カジノゲームのリスクと時給比較


 一般的には、Videopoker, Blackjack, Live Poker (Texas Hold'em)の中で、Videopoker=Royal Flush引かないと儲からないので所詮はお遊び・確実には儲けられない。Cardcounterは高々1%のadvantageなので、これも確実性に欠ける、Poker player=彼我の「スキル」の差で勝負が決まるので、上級プレーヤーはコツコツ儲けられそうだというイメージがあるような感じがします。即ち確率的な平均の収益が一緒だとしても、「確実性」の序列は、Live poker>Blackjack>>Videopokerのように捉えられているようです。果たして本当にそうなのか、ちょっとした例で調べてみましょう。(MalmuthがGambling theory and other topicsで計算してたのを、ちょっと違う見方で書いたという感じのコラムです)。


●基礎データ

モデルケースとしは、ほぼ時給がそろうように以下のように仮定します。

BJ player $25を最低ベットとし、6D, DAS,LSのルールに対してbet spread 1-8。Zen CountでindexはIllustrious 18を使用。penetrationは75%。Back Count approachを使った場合も比較の対象とする。また、1時間あたり100 hand打つものとする。
VP player $1 DB 10/7を、600hand/hourで打つとする。なお、キャッシュバックなどのフリンジベネフィットが1.0%あるものと仮定する。$0.25 4-playを打った場合も比較の対象とする。この場合は500 hand/hourで打つとする。
Poker player $30-$60のTexas Hold'emを打つ上級者。及び$15-$30を打つエキスパート。

ちなみに、他の種目を知らない方のために付け加えますと、以上の仮定はようするにまあまあ「上級」プレーヤーが、それなりの条件の元で打ったということです。(pokerの場合は"fairly good player")
それぞれのプレーヤーの時給とリスクについてはこんな感じです。

●BJ player:
(根拠:TheWolrd's Greatest Blackjack Simulation by John AustonのZen Table 18)

【Back Countingを行わない場合】
・Average betは$39.75(=1.59unit),
・pay out率は100.76%
・1hand辺りのStandard Deviationは2.471unit
・時給は丁度$30/hour

【Back Countingを行った場合】
(ちなみにBack Countingとは、countをテーブルに座らずに観察し、十分プラスになったら座ってプレーするというアプローチのことです。従って、パンピー向きの手法ではありません)
・Average betは$83.5
・1hand辺りのStandard Deviationは4.53unit
・時給は$44.5/hour
・pay out率は102.14%(注:常にプレーしている訳ではないのでpay out「率」としては
かなり高くなります。)
・ちなみに座ってプレーしている時間は全体の丁度25.0%

●Video Poker player:
(根拠:本サイトの複数ハンドの同時プレーを参照して下さい。)

【$1 DB 10/7 player】
・1回5$賭け
・1hand辺りのStandard Deviationは5.316unit
・時給は$35.19/hour

【$0.25 DB10/7 4-play player】
・1hand辺りのStanddard Deviationは6.199unit
・時給は$29.325/hour

●Poker player
(出典:Gambling Theory and other topics by Mason Malmuth 1994edition)
上記文献によると$30-$60のLowballだと1時間辺りの浮き沈みの標準偏差が約$650であるのに対して、時給は"fairly good player"で$30であるとしている。また、Texas Hold'emの場合の標準偏差はLowballの90%−130%程度であるとしているので、真中を取って110%としてみる。すると
・1時間プレーでの浮き沈みの標準偏差$715
・時給は$30
・Expert playerを仮定して、Structured limitのhold'emで1時間に(レーキ、チップを引いた後に)ワンビッグベットの時給、を稼げるプレーヤーも比較の対象としてみた。時給の方をあわせるために、レートは$15-$30とする。標準偏差は$357.75となる(相対的には$30-$60の標準偏差と同じと仮定)。(注:doyle氏によると、「達人」はレーキチップを考慮しないとtwo big bet/hourまで行くらしい(@_@)。


●時給とリスク

上記仮定を元にして、各ゲームの時給とリスクを表にまとめたものが以下のChart1です。
ここで「1時間辺りの標準偏差」とは、1時間プレーするとまあまあ平均的にこれくらいの浮き沈みがあるという額のことを意味します。1日程度のプレーでは、当然「スキル」よりも、この標準偏差の方が支配的要因になります。またDesirability Indexとは時給を標準偏差で割ったもので、これが高いほど「リスクとリターンのバランスが良い」ことを表す一つの指標になります。(一般には、Sharp ratioという名前で知られているものです。)

