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8.インポシブル・ミッション





 シャスから受け取った反重力飛行装置を背負いながら一緒に早足で廊下を進む。この装置がいるってことは、またオレが最前線ってこと?
 今度は絶対命令に邪魔されないようにしないと。
 現場の第二居住地区は初仕事で出動した商店街の裏手に広がる一般住民が多く住む地区だ。警察局のある官庁街からも近いので、移動に乗り物は使用しない。
 とはいえ、急行しなければならないので、警察局を出たオレたちは、飛行装置を作動させて、道路を走行中のエアカーより少し上空を飛行した。歩道を走ったり警察車両でサイレンを鳴らしながら緊急走行をするより、一般人の邪魔にはならない。
 現場に向かいながら、ラモット班長から送られてきた事件の概要を確認する。
 誘拐されたのはラヴィル伯爵家の十歳になる令嬢。第一居住地区にある友人の家に遊びに行った帰り、迎えに来たエアカーに乗り込もうとしたところを、見知らぬ男に素早く拉致されたらしい。
 エアカーで迎えに行った伯爵家の使用人の証言によると、拉致した男はエアカーの扉を素手で破壊するほどの怪力を有していたというので、ヒューマノイド・ロボットである可能性が高い。
 使用人が壊れかけたエアカーで、後を追ったが第二居住地区まで行ったところでエアカーが動かなくなり見失ってしまったという。
 通報を受けた警察局の特務捜査二課初動捜査班が付近を捜査した結果、潜伏場所を特定できたらしい。
 クランベール王国は名前の通り王制で、それを支える貴族たちがそれなりに権力を持っている。王城は小高い丘の上にあり、第一居住地区は王城をとりまくように斜面に広がった貴族たちの邸宅地なのだ。
 宙を滑るように進みながら、オレは横にいるシャスに尋ねた。
「さらわれた女の子は無事なのかな?」
「たぶん」
「身代金の要求や犯行声明は?」
「まだないらしい」
 シャスは硬い表情で前方を見つめたままこちらに見向きもしない。仕事中だからにしても、いつもに比べて口数も少なく、あまりに素っ気なさすぎる。
 なんか不安とか緊張を感じるんだが……。誘拐事件に何かトラウマでもあるのかな?
 ちょっと気になる。
「シャス……?」
「悪い。ちょっと話しかけないでくれ」
「あ、ごめん」
 にべもなく言葉を遮られ、すごすごと引き下がる。なにか触れられたくないことでもあるのだろう。
 するとシャスが、相変わらず緊張しているみたいだが、チラリとこちらに苦笑を向けた。
「いや、オレ飛行装置が苦手なんだ」
「え?」
「シーナはなんでもできるからピンと来ないだろうけどオレは習得するのに一ヶ月かかったんだよ」
「はぁ……」
 三十分で習得したオレには確かにピンと来ない。人間にとってはそんなに難しいものなんだろうか? バランスを取るのが難しいとは聞いていたが。
 ちょっと気になるけど、今聞いてこれ以上集中力を途切れさせては事故ったらヤバいのでやめておく。
 シャスの邪魔をしないように班長から指示のあった場所に到着すると、すでにみんなそろっていた。
 そこは一般企業が所有する集合住宅の敷地内にある小さな公園で、あまり手入れされているとは言い難い大きな木が枝葉を茂らせている。捜査員が被疑者に悟られないように身を潜めるにはちょうどいいかもしれない。
 駆けつけたオレたちを見つけて、フェランドがニヤニヤしながら近づいてきた。なんとなく想像はつく。
 フェランドはシャスの肩を抱き寄せておもしろそうに言う。
「シャス、よく墜落せずにやって来れたな」
