このビールは缶に「黒生ビール」とある。そして名称は「スタウト」。どういうことかというと、下面醗酵のスタウトなのである。ちょっとビールに詳しい方なら、ここで「ええっ?」と声をあげてしまうかもしれない。この点に関しては別項で詳しく取り上げているので、ここではこのビールの味についてのみ書く。
キリンの黒ビールが「一番搾り黒生」になってライト・テイストになったごとく、この「一番搾りスタウト」も「キリンスタウト」から比べると格段に軽い。
ビールの表示について規定した「公正競争規約」によれば「スタウト」とは「濃色の麦芽を原料の一部に用い、色が濃く、香味の特に強いビールでなければ、スタウトと表示してはならない。」とある。だが、この一番搾りスタウトは、下面醗酵のためか、香味が特に強いとは言い難く、味も含めてずばり「黒ビール」でしかない。これでは「stout(強い、丈夫な)」の名が泣くというものである。
「黒ビール」としても、オールモルトではあるものの、ヱビス・ザ・ブラックやザ・プレミアムモルツ黒よりはやや軽い。現在、アサヒの黒生もキリンの一番搾り黒生もあまり店頭では見かけないので、先行する他社の黒との差別化を図ったのかもしれないが……。
それにしても、またしても「一番搾り」とは。ひところは「ラガー」ブランドに頼っていたキリンであるが、この「一番搾り」もだんだんとブランド化しつつある。「一番搾り黒生」「とれたてホップ一番搾り」「一番搾り無濾過生」そして「一番搾りスタウト」と。そのうち「一番搾り ザ・ゴールド」とか出さないだろうなぁ。