1:旅の目的は…
(旅立ちまで)


 ニュージーランドの旅に続き、今回の旅もジョン・ミュア・トレイルを歩くための準備を兼ねている。少々ぜいたくな準備といえるが、一度その気になると、どんどんとのめりこむ性格を持つボクは、その方向にかなりハマり始めているのかもしれない。
 ジョン・ミュア・トレイルは、どうしても成功させなくてはならない!と。

 ニュージーランドの1か月の旅で「外国の長期滞在における精神的負担」は、ほとんどないことが確認できた。予期せぬトラブルでも発生すれば、状況も変わってくるのだろうが、そこまで考え出したらキリがない。
 そして、ニュージーランでは、全く体験できなかったことが、今回の旅の一番の目的なのだ。

 それは、大型野生動物…早い話が「クマの存在に耐えられるか」ということを、体験として確認しておくことである。

   ボクが、ジョン・ミュア・トレイルを歩くうえで、最も気にしているのが、ブラック・ベアの存在だ。1か月の山歩きそのものが未知の領域なのに、その行程の全てにブラック・ベアと遭遇する可能性がある
 資料などを見ると「ブラック・ベアも人間を避けようと行動している」といった意味の記述があるが、いざ、出会ったときに、ブラック・ベアがどのような行動を示すのか、自分自身が冷静に対応できるのか、といったことを、自分の体験として知っておきたいのだ。
 今のところ、ボクのブラック・ベアに対するイメージは、「恐ろしい、怖い」それ以外にない。このイメージのまま、ジョン・ミュア・トレイルを歩き始めたら、精神的プレッシャーに押しつぶされてしまうことは間違いないだろう。その不安を少しでもやわらげることが、この旅の一番の目的なのだ。もちろん「その重圧に耐えられない」となれば、この挑戦は中止しなければならない。

 ちなみに、ニュージーランドには、大型哺乳類がいっさいいない。森で出会う動物といったら、せいぜい鳥で、その中でも最も存在感があったのが、オウムの仲間であるいたずらもののキーアだ。そんな環境ゆえ、身の危険に対するプレッシャーはまるでなかった。ある意味、かなり楽な旅だった。

 そんなのんびりムードの対極ともいえるアラスカのデナリ・ナショナル・パークが、今回の目的地のひとつだ。そこは、ジョン・ミュア・トレイルの周辺を徘徊するブラック・ベアよりも一段と大きいグリズリーの領域。度胸だめしには申し分ない。
 そして、ジョン・ミュア・トレイルの北のターミナルにあたるヨセミテ・ナショナル・パークにも10日余り滞在する。初夏のヨセミテ・バレーは、シエラ・ネバダの雪解け水が集まり、名物の滝が、その迫力を最も増す時期なのだ。もちろん、ウイルダネスに出て行けば、ブラック・ベアの領域だ。

 さらに、ニュージーランドで出会ったホゼの家に遊びに行く、というのも密かな楽しみもある。これまで、何度か海外旅行をしているが、日本人以外で、これほど仲良くなった友達がいなかったので、密かな…とはいうものの、かなり大きな楽しみでもある。
 サンフランシスコに暮らす彼は、ヨセミテが自分の最も好きな場所だと言い、ジョン・ミュア・トレイルをめざすボクの気持ちをとても良く理解してくれているひとりなのだ。
 日本では、ジョン・ミュア・トレイルの知名度が低いため、なかなかこういった人に出会うことはない、というより、ボク自身も「アメリカの山に行く」というくらいにしか言っていないのだから、しかたないだろう。  彼に時間があったら、一緒にヨセミテを歩こう、と誘ってみようと思う。


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