■ 近づく雨に追われるように、感動のゴールインです! ■
August 20, 2005
DAY.134

 8月20日、スタートして134日目にして、ゴールのマウント・カタデインの頂上に立ちました! 4か月と12日、本当に長い道のりでした。
 きのうの夕方、ステートパークのレンジャーステーションにはられていた情報では、きょうは天気が崩れ、雨の確率は60%ということで、同じシェルターに泊まっていた私を含む5人は、夜明け前から歩き出し頂上をめざしました。夜が明け、雲の隙間に少し青空が見えていました。ハイキングというより、ロッククライミングといったほうがいいような急斜面をよじのぼり、頂上に立ったのが午前9時。言葉も出ないような絶景でした。その美しさは、自分がアパラチアントレイルのゴールについたことを忘れさせるほどでした。視界一面に広がる森と湖の大地に、突然変異のように山群が盛り上がったその最高点がゴールです。北海道の大雪山の山並にとてもよく似ています。標高は1500mちょっとなのですが、スケールはもっと大きく感じられ、カタデイン(=greatest mountain)と呼ばれているのがよくわかります。
 頂上では前夜、トレイルエンジェルからもらったメロンを割り、こごえる手でほおばりました。1時間余りすると、違う星にきたように、激しく雲が頂上を行き交い、興奮して写真を撮っていると、瞬く間に視界がなくなり、ピックアップの荷台に乗って林道を町に向う途中に、冷たい雨が降り始めました。夏が遠く去り、秋の深まりを感じるほどの雨が、私の134日間のアパラチアトレイルの幕をひきました。みなさんありがとうございました!

 清水さん、ゴールおめでとうございます!! 清水さんからのハガキを楽しみにしていた4か月間でした。またじっくり土産話を聞かせてください。
福岡 - Wednesday, August 31, 2005 at 09:03:02 (JST)

 目覚めたのは、午前4時過ぎ。まわりのゴソゴソした物音に焦り始めて出発の準備を始めたものの、私は他の4人に取り残されて、4か月余り続いたハイキングのゴールに向けて出発したのは午前5時過ぎでした。
 Katahdin Stream を横断するところで、水を補給する "Skeeter Feeder" に追いつきました。私も、ここで水筒を満タンにして、急斜面に取り付きました!

 (←) 6時前。樹林帯が一時的に途切れ、視界に広がりました。雲が多かったのですが、幸いにも薄い雲で、その一部が朝日に染まり始めています。

 (→) トレイルは、とてもトレイルと呼べるようなものではなく、写真の左下に見えている小さな "White Blaze" がなければ、どこを辿って行けばいいか想像もつかないほどです。少しでも手や足を滑らせてしまったら、岩の上を弾みながら山の麓までまっさかさまです。よくこんなところをトレイルにしたなぁ…、と呆れ、よく遭難者が出ないものだと?と、不思議に思います。

 森の海に白波のように見える低い雲が、朝日を受けて白く輝いています。明るさと増してくるとともに、雲が厚みを増してきました。

 やっと、たいらな所にやってきました。とりあえず無事にここまでこれたことに、ひと安心です。が、まだ行く手には、巨大な岩の積み重なったトレイルが見えています。加えて風がとても強くて寒くなってきました。雨に降られる前に、なんとかゴールを迎えなければ…。  岩場から、歩いてきた尾根を振り返ります。途中で追い抜いた "Skeeter feeder" の姿は見えません。大部分のハイカーは、麓の森林管理事務所に大きなザックを置いて、日帰り装備で登るのですが、彼はいっさいがっさいの荷物を背負っています。途中の岩場で大苦戦しているのかもしれません。

 はっきりいって、これまでに、こんなに恐いハイキングは経験がありません。高度は高くなるし、風は強くなるし…。実は、私の背中にも、いっさいがっさいの荷物が重くのしかかっていて、こんな状況になるのなら…。後悔が、ちょっと頭をよぎりましたが、やはり4月から一緒に歩いてきた装備とともにゴールを迎えるのが私のスタイルです!  この世とは思えないような急な岩場が終わると一転、たいらな台地が広がりました。そして、遠くに見えている緩やかなピークがゴールです! 歩き始めてからおよそ3時間が経過した午前8時のことでした。

 頂上が近づくにつれて、恐ろしく風が強くなってきて、息もできないほどです。岩場に育つ草も激しく風になびいていて、まるで呼吸困難でもあるかのように茶色く変色していました。体が風に持っていかれそうで、この写真を撮るのもひと苦労でした。さぁ、ラストスパートです!  午前9時。アパラチアン・トレイルの北の終着点、Mt.Katahdin の頂上に立ちました! 去年歩いたパシフィック・クレスト・トレイルに比べると、歩いた期間は1か月ほど短かったのですが、実に困難の多かったアパラチアントレイルでした。このあと、あまりに寒くて、岩の陰に潜り込み、感激に浸りながら、"Skeeter Feeder" を待ちました。

 頂上は 360度の展望で、眼下に見ているのは Chimney Pond です。  続々と日帰りハイカーが登ってきました。夜中に登り始めた "Loki" の姿が見当たらず、もう反対側のトレイルから下ったあとなのかもしれません。

 Mt.Katahdin の頂上へ続くトレイルは、アパラチアン・トレイルの他にいくつかあって、そのひとつが、この Knife Edge です。スリル満点のルートです。  "Skeeter Feeder" は、到着と同時に大粒の涙をボロボロと流し、その場に崩れ落ちました。それは、感動というよりも、人生の目的を達成したあとに訪れる解放感のようにも思えました。

 これが POSTCARD に書いた雲です。頂上にいたハイカーの多くが「ビデオカメラがあればなぁ…」と残念がっていました。  どこかに演出家がいるかのように、明るくなったり暗くなったり、雲と太陽のステージが続きます。平衡感覚をなくすほどに、ずっと上を眺めっぱなしでした。

 雲ゆきが怪しくなって、"Skeeter Feeder" と山を下りることにしました。彼は来た道を戻り、私は反対側の Chimney Pond 経由です。  トレイルヘッドで、Knife Edge 経由で下ったという "Loki" に再会しました。二人でヒッチハイクをして、ピックアップの荷台に乗り込み、メインの森をあとにしました。

 Millinocket の宿の部屋で荷物の整理です。4か月余り着ていたシャツの背中は透けて見えるほどにすり減っていました。  しばらくすると、"Skeeter Feeder" がやってきました。メインの森を離れる時から雨が降り出して、麓のこの町でも秋の深まりを感じるような寒さになりました。

Day.133after AT



happy trail