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(4月13日)… … … ニュージーランドの地方都市に「バス停」という概念はないのか! ここでは、バスは予約して乗るもの、といった感じだ。 少なくても、ボクの旅のクイーンズタウン以降の経験では、バスは始発の場所が決まっているだけで、あとは、予約がある場合のみ、ホテルやユースホステルに迎えにきれくれる、といったしくみのようだ。特にバス停は決まっていない。 この「予約」というのが少々曲者で、目の前に止まったバスのドライバーに「予約してないが、乗りたい」と言ってみたところ、断られてしまったのだ。見たところ、席は空いていたのに…。 こんなふうに予約で成り立っている交通機関は、必ず乗れるという安心はあるが、行きあたりばったりの旅が難しいという、ボクにとっては少々残念なことでもある。 山小屋の予約制度といい、ニュージーランドのアウトドアのレジャーを少し堅苦しく感じてしまうのは、日本の規制のほとんどない国立公園の運営に慣れてしまっているせいかもしれない。 というわけで、ボクは、ルートバーンのトレイルヘッドで拾ってもらったバスのドライバーに、ティ・アナウの町のどこで降りるかを言わなければならないのだ。どこでもいいのだが、そういうわけにもいかないような鋭い目でドライバーはボクを見つめる。しかたなく、ホリデー・パークというキャンプ場で降ろしてもらえるよう、お願いした。
キャンプ場は、小さな街はずれの湖畔にあった。DOCが目の前にあるのが、なんとも都合がいい。あす、次に向かう山小屋やテントサイトの予約をしなければならないからだ。道路を挟んでティ・アナウ湖を見下ろせる芝生の上にテントを張った。ん〜、いい感じだ。けさの霜の濡れが完全に乾く前に日が沈んでしまったのが残念だ。 対岸の山並みの上でオリオン座が逆立ちしてる。背後には、南十字星が昇ってきた。おやすみなさい。 (4月14日)… … …
朝、さっそくDOCオフィスヘ出向いた。エントランスの掲示板で天気を確認すると、あすから3日間ほど、ぐずつくようだ。おまけに、その雨の原因が猛烈に発達した低気圧ときている。やばい…。トランピングは延期しよう。ヤワなバックパッカーは、こういう決断は早いのだ。 その後、時間をもてあまし気味に湖畔の道路をブラブラしていると、湖に浮かんでいる小型飛行機に心を惹かれてしまった。遊覧飛行だ。まあ、山に入れば、金を使うこともないのだし…、と、小さなオフィスに入った。家族経営のような小さなオフィスは、シーズンオフの平日とあってか、客が他に誰もいない。 「最低、3人いないと、飛べないよ!」 と、断られ、 「乗りたいなら、12時にもう一度来てね!」 と、言われる。その時間に行ってみると、 「あんたが行きたがっているミルフォードは無理だが、ダウトフル・サウンドなら行けるよ!」 と、きた。行くことにした。客は全部で5人。ボクはパイロットの隣の席だ。 なんとなく、ちょっと器用なオヤジが趣味で作ったような、みため、ポンコツの飛行機だが、パイロットは、あちこちいじくりまわして、点検に精を出している。飛ぶことの全てを知り尽くしているようで、なんとも頼もしいではないか! さあ、出発だ! 湖面を滑るように助走した飛行機は、少々頼りなげに、北の空に向けて浮き上がった。いい感触だ。フラフラ揺れる機体。パイロットは、操縦桿を通して自分の意思を慎重に機体に伝えている。その緊張感が、となりに座っていると手にとるように伝わってきて、ボクまでワクワクしてしまう。決してヒヤヒヤではない。ブラボー! 普段乗っているジェット機などに比べると、スピードは格段に遅く、眼下の湖や、ほとんど目の高さの山並みのひとつひとつが手にとるように近くに見えている。エキサイティングとしかいいようがない! 揺れも心地いい。 行く手に積雲が見えてきた。この飛行機は、その積雲よりも少し下を飛んでいて、これからあの雲の下に入っていくことになるようだ。今よりも激しくなる揺れを覚悟し、怖いような楽しみなような不思議な気分になった。 予想通り、積雲の下に入ると、機体の揺れは一段を激しくなった。「お〜!」と、何度声を出したことか。パイロットは、こんな状況でも、あれは○○山で、あれは××入り江で…、と、ガイドを続ける。楽しいね〜。 海だ! フィヨルドランドと名づけられているだけあって、険しい山と細長い入り江の組み合わせが景色の全てだ。が、その入り江の先に、午後の日射しを受けて輝く、まぶしすぎる海が広がったのだ。機体が旋回を始めた。足場が取り外されたように、真下に群青色に輝く水面がボクを吸い込むように広がった。飛行機の乗客ではなくて、別の生き物になったようだ。 遊覧船が、かたつむりのように、黒い湖面に白い軌跡を描いて往来している。 誰も近づけないような海と深い森に囲まれた岸に、小さな小屋が見えてきた。 氷河に削られた山の頂上近くの谷に、小さな湖が眠っている。 余計なものは、何ひとつない。
戻る時間が、近づいてきたようだ。帰りは、少し南のコースをたどった。マウント・ラックスモアを中心としたケプラー・トラックが、森林限界の斜面にひっかき傷のように見えている。何日か後に、あの道を歩くのだ。 マナポウリ湖の上空で高度を下げ始めると、正面にティ・アナウの小さい町が、小さく見えてきた。 本当に楽しい1時間だった。 実は、この激揺れの遊覧飛行で、後ろに乗っていた女性がゲロゲロやっていた。そして、ボクも酔いに対して少々心配があったのだ。というのも、直前にかなり食っていたので、ちょっとの刺激でゲロッとくるのではないかという恐れがあった。 何を食べたかというと…、なんでもかんでもだ。
オープンテラスの小さなハンバーガーショップ。超特大のラムバーガーと、ジャガイモ3個分くらいはありそうなフレンチポテトの山、それにたっぷりのコーヒーだ。勧められるががままに注文し、貧乏性のボクは、それを残すことができずに、全部胃袋に詰め込み遊覧飛行にのぞんだのだ。全部でNZ$13は、安いのか高いのかわからないが、食事も飛行も大満足だった。だが、財布のヒモゆるみ気味注意報を発令することにしよう。夜、きのうほどの寒さはない。雨が近づいているせいか。サンドフライの大群に悩まされる。 (4月15日)… … … 予報に反して、天気の崩れはない。青空が見えている。トランピングの中止は判断ミスか。
ひととおりの朝のお勤めを終え、DOCオフィスに行ったところ、なんと!ミルフォード・トラックにひとつキャンセルが出ていた。たったひとつだけ。急いでゲットしたのは言うまでもない。出発はあすだ。天気予報は、あすの嵐を告げていたが、こんなチャンスは2度とないかもしれない! 山小屋や乗り物の予約をしたあとは、食料の調達だ。ダウンタウンのスーパーで買ったあす以降の食料は ・ラーメン ・スライスチーズ ・インスタント・スープ ・ドライフルーツ(パイン、バナナ) ・クッキー と、こんな感じだ。 夕暮れ。嵐を予感させる夕焼けだった。 |