カルミナ聴こーよ2000

 

さて、客員出演として出演する京都市立芸術大学音楽学部の演奏会まで残すところあと二日を切りました。カルミナブラーナを聴くあなたのために。簡単に曲の解説と見どころ、聴きどころを書いてみました。いっそう演奏会を楽しんでいただけるようでしたら、これ幸いです。

全体としては、運命の輪廻、良いときがくればまた悪いときがくる。それは、運命の女神に操られているのだ。こういったことを、春の訪れと若者たち、落ちぶれた者と酒場の風景、求愛の物語といった情景でもって表現しています。緊張感のある和音、リズミカルなメロディーなど、表現豊かな絵画を見ているようです。

 

 

カール・オルフ 
世俗カンタータ「カルミナブラーナ」

Carl Orff "CARMINA BURANA"-Cantiones Profanae

<全世界の支配者なる運命の女神(運命について)>
●1.おそらく一番有名な曲。かつてのOPELの宣伝だけでなく、今でもあらゆる場面でテレビのBGMに流れてます。うつろいやすい運命の女神によるいろんなしわざを嘆いている。ティンパニのあとに、強烈な和音。
●2.バスが最も活躍できる曲。同じく運命の輪廻について、昔は良かったやつでも、今はぜんぜんだめになるんだということを歌う。ここが歌いたくて、合唱団に入ったというのは、だっさいの研究室の先輩Kさんです。
<春の訪れ>
●3.冬が去って、春の訪れがあちらこちらにみられるという穏やかな曲。出だしのピッコロ(およびフルート)、シロフォンは失敗できません。失敗すると、つぎの二つの音符が「あ〜あ」という落胆の音に聞こえてしまいます。
●4.ヴィオラのなんともいえん和音にのって、バリトンがソロで歌う。春が来て、恋心も呼び覚まされるといったところか。
●5.そして、喜ばしい春の訪れ。指揮者ムントは、最初の鐘の音を、「ぽいーん」と表現します。曲も、だんだんと元気に、にぎやかになっていきます。
<草原で>
●6.合唱はなし。で、いろんな弦の音が聞けます。拍子がころころと変わるのがおもしろい。フルートのソロを聴きほれよう。
●7.森の美しさについて。途中、女声が「私の愛したあの人はいずこへ?」と問いかけると、「彼は馬に乗っていってしまった」といって、ティンパニがパカラン、パカラン...とたたきます。1番はラテン語、2番はドイツ語です。
●8.鈴の音にのって、おめかしをする女性が男を魅了します。さて、合唱団女声陣の歌声で男はおちるかおちないか....
●9.ゆったりとした円舞曲につづいて、「あんたら、この夏彼氏なしですごすの?」と合唱が歌い、アルトが(男性役)「おいでよ、僕を陽気にさせてよ」と呼びかける。最後にもういちど「あんたら、この夏彼氏なしですごすの?」とうたう。ここで、弦楽器のピチカートの上に合唱がはいって、リズムがよい。
●10.トランペットのファンファーレから、ユニゾン大合唱。曲の最後の「Hei!」は、ムントの指示で、高い方のソの音がさらに高いドの音に変更された。ちゃんときこえるかな...なぜか、イギリスの女王大好きという歌。
<酒場にて>
●11.バリトンソロ。男がひたすら身の上の不遇をわめいたり、すねたりしている。こんなやつがぜったい酒場におる。
●12.蒸し焼きにされたあわれな白鳥がきぃきぃと嘆いています。震えたフルートの上になさけないファゴットの音、ふざけた調子で嘆くテノールソロ(曲中ここだけ登場)、「Miser〜(かわいそうに)」と応答する合唱をきいてください。
●13.過去の栄華をえらそうに自慢する修道院長さまの歌。Egoとは、「我は」ということ。Wafnaという音がとりにくいのです。
●14.男声合唱にとっては、試練の曲。早口言葉で、あいつも飲む。こいつも飲む。みんなのむのむ、万歳!と歌う。男声陣、bibitしながらがんばってます。
<求愛>
●15.場面が変わって恋愛ストーリーに。この曲では少年合唱団の登場。ソプラノソロも。若い人には愛はつきもの、と一般的な愛について歌う。出だしのフルートと鐘につづく弦の音が泣かせます。
●16.失恋をなげき悲しむ男が歌う。心のすきまを埋めるものがなにであるかを知っているのに、それが手に入らない苦しみ。ダメはいっちゃってます。
●17.今度は女の子。歌で言っているのは、その女の子の描写。16の失恋男は、懲りずに今度はこの女性を好きになってしまったという説が正しいと思われる。
●18.男が女の子を想って、ため息混じりの抑えられない気持ちを歌う。途中、女性がManda liet, Manda liet!と歌うところ、某女史によると、hanage!hanage! higezura mogete!と聞こえるのだそうだ。ほんとにそう聞こえるかどうか。小太鼓の音が好きです。
●19.男の妄想。伴奏はなし。「もしも若い男女が二人で一つの部屋に長くいたら...幸せな結合が...愛のおもむくままに...手足で、腕で、唇で...」。男声合唱二つ目の見せ場。難度ウルトラE。
●20.妄想男が女に告白。「来ておくれ!愛しのきみよ!美しい顔、輝く目、ステキな髪、バラより紅く、百合より白く、きみの美しさに勝るものはない!」そこへ、Nazaza!というかけ合いの囃し声がはいる。鍵盤と打楽器だけで伴奏される。
●21.女の子の心が揺れ動く。美しいソプラノソロ。
●22.男、最後の一押し。ここでも鍵盤と打楽器が大活躍。トライアングルと後打ちタンバリンの交互の打ち合い、カスタネットにのったメロディが楽しい。少年合唱再登場。最後はみんなで大合唱だ。リズムに乗った喜びの愛。
●23.「いとおしいあなた、私のすべてをあなたに投げ出しますわ」。男の子、おめでとう。ソプラノヒシキさんのすごい高さの声が聞けます。
●24.愛と美の女神を讃えて二人の結婚を祝う大合唱。延々と全音符をつないだ後に、シンバルの音とともに頂点に達し、そこでバスの最高音G(ソ)が出てきます。たぶん、泣きそうな顔して歌ってます。
<全世界の支配者なる運命の女神>
●25.祝福が最高潮に達したところで、再び運命の女神のテーマ。ここまであったいろいろなことが、運命の女神の操る車輪の中の出来事であったのだということに気づかされる。一周してきて、またこうして運命の車輪はまわってゆくのだ....


