなったぞ」 
 
カストル「…ポセイドン?海皇ポセイドンか!?」 
 
ポルックス「そうだ。おれがアテナイのスニオン岬から毎日海に向かってお前の悪口を叫んでいたんだが、ある日ポセイドンが海から出てきてな。なんでも、あいつにもどうしようもない兄がいるというのだ。
冥王ハーデスとかいう。」 
 
カストル「……。」 
 
ポルックス「そこからは意気投合してな、兄罵倒大会だぜ。『俺の兄貴のカストルは1年も俺をほったらかしにしているんだがどう思う!?』、『1年くらいなんだ!私の兄のハーデスなど1000年以上音沙汰なしだわ!!――いや〜、盛り上がったね!」 
 
カストル「…なるほど。お前はスパルタの宿敵であるアテナイに一人でノコノコ出かけていったあげく、神であるポセイドン様にタメ口を聞いたわけか。よく命があったな。」 
 
ポルックス「俺たちのこと気に入ってくれたぞ?
『お前たちがスパルタの王になったら、海の波と風の支配権をやる!』って言ってくれたんだ!」 
 
カストル
「スパルタは山に囲まれて海に面していないのに、そんなもんもらってどうするんだ!?」 
 
 
そんなこと言いつつちゃっかりもらうハメになるんだけどさ! 
この二人の神話といえば、アルゴー船での冒険が有名ですが、私は「アテナイ遠征」の話が大好きです。 
ある日、二人の妹であるヘレネ
(※彼女は、後にあのトロイア戦争の火種ともなるギリシャ一の美女)が、 
アテナイの英雄、テセウスとペイリトオスにさらわれてしまいます。 
そこで、カストルとポルックスは妹を取り返しにアテナイに殴りこむわけだ!
 

テセウス「ははは、スパルタの王子、カストルとポリュデウケスよ。武器も持たずにノコノコと我がアテナイまでやってきて何のつもりだ?そなたらが妹、ヘレネを奪い返しにきたのか?」 
 
カストル「われらは助言に来たのです、テセウス様。あなたはこのギリシャで最も美しい我らが妹を手に入れました。それならば、ご友人であるペイリトオス様にも、相応しいお相手を見繕って差し上げるべきでは?」 
 
テセウス「なるほどな。しかし、このギリシャにヘレネほどの美女はいなかろう?」 
 
カストル「います。
冥王ハーデスの妃、ペルセフォネー様が。」 
 
テセウス「なんだと…!?貴様、冥王ハーデスの元から妃を奪って来いと、そう申すのか!?」 
 
カストル「元々ペルセフォネー様は、冥王ハーデスによって地上から奪われたのです。それをまた地上に取り戻すことに誰が文句を言うでしょう。」 
 
テセウス「ふむ…確かに、冥王の妃を冥界から奪ってきたとなれば、我らの名声もさらに上がるというものだ。冥界の入り口はタイナロン岬の洞穴であったな!?よし、行くぞ、ペイリトオス!!」 
 
・・・・・・・・・ 
 
カストル「…ふ、底抜けのアホどもだな。あいつらは。冥界は入るのは簡単だが、出るのが難しいのさ。テセウスが居なくなればこっちのものだ、妹は返してもらうぞ!」 
 
アテナイの兵士「スパルタの王子ども、武器も持たずに我らと戦う気か!間抜けな奴らめ!」 
 
ポルックス「間抜けは貴様らの方だ!
俺は素手の戦いではギリシャ一なのだ!このアテナイの街なぞ俺の拳のみでがれきの山にしてくれるわ!!」 
 
 
そしてマジで二人がアテナイの街を廃墟にしていた同時刻、 
完全なとばっちりで冥界も廃墟となっていた。 
 
ペルセフォネーを奪いに来たテセウスらにハーデス様、マジ切れ。 
冥界を流れる四つの川は大氾濫、地面は千に裂けるわ、ケルベロスはワンワン吼えるわ 
 
 
ハーデス「…ああ、私など…私など…
しょせんはティッシュカバーを作る事ぐらいしか取り得のない男…ペルセフォネーには相応しくない…そうなのか、ペルセフォネー…?」 
 
タナトス
「俺はペルセフォネー様じゃありません!タナトスです!!ハーデス様、お気を確かに!あんたがこのまま負の気をぶちまけ続ければ冥界が滅びます!!」 
 
ハーデス「ペルセフォネー……共に無になれるなら…それでもいい…」 
 
タナトス
「こっちは無になる気なんて更々無いわ!!畜生、どこのどいつだ、テセウスたちに『ペルセフォネー様を奪え』などと入れ知恵した奴はーーッ!?」 
 
 
その入れ知恵した奴らは無事妹をアテナイから救出して、スパルタに凱旋。 
 
こんな風にとても仲がよかったカストルとポルックスですが、 
最終的にもう一組の双子と 
「おい、その食いモンは俺と兄貴のだ!」「なんだと!?これは俺たち双子のモンだ!!」 
というどうしようもない食い物争いが勃発。 
その中でカストルは心臓を矢で射られて命を落としてしまいます。 
 
 
ポルックス「兄貴、兄貴…!イヤだ、逝くな!また俺を一人にしないでくれ…!俺は兄貴とずっと一緒にいたいのに!!さあ、今すぐ、『永遠にポリュデウケスのそばにいます』と誓約書に書いてその横にサインしろ!!」 
 
カストル
「…そんなもの…お前の脳漿で…地面にしてやるわ。……僕は、ハーデスの元に逝く。後を、追おうなどと…考える、な………」 
 
 
次の瞬間、ポリュデウケスは自分の手首を手刀で切って自害を図るわけですが、 
どういうわけか、いくらやっても死ぬことができません。 
 
 
ゼウス「…それ以上己の体を傷つけるのは止めよ、ポリュデウケス、我が息子よ。そなたは神の血を引く者ゆえ、死ぬことはできぬ。カストルと違ってな。」 
 
ポルックス……おっさん、誰だ?」 
 
ゼウス「おっさんとは何だ。私は全知全能の神・ゼウス、そしてお前の本当の父だ。お前とカストルは異父双生児という奴でな…お前だけは私の息子なのだ。――私と一緒にオリンポスに来い。お前は神として迎えらることになった。」 
 
ポルックス
「兄貴が冥界にいるのに何で天界なんぞに行かなきゃならんのだ、ド阿呆が!真逆だろうが!!」 
 
ゼウス「…お前は、神の座が欲しくないのか…?」 
 
ポルックス
「兄貴と一緒じゃなければ神の座などこえだめと同じだわ!!あんたがゼウスだというのなら、そして俺が神だというのなら、俺の命を半分兄貴に分けてやってくれ!!」 
 
ゼウス「…一度ハーデスのもとに下った魂は、私といえど呼び戻すことはできん。冥界は入るのは簡単だが、出るのが難しいのだ。」 
 
ポルックス「じゃああんたに反抗した罪で、俺を冥界の最奥のタルタロスに落とせ!!そっちの方が兄貴に近い!!」 
 
ゼウス「神の座はともかく、
バカ界の玉座は貴様のものだな。…だが、バカは嫌いじゃない。このゼウスが一肌脱ごう!冥王ハーデスは私の弟。しかも昔からティッシュカバーを作ることが趣味
のような根暗男。軽く脅せば魂の一つや二つ返してくれるかもしれん!」 
 
ポルックス「!…それじゃあポセイドンも誘ってくれ!昔、俺の力になると約束してくれたんだ!」 
 
ゼウス「よしきた!」 
 

→後編に続く