Table1:各プレーヤーの1時間辺りの収益とリスク

プレーヤー 時給 1時間辺り
標準偏差
Desirablity
Index(×100)
BJ player $30 $617.75 4.856
BJ playerwith
Back counting
$44.5 $566.25 7.859
$1 VP player $35.19 $651.04 5.405
$0.25 4-play
VP player
$29.325 $346.55 8.462
fairly good
Hold'em player
$30 $715 4.196
Expert
Hold'em player
$30 $357.75 8.392


次に、これらのプレーヤーの長期的なリスクを見るために、各プレーヤーが1日8時間プレーするとした仮定の下での平均的な儲け(損失)と、リスク1%でのはまりの下限をGraph1にします。

Graph1:各プレーヤーの長期的リスクと儲け


Graph1の見方ですが、横軸がプレーした日数・縦軸が収益です。下に6本描かれている「曲線」がそれぞれのプレーヤーのリスク1%のラインを示します。即ち、ある日数だけプレーすると、99%の確率でこのラインより上の収益(損失)が期待出来る訳です。なお、いつものようにVideopokerについては、「甘い」近似で曲線が書かれていますので、実際の1%リスクのラインはこれよりも下にずれることに注意して下さい。平均収益は4本の直線です。BJ player, fairly good hold'em player, Expert hold'em playerの平均収益は丁度同じになりますので、太い赤()の線でしめしてあります。

●考察

まず、短期的な勝負の波ですが、意外なことにfairly good hold'em playerが一番波が大きく(desirability indexが小さい)、次にBlackjack,そしてなんとDoble bonus pokerという比較的波が荒いことで知られるビデオポーカーが相対的には波が小さいことがわかります。また、それぞれのゲームで、努力をすると(Videopoker:マルチゲームマシンを打つ、Blackjack:Backcountingを行う、Hold'em:スキルをアップする)、かなり波の荒さを抑えることができます。
 長期的なリスクを見ても全く同じ傾向となります。注意したいのは、±0以上となるまでに必要な日数のオーダーです。各種目とも、工夫をしないプレーの場合には、200日程度以上、即ち「1年間」と言った非常に長期のプレーが要求されます。これを避けるためには、Backcountingやマルチプレーマシンの選択は必須となる訳です。それでも、100日程度の日数が必要となる訳です。
 即ち、videopoker, live poker, Blackjackの場合、大体のオーダーとして、リスクはそれほど変わらないということです。これは前書きに書いたLive poker>Blackjack>>videopokerという直感とは全く異なった結果ですので、一応注意しておいて良いでしょう。
即ち、どのゲームを選んだとしても、1週間程度のone trip程度では、収益は短期的なツキの要素が支配的であって、たまたま勝ったからと言って、「自分はうまい」などと思い込んでしまうことは極めて危険だということです。videopokerやBlackjackの場合には、「平均的な」収益はテーブルに座る前からある程度(videopokerなら「完全に」)予測出来るのでバンクロールさえ十分にあればたいしたことはないのですが、Live pokerの場合ちょっとした慢心からレートの高いテーブルに座ってしまったりする危険があるので、特に注意すべきだということです。

上の比較を表面的に見れば、実はvideopokerが一番稼げるという結論になってしまいますが、videopokerの場合のみ、「キャッシュバック+コンプ」のフリンジベネフィットを含めて評価しているので、必ずしも公正な比較ではありません。一方で、各ゲームの難しさを考えると、Double Bonus pokerをマスターするのは、training softwareで練習すれば1週間もあれば、ほぼ満足出来るレベルに到達することが出来ます。Blackjackの場合には、やはり1ヶ月単位のtrainingが必要であり、更にBack countingを単独で行うには、相当の「忍耐力」が必要とされます。pokerの場合、このレートで1 small bet/hourレベルのplayerとなるためには、相当の努力が必要でしょうし、向き不向きがあるので、普通の人がそのレベルにまで達することが出来るかどうかは疑問です。その意味では、videopokerはやはり誰でも簡単にエキスパートになれる優れたゲームであるとは言えるでしょう。

