複数ハンドの同時プレー(Videopoker編)


それではVideopokerでの複数ハンドの同時プレー、即ちマルチプレーマシンをプレーする場合に限定して話を進めましょう。JazoboのAn Analysis of N-Play Video Pokerのコラムは非常に良くまとまっているのですが、ここでは同じことを別の文脈で説明することにします。

●短期的な勝負の荒れ具合

例えば1時間というワンセッションの間に、どれだけの資金の浮き沈みがあるかをDB10/7とJB9/6を例に求めてみます。これを定量的に比較するには、標準偏差を求めれば良い訳です。

普通のone play machineの場合には、R回マシンを回した場合の標準偏差は

  √(R×Variance)

となります。(なお、標準偏差はRに比例するのではなく√Rに比例することに注目しておいて下さい。即ち、沢山回せば回すほど浮き沈みは当然大きくなるのですが、単純に回数に「比例」するのではなく、それよりも緩やかであるということです。)

一方、同時にn hand playする"n"play machineであるとすると、それぞれのプレーの相関があるので(例えば、配牌フラッシュであれば全てholdするのでn個全てのプレーでフラッシュになる)、まず1play辺りのVarianceを基本編の式(1)に従って、補正する必要があります。

この補正を行ってしまうと、Varianceは単純に「足し算」することができますので、n-play machineをR回回した場合の標準偏差は

  √(R×n×1handあたりVariance)

として計算できます。
このようにして計算された標準偏差は、1playあたり1 unitの資金を仮定しているものですから、実際の$に翻訳するときには、quareterマシンなら1.25$をかける、dollar machineなら5$をかけるなどの計算をすれば、「金額」ベースの実際の浮き沈みが出てきます。
これを少し計算してみたものが下のTable4です。なお、n-play machineの方が、単位時間に回せる回数が少なくなりますので、ここでは普通のマシンでは600 hand/hour, n-playマシンでは500 hand/hourを仮定しています。

Table4:Videopokerを1時間プレーしたときの浮き沈みの標準偏差

デノミ↓ n-play DB10/7 JB9/6 1play machineに
換算した等価的デノミ
$0.25 1 $162.76 $135.24 $0.25
3 $286.57 $234.40 $0.625
4 $346.55 $281.78 $0.833
10 $677.63 $539.13 $2.083
$0.5 1 $325.52 $270.49 $0.5
3 $573.14 $468.80 $1.25
4 $693.09 $563.56 $1.667
10 $1355.3 $1078.3 $4.167
$1.0 1 $651.04 $540.97 $1.0
3 $1146.28 $937.59 $2.5
4 $1386.2 $1127.1 $3.333
10 $2710.5 $2156.5 $8.333


ざっくり言うと、上の表はそれぞれのマシンを1時間プレーしたときに、表に示した額だけの浮き沈みが、まあまあ当たり前のように起こるということを意味しています。例えば、JB9/6 $0.25デノミ1-playのマシンですと、1時間のplayの間にざっくりプラスマイナス$135の浮き沈みが起こりえるということです。このことは、Videopoker training softで遊んでみたときに体感できる傾向や、FJOURNEY/ FVEGASの Videopoker tournament(第1回第2回)で、JB9/6 (JB9/7) $0.25デノミを、$100の所持金で1時間プレーするのに途中でパンクしてしまった人が、ポツポツといるという例からも納得できるところでしょう。
 また、1 play machineに換算した等価的デノミとは、1時間n-playマシンを回した場合のアクション(総投資金額)が等しくなるような、1-play machineのデノミを意味しています。例えば、$0.25 4-play machineですと、1時間のアクションは($0.25*5)×4×500 hand=$2500となりますが、1-play machineでは$0.833デノミですと、 ($0.833*5)×600=$2500とちょうど同じアクションになるという訳です。

 さて、この表の意味するところは、特にコンプ稼ぎ等を目的としているプレーヤーにとっては重要です。例えば、DB10/7 $0.25デノミ4-playの標準偏差は$346.55であるのに対して、同じ DB10/7 $0.5デノミ1-playの標準偏差は$325.52とほぼ等しい一方、$0.25 デノミ4-playマシンの方は、等価的に$0.833デノミですから、ほぼ同じリスクであるにも関わらず、4-play machineの方が$0.8333/$0.5=1.667倍にアクションを増やすことができる訳です。同様に、DB 10/7 $0.25デノミ10-playとDB 10/7 $1デノミ1-playは標準偏差が共に約$650ですが、10-play machineのデノミは等価的に$2.083ですから、同じリスクで約2倍にアクションを増やすことができます。言い方を換えると、0.25$10 playマシンは、一見ハイリスクマシーンのようにも思える訳ですが、荒れ具合は$1 デノミ1-playと同じなので、1セッションで必要な資金量も同程度ということです。($1 DB10/7 1-playを回せるひとは$0.25 DB 10/7 10-playも回せるということ)。

 また、荒れが少ない9/6 1-playの標準偏差は$1デノミで$540ですので、$0.833デノミですと、$540×0.833=449$がその標準偏差となります。一方、同じ$0.833デノミ相当のDB 10/7 $0.25デノミ4-playの標準偏差は$346.55ですので、DB10/7自体は荒れの大きいマシンなのですが、multi-play machineですと、JB9/6よりも、波が穏やかだという訳です。(しかも、DB10/7の方がpay out率が高い!)

