力を抜く その1
メダカ : 若芽先生、今日は「脱力」、つまり「力を抜く」ということがテーマです。では、お願いします。
若 芽 : ピアノを弾くのに一番重要なことは「力を抜く」ことだ。
メダカ : 先生、この前も別のことを一番重要だとおっしゃいましたが。
若 芽 : 一番重要なことがたくさんあるってことだよ。
メダカ : はあ。
若 芽 : ちょっと、メダカ。君が皆さんの代わりに実際に弾いて体験してみなさい。百聞は一見にしかず、だから、実際の体験に勝るものはない。
(メダカ、いやいやピアノの前に座る。)
メダカ : 何を弾くんですか?
若 芽 : そうだなあ。やっぱりハノンがいいかな。
メダカ : (なんで「やっぱり」なのか分からないがそれは言わずに)何番ですか?
若 芽 : 21番にしよう。腕に負担がかかるように、4回は繰り返すこと。
メダカ : ゲッ。
(若芽に睨まれ、いやいや弾き始めるメダカ)
若 芽 : もっと速くな。
メダカ : (無理だと思うが弾いているので喋れない)
(若芽、メトロノームで拍をとる)
若 芽 : 四分音符=120くらいで弾かないと。
(なんて言っている間に、メダカ、ギブアップ)
若 芽 : やめちゃだめだよ。
メダカ : 先生、もう腕が痛くて弾けません。
若 芽 : だから、力を抜けって言ってるだろうが。そんなに腕にも身体にも力が入っていたら、弾けないに決まってるだろ?
メダカ : でも、先生。力を抜いたら、ピアノが弾けません。
若 芽 : 君は立っている時に全身に力を入れてんの?
メダカ : そんなことはないですけど。
若 芽 : それと同じことだよ。
メダカ : 同じことって?
若 芽 : 鍵盤の上に指で立つってこと。
メダカ : はあ。(よく分かっていない)
若 芽 : だから、最低限の力だけは必要なんだよ。でも、余分な力はいらない。ただ、鍵盤に指を載せればいいんだ。そうすれば、手の重さで鍵盤が沈むだろう? あ、一つの鍵盤を押し下げるのに必要な重さは、だいたい50〜60グラムだよ。卵一個分ね。中には非常に軽い鍵盤も重い鍵盤もあるけどな。
メダカ : でも先生、これでは音は出ますが弾けません。
若 芽 : 君は歩く時に全身に力を入れてんの?
メダカ : そんなことはないですけど。
若 芽 : それと同じことだよ。
メダカ : 同じことって?
若 芽 : 鍵盤の上を歩くように指を動かして、ピアノを弾くってこと。
メダカ : (さっぱりわからないが、これ以上先生に質問しても無駄だと悟っている)先生、どうもありがとうございました。次回はどうやったら力が抜けるかという具体的な話に入りたいと思います。
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