三井の大黒
あらすじ
左甚五郎が、江戸に出てきて、江戸の職人の仕事を見て、けちを付けた。それを聞いた職人が、興りだしよってたかって甚五郎を殴っているところへ、頭領の真砂楼がやってきて、職人から訳を聞いたが、やはり、手を出した方が悪いからと謝らせ、さらに、甚五郎が同じ職業のものが、けなすというのは、同職のすることじゃないから甚五郎にも謝らせる。
甚五郎に、どこから来たと聞くと、甚五郎は上方の飛騨高山という。真砂楼は、「左甚五郎先生のいらっしゃるところだ、名人のそばにいた人じゃあ目も利くわけだ、」と言われて、名前を聞かれたが、自分がその甚五郎だとは言えず、甚五郎は、「名前は忘れた」とのんきなことを言い出す。
とにかく人手が足らないので手伝ってもらうことにして、家につれてきた。
翌日現場で仕事は何をするのかと聞いたら、板を削れと言われ、一人で道具の手入れをし始め、板を削りだした。二枚の板を削って、くっつけてしまって、甚五郎が先に帰ってしまう。様子を聞いた真砂楼が、「板を削れなどと、いいやがったやつは誰だ」と怒り出す。小僧の仕事を、客分の人にやらせたんじゃ、この真砂楼の信用に関わると言って、甚五郎に、謝って、気持ちが治るまで家でごろごろしていてくれと言われたので、甚五郎も二階で寝て飯の時以外はおりてこない、女房が、「二階の上方者を追い出しておくれ」と言う。真砂楼は年が明けたら、小遣いでも持たせて、旅立たせるからと、女房をなだめ、甚五郎には、暮れの市に何か彫り物でも作れば小遣いが出来るからと進めた。
その彫り物で甚五郎が、江戸の三井から大黒を頼まれていたことを思い出し、早速仕事にかかり初め十日間で彫り上げ、風呂に出かけるときに、小僧に三井まで手紙を持たせ、のんびりと風呂に出かけたあとへ、知らせを聞いてきた。三井の番頭が訪ねてきた。
「甚五郎先生は?」と言われ、真砂楼は、あの男が左甚五郎だと気が付き、今風呂に入っているからと、番頭の相手をしているときに、甚五郎が戻ってきたので、番頭を引き合わせた。
番頭が残りの礼金を渡し、骨折りの礼として、酒と肴を運ばせた。
真砂楼が、改めて、甚五郎に非礼と、これまでのいきさつをわびたが、甚五郎が、「会ってすぐに名人とか先生とか、言われたので名乗れなかった」とわびて礼金の半分を真砂楼に渡して、真砂郎宅に、居候になる切っ掛けになった。三井の大黒という噺。
解説
人情話でもないのに、下げがない落語の一つで、それでいて聞く人が納得するところが面白い噺で、三代目の桂三木助師匠は、甚五郎の変名を「ポンシュー」とした。
この左甚五郎を題材にした落語が竹の水仙とねずみ、それにたたき蟹がある。
竹の水仙が上方から江戸へ来る途中の噺で、次が、三井の大黒、その後真砂郎の倅を連れて、仙台での落語が、ねずみである。
落語の中で、一つの主人公が活躍し、それが三つも落語として存在するのは珍しいと言える。
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