1994年に規制緩和で酒税法が改正され、それ以降、我が国でも各地で地ビールが作られるようになった。
当初はこの地ビールは文字通りその土地に足を運ばねば飲めないものであったが、徐々に瓶詰めのものも発売されて、デパートなどに流通するようになっていったのは周知の通りである。
地ビールは酵母が生きている意味で、本当の「生」ビールなので、温度管理が必要な上に賞味期限も短いという弱点があるのだが、個性的で深い味わいは、ミクロフィルターで酵母をろ過している大手メーカーのビールにはないものであった。
ところがこれら地ビールに匹敵するような商品が2002年にキリンから発売された。
「キリン まろやか酵母」がそれである。
これは地ビール同様、生きた酵母が入った生ビールである。そのため、温度管理が必要なわけだが、キリンでは当初この商品を、流通の管理のしやすいコンビニのセブンイレブンでのみ限定で発売する、という方法を取った。
その後、サントリーやサッポロも同じような限定ビールをコンビニで発売していったことを考えると、最初にこの方法を試みたキリンの功績は大きい。
飲んでみると、小麦を原料に使っているため、ヴァイツェンに近い香りと味である。しかし、サントリーの「とれたて小麦の白ビール」ほど小麦ビールの味に徹したわけではなく、どこかピルスナーに近い味わいも感じさせる。日本のビールはラガータイプ一辺倒でなかなか他の味が受け入れられないため、中途半端な所で妥協した、というところか。
この価格帯だと「銀河高原ビール」という強敵が存在し、味の鮮烈さではむしろ向こうに一歩ゆずるかもしれない。
しかし、大手メーカーが始めて手がけたこのスタイルのビール、なんとかとずっと生き残って欲しいものだが。