BlackjackやVideopokerにおいては、複数ハンドを同時にプレーする(video pokerではtriple
play, four-play, ten-playなどのマシンをプレーする)という機会も結構あるかと思います。同時プレーすることによって、時間あたりのaction(投入金額)は増加するので平均的な収益は、2
hand同時プレーなら、2倍、3hand同時プレーなら3倍と、hand数に比例して増加しますが、当然リスクも増えるので、気づかないうちにoverbetしてしまっている危険性があります。その一方で、賭金に対して慎重になるあまり、せっかくのチャンスを最大限活かせないこともあるでしょう。
ということで、複数ハンドのプレー(マルチプレーマシン)をするとリスクがどのように変化するか、ベットサイズをどう決めるかについて、まとめておきたいと思います。具体的には
●BJでカウントがプラス、$200を1 handでプレーするのが適当なとき、2 handのプレーをすると賭金は$200づつにすべきなのか?あるいは$100づつに分割するのが良いのか?
●いつもは、50¢マシンのVP playerなのだが、同じマルチプレーマシンではどのデノミのものに座るのが適当なのか?
というような疑問をお持ちの方は是非お読み下さい。(数学的なフォローが出来ない場合は、途中は飛ばして結論の所だけ読んで頂いて結構です。)
●基礎データ |
まずは、解析の元となるデータを下に示します。この表を見て、自力でいろいろ計算出来る人には下に続く解析は不要でしょう。表の数値だけ参考にして下さい。
Table 1: Blackjackのmultiplay(複数ハンドの同時プレー)の場合の結果のvariance(分散)とcovariance(共分散)。
1 hand辺り1unitをbetすること、及び共通のルールとして6D,S17を仮定しています。
(出典:Professional Blackjack by Stanford Wong:Table85)
Variance | Covariance | Correlation Coefficient | |
DOA | 1.28 | 0.47 | 0.37 |
D10 & 11 | 1.20 | 0.43 | 0.36 |
DAS | 1.32 | 0.48 | 0.36 |
Table 2: Videopokerのmultiplay machineの場合のvarianceとcovariance。
Table1と同じく、1play辺り1unitのbetを仮定しています。
(出典:JazboのAn
Analysis of N-Play Video Poker)
Variance | Covariance | Correlation Coefficient | EV | |
JB9/6 | 19.510 | 1.966 | 0.1008 | 99.544% |
All American | 26.811 | 2.970 | 0.1108 | 100.722% |
DB10/7 | 28.257 | 3.391 | 0.1200 | 100.173% |
DW | 25.842 | 3.140 | 0.1215 | 100.762% |
LD15/10 | 70.315 | 7.811 | 0.1111 | 100.970% |
●VarianceとCovarianceの意味 |
上の表のVarianceとは、勝負の「荒れ具合」を表す指標で、{毎回の勝負の儲け(あるいは損失)-儲けの平均値}の2乗を平均したものです。数学的にいうと、ある確率変数Xに対して、E[{X-E(X)}^2]を求めたものです。あるいは、Varianceの平方根がStandard
Deviation(標準偏差)、即ち平均的な勝負の荒れる度合いと言った方が分かりやすいでしょうか。例えば、Varianceが9だとすると、標準偏差が3となります。この場合に、結果の「平均値が0.1」だとすると、勝負の結果は概ね0.1±3の間に収まると言った感じです。なお、上のTable1において、BJの1unit
betに対するVarianceが1よりかなり大きい値になっているのは、doubledownやsplitのときには、2unit以上の賭金となること、Blackjackの配当が1.5倍になることなどによるものです。
一方、Covarianceとは必ずしも独立ではない2つの試行の従属性を表す指標です。数学的に表現すると、確率変数XとYに対して、E[{X-E(X)}{Y-E(Y)}]を計算したものです。Covarianceよりも、これを正規化したCorrelation
coeffeicient(相関係数)の方が分かりやすいかも知れませんね。XとYのCovarianceをCov(X,Y)、XとYの標準偏差をそれぞれσ(X),σ(Y)とすると、相関係数ρは
ρ=Cov(X,Y)/σ(X)/σ(Y)
として定義されます。相関係数はー1〜1までの範囲の値を取り、1に近いほど二つの確率変数の間の因果関係が大きい(相関が大きい)ことを示します。逆に、0に近ければ近いほど、二つの確率変数は独立に近い、即ち因果関係はないということになります。Table1,2を比べるとBJの複数ハンドプレーの方が、Videopokerのマルチプレーに比べて、かなり相関が大きいことがわかります。なお、相関係数は負の値も取りえますが、これは一方で儲かると他方で損することが多いような状況に起こります。
では、マルチプレーの場合のVarianceはどのようになるのでしょう?。数学的に記述すると、X1,X2,X3,......といった確率変数があったとき、その和の確率分布X1+X2+X3+......のVarianceがどのようになるかということですが、これは一般的には
Var(X1+X2+X3+....)=Var(X1)+Var(X2)+Var(X3)+....+2ΣCov(Xi,Xj) (summing
for all i>j)
と計算できます。
しかし、今対象としているのは複数ハンドの同時プレーで、かつ複数ハンドには通常同じ額を賭ける訳ですから、
Var(X1)=Var(X2)=Var(X3)=.....
Cov(X1,X2)=Cov(X1,X3)=...=Cov(X2,X3)=Cov(X2,X4)=....
となります。この場合にVar(X1)=Var(X),Cov(X1.X2)=Cov(X)とするとnハンド同時プレーの場合のVariance
Var(X1+X2+....+Xn)=nV(X)+n(n-1)Cov(X)
となります。
これはnハンド同時プレーした場合のnハンド全体のVarianceですが、これを「1hand辺りのVariance」、即ち、それぞれのhandが独立(=Covarianceが0)な確率変数だとみなした場合の、等価的なVarianceは、上式をnで割って
1hand辺りvariance=V(X)+(n-1)Cov(X) (1)
となります。(これがProfessional Blackjack 203pの最終行やBlackjack Attack28pの1〜2行目等に出てくる式の意味です。)
以上までが、BJとVideopokerの複数ハンドプレー(マルチプレイ)を理解するのに共通の背景です。
ここから先は、それぞれ別のストーリーになりますので、ページを分けることにします。また、複数ハンドに負の相関があるような賭け方をして、着実に儲ける(あるいはリスクを最小化する)ようなプレーも世の中にはあります。それらについては、【複数ハンドの同時プレー(その他のゲーム編)】で解説します。
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