次に、実際に8hours/dayのプレーが出来るかどうかですが、videopoker/Live pokerにおいては特に問題はないでしょう。しかしながらBlackjackにおいては(特にLas Vegasでは)8時間も同じテーブルで打つのは、出禁にしてくれといわんばかりの論外の行為ですし、第一8時間の間にdealerが変わればpenetrationも変わって条件が悪くなる可能性があります。いずれにしろ、1日の間に何軒かを回ると言った感じになるので、8hoursのプレーはかなり苦しいと言えるでしょう。

実際に、上に仮定したような有利な条件で戦えるかということも問題です。幸いにしてDB10/7+1%のフリンジベネフィットという条件はLas Vegasでは探せばまだあります。また、一旦見つけてしまえば、マシン数が5台程度以上あれば、まあ空いてないことはないので、いつでもアクセスすることが出来ます。一方Blackjackの場合は、pen.やheatの問題があるので、good conditionを必ずしも見つけることが出来ないかもしれません。また、混んでいるテーブルしかなければ、1時間辺りhand数が減るので効率が落ちますし、Backcountingも難しくなってきます。Hold'emの場合には、対戦面子によって当然時給が変わって来るので、自分が「相対的に」カモになってないかどうかの目配りは常に必要でしょう。

プレー出来る「レート」の問題も重要です。videopokerは実は、一番容易に稼げる反面、$1 マシンより上のデノミでは美味しいマシンはほとんど存在しません。なので、ある程度以上の資金力のあるプレーヤーにとっては、videopokerはいずれにしろ選択肢からはずれてしまう訳です。Blackjackの場合は、heatの問題を別にすればまあ青天井です。しかしながら、レートが高いほどカモフラージュは必要になってくるので、その分収益率はやや下がるでしょう。レートが高ければ高いほどとBackcounting+Trackingの必要性も増して来るので、その分のスキルアップと忍耐力が必要になります。Live pokerの場合、表面的には低いレート程レーキ+チップの相対的比率が大きくなる傾向にあるので、表面的には高いレートの方が得だということになります。しかしながら私など、デカレートで打ったことはないので推測ですが、やはりレートが高い方が平均的なプレーヤーの「レベル」は高いのではないでしょうか?となると、当然レートが高い方が収益率は小さくなるので、あるプレーヤーに取ってもっとも「時給の絶対値が大きくなるレート」というのが定まって来るような感じがします。あるいは、リスクの絶対的な金額やDesirability Indexも考慮した「最適レート」というのがプレーヤーのスキル、スタイルによって定まって来るような感じです。

●特にライブポーカーについて

以上から、ポーカーとてBlackjackやVideopokerと同じオーダーの、浮き沈みの激しいゲームだということが分かります。ポーカーの悩ましいのは、「時給」や「浮き沈みの標準偏差」が、自分のスキル・プレースタイルだけではなく、そのテーブルの面子・人数によっても変わって来ることです。だからこそ、このテーブルなら時給やリスクがどれ位になるかということに対する感性を研ぎ澄ましておくことは最重要でしょうし、(勝敗の結果としてのプラスマイナスではなく、自分の時給が少ないあるいはマイナスになりそうなテーブルであれば、席を立つこと、逆に負けていても、「時給が大きい」テーブルであれば、席を立たないことetc)、また勝敗の記録をつけておくことも必須でしょう。
ポーカーの場合、反省なくしてスキルアップは望めないのですが、勝ったから良いプレー、負けたから悪いプレーということではなく、たまたま勝った中にも、反省すべきプレーはあるし、負けた中にも「全く正しいプレー」も当然いくらでもある訳で、反省するにしてもそのフィードバックのかけ方に十二分に留意すべきでしょう。また、一つ一つのプレーを断面で捉えるのではなく、habitual blufferであるとadvertizeするための犠打を打つべき局面もあるでしょうし、その犠打の効果が何時間位効くのか、また犠打のコストに見合った収益を後のプレーから(これもまた結果論ではなく「平均」として)回収し得るのかと言ったように、もっと長いレンジ(セッション単位、常連同士の戦いならもっと長い単位もあり得る)でプレーを反芻する必要があるでしょう。(と、自分に言い聞かせているとしておきます(^^;)。実際には、なかなか(^^;))。このように、時給について、非常にぼやっとしか捉えられないところがポーカーの難しい所でもあり、またゲーム性の高くて興味を引かれる部分ではあるのですが、うーん。長くなりそうなので今回はここまで


【ホームページへ戻る】