ムントさんは、合唱はオケのように、オケは合唱のようにと言います。そんな感じを聴きとってもらえるでしょうか。そして、Speak well.とよく指示を出します。歌うよりも、しっかりと言葉をしゃべりなさいということなんですな。それから、pの部分で、弱い音をしっかりと出そうと、オケの学生さんたちが緊張しながら楽器を吹いたり、弓を引いたりしています。それもまた見もの。

ここへきて、変則的な発音をすることが判明し、本番までまだまだ気が抜けません。なによりも、男声合唱の難関がうまくいくのかどうか....いろいろと不安もありつつ、ムントさんの音楽づくりの要求に応えたい気分でいっぱいです。本番が楽しみで楽しみで仕方がありません。

当日、聴いて楽しい、見て楽しい、歌って楽しい、カルミナブラーナを楽しんでください。カルミナ聴こーよというよりも、カルミナ見よーよかもしれません。あ、当日はどんな案内パンフレットがつくかわからないので、これプリントアウトしてのを持参で見に来てもらえるといいかもです。

11月27日(月)の晩、まだ予定が入っていないあなた、京都コンサートホールまで足を運びましょう。1200円で楽しいひとときを過ごすことができます。全席自由ですからね。早めに来ていただいて、良い席にでーんとかまえてもらったらよろしいです。普段はS席になる真ん中に陣取るもよし。ホール随一の音響の箇所といわれる二階一番後ろもよし。楽器の見える席もよし。指揮者の顔が見える席もよし(今度はあるのかな)です。


●京都市立芸術大学音楽学部 第106回定期演奏会

2000年11月27日(月) 京都コンサートホール大ホール
午後7時開演

曲目:オルフ 「カルミナ・ブラーナ」
ハイドン 交響曲第101番「時計」

指揮:ウーヴェ・ムント

全席自由:¥1,200

 

※この文章は、まったく個人的に作ったものです。不明な点、おかしな点などは、こちらにお問い合わせください。

 

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