「オレだって一般道で墜落したことはありませんよ」
 ムッとして言い返すシャスをフェランドはなおもからかった。
「シーナにだっこしてもらってもよかったんだぞ」
「いや、それはさすがに飛行重量オーバーです」
「シーナ、まじめに答えなくていいから」
 フェランドの言葉を受けて人工知能の計算結果を伝えると、シャスはため息混じりにオレの肩をたたいた。
 オレたちが装備している反重力飛行装置は一人用なのだ。子供や小柄な女性くらいなら一緒に飛ぶことも可能だろうが、大人の男二人はさすがに厳しい。
 雑談をしているオレたちを見かねて、ラモット班長が不愉快そうに呼んだ。そろそろ怒られるとは思ったんだ。
「おまえら、無駄口叩いてないで集まれ」
「はい」
 みんなが周りに集まると、班長はオレを手招きした。
「そこの建物に潜伏してるらしい。二階の右端だ。シーナ、ちょっと様子を探れ。気取られるな」
「はい。なら、ここからでいいですか?」
「ここからでわかるのか?」
「人がいるかどうかと、いるなら人数くらいはわかります」
「とりあえずは、それだけわかればいい」
「了解しました」
 オレは各センサの感度を上げて、班長が示した部屋を検索する。
 おかしい。人の気配がない。
 部屋の中にはノーマルモデルとバージュモデルのロボットがいるだけだ。
 班長から送られた資料によると、見慣れない男が少女を連れて部屋に入るところを、住民から目撃されている。
 腑に落ちないが、班長はオレの意見を聞きたいわけではないだろう。検索結果のみを伝える。
「生体反応がありません。ロボットは二体います」
「二体? 仲間がいたのか?」
 班長も腑に落ちないようだ。オレも気になる。
 どういうことなのか探れという意味に解釈した。
「目視確認します」
 オレは飛行装置を作動させて、その場で二階の高さまで飛び上がる。鬱蒼とした枝葉と迫る夕闇が姿を隠してくれるだろう。
 大きな木の陰から部屋の中を覗く。やはりそういうことか。
 地面に降りたオレは、今見た部屋の様子を班長に報告する。
「中にいるのは若い男と少女です。少女は拉致された令嬢に間違いありません」
「どういうことだ?」
 令嬢が人間ではないとなると、誘拐事件ではなく盗難事件になる。対応も変わるだろう。
 そもそもさらわれたのは本当に令嬢だったのだろうか。本物の令嬢は別にいて、さらわれたのは伯爵家が用意していた替え玉だったとか。
 そうだとしても、班長が何も聞かされていないのはおかしい。
 班長も判断に迷ったらしく、通信端末を取り出した。
「総員待機。二課長に問い合わせる」
 みんなが顔を見合わせている間に、班長は端末を操作して二課長に指示を仰ぐ。少しして通信を終えた班長がひとつ息をついて、こちらに厳しい視線を向けた。
「さらわれたのは間違いなく伯爵家の令嬢らしい。特級の箝口令(かんこうれい)が敷かれた。令嬢の正体については他言無用。彼女の身の安全を最優先しろ。特にシーナ、彼女を差し置いてシャスを守ったりするなよ」
「え……」
 それはオレの意思ではどうにもしようがない。ふたりが同時に危険にさらされているなら、絶対命令が働いて、オレは人間であるシャスの命を優先してしまうだろう。
 それじゃ、初仕事の時の二の舞だ。
 けれど犯人がヒューマノイド・ロボットである以上、オレが捜査から外れるわけにはいかない。オレは捜査員の危険を軽減するために投入された備品なんだから。
 班長の命令に背くことなく、仲間の身の安全も確保するにはどうしたらいいのか。
 オレが考えあぐねていると、頭の中にリズの通信が入った。