 以上から分かるように、リスクを少なくして出来るだけアクションを大きくしようという場合には、マルチプレーマシンは極めて強力な武器になります。従って、デノミによらずスロットクラブのキャッシュバック率やコンプポリシーが一定な場合は迷わずマルチプレーマシンを選ぶべきでしょう。また、波が穏やかな一方で、649740handに1回の割合(1329.948時間に1回)で出現する"Dealt Royal"という強烈なSuper Jackpotがあり得るという期待感が、マルチプレーマシンを単なるコンプ稼ぎマシン以上のものにしてくれているとも言えるでしょう。

●長期的な勝負の行方

長期的な観点から見ると、トータルで負け組とならないためにはどれくらいの期間videopoker machineを回さないといけないのかが気になる所でしょう。長く回せば、長く回すほど平均的な期待値の周りに結果が収束する訳ですが、その「長く回す」長さが、現実的な長さで済むのか、それとも一生かかっても十分な長さに到達しないのかによって、あるマシンに対する価値観もずいぶんと異なるものになって来るでしょう。例によって、DB10/7とJB9/6を調べてみましょう。ここでは、キャッシュバックetcのフリンジベネフィットを1.00%であると仮定してみます。このとき、DB10/7のpay out率はフリンジベネフィットも含めて101.173%, JB9/6の場合には、100.544%となります。

まず、DB10/7の場合ですが、先と同じように1時間あたりのplay hand数を1-play machindeで600 hand,マルチプレーマシンで500 handとして、1日8時間回すとして、1-play machineの平均的な儲け、リスク1%でのはまりの下限を示したのが下のGraph1です。

Graph1:Double Bonus 10/7のリスク



このグラフの横軸は、プレーした「日数」。縦軸は収益(損失)の額です。
例えば、$0.25 1-playデノミについては、では、3本同じ色の線()が書いてあります。このうち一番下側に来ているのが、1%リスクの下限であり、これは99%の確率で実際の結果はこのライン以上になることを示しています。1%リスクでプラスマイナス0以上にするためには、約200日弱の日数分のプレーが必要なことが分かります。3本のうちの真中の線は、直線になっていますがこれは、「平均的な収益」を表しています。平均的な収益は総投入金額の1.173%ですから、当然回した日数が多いとそれに比例して収益も大きくなる訳です。3本のうち、一番上の線は、儲かる額の「上限」であって、99%の確率で実際の結果がこのライン以下以下になることを示してます。
$1マシン、0.25 4-playマシンについても、同様のグラフを示しています。また$0.5デノミについては、「下限」のグラフのみを示しています。

このグラフからいろいろなことが分かると思いますが、重要なことは

マルチプレーマシンの方が2倍以上短い日数(100日弱)で、トータルでの勝ち組に入ることが出来る
一方、シングルプレーのマシンですと、プラスマイナス0以上にするためには230日程度のプレーが必要なことが読み取れると思います。定性的にいうと、マルチプレーマシンは、プレー間で相関はあるけれども、シングルプレーに比べて沢山回すことが出来るので、その分結果が早く、平均的な値に収束するということです。そうです。トータルプラスになるために必要な日数は、マルチプレーの方が驚くほど短いのです。


マルチプレーマシンの方が、最大のはまり額がはるかに小さい
特に$0.5デノミの1-playと、$0.25 4-playを比較してみましょう。上のTable4にあるように、one sessionや1日程度の勝負の荒れ具合を示す標準偏差は、$0.25 4-playが$346.55、$0.5 1-playが$325.52と、$0.25 4-playの方がやや$0.5 1-playより大きい程度です。また、Graph1で両者の「下限」を比べてみると、最初の15日程度のプレーでは下限がほぼ重なっており、その意味でも両者の短期的なリスクは同程度です。しかしながら、「下限」が同じであっても、$0.25 4-playの方が平均的な収益は大きいため、20日程度以上の期間回すとジリジリと、その差が開いてきます。
はまりの最大値は、言い換えれば「長期的に必要となる資金量」は、それぞれのマシンの下限のグラフの最小値の所になる訳です。以上を具体的な数値で示しておきますと、

Table 5:DB10/7マシンの長期的所要資金量

必要資金 ±0以上になるために必要日数 マイナスが最大となるプレー日数
DB10/7 $0.25 1-play $4087 232.3 days 58.1 days
DB10/7 $0.5 1-play $8174 232.3 days 58.1 days
DB10/7 $1.0 1-play $16348 232.3 days 58.1 days
DB10/7 $0.25 4-play $5558 94.8 days 23.7 days


