ARARA - 21-25
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雲景のあららARARA
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あららARARA Web劇場ー名前の検索
ブログ管理人からの回答に「警察」 の文字があったのには、驚きこそすれ、以外だった。
人間は、誰しも過ちを犯しやすい危うさを備えている生きものだが、「警察」の言葉を使う
必要性がどこにあるのかが、気にかかる。
家元と電話やメールでも交信している間に、「警察」 の言葉は出てこない。
2011年1月28日 (金) 月に一度の流派をこえた勉強会の晩である。
連絡係から、1月はシダレヤナギを使い、全員でピラミッドを作るので、結ぶための紐類を各自が
持参することと、花材を注文しますので、欠席される方はこのメールに全員返信でお知らせください、
と、全員にメールが入っていた。
SS流の家元は欠席して欲しい。心の中で呟いた。
物議があらわにならないうちに、すんなりと勉強会から抜けてくれればWebで起こっている事件も
最小限に抑えられるかもしれない。
出かけるのも気が重い。
会場には、家元も出席していた。
実験が始まるまえに講義があった。参加者は横二列にならんで説明を拝聴した。
古代エジプト文明の時代に築かれたピラミッドは、方位をあらわす東西南北の四つの面がある。
講師のN先生の実験は、三人が一組になって異なった一面を作成することだった。
雲景のチームは後ろにすわっている人をチームリーダーに指定した。
振り返ると、家元だった。
「替わって!」 と叫ぶように言うや否や、立ち上がった家元は隣に並んで座っているメンバーと
席替わりをした。素早い動作だった。その速さに驚いたけれども、家元の声が悲鳴のように聞こえた。
雲景も同じチームメイトとして、家元と相談しながら作品を作れるような心境ではない。
会場には枝垂れ柳が用意してあった。持ち上げても床にまで引き摺るシダレヤナギの長さは
お正月の床の間に飾る柳のようだ。
それにしてもこんなに柔らかな枝でどうやってピラミッドを立ち上げるのだろう。
N先生は教室にある背もたれつきのスチールの椅子を積み上げるように指示した。
斜めにしたり、横にしたり、逆さまにしたり、と重ねて、手をのばしても届かない高さにまで椅子を
教室の中央に積み上げた。本物のピラミッドは巨大な石を四角錐に水平に積み上げてあるけれども、
椅子の乱調積み重ねは、意表をついた面白味があって、いかにもN先生らしい。
四つのチームは、椅子を軸にして、持ち込んだ紐で枝垂れ柳を結んでいった。
紐や縄の材質や色合いが装飾になって、「線状」の枝が意匠をこらした「面」に変化する。
四チームの競争でありながら、一つの大作を合同で創り上げるというN先生の狙いは成功した。
勉強会では全員でひとつの作品を創るのは初めてだった。
ピラミッドの面の一つの真正面に立てば、他の面は見えなくなる。
ピラミッド構成はまさしく四方正面を的確に表現する法則なのだと気がついた。
作品が完成して、N先生がそれぞれの面の講評を始めようとした矢先、ピラミッドの頂点がグラリと
揺れた。雲景の身体もゆれている。
仲間の後ろ側をそうっと抜けて、ロビーにつづくトイレに逃げ込んだ。
気分が悪い。雲景のストレスの深さを知っているのは、雲景しかいない。
しばらくの間、落ち着くまで、トイレの中で休んでいた。教室に戻ると、講評は終わっていた。
その晩、家元は、雲景と言葉をかわさなかった。
検索侵入が発覚してから、はじめて顔をあわせた晩である。何らかの誠意をしめしてくれたのなら
この場で押し殺している怒りもやわらいで、解決の糸口も見つけられたかもしれない・・・・。
雲景もまわりの出席者を気遣って、家元と口をきかなかった。
続く(編集未完)