「シーナ、この間教えてあげたでしょう?」
「あ、そうか」
 オレが考え込んでいる間に、班長はてきぱきと令嬢救出作戦を組み立てて次々に捜査員の配置を指示する。班長がオレを呼んだ。
「シーナ、さっき見た令嬢の様子はどうだった?」
「落ち着いた様子でした。特に拘束されてもいません。横を向いていたので表情ははっきりわかりませんでしたが、被疑者ロボットと言葉を交わしているようでした」
「そうか。おまえは先陣だ。グレザックと組んで部屋に突入しろ。管理会社からマスターキーを預かっている。生体認証なしで扉が開くはずだ」
 そう言って班長は板ガムのような形状のカードキーを手渡した。そしてオレの鼻先に人差し指を突きつけながら釘を差す。
「いいか。くれぐれもロボットを破壊するなよ」
「はい」
「よし。総員速やかに配置につけ」
 捜査員たちが指示に従ってバラバラと散っていく。部屋のキーがオレに渡されたということは、オレが一番に部屋に入れってことなんだろうけど、グレザックと一緒には無理だ。ここは班長の指示を仰ぐべきだろう。
「班長、最初は私ひとりで部屋に突入します。私が被疑者を確保するまで、グレザックさんには部屋に入ってほしくないんです」
 班長はいつにも増して不愉快そうにオレを睨む。
「経験の浅いおまえひとりで、令嬢を守りながら被疑者を確保できるとは思えない。間違えるな。人質の救出が本来の目的で、被疑者の確保は二の次だ」
「私には荷が重すぎるということは重々承知しております。人質が人間なら班長の命令通りに令嬢の身の安全を最優先できます。けれど違うから、ロボットの中に人間のグレザックさんがいると、優先順位が変わってしまうんです。私の意思でこれを変更することはできません」
「……絶対命令か」
 班長が忌々しげに舌打ちした。気持ちはわかる。
 ほんの少しの間、班長は眉間にしわを寄せたまま考えていたが、おもむろに尋ねた。
「おまえ、勝算はあるのか?」
「九割です。部屋の詳細な見取り図があればもう少し上がります」
 相手は内蔵データとプログラムに依存しているノーマルモデルだ。性能はオレの方が遙かに高い。
 さっき確認した情報によると、武器は内蔵も所持もしていない。元々空き部屋だったようで、部屋の中には武器になりそうなものどころか何もなかった。
 殺風景な部屋の床にふたりは向かい合わせで座っていたのだ。長期間潜伏するつもりはないのかもしれない。
「シーナ、部屋の映像を送るわ」
 話を聞いていたリズから、部屋の見取り図が立体映像で送られてきた。
 人工知能が先ほど確認した映像と重ね合わせて、人物の位置関係やオレの移動速度などと共に最短の確保手順を計算する。
 その結果をオレは班長に告げた。
「見取り図を確認しました。勝算は九割七分です」
「残り三分はなんだ?」
「私の経験不足と不測の事態によるものです。令嬢はバージュモデルなので、人間と同じように行動の予測が難しいんです」
「そうか」
 班長はまた黙り込む。経験値の低いオレをひとりで突入させて、令嬢の身に万が一のことがあれば班長の責任問題になる。慎重になるのはわかるが、令嬢もロボットだから、人間の少女ほどは脆くないはずなんだけどな。
 一度失敗をしているオレを信用できないのはわかる。だけど、だからこそ――。
「お願いです、班長。私をひとりで行かせてください」
 班長は訝しげな目でオレを見た。不信感と差し迫った緊急性との間で揺れているのがわかる。
「オレにおまえを信じろと?」
「私を信じるかどうかは班長の自由です。けれどマスターの頭脳と技術を結集して作られた超高性能なこの体を私自身は信頼しています」
