ピアノのレッスン室 6


 譜読み その1

メダカ : 若芽先生、掲示板でリクエストがありましたね。嬉しいですね。

若 芽 : うん。ありがたいことだな。

メダカ : 僕も、がんばり甲斐があります。

若 芽 : まあ、一生懸命やってくれ。

メダカ : はい。では皆さん、始めましょう。リクエストは「譜読み」についてでしたが、先生、「譜読み」とはどういうことでしょう。

若 芽 : え? メダカ、譜読みを知らないの?

メダカ : いや、譜読みは知ってますよ、楽譜を読むことでしょう?

若 芽 : その通り。何が不思議なんだ?

メダカ : だって、楽譜を読むってことは、音符を読むってことでしょう? ああ、初心者の方に音符の読み方を教えるんですね? 

若 芽 : それは「ソルフェージュの教室」で、そのうちやるつもりだ。

メダカ : じゃあ、今日はいったいなんの勉強ですか?

若 芽 : メダカは「譜読み」は早いかね。

メダカ : 楽譜がすぐ読めるってことですか?

若 芽 : うーん、まあそういう意味なんだけど…。わかめは「譜読みが早い」というのは、「練習を始めた曲がだいたい弾けたと言える状態になるまでが早い」と理解しているが、人によって少しずつニュアンスが違うかもしれない。

メダカ : はあ。なんかよくわかりませんが。

若 芽 : メダカはレッスンに新しい曲を持っていく時に、少し練習すればもうばっちりな感じになるのか?

メダカ : いえ、そんなことはないです。結構苦労してます。

若 芽 : それなら、楽譜がすぐに読めてさっさと弾けるようになりたいだろ?

メダカ : そりゃあなりたいですけど。そんな上手い話があるんですか?

若 芽 : ホントはたくさん楽譜を読んで慣れることが必要なんだけど、実は方法がないこともない。

メダカ : あるんですか?

若 芽 : 上手くいく人とあんまり効果のない人がいるけど、試してみるのはタダだから、いろいろやってみるといい。

メダカ : いろいろって、そんなにたくさん方法があるんですか。

若 芽 : まあ、そんなに期待しないで。たいしたことじゃないんだからな。

メダカ : はあ。

若 芽 : 譜読みの遅い人は几帳面な人が多いと思う。それで、初めて曲を練習しようとする時に正確に弾こうとするあまり、片手ずつ練習を始める。もちろん譜読みが遅い人が全員こういうタイプだと言っているわけじゃない。単に楽譜が読めないのかもしれないしな。

メダカ : あ、でも、僕は片手ずつ練習します。だって両手じゃ難しくてすぐ弾けないじゃないですか。

若 芽 : やっぱりメダカも「初めての練習は片手」派だったか。でも、そこに落とし穴があるんだ。

メダカ : 落とし穴ですか?

若 芽 : そう。ピアノは基本的には両手で弾くものだ。だから、両手で弾いて初めてバランスが取れるようになっている。

メダカ : ああ、僕がソナタで片手のパッセージが出てきた時によく間違えるのはそのせいですか?

若 芽 : それは練習不足のせいだろ? だけど、バランスが悪くなることも少しは関係しているかもな。わかめの個人的な意見だけどな。

メダカ : それで先生、さっきの落とし穴の続きですが。

若 芽 : どんな曲でも初めて弾く時はある。その時にいつも片手ずつで弾いていると、確かに細部はよく見えるけど全体は見えてこない。全体というのはその曲の終わりまでという意味もあるけど、もっと重要なのは大譜表を一度に見ることができなくなるってことだ。右手だけ、左手だけ、別々に見る習慣がついてしまうんだ。

メダカ : なるほど。正確に弾こうしているのに逆に落とし穴にはまっているんですね。

若 芽 : 初めて弾く時から上手く弾く必要なんてないんだ。初見のテストなら別だが。間違えないように弾こうとかいう気持ちは忘れて、ゆっくりでもいいし、うんと難しいところは片手でもいいし、だいたいの感じを掴むつもりでざっと弾いてみればいい。よくわからない所は飛ばしてもいい。

メダカ : そんなにいい加減でいいんですか。

若 芽 : 今まで几帳面に弾いていた人ほど、初めはちょっと辛いかもしれない。この音であっているのかと不安になる。でも間違っていても全然構わない。

メダカ : じゃあ上手くならないじゃないですか。

若 芽 : 一度メチャクチャでもいいから最後まで我慢して弾いてみる。それから、おもむろに片手の練習を始めなさい。

メダカ : え? じゃあ、片手の練習もするんですか?

若 芽 : 当たり前だろ! 片手の練習は、絶対にやらなきゃいけないものだっていつも言っているだろ。メダカ、なんか君、嬉しそうだな。

メダカ : あ、いえ、片手の練習をしてもいいってわかって、よかったです。

若 芽 : 片手の練習はしっかりしなさい。ただ、今日のテーマは「譜読みを早くする」ってことだったから、もし片手で練習を始めているのならそういう人は最初の一度だけでいいから両手で練習しなさい、ということをわかめは言っているんだ。あとは、好きなようにいつものように練習していいよ。

メダカ : わかりました。僕、今日からそうやって練習します。そしたらすぐに譜読みが早くなりますか。

若 芽 : 今日からやって明日譜読みが早くなるってことはないけど、そのうち効果が出てくる。練習する曲の数にもよるからいつまでにとは言えないけどな。

メダカ : そのうち、とか言って、先生、逃げてますね。

若 芽 : そんなつもりはないぞ。でも、長くなったから、他の方法はまた今度。

メダカ : 「初めての練習は片手」派の方は、今日の話を参考にして、がんばって下さい。当てはまらない方は次回をお楽しみに。では、さようなら。


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