ARARA - 8
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どる
雲景のあららARARA
2009年7月23日(木)
あららARARA 個性的な美学


「恋愛ほど個性的なものはありません。
一人の個である男性と、一人の個である女性が一つの恋愛をするのですから、
この世の中に、これほど個性的なことはありません」 

美学の女性教授は、大きな教室をぐるりと見回した後に、声をはりあげた。

セミロングの髪型は、ちょっとボサボサ、化粧のないお顔に眼鏡が似合っていた。
美学に学生を惹きつけるためには、恋愛と言う言葉を用いるのが近道である、と
考えたに違いない。

一人の個である男性と、一人の個である女性との間に生まれた人間は、
生まれながらにして、誰しもが個性的である事を説いていた。

美学の教授が真に伝えたかったのは、「個」の大切さだった。

個性的とは、他人と異なるような努力をすることだと考えている人もいるようだが、
大きな勘違いだ。
ありのままの自分を大切にして磨いていくことが、即ち、個性的なのだ。

表現を試みる者にとってのいけばなは、自分の「個」との戦いである。
自分に忠実に向きあうこと以外に、個性的な作品を生み出すことは出来ない。
揺るぎない作品の存在感は、ここから生まれる。
優れた先達の作品を拝見するたびに、自分自身の未熟さを痛感している。

十人十色と言われる。
しかし、一人の人間の中に棲んでいるのは一つの色ではない。
いろいろな色の自分がいる。
いろいろな自分を見つめてみれば、いろいろないけばなの表現を個性的に愉しむこともできる。

一本の個である植物と、一人の個である作者との語らいは、これほど個性的なことはありません。
あらら、いけばなって、恋愛のようです。                  
づく