 オレのことは信じなくていい。リズの優秀な技術は信じてくれ。
 にっこりと天使の微笑みを向けると、班長は気まずそうに目を逸らして吐き捨てるように言った。
「いいだろう。おまえひとりで突入しろ。ただし、これは命令だ。少しでも令嬢に危害が及びそうな場合は、迷わずグレザックに援護を頼め。いいな?」
「了解しました」
 黙ってそばに立っていたグレザックがオレの肩をポンと叩いて促す。
「行こう」
「はい」
 現場へ移動するオレたちの背中に班長が声をかけた。
「グレザック、そいつのフォローを頼む」
「了解」
 集合していた建物の裏手から表へ回りながらリズに要請する。
「リズ、リミッターの解除頼む」
「いいわ。リミッター解除命令。パスコード09955」


 マスターの命令受理。
 パスコード承認。
 筋力リミッター、ロック解除。
 痛覚センサ停止。


 視界の片隅にフルパワー制限時間が表示された。
 建物の表へ回って、正面入り口から中へ入る。エントランスホールと建物の要所には監視カメラが設置されているが、犯人はロボットだ。映像を逆に利用されている可能性があるので、管理会社に協力してもらって別の日に撮られた映像と切り替えている。
 住民はすでに避難していて、建物の内部は異様な静けさに包まれていた。あちこちに配置された捜査員が異様さに拍車をかけている。
 オレとグレザックはエレベータ横にある階段で二階に上がった。
 一番奥にある部屋の前まで進み、扉越しに中の様子を確認する。相変わらず生体反応はない。ロボットの数は先ほどと同じ二体。居場所もほとんど変わっていないようだ。
 オレは班長から受け取ったカードキーを取り出し、鍵穴に差し込む前に、もう一度頭の中で手順をシミュレートする。
 今回は人命がかかっている。失敗は絶対に許されない。厳密には”人”じゃないけど。 鍵が開いたら、その音で被疑者ロボットが気付くはずだ。扉を開けて中に入った後の一瞬が勝負になる。
 瞬時にフルパワーを発揮できるように、あらかじめ全身の筋肉にエネルギーを巡らせる。充分に温まったところで、隣にいるグレザックに視線を送った。
 彼が小さく頷き、オレも頷き返す。そしてカードキーを鍵穴に差し込んだ。
 カチリと小さな音がして鍵が開く。次の瞬間、扉を開けてオレは部屋の中に飛び込んだ。
 入り口からまっすぐ被疑者ロボットの元へ駆け寄り、反応する隙も与えず相手の腕を取りうつ伏せに倒す。そして両腕を背中で拘束した。この間一秒。
 そばで令嬢が悲鳴を上げた。その声に負けないようにオレも大声で呼ぶ。
「グレザックさん!」
 扉が開いて、グレザックが駆け込んできた。泣き叫ぶ令嬢を抱え上げ早足で外へ向かう。
 令嬢がグレザックの肩越しに、オレに取り押さえられているロボットに向かって手を伸ばした。
「やめてぇ! ベレールにひどいことしないでぇ!」
「え?」
 違法ロボットに名前なんてあったんだ。っていうか、知り合い? いったいどういうことなんだ?
 その辺の事情は局で取り調べてもらおう。
 オレはひざと腕で押さえつけていたロボットの手首に手錠をかけた。幸いロボットは取り押さえられてから一切抵抗しない。ちょっとおとなしすぎやしないか?
 不審に思いつつ立たせようとしたが、ぐったりして全身から力が抜けている。
 なに? 破壊した覚えはないぞ。
 フルパワーは走るときに使っただけで、あとは人間の捜査員も使ってる逮捕術で拘束した。その証拠にフルパワーの残り時間は九分五十九秒ある。
 打ち所が悪くて故障したとか、そんなヤワなロボットなのか?
