《アサヒ 酵母ナンバー》〜眠れる獅子が目を覚ます?〜

 ここ数年、あまりパッとしない新製品ビールばかりを発売していたアサヒが、驚きの新商品を発売した。

 なんと、酵母を変えた四種類のビールを同時発売したのである!

 しかも、すべてビールの王道・オールモルト!

 おおお、ついにアサヒもうまいビール作り向けて腰を上げたのか?

 四缶セットの紙パッケージにはアンケートハガキがついており、この酵母ナンバーが愛飲家の嗜好を知るためのマーケッティング調査であることは明々白々だ。つまりこのアンケートの人気の高かったビールの傾向をもとに次なる新商品を開発しようというわけであろう。

 ならば四種類まとめて飲み比べずばなるまい。

 

「111」

 スッキリ系。なんと言うか、四種類の中で一番茫漠とした味で、なんとも印象の薄い味だ。念のために3缶ほど飲んだのだが、それでも形容しがたい。「なめらかな味わいとアロマホップの軽快な香りが調和したビールです」と缶に書いてあるが、「どこが?」という気がする。正直言って旨いというものじゃない。

 

「318」

 スーパードライの酵母を使用しているとのことで、ドライ系のキリッとした味で、シャープな飲み心地。しかしオールモルトのドライ系ビールというのは、すでにキリンでもサントリーでも商品化して失敗しているので、このビールもどうなんだろうと思う。と言うか、すでに「スーパードライ」という商品があるのだから、重複するような商品は必要はないと思うんだが。

 

「787」

 このビールが一番オールモルトらしい味だが、それでもかなり軽め。「しっかりしたコクと芳醇な香り」と缶にあるが、「え、これで?」という気がする。さすがにホームページで「麦芽100%のビールだと、どうしても重すぎる(「熟撰」の項から)」とまで書くメーカーの商品らしく、「コク」という言葉の基準が他のメーカーと明らかに異なっている。

 

「920」

 このビールが一番特徴がある。なぜなら上面醗酵酵母を使用しているからだ。「上面発酵酵母らしいすっきりとした味わい」と缶に書いてあるが、「すっきり」が「上面発酵らしい」なんて、やはりこのメーカーの言葉の基準はどうもピントがずれているとしか思えない。「アルト」も「ポーター」も「スタウト」も上面醗酵ビールだというのに……。

 かつての「エール」を髣髴とさせる味。本当の意味のエールらしさには欠けるものの、華やかな香りと奥行きのある味わいは現在のメーカーの量産ビールにはないものだ。こういうビールをじっくり時間をかけて売ってほしいものだが。

 

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