Table5において特に$0.25 1-playと、4-playを比べてみましょう。4-playの方が必要資金量は1.5倍近く必要なのですが、4-play machineの等価的デノミ(総投入金額)は$0.833であったことを思い出しましょう。言い換えれば4-play machineの方が3.3倍もの資金を投入している訳です。にもかかわらず、トータルの資金量がそれほどにはかわらないということは、長期的な視野に立てば、$0.25 1-playのプレーヤーであっても、短期的な荒れ(=$0.5デノミ相当)を覚悟することが出来れば、$0.25 4-playを回すことは十分可能であるということです。
 即ち、長期的な視野にたてば、短期的な視野のときに比べて、「ますますマルチプレーの効用は大きい」ということです。

さて、では次に同じ計算をJB9/6に対して行ったグラフをGraph2に示します。

Graph2:Jack or Better 9/6のリスク


グラフの意味はDouble Bonus 10/7の場合と全く同じです。Jack or Betterにおいても、マシン間の比較においてはdouble bonusの場合と同じ議論が成り立ちます。
それよりも、ここではGraph1とGraph2のスケールの違いに注目して下さい。Jack or Betterですと、4-play machineであっても、トータル±0以上にするのに200日以上のプレーが必要となりますし、また必要資金量(最大のはまり)もJack or Betterの方が大きくなってしまいます。DB10/7 1-play $0.25デノミとJB9/6 1-play $0.25デノミのように、同じデノミのマシンを比べれば、短期的な勝負の荒れ具合は当然Jack orBetterの方が穏やかなのですが、一度長期的な視野に立つとDouble Bonus 10/7の方がJack or Better 9/6に比べて圧倒的に有利であることはGraph1とGraph2を比べれば一目瞭然でしょう。これは言うまでもなく、長期的な勝負では勝負の荒れ具合よりも、pay out率の絶対値の方が勝負の行末に支配的な要因となってあらわれてくるからです。
out率の絶対値の方が勝負の行末に支配的な要因となってあらわれてくるからです。

なお、single play machineの必要資金量についてはビデオポーカーのコーナーmachine analysismachine analysis for Deuces Wild familyに、よりいろいろな状況での計算結果が示してありますので、そちらもご参照下さい。

注意:以上の議論は、videopokerの結果の分布を「正規分布」として考えた場合のリスクですが、いつも述べているように(Jazoboも指摘しているように)、Videopokerの結果の分布は"Far from normal distribution"な訳ですから、以上の数値は危険側の計算です。即ち、実際には上のグラフの下限は1%リスクよりも大きい所を示していると言うことです。但し、マシン間の相対的な比較においては、上の議論で十分であると考えられます。(具体的には計算していませんが、上のグラフは多分リスク5−10%のラインになると思われます)

●TAX Effectについて

実質的には$0.25デノミでは、dealt royalにならない限り2つ以上のplayでroyal flushが出現することは滅多にないでしょう。シングルプレーマシンでデノミを$0.5以上にすると、Royal Flush出現時に、US non-residentに対しては30%のTaxが源泉徴収される(withholding)ので、実質的なpay out率が0.4%以上低下してしまうのですが、例えば$1デノミsingle playを打つ代わりに$0.25デノミ10-playを打てば、Tax effectを少なくした上で、同じ特性(=荒れ具合)をもつマシンを打つことが出来る訳です。
詳細の計算は今後の課題としますが、非常にaboutに考えてマルチプレーマシンのTax effectは0.1%以下であろうと推測しています。(正確な計算された方がおられれば参考にしたいのですが?。ものすごく暇になったら自分でもやりますが(^^;))。

●Video pokerマルチプレーマシンの結論

ざっくりの傾向を下にまとめておきましょう。

・短期的な荒れ具合を考えると、3,4-playマシンは、シングルプレーマシンの半分のデノミのマシンと同等。10-playマシンは、シングルプレーマシンの1/4デノミのマシンと同等。
・長期的な視点に立つと、3,4-playマシンは、シングルプレーマシンの同じデノミのマシンに比べ、最大のリスクは少し大きくなる程度で済む。
・長期的な視点に立つと、マルチプレーマシンは、シングルプレーマシンに比べ、圧倒的に早く±0以上の成績にもっていくことが可能である。
・長期的な視点に立つと、マシンのシングルプレーでの荒れ具合よりも、pay out率そのものの方が極めて重要である。
・要するに、キャッシュバック率・コンプポリシー等が一定であるならば、迷わずDouble Bonus 10/7 muti-playを選択するべきである。(Double Bonus 10/7以上のpay out率のマルチプレーマシンについては、設置されているカジノの情報を聞いたことがほとんどありません。もし、あれば女房子供を質に入れても勝負(爆)ですが、当然プロが狙ってくるので、一時のプロモーションとしてならともかく、継続的に設置することはほとんど不可能だと思われます。)


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