 そんなわけはないと思いつつも故障の原因を探るために、人工知能とメモリの状態を確認する。
 勝手に他のロボットや機械の内部に干渉したり内容の詳細を見たりするのは法律で禁止されているが、状態を確認することはできるのだ。
 人工知能に異常はない。だがメモリの状態を確認した途端、オレは思わず声に出して叫んでいた。
「リズ、記憶領域がものすごい勢いで消去されてる! どうしたらいい!?」
 それを聞いたグレザックが弾かれたように振り返った。彼に抱えられ肩の上から身を乗り出した令嬢が、ロボットに向かって両手を伸ばし、火がついたように泣き叫ぶ。
「いやあぁーっ! ベレールーッ!」
 このままでは、せっかく確保したロボットから人間の被疑者情報を引き出せなくなってしまう。
「リズ、命令してくれ! オレならすぐに消去プログラムを停止できる!」
「だめよ、シーナ。内蔵プログラムへの干渉は法に反することよ。たとえ私が命令してもあなたの中の絶対命令が許さないわ」
「相手は違法ロボットだぞ!? どうせ局に帰ったら中身を調べるんだろ!?」
「それでも、今あなたにできることは、そのロボットを連れて帰ることだけよ」
「……了解」
 くそっ、また絶対命令に邪魔されるのか。
 たぶん人間の技術者がこの場にいたら、オレと同じことをしたはずだ。
 もっとも、人間だったら内蔵プログラムを停止させるにも、色々と面倒な手順を別の機械やコンピュータを使ってしなければならないので、時間がかかりすぎる。
 コンピュータ頭脳のオレだからこそ、即座に対応できたかもしれないのに。
 納得のいかない憤りを抱えながら、残りのフルパワーを使って自分より大きなロボットを肩に担ぐ。
 それを見届けて、グレザックは泣きじゃくる令嬢の背中をとんとんと叩きながら部屋の外へ向かった。オレもその後に続いて一緒に部屋を出る。
 カードキーを差し込んで施錠していると、うつむいたオレの頭をグレザックがクシャッとひと撫でした。
 寡黙な彼なりの労いなのだろう。
 建物の外でロボットを護送班に引き渡し、オレの今回の任務は終了した。
 グレザックが保護した令嬢は班長に案内されて駆けつけた伯爵家の使用人に引き渡される。人間だったら念のため病院に運ぶんだろうけど、彼女はその方がかえってマズいし。
 地面に下ろされた令嬢はオレの足元に駆け寄ってきた。涙に濡れたエメラルドの瞳が、憎しみの色を湛えてオレを睨みあげる。
「あなたのせいよ! 悪いことをしたから一緒に警察に謝りに行くってベレールは私と約束したのに! あなたが無理矢理捕まえたから、ベレールの記憶が消えちゃったじゃないの!」
 そうか、あいつは話せばわかる奴だったのか。だけどそれは、あいつと話をしたこの子にしかわからない事実だ。
 そしてオレがあいつを拘束したことが、消去プログラムを起動するきっかけになったのも事実だろう。
 でも――。
 オレは腰を屈めて令嬢と視線の高さを合わせた。
「ごめん。だけど、悪いことをしたロボットを捕まえるのがオレの仕事なんだ」
 悔しそうに唇をかんで、令嬢はオレを厳しく睨む。
「絶対、あなたを許さないから!」
 捨てぜりふを投げつけて、令嬢はお迎えの使用人と共に帰って行った。
 それを見送りながら、思わずため息がこぼれる。後ろにいたグレザックがもう一度頭をクシャッと撫でた。
 振り返って見上げると、無表情のまま言う。
「あまり気にするな。逮捕した被疑者の身内に罵られるのはよくあることだ」
「はい……」
 身内、とはちょっと違うけど、同じロボット同士、なにか共感しあうところがあったのかもしれない。
 返す返すもオレが消去プログラムを即座に停止できていたら、全部は無理だろうけど、あいつと彼女との思い出も少しは守れたかもしれないと悔やまれる。
 通りすがりに班長がポンと肩を叩いた。そして通信機に向かって全捜査員に告げる。
「機動捜査班、速やかに撤収」
 引き上げてきた捜査員たちが、続々とオレの周りに集まり、労いの言葉と共に肩や背中を叩いたり頭を撫でたりする。
 笑顔でそれに応えたけど、あまり心は晴れない。失敗はしなかったし、事件は解決したけど、釈然としないやりきれなさが残った。
「おまえら、さっさと撤収しろ!」
 いつまでもオレを取り囲んでいる捜査員たちに、ラモット班長の怒号が飛んだ。




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