シェア約60パーセントを一時は誇ったキリンの主力製品である「キリンラガー」は、時代とともに少しずつ味を変えてきた。
特に「アサヒ・スーパードライ」のヒット以降、何とか主力のラガーに客を呼び戻そうと、苦味を抑え、軽い味へとシフトしていき、遂には伝統的な熱処理もやめてしまった。だが、皮肉にも手を加えるたびにシェアを落としていったのである。
さて、キリンは1998年・1999年に限定で「復刻ラガー」を発売し、それが好評だったためか、2001年に昭和40年代の味を再現したという「クラシックラガー」のビンを地域限定で発売。徐々に人気が出て、昨年(2003年)にはついに缶も発売し、全国展開の商品となった。
飲んでみると後口に独特の苦味が残る、昔懐かしいあのキリンラガーの味だ。現在のラガーと飲み比べると明らかにクラシックラガーは重い味である。しかし、若い頃はあまり得意ではなかったこの独特の苦味も、今では魅力的にさえ感じる。年を取った、ということなのであろう。自分の父親達が飲んできた味、というノスタルジーも感じる。自分もそういう年代になってきている訳だし。
キリンはラガーの味を変えすぎたのではあるまいか。スーパードライのヒットでビールの味は多様化し、一社一種類の時代は終わったのだから、ラガーのシェアが落ちるのは必然だったのである。しかし、いくらシェアを落としたとしても、味を変えなければ、最後にはこの味が好きだ、という本当のファンが残ったのではあるまいか。クラシックラガーが支持されていることはそれを物語っている気がする。
もっとも会社の盛衰がかかっているのだから、そんな悠長に構えているわけにはいかなかったんだろうけど。
それにしても、今後もラガーとクラシックラガーは平行して発売するのだろうか。
個人的にはクラシックラガーがあれば現行のラガーはもうなくてもいいんじゃないかという気がする。それを決めるのは我々消費者なんだが。