b. 芸術の時間的な経過とは
 

対自が即自を要求するゆえんのものは まさに<対自のうちにおいて、無化された即自>という全体分解的な全体である。(サルトル)

―デカルトの戦術―「事象の全体」全体の奪回である 

量子的な時間〜私たちの時間も、刻々と終わりに向かって急いでいる。

それぞれの時が先をゆく時によって変わり みんなが押し合いながら 次々に進んでゆく。

ウイリアム シエクスピア「ソネット60番」我々が「いま」と呼んでいる現在の時間は 固定されておらず 未来の方向に動いていることである。

 

この運動は 時間の流れと呼ばれている。我々に残されたのは 激しく切り詰められた時間概念である。

我々は時間が流れる あるいは 過ぎてゆくのを体験しない。

我々が 体験しているのは 我々の現在の知覚と現在の記憶の中にある過去の知覚との違いである。

それらの違いを宇宙が時間とともに変化している証拠だ。と正しく解釈する。

 

そこには 動いたり止まったり、あるいは 流れたり出来るものは 何もなく、また時間の「速さ」と意味をもつと呼べるようなものも何もない。

時間の中に存在するものは 全て 時間戦に沿って配列された不変のスナップショットの形をとると見なされる。

 時間が 「流れている」という間違った直観も含めて、すべての観測者の意識的体験が それに含まれる。

 

「動いている現在」を想像することは できる。だが、想像したからと言って それが起こるわけではない。

何ものも 線に沿って動くことは 出来ない。時間は 流れることが出来ないのだ。時間の流れという観念は 実は 第2の種類の時間、

つまり、間の系列の時間の外部にある時間を前提にしている。

もし、「いま」が 実際にある瞬間から 別の瞬間に動くとすれば それは この外的な時間に対して動いているのだ。

時間の流れは それぞれの段階で、無限に 外的時間の流れに帰着させない限り 意味をなさない。

 

時間の枠組みの正確な描像は 動く、或いは 変化する描像では あり得ず。静的でなければならない。

描像が 静的であるにもかかわらず、我々は それを、静的には 理解できない。

瞬間の系列は ページの上に 同時に示されており、それと、我々の体験を関係付けるのは 我々の注意の焦点を系列に沿って動かさなければならない。

 

たとえば、ある1つのスナップショットを眺め、それを「いま」を表す物を認め、一瞬あとには その石のスナップショットを眺めて 

それが、新しい「今」を表していると考える。

理論自身に 本質的で、根強い曖昧さが存在するのだ。

特定の時間は 現在には あり得ないし、現在であることを辞めることも出来ない。それは 変化だからだ。

したがって、現在は 客観的には 単一の瞬間ではありえない。

両立この二つの概念―動いている現在と不変の瞬間の系列―に我々がしがみつく理由は 我々が、両者を必要としていること、

あるいは 必要だと我々が考えていることにある。あることがいつ起きたかを語る時、そこには 時間の流れが含まれていない。

それは どこで起きたかを語る時、その中に「距離の流れ」が含まれていないのと同じだ。 

しかし、あることがなぜ起きたかを語るや否や、時間の流れが呼び出される。

 

物理学の理論は 常識と違って整合的であり、時間の流れと言う観念を振り捨てることで、整合性を最初に達成した。

勿論、物理学者も、誰もがしているように、時間の流れについて語る。

量子的な時間概念の要点を ここで まとめておこう。時間は 瞬間の系列ではないし、流れてもいない。

だが、時間の性質に対する我々の直観は 大まかに見れば 真なのだ。ある出来事は 確かに互いに原因であり結果である。

 

すべての瞬間は 物理的に実在である。それ以外の何ものも、実在的ではないのだ。

時間が 何らかの形で空間に追加された4番目の次元であるという考えがある以上、

ある場所から 別の場所に移動できるのと同じように、ある時間から、別の時間に移動することも可能ではなかろうか、という考えが浮かぶのは 当然である。
(世界)

 

芸術作品は 自己の時間を超えた「現在」を獲得するのである。この現在に入ってゆく事によって、人間は 強められるのだ。

 今度は 第3の時間的つながりが表われる。それは 未来に対するつながりである。

時間的生命の内部に歩み入る無時間性が 問題なのだ。現在も未来も厳密な意味での実在性を持たず、実在的であるのは 1人過去のみ(芸真)

「無の出現を条件としているのは 人間の自由である。無化の条件として考えられるのは 日による人生、全体の奪還である。何ものも隠されていない」(

「己を開くものとしての世界は 己を閉ざす者を何1つとして 許さないのである。」(岩感) 




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