11:ヨセミテ・バレーに下る
〜イーグル・ピーク往復3日目〜
(5月28日)


 4時45分起床。空は白み始めたばかりだが、すでに星はほとんど見当たらない。
 ゆうべから猛烈に風が強く、天気が崩れるのではないかと心配していたが、それらしい雲も見当たらない。  崖のほうからは、地鳴りのようにジェット機の飛ぶような音が聞こえているが、あれはなんの音だろう。滝か?
 夜明け前の三日月を撮ろうと、外にで出たが、寒いのなんのって、あっという間に手がかじかむ。ヨセミテに来て初めて「寒い」と思う朝だ。寒さに震えながら、三日月を撮るために崖まで往復したが、きのうまでのような元気のいい鳥のさえずりも少なく、テントに戻るともう一度シュラフの中に体を押し込んだ。

 テントサイトを出発したのは6時20分。強風のため、テントサイトの周辺ではコンロを使うことができず、とにかく風の弱い所までいって朝食をしよう、ということにして歩き始めたのだ。ボクの望むような風の弱い場所はヨセミテ・バレーへ続くスイッチバックの手前までなかった。昼間であれば、この辺りもハイカーが多いのだが、まだ8時前だ。沢のキンキンに冷えた水で顔を洗って、オートミールとコーヒーで朝食。すがすがしい朝だ。
 テントサイトとは違う場所で朝食をとったことなんて今までなかったが、こういったスタイルもなかなか気持ちいい。特に暑さが厳しい谷の底や、真夏のトレイルでは、涼しいうちに歩いて、日陰で朝食をする、といったスタイルも効果的かもしれない。
 さあ、あとは、ヨセミテ・バレーへと下るだけだ。

 トレイルヘッドまでの下りは2時間かからなかった。この間、三脚を立ててヨセミテ・フォールの飛沫をじっくりと撮影したり、メドウにまで勢力広げた輝くマーセッド・リバーの流れに見とれていたりして、実際に歩いていた時間となるとさらに短い。
 午前10時とはいえ谷はさすがに暑く、崖の上で吹きまくっていた寒いくらいの風も、まったく感じられなない。

 ここのトレイルヘッドは、バックパッカーやクライマーが集まるキャンプ・フォーというキャンプグランドが近くにある。ここで今夜のテントサイトをキープした。夏は常時「FULL」の状態であるが、まだ時間が早いせいか、スペースがあり、このヨセミテ国立公園で過ごす残り3泊分の料金を支払った。1泊5ドルなり。

 とりあえず靴下を洗濯。灼熱地獄の日なたに干す。
 シャワーを30分ほどかけて入念に浴びる。
 チーズバーガーとコークで昼飯。
 旅行雑誌やアウトドア雑誌にはアラスカの特集が目立つ。
 ポストカードを何枚か書く。
 ジョン・ミュア・トレイルの地図を買う。

 こんな感じでヨセミテ・バレーで過ごしていると、ウイルダネスにいる時には、考えられなかったほどの勢いで金が減ってゆく。猛烈なこの谷の暑さを受けて、金までが蒸発してゆくようでもある。

 さらに、ジョン・ミュア・トレイルのガイドを見つけた。これは、数年前にシアトルで購入した本の改訂版で、ボクが持っているものには、南から北へ向かう順番でトレイルが紹介されていたのだが、この改訂版には、それに加えて、北から南へ向かう順番でも紹介してある。迷わず買った。
 13枚組の地図1セットと、ガイドブック2冊をゲットし、これでジョン・ミュア・トレイルを歩くうえでの最低限の情報は確保したことになる。

 これで、この日のボクは満たされた。
 テントサイトは、きのうまでとは対照的に大混雑で蒸し暑さを覚えるほどだ。
 あすからの残り2日間は、ジョン・ミュア・トレイルの下調べでもしながら、過ごすことにしよう。


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happy trail